ハートジャスティス 番外編集   作:ココリンク

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30話 遠足

07/01(金)

 

雲一つない快晴。

 

遠足の日がやってきた。

 

集合場所は学校の校庭であり、皆いつものお揃いのランドセルとは違い、個性豊かなリュックサックを背負っている。

 

「お花さん、いってきまーす!」

 

咲希と百合は遠足の日でも欠かさずに、花壇に水をあげていた。

 

「さっち、スカート気を付けて」

 

「はーーい!!」

 

咲希は今日は珍しくミニスカートを履き、シャツもフリフリや可愛らしいプリントが着いたおしゃれコーデだった。

 

(さっちすぐお洋服汚しちゃうし、(あまり可愛過ぎると馬鹿な男子が変に寄りつくし)カジュアル系を着てって言い聞かせてたけど、それも私のワガママだったのかな)

 

百合は隣で花に水を上げながら、お人形のように可愛く着飾られた咲希に見惚れていた。

 

が、あることに気付くと、目の色を変え慌てて指をさす。

 

「さっち! さっち!

パンツ! 見えてる!!」

 

「あ! ほんとだー」

 

咲希も気付いたものの、特に気にする様子もなく、何事もなかったかのように水やりを続行した。

 

百合は愕然とすると、ジョウロを置いて、咲希の肩を掴んだ。

 

「さっち! だめ!!

気にしなくちゃだめ!!」

 

「なんで?

お家でも花奈ちゃんがパンツ出してるよ」

 

「(花奈ちゃーーーん!!)

お家でよくても!(よくないけど!)

ここじゃだめだよ!

今日、さっちスカート短いんだから!」

 

百合はそう言うと、いつもより少しスピードを上げて水やりを終わらせると、咲希の手を掴んだ。

 

「今からでも遅くない!

さっち! 体育着履きにいくよ!

昨日持ち帰るの忘れたんでしょ?」

 

そう言いながら咲希を無理矢理引っ張ると、校舎へと走り出した。

 

「なんで!?

大丈夫だよー!」

 

咲希は困惑しながら百合に訴えるが

 

「大丈夫じゃない!!」

 

と百合は少し起こったような顔で言った。

 

 

 

(危ない……忘れるところだった。

忘れたらアイツ、キレるからな)

 

教室では明人が1人、メダカにエサをあげていた。

 

(特に変わったところもないか)

 

明人はメダカの様子を確認すると、餌袋をいつものところに戻そうとした

 

そのとき

 

「大丈夫!」

 

「大丈夫じゃない!」

 

と言い合う声が聞こえてきた。

 

(なにやってるんだ?)

 

明人は餌袋を置いて、廊下に向かおうとした。

 

「ほら、さっち!

下、履くだけだから!」

 

その前に百合が咲希を引っ張りながら、教室に入ってきた。

 

「何やってんだお前?」

 

真剣な顔で咲希を教室に連れ込む百合に、明人は呆れながら訊いた。

 

百合は声で明人に気付くと、顔だけ向けて

 

「なんであなたが!

………メダカか」

 

とすぐ納得して咲希を教室に引きずり込んだ。

 

(……かわいい)

 

その瞬間、明人は咲希の珍しく着飾られた姿に、胸がドキドキした。

 

思わず顔を赤くして、ぼーっと見惚れてしまう。

 

「あ! 明人くん!!

おはよー!!」

 

咲希は明人の姿を見ると、元気に飛び跳ねて挨拶した。

 

(かわいい)

 

その仕草はいつもと変わらなかったが、いつと違う服装でやられると破壊力が抜群で、動くことすらできなくなっていた。

 

「あれ……?

明人くん! 明人くーーん!!」

 

咲希は返事がないことに戸惑い、気付いてもらうために大きく手を振る。

 

「あの人の事はほっといて、着ちゃおう」

 

百合は咲希の手を掴んで止めると、蔑むような目で明人を睨み、咲希のロッカーから体育着袋を取り出した。

 

「着なきゃだめ?」

 

「だめ」

 

「あついよ」

 

「暑くないよ」

 

「走ってつかれた」

 

「じゃあ着させてあげる」

 

咲希は少し拗ねたような表情になりながら、面倒くさそうに体育着のズボンを取り出すと、スカートを脱ごうとした。

 

百合は他の人にパンツを見られずに済むため、一安心しそうになったが

 

「……!!

