善逸の母親を名乗る少女を屋敷に上げて、居間でお茶を渡す。
少女は少しお茶を飲んで一息入れた。
「ふぅ…」
「それで、改めて聞くけどあんたは善逸の育ての親なのか?」
「…それにつきまして、改めて自己紹介するでち」
そう言うと少女は丁寧に頭を下げる。
「うちの不肖の弟子にして愚息の善逸がお世話になってるでち、勇者様。
あちきの名は葛城紅音、生前は食堂の女将にして、善逸の居合の師範を勤めさせてもらいまちた。
現在は転生者で、特典はfateの紅閻魔のお力を使わせて戴いてるでち」
「弟子って、善逸はこの子の弟子だったデスか?」
「うん、弟子というか、まぁ体を鍛えるための習い事でさせられてたというか…」
「むぅ、その『させられてた』という言い方が鼻に着くでちが、まぁ居合を習わせてたのは事実でち」
「あと皆、母ちゃん確かに見た目幼いけど、これでもとっくに成人してるんだ。
生前からずっとこの見た目なんだよ」
『えぇっ!?』
「ちゅちゅん♪」
その事実に士郎たちは驚きを隠せないでいた。
「し、信じられないデス!
明らかにイリヤよりも年下に見えるのに、大人デスか!?」
「すげぇ!
まるでとあるの小萌先生みたいじゃねぇか!」
「…その小萌先生とやらのことは存じないでちが、あちきはこれでも大人でち」
「けど、あんたが善逸の母親なのはわかったが、何であの時助けてくれたんだ?」
「自分の子供が殺されそうになってるのに、それを見過ごす親はどこにいるでちか?
まぁ、さっきの様子で善逸がまだ自分に自信を持ててないのがわかって呆れてはいるでちが」
「え?」
紅音の言葉に、善逸は固まってしまう。
「あちきは生前善逸に居合のいろはを教え、技を教えたでち。
まぁ、覚えれた技は一つだけでちたが。
それでも、善逸には才能があると見込んではいたでち。
それ故居合を叩き込んだでちが、先ほどのあれでは、まだまだでちね。
他の皆ちゃま方が戦ってるというのに」
「うぅ…」
説教にも思える紅音の言葉に善逸は頭が上がらない。
「あ、あの、もうそのくらいで良いんじゃないですか?」
「むっ、これは失礼しまちた。
今日何分弟子の調子を雀の姿で遠くから見ていたので、つい」
「けど確かに善逸は怖がりだけど、こいつはやる時はやるやつなんだ。
善逸の師匠だったんならそれくらいわかるだろ?」
「…もしかして、善逸のあれを知ってるでちか?」
「えっ、あぁそうだが?」
「そう、でちか…」
そう言うと、紅音は善逸に近付き言った。
「善逸、色々と話はあるでちが、少しこの方たちとお話をしても良いでちか?」
「え、うん…。
けど、あまり変なこと言わないでくれよ?」
そう言って善逸は部屋から出ていった。
「おいおい良いのか?
善逸だけ外すなんて」
「構いまちぇん。
このことはあの子に言っても信じられないでちから。
…それでは、皆ちゃまから善逸について、聞いても良いでちか?」
紅音は士郎たちに聞いた。
特典のことはもちろんのことだが、何より善逸が戦う時どんな風になるのかということだった。
「そうでちか、善逸は気を失ってから戦うんでちね」
「あぁ、その時の善逸は別人と思うくらいの動きで戦うんだ。
だけど、本人は覚えてなくて…」
「あー、そういうことでちたか…」
紅音はどこか心当たりがあるのか、少し頭を押さえた。
「あの、ひょっとして善逸くんって生前も気絶してから実力発揮してたんですか?」
「…あちきが覚えてる限りでは一度だけでちが」
紅音は生前のことを話した。
善逸を引き取ってから、勉強を教える傍ら体と心を鍛える目的で居合の修行をさせていた。
毎日毎日、善逸を思って厳しく修行させていた。
その度に泣いて逃げ出しては木に登ったりしていたが。
それでも何だかんだ言いながらも、善逸を鍛えた。
教えた居合の技には色々とあったが、善逸が覚えれたのは、素早い踏み込みによるすれ違いざまの抜刀の技だけであったがそれだけを使いこなすことだけできた。
だが、善逸に修行をつけていたある時、紅音に恨みを持っている連中が突然やってきて襲い掛かってきたことがあった。
紅音が自分でけりをつけようと構えたが、その際善逸が連中に殴り倒され気絶してしまい、人質に取られてしまい、善逸を解放するために大人しく言うことを聞くしかなく、辱しめを受けようとした。
