『架空の財閥を歴史に落とし込んでみる』外伝:あるコミューター航空会社   作:あさかぜ

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5話 朝日航空縮小

 バブル景気の終息後、日本の航空需要は不安定だった。バブル景気の終息によってスキーやレジャーなどの需要が減少した事で、地方航空路線の需要は落ち着きを見せた。

 一方で、阪神・淡路大震災によって新幹線に押され気味だった東京大阪便は回復傾向にあった。また、新興航空会社の設立で東京札幌便、東京福岡便は事実上の増便になり、価格の下落が見られた事で利用者の増加が見られた。

 国際線も、バブル景気中の湾岸戦争で一時は大幅に減少したものの、円高と日系航空会社の国際線の増便によって海外旅行者は増加した。1990年代中頃までは海外旅行者が増加傾向にあった。

 

 しかし、1997年のアジア通貨危機とそれを発端とした極東危機によって、国際線は大幅な利用者減となった。極東危機の影響は2000年まで続き、この頃の国内大手の経営は非常に苦しかった。バブル不況に伴う消費の冷え込みが続いており、金融不安も囁かれた状況であった為、大手4社全てが経営破綻するのではとすら予測された。

 幸い、各社は破綻する事は無く存続したものの、JASは東急グループ再編の一環でグループから離れた事で経営不安が再燃した。その中で、国内線を充実させたいJALと上位2社に規模で追い付きたいJIAとで綱引きが行われ、最終的にJASはJIAと経営統合する事となり、一部地方路線はJALに移管された。

 

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 西武グループのAALもこの影響を受けた。西武・セゾン両グループはバブル期に急速に拡大したが、バブル終息後は今までの拡大戦略が裏目となった。セゾングループは中核企業である西武百貨店や西洋環境開発などの負債が増大し、現状では存続が不可能な程なまでに悪化した。実際、バブル終息後から子会社の売却や整理などが行われ、後に中核企業の清算や同業他社との経営統合も行われ、2001年にグループは解体となった。

 セゾングループは、1995年にはAALから身を引いた。セゾンが保有していた株式は、西武グループとJALで分割された。当初は全て西武グループで引き受けたかったのだが、西武グループも余裕が無かった為、大手で比較的余裕のあったJALに引き取ってもらった。JALとしても、国内線の地盤を少しでも固めたいと考えており、AALとそのグループが持つ路線網は決して悪くないと考えていた。

 他の3者にも声を掛けたが、ANAとJASは国際線の負担が大きい事から、JIAは国内ローカル線を多数抱える事が負担になって来た事から、それぞれ辞退した。

 

 AALの株主構成は変わったが、経営体制に大きな変化は無かった。だが、JALとの関係が強くなった事で運航面での変化が生じた。JALの関連会社となったが子会社では無い為、JAL系のコミューター航空会社であるジェイエアとの経営統合は行われなかったものの、一部の便の移管とほぼ全ての便でジェイエアとのコードシェアが行われた。当時、ジェイエアは羽田に就航しておらず、羽田のJALの発着枠を潰す事無く東京・大阪便の増便が行えるとして重宝された。

 また、これを機に調布と八尾にジェイエアの事務所が置かれた。JALグループとしては両空港に拠点を置くのは初めてだった。

 JALグループに事実上組み込まれた事で、路線網の広がりは大きくなった。そして、増便のネックだった羽田・伊丹の発着枠を気にする必要が無くなった。

 一方、ジェイエア側から見れば、調布・八尾便は乗り継ぎが難しくなった。東京又は大阪への直行便が無い空港の便を優先する様に再編しているが、それでも羽田・伊丹便と比較すると搭乗率はやや落ちる事となった。

 

 AALはJALとの関係を強めた一方、伊豆諸島便を有する新中央航空(CUK)はANAとの連携を強化した。大島と八丈島、三宅島はANA系のエアーニッポン(ANK:伊豆諸島便は後に子会社のエアーニッポンネットワーク(AKX)が引き継ぐ)が就航しており、競合となる事を防ぐ事と、伊豆諸島便で使用している羽田の発着枠を他に回したい事から、ANAが全株式を買収して子会社化した(形式上はANKの完全子会社)。

 これにより、調布にはANKの事務所が設置され、後に伊豆諸島便に限り全て調布に移転となった。伊豆諸島便はANAにとって旨味が無い路線であり、いずれは手放したいと考えていた。それが実現出来たので言う事は無かった。


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