さっち! 待って!」

 

急いで咲希の手を止めさせ、

 

ぼーっとしている明人の頬を叩こうとしたが、咲希の前なのでなんとか抑え、咲希から見えないように思い切り足を踏み付けた。

 

「いつまでいるの!?

さっち着替えるから出て!!」

 

「いて!

なにする

 

明人は踏まれたことに文句を言おうとしたが、咲希を見るとスカートを脱ごうとしているのが見え、赤面し

 

「あ! ごめん!

咲希!! すぐ出る!!」

 

と逃げるように教室から出て行った。

 

「また校庭でねー!」

 

咲希は無邪気に明人に手を振った。

 

「変態……」

 

百合は明人をみながらボソッと呟くと

 

「さ、もう大丈夫だよ」

 

咲希のお着替えを再開させた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「それでは、これから自由時間です

各自予め決めたコースを巡り、自然と文化あふれる公園で様々な学びを見付けて来てください。

また。先生たちも色んなところにいますので、何かありましたら声をかけてくださいね。

それではいってらっしゃい」

 

遠足の場所に着いた一行は、まず共通の場所を巡り、土地の文化や歴史の説明を受けたあと、自由時間となった。

 

生徒たちは各々班ごとで集まり、それぞれに決めたコースに向けて出発している。

 

「咲希ー!」

 

「明人くん!」

 

咲希を見付けた明人は、手を振りながら歩み寄る。

 

咲希も笑顔で手を振り返し、走って明人の元へ向かった。

 

(やっぱりかわいい)

 

明人は咲希を見下ろし、特別かわいい姿に見惚れていた。

 

「……あれ?

そういえば、アイツは?」

 

しかし、咲希の近くに珍しく百合がいないことに気付き、思わず訊いていた。

 

「おトイレだってー!

ずっとガマンしてたみたいだけどすぐ戻るって!」

 

「そっか……

確かに説明長かったもんな」

 

「うん!

でも楽しかった!」

 

「……そうだな」

 

「うん!」

 

明人はさっきまでの時間は退屈で仕方なかったが、咲希が無邪気に言うので、思わず合わしてしまった。

 

(どのくらいかかるんだろ)

 

明人はベンチに座り、百合がいつ出てくるのかトイレの方を見ながら、そう思っていた。

 

「明人くん見て! ひまわり!!」

 

その隣で、咲希がベンチの後ろを指差しながら嬉しそうに報告してきた。

 

「おお、すげえ」

 

明人が後ろを見ると、1mくらいあるひまわりが咲いていた。

 

明人はその大きさに圧倒される。

 

「明人くんと植えたひまわりも、このくらい大きくなるかなー!」

 

「そういえば、あのひまわりどうなった?」

 

「あれ? 見てないの?」

 

「近付くと、アイツに何言われるか分からないから」

 

「そうなんだー。

わたしから百合ちゃんに言っておくね」

 

「いや、いいよ」

 

「いいの?

ひまわりはお花咲いたよ!

あ、今度百合ちゃんに写真見せてもらおうよ」

 

「アイツが俺に見せてくれるのか?」

 

「見せてくれるよ!

だってなかよしでしょ?」

 

「だから仲良くないって」

 

明人が苦笑いしながら言うと、百合がトイレから出てきた。

 

「百合ちゃーーん!」

 

咲希は百合の姿を見ると、とびきりの笑顔で呼び手を振った。

 

明人はその笑顔が自分のときよりも嬉しそうでどこか妬いていた。

 

「さっち!

お待たせ!」

 

百合は走って咲希の元へ行き、明人の間に割り込むように立つと咲希の手を繋いだ。

 

「いい子にしてた?」

 

「うん!」

 

「俺と話してたから

 

「さっち! はやくいこ!