その時だった。
気を失って捕まっていたはずの善逸が、急に連中の腕を振り払って距離を取り、落ちていた木刀を手に取り居合の構えを取った。
それもまるで手慣れた様子で、落ち着いた動きで。
警戒した連中は善逸に襲い掛かるが、あまりにも速い速度で連中を木刀で叩きのめした。
当時の紅音はそれに呆気に取られ、連中の一人に捕まりそうになったが、それを善逸が倒した。
それに畏れをなした連中は悲鳴をあげながら逃げていった。
それで難を逃れたが、善逸の動きに既視感を覚えた。
善逸が読んでいた漫画の一つである、鬼滅の刃に出てくる、我妻善逸のそれだったのだ。
呼吸こそ使ってはいなかったが、それを思わせる動きだった。
しかも善逸が使ったその技は、自分が教え、善逸自身がちゃんと覚えた技で、普段なら放つ度に泣きわめいていた技だったが、それを平然と使っていた。
だが、気が付いた当の本人は全く覚えておらず、むしろ紅音が助けてくれたと思い、その日は泣き叫んだ。
しかもこれは自分がやったんだと言っても全くもって信じられない様子だった。
「…とまぁ、これがあちきの覚えてる、気絶した善逸でち」
「他に何かないのか?
…俺たち、時々だけどあいつ気絶してる間に夢を見てるって聞いたが」
「…そう言えば、その日泣いて落ち着いてから、あの子から聞いたでち。
強くなった自分が、捕まって乱暴されそうになったあちきを助ける、そんな夢を見たんだって。
しかもあちきが教えて、唯一覚えれた居合で、あちきを助けたって。
…思えば、あの子が使ったあの技は、あちきが初めて見せた居合の技だったのは覚えてるでち」
「善逸…」
皆は善逸のことを考えた。
「けど何で善逸は気絶して、あんなにすぐに戦えるんだ?」
「あー、そのことでちが、あちきが厳しく教えすぎたのがそもそもの原因だったと思うんでち。
あんな右も左もわからず、物乞いすることでしか生きていけなかったあの子を、一人で全うに生きて行けるように育てるのに、必死だったでちたから。
その結果、無意識の内に敵意を向ける相手に対して、あちきが教えた居合の技を構えるようになった、そう考える他はないと思うでち」
「…そう言えば善逸、自分は捨て子だって言ってたもんな」
『…』
「一度死んだあちきが聞くのもなんでちが、あの子はどうしてキラメイジャーに?」
「あいつとあんたの仇を探して仇を取るためだ。
それと、あの時どうして殺されなくちゃいけなかったのかって調べるためにな」
「…っ、そうだったんでちか。
でも気絶しないと戦えないのはちょっとあれでちよね…」
「まぁ、な…」
正直な話、善逸はキラメイジャーだが起きて戦うことはほとんどない。
士郎たちと一緒に畳み掛けるならともかく、一人で戦う時は大抵逃げ回っている。
挙げ句の果てには何らかの要因で気絶し、それでようやく本領発揮するというものだった。
しかも無意識にやってるので、それを自分がやったと何度言っても信じていない。
はっきり言って、善逸は自分に自信が持てていないのだ。
「…そういうこと、でちか。
うん、わかりまちた!
あちきもここに住むでち!」
『えっ?』
「あちきは善逸の育ての親で、師匠でち。
生前と比べていくらか勝手が違うかもでちが、あの子が自信を持てるようにしたいでち!」
「でも良いんですか?」
「はい、あちきは元々、善逸に会うために雀の姿になって飛び回っていたでちから」
「…なぁ士郎、師匠とか女神さんにこのこと相談した方がいいんじゃねぇか?」
「…そうだな」
士郎たちは、紅音の覚悟を決めた目に圧される形で、この後凛たちと相談し、空いてる部屋を用意し、善逸の自信の無さを克服するために協力者としてここに住むことになった。
ちなみに善逸は紅音が屋敷に住むことを知った時は泣きながら喜んでいたが、修行をつけると言われた時は本気で泣きわめいたのだった。
この作品について
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このまま続けて欲しい
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リメイクして欲しい