2月14日の午前2時。学園都市第六学区にある『端広高校』の職員室で高安直木は仕事に没頭していた。ひたすらノートパソコンに向き合うその姿は、決してかっこいい真面目な先生という感じはしない。むしろrpgでお墓か何かに出てくるゾンビ系モンスターみたいな感じだった。
そもそも本当なら彼は今頃家に帰って、一人ぬくぬくとすごすはずだったのだ。その彼が、どうしてこんな時間まで仕事をしているのか。その答えはたった一つ。
「なーにが彼氏とすごすんで後の残業頼みますだよ!非リア舐めてんじゃねぇぞクソが!!」
そう、彼は浮かれているリア充の同僚から残業を託されてしまったのだった。ここで『断ればいいじゃん』なんて言う人もいるだろうが、彼の名誉を守るためにも少し説明を加えさせて欲しい。普通、陰キャがイケイケな女の子からの頼みなんて断れるか?断じて無理である。
その上『いっつも頼りにしてるんですよ~☆』なんて言われたらクソザコなめくじの彼に断ることができないのは小学生でもわかることだ。ここで断れるやつは陰キャを自称するクソ野郎だ。異論は取り扱わない。
と、まあそんな訳でバレンタインデーに仕事漬けだった彼だが、仕事が一段落したところで一端休憩を入れることにした。高安はポケットからスマートフォンを取り出すと電源をつける。
2月14日に暇潰しで呟きなどを投稿するアプリを選ぶのは二流だ。理由は簡単。リア充の投稿しかないからだよ!
その事を熟知している彼は二次元の萌えキャラが映された画面をスライドするとインターネットのアプリを開き、速攻でネットの掲示板に接続する。予想通り、中では同士<バレンタインデーにチョコ0個>達が盛んに話し合っていた。
『[悲報]ワイ、今年もバレンタイン0個確定の模様wwwwww』
『お前ら今年はチョコ何個もらえそう?童貞は風呂の温度でもかいとけwwwww』
『辛いときだからこそラーメンについて語り合うスレ』
高安は、この空間が好きだ。
非リアでも、どうどうと生きることができる。あまつさえ、同じ境遇で励まし合うことのできる仲間がいる。だからこそ、高安はネット掲示板を止められないのだ。
「ん?なんだこのスレ?」
ふと、高安の指が止まった。
画面に表示されているのは『リア充たちに鉄槌を下す』という至極簡素なものだった。こんなスレッドは掲示板ではありふれたタイトルの物だ。なのに、何故だか分からないが目に留まったのだ。不思議に思いながらもスレッドを開く。
中では予想通り物騒なことが書かれていた。高安は呆れながらも画面をスライドしていきーーーー1つのレスの前に指を止めた。
『リア充たちを呪い○す
https://majutu-bank.com.』
最初高安は何を馬鹿な、と思った。元々科学信仰の気のある学園都市ではこういったオカルトの類いは全くもって相手されない。いいや、正確には相手されなかった。というのも最近になって星座占いなどが流行りだしたのだ。まあ、高安にとっては信ずるに値しないものだったが。
下にスライドしてみても誰もそのリンクを踏んだ様子がない。それどころかウイスルさいとだの何だのとまるで相手にされてない。間もなく新たなスレッドの海に呑まれそのリンクは下へと消えていった。
(昔はああいうのに進んで向かっていく猛者もいたのにな…ネットもオワコンだな)
スレッドを繰ろうとしたその瞬間、高安の脳に稲妻が走った。
「待てよ、だったら俺が行けば良いんじゃねぇか!?」
彼は先程のスレッドまで戻ると怪しげなリンクを凝視する。
(まあ、どうせ嘘サイトだろ)
きっと周りの奴等にできないことをしたいとでも思ったのだろう。特に何の問題もないただのバカ話で終わる、はずだった。
何も知らずに高安はリンクを踏んだ。後になって、それが大きな後悔に繋がるとも知らずに。
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