全部回れなくなっちゃうよ」

 

百合は明人の言葉をわざと遮った。

 

「うん!!

あ! 百合ちゃん! 写真撮って!!

ひまわり!!」

 

咲希は百合に連れられ、歩き出そうとしたが、百合の手を離し、ひまわりの前に立って、写真を催促した。

 

「いいよ

待ってて」

 

百合は優しくそう言うと、リュックサックを地面に置いて、中からデジタルカメラを取り出した。

 

(アイツ、あんなのも持ってるのか……

というか、よく写真見てるけど自分で撮ったやつ?)

 

明人は蚊帳の外になりながらも、突然現れたカメラに驚いていた。

 

「さっちー!

はい、チーズ!」

 

「いぇい!!」

 

百合はすぐカメラを構え、咲希もそれをわかっていたかのようにすぐポーズを決めた。

 

「じょうずにとれた?」

 

咲希はすぐに写真を確認しに行く。

 

「うん!」

 

「わー!

すごい! すごい!」

 

咲希は百合に写真を見せてもらい、キレイに撮れている写真を見て、喜んでいる。

 

「じゃあ行こうか」

 

百合はデジタルカメラをポケットにしまい、リュックサックを取ろうとしたが

 

「百合ちゃん!

明人くんとも撮りたーい!」

 

と咲希が百合の腕を掴み、明人と一緒に写りたいと催促しはじめた。

 

「え!!?」

 

百合は目を丸くして驚くと、明人の方を見た。

 

明人は腕を組み、ニヤリと笑っている。

 

(あの人……!

憎たらしく笑って……!!

嫌って言いたいけど……さっちのお願いだし……!!

でもやだ!!)

 

百合は葛藤していると、隣のクラスの担任の田代先生が通ったのが見えた。

 

「(しかたない……もうこれしか)

さっち! 3人で撮ろうか!」

 

百合は咲希にそう言うと、田代先生の元へ走った。

 

「田代先生すみません」

 

「ん?

ああ、不来方か。

どうした? お前らまだ出発してなかったのか?」

 

田代先生は不思議そうに訊いた。

 

「え……ええ。

あ、あのすみません。

写真……撮ってもらってもいいですか?」

 

「ああ。

いいぞ」

 

百合がおずおずと訊くと、田代先生は快諾したと思えば、なぜかポーズを取った。

 

(……え?)

 

百合は何が起こってるのかよくわからず困惑する。

 

「ははは!

冗談冗談! かしてみ!」

 

その様子に田代先生は笑うと、百合からカメラを受け取った。

 

「せんせーい!

ひまわり!! ひまわりと一緒にみんなとってー!」

 

咲希は田代先生に手を振りながら、ひまわりを指差す。

 

「まかせろまかせろ。

ほら、竹内! 不来方もはやく位置につけ!」

 

田代先生は並ぶように手で催促する。

 

咲希を中心に、その横に明人と百合が並ぶ。

 

咲希はピースしてポーズを取るが、明人と百合はまた互いを睨み合っている。

 

「近過ぎない?」

 

「お前こそ」

 

「ほら、お前らも笑え!」

 

田代先生から言われ、2人は無理矢理笑い、同時にピースした。

 

「いちたすいち」

 

とだけ言ってシャッターを切る。

 

「ありがとー!!」

 

咲希は写真の出来栄えを見に、田代先生のもとへ走る。

 

「わあ! すごーい!

ありがとう!」

 

咲希は3人で撮れている写真を見て、喜ぶともう満足と言いたげに手を出した。

 

「1枚だけでいいのか?」

 

「うん!!」

 

田代先生がカメラを咲希に渡すと、咲希はふたりのところへ戻る。

 

「ありがとうございます」 「あざまーす」

 

百合も丁寧に、明人は目をそらしながら適当にお礼を言う。

 

「おうよ!

またなにかあったらな!」

 

田代先生は背中を向けながらキザに手を上げて去っていった。

 

「はい! 百合ちゃん!」

 

「ありがと」

 

咲希は百合にカメラを返すと、先に進もうと百合の手を握った。

 

「行こっか」

 

百合はカメラを再びポケットにしまうと、ずっと置きっぱなしだったリュックサックを拾い上げた。

 

そのとき

 

「……!

