ハートジャスティス 番外編集   作:ココリンク

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魔法

とある日の休日。

 

乃々実は買い物をしにスーパーまで出掛けていた。

 

その道中、人通りのない住宅地の電信柱の隅で蹲り泣いている小さな男の子がいた。

 

「どうしたの?だいじょ〜ぶ?」

 

乃々実は迷いなく男の子の元に歩み寄り、目線にしゃがんで声を掛ける。

 

男の子は乃々実に気付いたが、泣いたままうんともすんとも答えようとしない。

 

「うーーん……あ、そうだ!」

 

乃々実は少し考えた後、なにか閃くとポケットからハートクリスタルを取り出し、ネックレスにつけ、少しだけ回した。

 

『ちょっと乃々実、なにやってんの…!』

 

フォレストセイバーが出てもいないのに、力を使おうとする乃々実を咎めようと、ワンピはテレパシーで声を掛けた。

 

「なにって、人だすけだよ?」

 

『そうじゃなくて…!!』

 

乃々実はまるで気にせず男の子の目の前に手を差し出す。

 

「キミ。 (サンダーハンド)」

 

乃々実はそういうと手から小さな光を出した。

 

それを見た男の子はあまりの神秘さに泣き止み、見惚れる。

 

「すごい………おねえちゃん!

まほうつかいみたい!どうやったの!?」

 

「ふっふ〜ん。

まほうつかいなんだよ〜!おどろいた!?」

 

「え〜!?

すごーーい!!」

 

男の子は驚きと感動で、もう涙の一つもなく笑顔になっていた。

 

乃々実も満更でもないようすで、いたずらに笑う。

 

『なにが“まほうつかいなんだよ〜”よ!』

 

そこに、不機嫌なワンピが横槍を入れた。

 

『力を人前で使うなって言ってるでしょ!

ったく、大事になったらどうするのよ!』

 

「だいじょ〜ぶだって。

あみから目立つことしないで、って言われてるだけだから。

ねえ、キミ、どうしたの?

ママやパパはいっしょじゃないの?」

 

乃々実はワンピの忠告をまるで気にすることなく話を進めた。

 

男の子はママとパパという言葉を聞いた瞬間に、笑顔が崩れうつむいてしまう。

 

それでも、男の子は口をまごつかせながら一生懸命話しだした。

 

「ボク、ママといっしょにいたの。

だけどママ、しらないおばちゃんとおはなししてて。

ボク、ひとりになっちゃったからネコさんおいかけてあそんでたの。

そしたらネコさんにげちゃって、ママもいなくなっちゃって………。」

 

「そうなんだ。」

 

乃々実は男の子の目を見て、真剣に聞いて上げた。

 

そして、状況をなんとなく掴むと男の子の頭を撫で、笑顔で声をかけた。

 

「わかった!

だいじょうぶ!ママはゼッタイ見つかるよ!

それまでおねえちゃんといっしょにいよ!」

 

乃々実の自信満々な声と笑顔に、男の子も笑顔になった。

 

「わたしは“ののみ”。キミは?」

 

「ぼくは“たいら”。うらかわたいら。」

 

「“たいら”か〜。いい名まえだね。カッコいい〜!」

 

「あ、ありがとう…!」

 

大頼(たいら)は乃々実の素直な言葉と笑顔に、また一つ笑顔になった。

 

そこへまたワンピが水を差す。

 

『ちょっと乃々実!

なに無責任なこと引き受けてるのよ!

いったいどうあのチビ助の母親を見付けるというのよ!?』

 

「うーーん。あ、そうだ!

ごめんね、たいら、ちょっとまってて!

