「…なぁ母ちゃん」
「なんでちか?」
「俺って、嫌われてるのかな?」
善逸が士郎たちの下へと駆けつける前、いくらか落ち着いたのか木から降りて、その場で体育座りをする。
紅音も流石に怒ろうとは思わず、善逸と隣に座っている。
「士郎さまたちは別に、善逸のことを嫌ってるわけじゃないでちよ?
ただ、誉めまくったりすると逆に怪しまれるし、少しでも誉めるとつけあがって失敗してしまうから、あえてさっきみたいに突き放して、善逸が自分の意志で来ることを待ってると思うでちよ?」
「そりゃあそうだけどさ…。
だからって普通さ、置いてくか仲間を?」
泣き腫らした目で、善逸は士郎たちが走った先を見る。
「確かに俺さっきまで木に登って泣きわめいてたけどさ、ちょっと優しく説得してくれたらさ、俺だって考えるよ、というか行くよ?
…でもさ、暴走した転生者なんて危険なやつのところに向かって皆、すたこらさっさですかそうですか」
「それだけ切羽詰まってるんでちよ。
…善逸は、皆と戦いたいでちか?」
「そんなの、俺だって戦いたいよ、というか役に立ちたいよ!
同じキラメイジャーなんだし。
…けど、母ちゃん知ってると思うけど俺めっちゃ弱いし、技だって一つしか使えないし「そうしたいと思ってるなら、ウジウジしてないで早く立ち上がるでち!」…いでででで!」
意志があるのにいじける善逸に業を煮やした紅音はその小さい手で、善逸の頬を引っ張る。
「母ちゃんのそういうとこホント嫌だよ!
ホントそういうとこぉ!
息子の俺が言うのも何だけど、母ちゃんって小さくて可愛いし愛嬌があるから受けは良いけど、そんなところたまにあるから生前の食堂の評判もあまり上がらなかったじゃんかーーっ!!
「ふんっ、それとこれとは話が別でち!」
「何でそう開き直るかな母ちゃんは…。
あれ、可愛いと言えば、あーっ!!!
あいつらいろはちゃんと切歌ちゃんと一緒だったぁーーーーーっ!!!」
怒ってる内に切歌といろはのことを思い出し、勢いよく立ち上がり走り出す。
「何で俺の大切な二人を連れていってるんだ!?
とんでもねぇ野郎どもだーーー!!
そもそもな話、いくら戦う力があるからって.危ないところに連れてくな女の子を!!
バカバカバカバカーーー!!!
いろはちゃん切歌ちゃーーーんっっ!!!!!!!」
「ちょっ何か変な方向でエンジンがかかってるでち!?
何か放っとけないでちね、待つでち善逸ぅ!!」
ものすごい勢いで変な方向に怒りながら突っ走る善逸を、紅音は追いかけるのだった。
「おらぁこのばか野郎どもがぁあーーーーー!!!!」
そんな感じで今に至り、紅音とははぐれてしまったが、そのことも気にせず、善逸は士郎と武に殴りかかろうとする。
「うおっ!?
おいどうしたんだよ善逸!」
「そうだぜ!
いくらさっきの士郎の言葉がキツかったからって!」
「あ''っ!?