さっち待って!

1枚だけ!」

 

百合は足元のなにかに気づくと、カメラをまた取り出し、レンズを向けた。

 

「早く行くぞ」

 

「だから!

1枚だけ!!」

 

明人は腕時計を見ながらそろそろ進みたいと、呆れて言うが百合は全く目を離さない。

 

「イチヤクソウだ!

こんなところにもしかも花咲いてる!!」

 

百合はふと見つけた植物に夢中になり、何枚も色んな角度から写真を撮ってる。

 

「百合ちゃん! このお花なに?

ちっちゃくてかわいいー!」

 

咲希も花に興味津々である。

 

「イチヤクソウだよ!!

昔は乾燥させて薬にしてたから“ヤクソウ”ってついてるんだって!!」

 

百合はいつにもなく興奮した様子で、早口で語る。

 

「へーー!

すごーい!!」

 

咲希もそれを聴いて楽しそうだ。

 

「1枚だけじゃねえのかよ」

 

明人は中々進まないことに少しイライラしながら言うが

 

「あ! タケニグサ!!」

 

と次の植物の写真を撮り始めた。

 

「あーー!! オトコエシだあ!!」

 

次々と写真を撮り始め、止まらなくなってしまっている。

 

「おい……おい!

不来方!! そろそろ行くぞ!」

 

「まってー……あと1枚! あと1枚だけ!!」

 

明人はいい加減堪忍袋の緒が切れ、百合に怒鳴るが、百合は全く相手にせず、あと1枚といいながら何枚も撮っている。

 

花に限らず、葉っぱさえも撮り始めているので、咲希もついていけなくなっている。

 

「明人くん、百合ちゃんは植物がだいすきだから、とり始めたら動かなくなっちゃうんだよ」

 

困惑する明人の隣に、少し飽き始めた咲希が立った。

 

「植物オタクと聞いていたけど、あんなとは……。

ああなったらどうすればいいんだ?」

 

「待つ」

 

「……そっか」

 

対処法を訊いた明人だったが、咲希は真剣な顔でそう言ったので、待つしかないのだと悟った。

 

 

 

「わーー!!

あー、なんだっけこれ!?

えっと……あー、後で調べよー!」

 

5分経っても百合の勢いがおさまらない。

 

明人はベンチでパンフレットと、ルートを書いた地図を見て、時間内に行けるか計算し直している。

 

(無理そうだな……

どこか削るか……)

 

明人は全部行くのを諦め、ふと顔を上げた。

 

待ちくたびれた咲希が退屈そうに落ちている小枝を振り回している。

 

「咲希ー、危ないぞ」

 

どこか当たったら危ないので、明人は注意する。

 

「……はーい」

 

咲希は小枝を置くと、明人の隣に座った。

 

そしてなぜか頭を少し明人の方へ寄せる。

 

(え……なに?)

 

明人はドキドキしたが、それ以上に困惑しなにもできなかった。

 

咲希は言う事を聞けたなでなでがないことを悟ると、頭の位置を戻した。

 

「(なんだったんだろ)

咲希、そういえば今日はおしゃれなんだな」

 

明人は百合が別のことを集中している今がチャンスと、朝から気になっていたことを訊いた。

 

「うん!

お花畑の写真見たらね!

絵本で読んだお姫様がいたところを思い出してね!

わたしもお姫様みたいになりたいなーって花奈ちゃんに言ったら、ドレスはないけどスカートはあるって!

だから花奈ちゃんにおしゃれしてもらったの!!」

 

「へー、そうなんだ。

だからかわいかったんだ」

 

「うん!!

いつもは百合ちゃんから、お花の手入れで汚れちゃうから、だめって言われてたけど、今日だけは特別いいって!」

 

「そうなんだ。

よかったな。

(またアイツが制限かけてるのかよ)」

 

明人はこんな可愛い格好を制限している百合に、また怒りが湧いたが、以前お花畑で遊んだとき、平気で寝転がったりよく転んだりしていたのを思い出し、納得はできてしまった。

 

「うん!!