ワンピ!!」

 

乃々実は大頼に背を向けると、ハートクリスタルを外し、ワンピをフェアリーフォームの形にした。

 

『乃々実…!いったい何を!?』

 

「いいから、ちょ〜っとたいらのあいてしててよ!」

 

『相手って………乃々実、アンタまさか…!』

 

ワンピは乃々実が取ろうとしている行動に青ざめるが、乃々実はてんで気にせず、ワンピの小さな両腕を人形のようき持ち上げ、たいらの前へ見せた。

 

「たいら!みてみて!!これ、スゴイんだよ!」

 

「なに?ただのにんぎょうさんじゃないの?」

 

「ふっふ〜、わたしは“まほうつかい”だよ〜!

ちちんぷぷいぷい!さあ、ワンピ!たいらのところへ〜とべぇ〜!!」

 

乃々実は腕を掴む力を弱め、ワンピを浮かんでいけるようにしたが、ワンピはピクリとも動かない。

 

「……………………アレ?」

 

「おねえちゃん、ちちん“ぷ”ぷいぷいじゃなくて、ちちんぷいぷいじゃないの?」

 

「あっれ〜、そうだっけ?」

 

乃々実は大頼の指摘をはぐらかしながら、テレパシーでワンピに訴えかける。

 

(ワンピ〜!なんでとんでくれないの…!)

 

『飛ぶわけないじゃない!!

ハートフェアリーの掟!!我々ハートフェアリーは主の元を一時も離れてはならない!!

そう決められているのよ!!』

 

(ムズかしいコトバつかわれてもわかんないよ!)

 

『はぁ!?難しい言葉なんて使ってませんー!!

まったくアンタは、いつも思うけどべんきょーが足りてないのよ!べんきょーが!!』

 

(いまはカンケーないでしょ!)

 

「おねえちゃん、なにひとりでおこってんの?」

 

表情に出やすい乃々実は、ワンピとの喧嘩でどんどんしかめっ面になっていた。

 

「え、あ!ゴメンゴメン!!おこってはないよ!!へへへ………」

 

大頼の指摘で気付いた乃々実はすぐに笑顔に戻り、再び飛ばせようとワンピを前に翳した。

 

そのときだ。

 

『ののみさん?何してるのですか?』

 

通信機から亜美の声が聞こえてきた。

 

「あみ!えっとごめん、ちょっとまって!

たいら〜、きょう、ニンギョウさんのちょ〜しわるいみたいなんだ。

それでね、わたし、え〜とお空のカミサマとおはなししなくちゃいけないんだ。

だから、ニンギョウさんがおこられないように、まもっててくれない?」

 

そういうと乃々実は至って真剣な顔で、大頼の前にワンピを差し出した。

 

「わかった!ぼく、まもる!」

 

大頼も同じように真剣な顔でワンピを受け取り、守るように胸にギューッと抱えた。

 

「おねがいね!」

 

乃々実は信頼の籠った目で大頼を見ながら言い、大頼もヒーローになったかのような気分で自信満々に頷いた。

 

「それであみ。なに?」

 

『…………。

本当に何やってるのですか。

お買い物行ったと思ったら、ヒーローごっこですか?』

 

音声が聞こえていた亜美は呆れた声でいう。

 

「ちがうよ、まいごなの。

ないてたからチカラつかったら、まほうつかいっていわれちゃって〜……へへ。」

 

『へへ………じゃないですよ…。

また使っちゃったんですね……。

人助けは良い事ですけど…………いえ、この話は家でゆっくりと話しましょう。』

 

「いまのダジャレ?

いえと家って?」

 

『………違います…!

それよりです。その迷子の方。

たしか、たいらさんって言いましたよね?

その方大丈夫なんですか?

御両親や家の場所だとか話せそうですか?』

 

「あー、おやのことはきいたよ。

ママとおかいもの行ってるとき、ネコさんおいかけてたらまよっちゃっんだって。」

 

『そうですか。

分かりました。お兄さんに迷子の知らせが無いか聞いてみますね。』

 

「うん!ありがとう!!

あれ、そういえばなんででんわしてきたの?

