ハートジャスティス 番外編集   作:ココリンク

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百合と寝惚けの咲希

「ん……?百合ちゃん?

……おはよう」

 

給食の後の昼休み。

 

4時間目が体育でバスケットボールをやり、試合が白熱したため、咲希は給食を食べ終えると寝てしまっていたのだ。

 

「おはよ。

よく眠れた?今日のは疲れたよね」

 

「……うん。

ふわあああ」

 

横から覗き込むようにして、優しく問いかける百合に、咲希は寝惚けてか大きな欠伸をした。

 

「さっち?

さっちー。そろそろ起きてー、5時間目始まっちゃうよ」

 

百合は咲希の顔の前で、手を振りながら言うが、咲希は目をぱちぱちさせるだけで反応を示さない。

 

「花奈ちゃん……もうちょっとだけ………」

 

それどころか、寝惚けて今いるのが家だと思っているのか、姉の名を呼びながら机に伏してしまった。

 

「……さっち。私は百合だよ。

起きて、ここ学校だよ」

 

「………あれぇ、ミントは?

花奈ちゃん、ミント知らない?」

 

百合が優しく教えるが、咲希は聞こえてないのか、いつも寝るときに抱いている、ミントと名付けたくまのぬいぐるみを手で探し始めた。

 

「………仕方ない」

 

百合はそう言いながら、持っていたティッシュを机の上に起き、咲希の後ろに立つと、手を咲希の脇腹に当てた。

 

「さっちー! 起きてー!!」

 

そして、そう言いながら脇腹をくすぐり始めた。

 

「う……!

ふふ…ははは!!

な……はは! 花奈ちゃん…!! 何……!?

……あれ?」

 

くすぐり攻撃を受け、咲希は一瞬にして目を覚まし、後ろを振り向くと、不思議そうに首を傾げた。

 

「百合ちゃん?」

 

「うん。私だよ。不来方百合。」

 

「……あれ?ここ…学校?

あれでもさっき」

 

咲希は状況が飲み込めてないのか、あたりをキョロキョロと見渡している。

 

百合は再び咲希の横に立ち、なだめるように頭を撫でる。

 

「さっち、今日の体育で疲れて寝ちゃったみたい。

すごい寝ぼけてたよ。

目、覚めた?」

 

「うん!

もうばっちり!!」

 

百合が訊くと咲希は、両手でガッツポーズするようにして元気に答えた。

 

「そっか! 良かった!

あ、さっち動かないで、口の周りにご飯粒ついてるよ」

 

百合はそう言いながら、さっきのティッシュでご飯粒をとってあげた。

 

「はい、もういいよ」

 

「ありがとう! 百合ちゃん!!」

 

「うん。」

 

「あれ?でもわたし、給食食べたっけ?

百合ちゃん、今日給食あった?」

 

「あったよ。

でも、さっちすごく眠そうだったから覚えてないんじゃない?」

 

「そうなのかなー?

あ! でも確かに、一回スープ落とし掛けたかも!」

 

「うん。

危なかったよ、あれは。

あそこで寝てたら大惨事だったからね」

 

「うん! 気を付ける!!」

 

「うん。

それじゃ、私席戻るね」

 

「わかった! ありがとう百合ちゃん!」

 

「うん!」

 

咲希のとびきりの笑顔でのお礼を受け、百合は嬉しさを隠しきれず、スキップするように席へ戻って行った。

 

 

 

〜〜〜〜〜

数十分前

 

「手を合わせてください。

いただきます。」

 

『いただきまーす!』

 

日直の掛け声に合わせ、クラスのみんなは声を揃えると、一斉に給食に手を付け始める。

 

今日は同じ係の人で集まって、給食を食べる日。

 

机を合わせ、ここ最近あったことや、好きなアニメや芸能人の話をする。

 

生き物係の咲希と百合はそれぞれ向かい合って食べ始める。

 

本来なら、もう一人いるのだが、とある事情で別のところで食べていた。

 

「そうださっち。

見て、昨日パンジー咲いたんだよ」

 

百合はそう言うと机の中から徐ろに写真ケースを取り出し、咲希に広げて見せた。

 

「……うん。

かわいい…!」

 

咲希は目だけを写真に向けると、ふわふわした口調で言う。

 

「……?さっち?

