『架空の財閥を歴史に落とし込んでみる』外伝:あるコミューター航空会社   作:あさかぜ

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2話:東西2か所体制

 朝日航空(AAL)成立後、西武は路線の整備を進めた。最も収益が望める東京大阪便に加え、地方都市への路線を就航させた。仙台や新潟、富山など、地方の中核都市への路線を就航させたかったが、他社との調整から中々増便されなかった。

 それでも、収益性が高い東京大阪便を設定出来た上、4往復も運行出来ただけでも良しとした。他の航空会社は本数こそあったものの地方都市への路線であり、収益性の面ではAALの方が勝っていた。

 

 その後、1969年に羽田発着の小型機が調布に移転した事でAALの便数が1往復減らされ、1971年に東亜国内航空(TDA)と日邦東西航空(NTA)の成立による路線の整理によって発着枠に余裕が生じた事で4往復に戻されるなどの変化があった程度だった。調布の廃港の考えが残っていた時期の為、発着枠の増加は議論されなかった。

 変化が起きたのは1978年3月の成田空港開港だった。これに伴い、国際線の殆どが成田に移転し、その空いた発着枠に国内線が入った。これにより、調布発着便のTDA及びNTAが羽田に移転し、調布の発着枠に余裕が生じた。

 AALとしてはこれを機に増便を図りたかったが、当時は調布廃港の意見も強く、増便は存続を認める事となる為、住民としては反対だった。

 だが、AALは運輸省との取り決めで羽田就航は不可能だった。たとえ羽田就航が認められたとしても、先のTDA及びNTAの羽田移転で再び枠が限界に近付いた事で、既存航空会社からの反発も予想された。

 両者の意見の対立によって、2年程はTDA及びNTAの羽田への完全移転は行えなかった。1980年に漸く両者の妥協が成立し、調布の一時的な存続と現在TDA及びNTAが運行している調布離発着便の羽田移転又はAALへの移管が認められた。

 

 これ以降、AALは路線を増やしていく事となるが、拠点が調布である事がネックとなり、ジェット機の導入が不可能な事、近距離便以外では時間的に不利な事から、以降はリージョナル航空会社として活動を行う事を余儀無くされた。

 

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 1963年、AALは調布と八尾の便を就航した。これにより、東京と大阪を結ぶ便を設定する事となり、1965年から4往復中3往復を八尾から先への航路を設定した。延伸先は高松経由松山・広島経由福岡・岡山経由出雲として、地方の中核都市へのアクセス及び西日本での影響力獲得を狙った。

 就航したものの、運賃が高額な事、1日1往復である事、時間が中途半端な事(東京大阪を丁度良い時間にした為、地方の離発着時間が早朝や深夜となった)、直行便で無い事から、利用者が定着しなかった。また、JALやANAなど競合他社の便も就航していた為、苦戦は免れなかった。

 それでも、地方都市に就航した事実は大きく、調布で本数を増やせない以上、八尾からの路線を重視する様になる。

 

 1968年から、AALは八尾を第二の拠点とするべく交渉を始めた。八尾も調布と同様、周辺住民からの反対と伊丹の代替という立ち位置から、増便は難しかった。

 幸いにして、1969年に2往復分の増便が認められた為、その分をAALに与える事が認められた。1970年に正式にAALに4回分の発着枠が付与され、八尾を第二の拠点とするべくターミナルに進出した。

 この翌年、TDAとNTAの成立によって、重複している便の整理と一部枠のAALへの譲渡が行われた。これにより更に2往復分の増便が可能となり、調布便を除くと4往復分を新設出来た。その枠を活かして今までの直通便を八尾で分割しただけでなく、一部の便を延伸させた。広島経由福岡便を2往復に増便させ、それぞれ長崎と熊本に延伸、高松経由松山便を大分に延伸させた。これにより、九州を中心に勢力を広げた。

 

 以前よりも時間的に乗りやすい事から多少収益性は向上したが、地方に都合の良い出発・到着時間にした事で却って乗り継ぎによる東京への移動が不便になった。また、依然として1日1往復な事、直行便で無い事から、大手との競争には劣勢だった。

 また、1960年代から70年代に掛けて、航空機の技術革新による大型化・ジェット化が進み、それに合わせて地方空港の拡大も進められた。その為、地方路線であってもジェット機が導入された事で、乗客数や時間の面で叶わなくなった。

 この為、AALはコミューター航空会社以外の存続の道が無くなった。西武グループの意図は何処にあるかは分からなかったが、これ以降のAALは調布と八尾を中心にコミューター路線の拡張を行う事となる。


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