スカート似合う?」

 

「……っ!?

ああ!!」

 

急に好きな人から、洋服が似合うかどうか訊かれたので、明人は一瞬どぎまぎしつつ、大きな声で返事した。

 

「よかったー!

空良くんから、男の子から見たら似合わないって言われてたからどうだろうって思ってたんだー」

 

「そ……そうなんだ。

(いや、すごく似合ってるし……というかこんなの全男子が落ちるって。

空良くんわかってねえな)」

 

 

 

それからまた5分くらい経った。

 

「明人くん!

お待たせー!」

 

「おう。

アイツはまだだぞ」

 

「えー」

 

トイレに行っていた咲希は、まだ終わっていないことを聞き、不満げな声を出す。

 

(アイツ、どんなことよりも咲希ファーストかと思ってたけど、しっかり植物オタクしてたんだな)

 

明人は、公園の管理人らしき人と語り合っている百合を横目で見ながら、そんなことを思っていた。

 

「あ! 百合ちゃんお話してる!!」

 

「まあまあ、すぐ終わるだろ」

 

咲希は頬を膨らませ拗ねた顔になるが、明人はそれをなだめる。

 

明人自身、百合がこうしてくれていれば、咲希とゆっくり話せるので、都合が良かった。

 

「そういえば咲希。

あれから、手はどうだ?」

 

「……手?」

 

「ああ」

 

ピンと来てない様子の咲希に、明人は自分の右掌を指差した。

 

「……?

あー! この前の!」

 

咲希はようやく、この前の誕生日の日に負ったけがのことだと気付いた。

 

「平気だよ!

あ、でもちょっと痕になっちゃった」

 

咲希はそう言いながら、明人に掌を見せた。

 

「……あ、ホントだ。

これ?」

 

明人はよーく見ると、掌に薄い線が入っているのが見え、触れない程度になぞった。

 

「うん!

あ。でも痛くないから平気!

もう鉛筆も持てるよ! お箸も!!」

 

「そっか。

でも痕残っちゃったか……しんには俺から言っとくよ」

 

「ううん! 大丈夫!!

橋本さんにはたくさんごめんなさいしたもらったから!」

 

「いいのか?」

 

「うん!!」

 

「さっちー!!

ごめん!! どのくらい経った!?」

 

明人と咲希が話している中、ようやく終えた百合が慌てた様子で戻ってきた。

 

「百合ちゃんおそい」

 

いつも明るい咲希の珍しい拗ねた声に、百合は寂しそうな顔をする。

 

「ごめん! 本当にごめんなさい!!」

 

百合は咲希に目線を合わせ、必死に頭を下げて謝る。

 

(咲希もこういうので怒るんだな)

 

明人はその状況を少し楽しそうに見ていた。

 

「明人くん行こ!」

 

咲希はそう言うと、明人の手を掴んだ。

 

(ーーーッ!!!!????)

 

完全に傍観者気取っていた明人は、ふいに咲希に手を繋がれたことに困惑する。

 

前に1回、係仕事のときに軍手越しに繋いだが、素手同士は始めてだった。

 

(さっち!!!??)

 

百合は愕然とし、ショックを受け、意識が飛びそうになっていた。

 

(え!!??

手……!? 繋がってる!!?

素手で!!?

咲希の……手!!?

やわらかい!! あたたかい!!!

繋がってる!!!!)

 

明人も急な出来事に頭がパンクし処理できず、目の前が真っ白になる。

 

「明人くん!

明人くん!!」

 

咲希は早く進もうと明人に催促するが、動かない。

 

咲希は泣きそうになり、乱暴に手を離すと

 

「もういい!!」

 

と行って、1人で進んでいってしまった。

 

 

「「……はっ!?」」

「咲希!?」 「さっち!?」

 

数秒後、我に返った2人は咲希の姿を探し、遠くの方をどんどん進んでいくのを見ると

 

「お前の!!」 「あなたの!!」

 

お互いに文句を言おうとしたが、咲希を追い掛けるのが最優先として走って追い掛けた。

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