キカイの音きこえないから、いまおにいちゃんのへやじゃないよね?」

 

『リバからですよ。

子供と話しているのを見たって聞いたので、また道草食ってるのかと………

ん?そういえば乃々実さん。たいらさんはネコさん追いかけたと言ってましたよね?』

 

「うん、そうだよ。」

 

『ネコさん……………乃々実さん、ちょっと待っててください。』

 

亜美は何か思い出したかのようにそう言い捨てると、急に通信を切ってしまった。

 

「えっ!?ちょっと、あみ!あみ〜ぃ!

………………

きられちゃった…。」

 

乃々実は肩を落とし、口を尖らせちょっと不機嫌気味に大頼の方に目をやった。

 

「あ、おねえちゃん、カミサマとおはなしおわった?」

 

大頼は勇ましい表情で、乃々実を見つめながら聞く。

 

それを見て乃々実は笑顔になり、大頼の目線にしゃがんだ。

 

「うん!おわったよ!

あ〜でも、まだ言いたいことあるって言ってたからな〜、またおはなししなくちゃいけないかもしれないから、そのときはまたヨロシクね!!」

 

「うん!」

 

大頼は元気よく返事をし、ワンピを乃々実に返した。

 

『乃々実……………アンタ………覚悟しときなさいよ………!』

 

ワンピは乃々実の掌でヘトヘトになりながら言った。

 

大頼がホンキで守ろうと胸の前で力強く握りしめたので、締め付けられたようになっていたのだ。

 

「とばないからそ〜なるんだよ。」

 

ワンピは乃々実の小言に文句を言おうとしたが、これ以上喋る元気がなかったのでやめた。

 

『乃々実。今、平気か?』

 

また通信が来た。

 

今度は男の声だった。

 

「あ、おにいちゃん。ちょっとまって。」

 

声の主は兄の直樹だった。

 

「なに?またカミサマ?」

 

大頼は乃々実が耳の通信機に手を当てると、ソワソワしだし、待ってましたといわんばかりに両手を差し出した。

 

「うん!まかせたよ!たいら〜ぁ!!」

 

「らじゃー!」

 

再び二人は真剣な表情で、ワンピの譲渡を済ませた。

 

大頼はまた、胸の前でこれでもかとくらいワンピをギューッと抱き締める。

 

『の………乃々実………!!』

 

それと同時にワンピがテレパシーで乃々実に訴えかけた。

 

恨みというのよりかは助けのこもった声だったため、さすがに乃々実も気の毒になったのか、通信を再開する前に、注意することにした。

 

「たいら。」

 

「なに?おねえちゃん?

もうおわった?」

 

「ううん、そうじゃないよ。

あのね、たいらがいっしょーけんめーまもってくれるのうれしいよ。

でも、こんどのカミサマはやさしいから、そんなにツヨくまもらなくてもへーきだよ。」

 

「そうなの?………じゃあ、ぼくいらない?」

 

「ううん!たいらはぜっったいにいるよ!

じゃあね、こんどはニンギョウさんがヒマにならないように、あそんでてくれる?」

 

「わかった!おっにんぎょさーん!!

あっそびっましょ!!」

 

新たな任務を与えられた大頼はワンピを軽く揺すったり、手足を動かしたりして遊び始めた。

 

そこまで、大きな動きはしさせていなかったようなので、大丈夫だろうと思い、乃々実は耳に指を当て、通信を再開させる。

 

「おまたせー。」

 

『うん。事情は亜美から聴いている。

迷子だってなあ。さっき悪津さんに聞いたが、まだ“たいら”って子の迷子の届けは出てないようだ。』

 

「そっかー。きづいてないのかな?」

 

『恐らくだが、母親も気付いてはいると思う。

急に子供がいなくなったんだ。冷静な判断はできないはず。

今頃、町の中を走り回って探しているだろう。』

 

「うーん。じゃあ、あまりうごかないほうがよさそう?」

 

『そうだな。とりあえず、亜美が何か思い付いたようだから、それまで動かず待っておいた方がいいな。

俺も何か掴んだらまた連絡する。』

 

「わかった。おねがいね。」

 

『ああ。』

 