ふざけんじゃねぇ思えばお前ら二人でいろはちゃんと切歌ちゃんと一緒に行ってるじゃねぇか羨ましすぎるだろチキショー!!」
「そこデスか!?」
予想外な答えに切歌は思わずツッコミを入れる。
「あのな善逸、俺たちは二人のこと仲間として見てるつってだけで…」
「というか、今までもこういうことあったろ?」
「うるせぇとにかく一発殴らせ「あの、善逸くん?」…は~いっ、何かないろはちゃ~ん?」
いろはに声を掛けられた途端、今までの怒りはどこへやら、鼻の下を伸ばしながらクネクネといろはに寄りかかる善逸。
ちなみにいろはは若干引き、士郎と武と切歌は呆れて別の生き物を見るような目になっていた。
「い、今私たちね、あの怪物と戦ってるの。
だから私たちのこと心配して来てくれたのは嬉しいけど、良かったら一緒に戦ってくれるかな?」
「えっ怪物?」
いろはが指を指した方向を見ると、怪物が身構えていた。
「…」
善逸は怪物を見た瞬間、惚気ていた顔が一気に青ざめる。
そして怪物がけたたましい咆哮をあげた後、そのまま白目を剥いて、気を失った。
「…デスよねー」
「まぁ、相手が相手だからな、今回は仕方ねぇよ」
「…っ、お前ら気をつけろ来るぞ!!」
武は善逸を担ぎ士郎たちと共に怪物の攻撃を避ける。
避け終わったところを、善逸が自力で降りて変身した。
「…善逸、気を失っても聞こえてるだろうから言うが、相手はかなり危険だ。
気をつけろよ」
「…」
善逸は返事をしない代わりに、ただ無言でキラメイソードを居合のように構えた。
「よし、行くぞ!!」
士郎たちは様々な方向から攻撃を仕掛ける。
怪物が無数の触手を伸ばし、さらに口からヘドロを飛ばしてくる。
「ふんっ!」
「時雨蒼燕流 守式 六の型 春雨!」
いろはと武が触手を防ぎ、ヘドロを撃ち落とす。
「あたしも行くデスよー!」
『キラメイジ!!』
切歌はもう一つのキラメイサイズを召喚し、切り刻んでいく。
「カラドボルグ!!」
士郎はカラドボルグの能力を付与したキラメイバレットを撃ち込み、触手とヘドロを巻き込みながら消し飛ばしていく。
「雷の呼吸 壱ノ型改・伏式 霹靂一閃・円!」
善逸は全方位からの触手を周囲に円を描くように切り裂いた。
「くっ、こいつはキリがないな!」
「なら、ストラーダ・フトゥーロ!!」
『チェックメイジ!!』
いろはが怪物に向けて技を放ち、触手もヘドロも吹き飛ばした。
当然、怪物も直撃して傷を負っていた、だが。
「えっ!?」
怪物が負った傷が、ヘドロで埋め尽くされるようにして、元通りに戻った。
「こいつ、まさか再生するのか!」
呆然としてしまうが、その隙に怪物がいろはに向けて触手を飛ばした。
「え?」
「…っ!」
当たる直前、善逸はいろはを突き飛ばすが、自身が巻き付けられてしまう。
「くっ…!」
「善逸くん!!」
「まずい、善逸を放せ!」
士郎は触手を切るが、巻き付いてる触手が残っていた。
「まずいデス!
早く触手を切り取らないと!」
切歌が素早く善逸に巻き付いた触手を全て切り落とす。
だがすでに遅かったのか、善逸はキラメイソードを落とし、その場で頭を頭を押さえた。
「あっ、あぁ…っ!
あぁああああああああああああっっっっっ!!!!!!!」
悲しみと絶望が籠った叫びが響き渡る。
そして善逸はぶつぶつと何かを言いながらすぐさまキラメイソードを拾い、剣先を自分の首に押し当てる。
「…っ善逸やめろっ!」
士郎がすぐさま止めさせようとするが、すごい力で振り払われてしまう。
「どうせ俺はいらない子なんだ生まれてくるべきじゃなかったんだ誰にも期待なんかされないいっそ死ねばいいんだ…」
「善逸、やめるデス!」
「やめろよおい!
マジでシャレにならねぇって!」
今度は切歌と武が止めに入り、キラメイソードを弾き飛ばした。
「俺なんか消えてなくなれば良い…」
だが、ほんの一瞬特典の呼吸を使い、二人を弾き、直ぐ様キラメイソードを拾い上げようとする。
「善逸くんやめて…っ!」
いろはも止めに入ろうとするが、怪物がヘドロを飛ばし妨害してくる。
「くっ、邪魔すんな!
ロー・アイアス!!」
「ありがとう士郎くん!」
「そんなことは良い!
皆、俺が止めてる内に善逸を頼む!」
「士郎、俺も手伝うぜ!
時雨蒼燕流 守式 六の型 春雨!」
次々と襲い来る怪物の触手とヘドロを、士郎と武が防ぐ。
だが、そうしてる内にも善逸はキラメイソードを拾い上げ、そのまま自分の腹を突き刺そうとする。
「いい加減にやめるデス善逸っ!!
そんなことして、何の意味があるってんデスか!!」
「善逸くんお願いもうやめて!」
切歌といろはが羽交い締めして止めようとするが、直ぐ様振り払われてしまう。
「やめろぉ!!」
「ダメェっ!!」
「俺なんか、生きてる価値なんかないんだ…!」
悲痛な声をあげ、キラメイソードを上げ、そのまま勢いよく自分の腹へと突き立てられようとした。
「…はぐれたから急いで探してみたら、何をしてるでちか、善逸」
瞬間、一羽の雀の羽ばたきと共に、母が舞い降りた。
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