眠いの?」

 

「パンジー……

今日の給食……パン………」

 

百合が優しく訊くが、咲希は白米を箸でつまみながら、寝惚けて譫言をあげる。

 

「さっち。今日、ごはんだよ」

 

「ごはん…。

ごはん……いただきます……」

 

半分寝ている咲希は、そう言いながら箸をほっぺたに付けると、そのまま前に倒れそうになる。

 

「うわっ! さっち!

起きて起きて!!」

 

百合は慌てて手を出し、咲希が給食に顔を突っ込むのを阻止しようとした。

 

「……ん?

百合ちゃん…?どしたの?」

 

その前に、百合の声で起き、咲希はまだふわふわしてる口調で百合に訊く。

 

「危なかった…。

さっち、眠い?先生に言って取っといてあげるから少し寝たら?」

 

「ううん。大丈夫…。

平気だよぉ。」

 

咲希はそう言いながら、スープの器を両手で持つ。

 

今度はちゃんと口に運ばれ、こぼすことなく飲む

 

「本当に?大丈夫?

今日、さっち体育で結構動いてたでしょ。

だから、疲れちゃったんじゃない?」

 

「……うん…」

 

心配する百合をよそに、咲希は寝惚けて、上の空で返す。

 

その瞬間

 

「あ! さっち危ない!!」

 

スープを持つ手が緩み、落としそうになった。

 

咲希はまた百合の声で起きたのか、スープをぶちまかずに済んだ。

 

「……?どうしたの?

百合ちゃん?」

 

「……さっち、ちょっとだけ寝よ。

危ないよ。あと、ほっぺ、ご飯粒ついてるよ」

 

「…え?ちょうちょのねっこのあぶがホウセンカ?」

 

「違う違う…! どうやったらそう…あ! 危ない!!」

 

寝惚けて聞き間違う咲希の言葉を、百合が訂正しようとした瞬間、肉じゃがを食べようと腕を伸ばした咲希の手が、スープの器にあたって倒れそうになった。

 

「さっち〜。危ないよー」

 

なんとか百合が支えて、事なきを得た。

 

百合は流石に注意しようと、咲希の顔を見ると、また咲希はご飯粒を新しく頬に付けていた。

 

(……先生に言いたいけど、目を離すとどんなことするか分からないからな……

………よし。)

 

百合は決意めいた顔をし、立ち上がると、咲希の横に立った。

 

「さっち」

 

「……なに?」

 

「箸、貸して」

 

「……?いいよ…」

 

百合は寝ぼけ眼の咲希から箸を受け取ると、咲希の肉じゃがの器を手に取り、箸でつまんだ。

 

ふーふーして冷ますと、咲希の口元に運ぶ

 

「さっち。はい、あーん」

 

「……あー」

 

咲希は躊躇いなく、素直に口を開け、その間に百合は肉じゃがを口に運んだ。

 

「もぐもぐして」

 

「…ん」

 

「はい、ごっくん」

 

「…うん」

 

「よし。はい、あーん」

 

「あー」

 

口へさえ運べば、後はむせることも吐き出すこともなく食べてくれるので、百合は今日の給食はこのままこう食べさせることにした。

 

 

「はいさっち、スープだから気を付けて」

 

「…うん」

 

何度か口の周りに外しながらも、肉じゃがと白米を食べさせると、今度はスープを飲ますことにした。

 

「さっち、しっかり持てる?」

 

「……うん」

 

「じゃあはい。しっかり持って」

 

そう言いながら、百合は咲希の左手をそえさせると、恐る恐る口へ運んだ。

 

「………飲めてる?熱くない?」

 

百合は不安そうに訊くと、咲希は少しだけ頷いた。

 

 

 

そんなこんなで、ようやく咲希の給食を完食させると、昼休みになっていた。

 

百合は咲希のトレーを取り除くと、ゆっくり机へと伏せて寝かした。

 

(ふう……これでさっちがぐっすり眠れる。)

 

百合はひと仕事を終え、椅子に座り安堵するが

 

(……うわっ! しまった!

私、全然食べてない!!

あ、さっちの周りのご飯粒取るの忘れてた…!)

 

目の前のほとんど手の付けられていない給食を見て、自分自身が全く食べていないことや、咲希の口周りが汚れていることを思い出した。

 

(えっと…えっ……と。

起こすのもあれだから…食べちゃおうか…)

 

百合は少しあたふたしたが、まずは目の前の給食を食べ終え、その後に咲希のお世話をすることに決めた。

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