「たいらー!おわったよー!」

 

通信を終えた乃々実は大頼に声をかける。

 

「あ、おねえちゃん!わかったー!」

 

大頼はとても楽しそうな笑顔で振り向き、手元ではワンピがほっぺたを両手で広げられながら力なく垂れていた。

 

「ありがとう!たいらー!」

 

「どういたしまして!!」

 

大頼はしっかり、ワンピを乃々実に返した。

 

返ってきたワンピはいつもの元気がなく、全身の力が抜けたようになっていた。

 

「ワンピ………だいじょーぶ?」

 

『カワノムコウニ………オジイチャンガ……………』

 

「ワンピ?」

 

乃々実はよくわからないことを口ずさむワンピを心配しつつ、何も応えないのでハートクリスタルの形に戻し、ポケットにしまった。

 

「たいら。これから、わたしのナカマが来るから、それまでまってよっか!」

 

「わかった!じゃあ、おねえちゃん!

またマホウみせて!」

 

「え〜…さっきカミサマにおこられちゃたからな〜……。」

 

「ナイショで、いまはカミサマみてないよ!」

 

「ホント〜?たいらわかるの〜?」

 

「うん、だってニンギョウさんとトモダチになったもん!

ぼくもわかるんだー!!」

 

「わかった、じゃあ一回だけね。」

 

乃々実は大頼の言い分に押し負け、一回限りとポケットからハートクリスタルを取ろうとした。

 

そのとき。

 

(……………ッ!!)

 

どこかから闇のエネルギーを感じた。

 

乃々実はにわかに立ち上がり、ハートクリスタルをネックレスにつけて回すと、大頼をエネルギーを感じた場所から隠すように立った。

 

「どうしたの?おねえちゃん?」

 

突然の事態に大頼は困惑した表情を見せる。

 

「たいら、どこか遠くまで走って。」

 

乃々実は姿見えぬ敵に警戒しつつ、そのままの姿勢で伝える。

 

「え?でも、おねえちゃん、さっきここにいようって………………」

 

「いいから!はやく!!」

 

守りたい気持ちと焦りとで、つい強い口調で言ってしまった。

 

「………………おねえ……ちゃん……?」

 

大頼は急に怒鳴られ、目に涙をためてしまう。

 

それに気付いた乃々実は幼い子を泣かせてしまったことに自責の念を感じ、一瞬警戒を解いてしまった。

 

その瞬間、闇のエネルギーがこちらへ急に近付いて来たのを感じた。

 

「…………!

サンダースロウ!!」

 

乃々実は咄嗟にサンダースロウを繰り出し、牽制する。

 

「ぬっ…!!」

 

敵は咄嗟の攻撃には対処しきれず、電気を帯びる球に直撃し、動きを止め、姿が顕になった。

 

全身ローブに包まれ、怪しい雰囲気を醸し出している。

 

「おねえちゃん……」

 

その不気味な姿に、大頼は体を震わせ乃々実に助けを求めた。

 

乃々実は敵から目を話さず、大頼にこたえる。

 

「たいら。

ここから離れて。ここはわたしがなんとかする。

早く安全な所に!」

 

「う………うん………。」

 

大頼は恐怖に顔を歪めながら、後ろへ振り向きそのまま全速力で走っていった。

 

それを足音で確認した乃々実は右手に雷のエネルギーを溜め、攻撃の準備に入る。

 

『気をつけて、乃々実……。

あいつ、もしかしたらさっきのアンタのパワーを嗅ぎつけて来たのかもしれないわ。

かなり弱めにやったのに、場所を特定した。

多分だけど、ツワモノよ。』

 

「わかってる。」

 

ワンピの忠告に応えると同時に、身を引き締める。

 

しかし、乃々実の体は小刻みに震えていた。

 

最近、明確な弱点がバレてから一人のときに勝てていないからだ。

 

「はーーーふぅーー………」

 

乃々実は自分自身を落ち着かせようと深呼吸する。

 

息を吐ききったと同時に右手に溜めた雷のエネルギーを球体の形にした。

 

「サンダースロウ!!」

 

高速の電気の球を敵に投げる。

 

同時に、地面を踏み込んで走り出し、追撃の準備にかかる。

 

対し、敵は自身の顔の前に手を翳す。

 

すると突然、敵のカラダの前に白い魔法陣が現れた。

 

「なっ………!?」

 

乃々実は突然現れた魔法陣に驚き、スピードを緩め、なにが来てもいいよう、足にエネルギーを溜める。

 

先程放った雷の球は魔法陣に防がれ吸収される。

 

魔法陣は黄色く染まり、電気を帯びる。

 

感づいた乃々実はすでに溜めていたエネルギーを使い躱そうとする。

 

「サンダー………………なっ…」

 

しかし、それよりも早く魔法陣から電気帯びた高速極太ビームが放たれ、モロにくらってしまう。

 

乃々実は全身が痺れたまま力なく倒れる。

 

それでも警戒は解かず、一生懸命首を上げ、敵の姿を確認する。

 

「いつもなら………あのくらい……………。」

 

乃々実は敵を見続けながら、いつもならできていた筈の、視認してから躱すことができなかったのが疑問に思っていた。

 

それにワンピが応える。

 

『ゴメン……乃々実………。

アタシ…さっきのでヘトヘトで……力が………。』

 

「そう………でも、このくらいなら平気。

わたしなら絶対に勝てる。」

 

乃々実は戦いに関しての小さな自尊心で、虚勢を張り、自らを鼓舞する。

 

腕で痺れた体を持ち上げ、なんとか立ち上がれた。

 

と思ったそのときだった。

 

急に雷が乃々実に降ってきたのだった。

 

上空には、巨大な黄色な魔法陣が見えた。

 

「いやああああああああああッ!!!」

 

痛みと痺れに思わず叫び声を上げる。

 

電撃と共に、闇のエネルギーが体に侵食されているような気がした。

 

乃々実は反撃しようと敵に手を伸ばすが筋肉が麻痺し、技名を叫べないためなにもすることができなかった。

 

敵の攻撃が終わると、乃々実は体から湯気を出しながらまた地面へ倒れた。

 

全身に力が入らず、意識も朦朧として動くことができない。

 

敵は首を傾げるような動作をしたと思えば、ゆっくりと乃々実に向かって歩いていく。

 

このまま連れ去り、実験体とするつもりなのだ。

 

ワンピは殆ど力を使い切っており、ハートクリスタルになることができない。

 

絶体絶命のピンチに陥ってしまった。

 

敵が乃々実に手をかけようとしたそのとき。

 

「スピアマシンガンです!!」

 

敵の後方から声が聞こえたと思ったら、槍を持ったハチの大群が敵に向かって襲いかかり来た。

 

敵は魔法陣を出現させその中に入り、少し離れた場所にワープして避けた。

 

「乃々実さーーん!!」

 

敵がハチが来た方を振り向くと、そこにはハチの大群を引き攣れた亜美が小走りで向かって来ていた。

 

「何者かは分かりませんが……乃々実を傷付けるのは許せません!

ハチさん達、ディスターブエントリーです!」

 

『承知!』

 

亜美の掛け声と共に、ハチ達は敵を包囲しながら旋回し、個別のタイミングで襲いかかる。

 

しかし、敵は細かな羽音で襲撃のタイミングを把握し、銀色の魔法陣を出現させて技を防いでしまう。

 

「くっ………でしたら……

ハニートラップです!」

 

『承知!』

 

ハチ達は旋回をやめ、一斉に上空へと飛び、ネバネバな蜜を敵に発射した。

 

敵は再び銀色の魔法陣を出現させ、防ごうとしたが、蜜は魔法陣に張り付き一部視界を奪ってしまう。

 

「…………!」

 

敵は一瞬狼狽したような仕草を見せる。

 

その隙に、亜美のとこに残っていたハチの一部が敵の足元まで飛行し、ネバネバな蜜で動きを止めた。

 

「……………!」

 

敵は更に狼狽え気を緩めている。

 

「(今がチャンスです………)

みなさん!パウダーエクスプロージョン!!」

 

『はっ!!』

 

ハチ達は花粉を凝集した球を作り、敵に向かって投げる。

 

すると、球は敵の前で爆発し、杉の木を揺らしたかのように空気中に黄色い花粉が大量に舞った。

 

花粉は煙幕のように敵の視界を奪った。

 

「ハーフ、乃々実さんをお願いします!

ここから近いのは……交番です!」

 

『承知!』

 

ハチの半分は倒れた乃々実を協力して引っ張り上げ、残りの半分は亜美の周りを旋回し、敵の攻撃に備える。

 

乃々実が十分な高さまで上がったことを確認すると、亜美は小さく頷き乃々実を託す。

 

そして、敵のいる方を向きながら3歩後ずさりし、振り返って走ってその場を去った。

 

花粉の煙幕が晴れた後、そこに人の影はなかった。

 

 

-交番-

「………う…うーーん……。

はっ!!」

 

入り口のソファで乃々実は目を覚ました。

 

「あ、起きましたか。

良かったです。」

 

気付いた亜美が声を掛けた。

 

乃々実は何が起きてたのか分からず、あたりを見回した。

 

「交番ですよ。

花畑には距離あったので、お巡りさんがいるここまで運んだのですよ。」

 

「……………そう……。」

 

乃々実は暗い顔をして俯いてしまう。

 

亜美はいつもと違う乃々実を心配したが、掘り下げることはしなかった。

 

乃々実がここまで落ち込んでいるのは凪咲の事件以来で、亜美にはどうにかできる自信がなかったからだ。

 

なので、思い切って話を変えることにした。

 

「たいらさん。お母さん見付かったみたいですよ。」

 

「ホント!よかったー!」

 

乃々実の表情が少し明るくなった。

 

「やはり、たいらさんが追い掛けていたネコはリバだったようで、野々さんと偵察隊のハチさんにも協力してもらい無事会えたようです。」

 

「そっかー!

……………あー……でも、わたし、たいらにあやまらないとなー。」

 

「………?

どうしてですか?」

 

「わたし、たいらにキツく言っちゃった……。

てきがきたから、にげてって………。」

 

「うーーん。

それなら、大丈夫ですよ。

たいらさん、乃々実さんにありがとうって言ってとおっしゃってたらしいので。

それに、明日お礼をしたいと訪ねてくるらしいですよ。」

 

「そう?

じゃあ、そのときにあやまれるね。」

 

「ええ。そうですね。」

 

「………あーー!そうだ、おかいもの!!」

 

乃々実は買い物の途中なのを思い出し、ソファから立とうとした。

 

「ダメですよ。乃々実さん。」

 

それを押さえつけるような仕草をして、亜美が止める。

 

「お買い物は、野々さんが変わりに済ませてくれました。

それに、今回の敵。

かなり強かったので、ハニーシャワーでも回復しきれないところがあったんですよ。

もう少しここで安静にしていてください。」

 

「わかったよー。」

 

乃々実はふてぶてしい態度を取りながら、ソファに横になった。

 

(あれ?意外と素直ですね。)

 

常に元気溌剌な乃々実が素直に休むことに応じたのに、亜美は驚いた。

 

それと同時に、思い当たる節があるのかと思ったが、聞く前に乃々実はまた眠ってしまっていた。

 

(よほど大きなダメージだったんですね……。

にしてもあの魔法陣……。

魔法使いか何かでしょうか………。

いずれにせよ、敵の戦力は底無しでしょうね……………。

私も……もっと強くならなければ……。)

 

亜美は更に激しくなるであらう戦いのため気持ちを高めた。

 

 

このとき、誰も気づいていなかった。

 

ソファの乃々実の肘あたりから、黒い粒子が漏れ出したことを。

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