真実に至る宝石の勇者   作:ガンダムラザーニャ

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善逸の復活または決着をつける場面でのBGMは、鬼滅の刃の我妻善逸が兄蜘蛛との決着をつけた時のやつを想像してください。

また、今回は烈 勇士さんからのリクエストの武器と技を書きました。


第28話:闇夜を照らせ雷光の勇者よ

「…はぐれたから急いで探してみたら、何をしてるでちか、善逸」

 

善逸が自身を突き刺そうとしたキラメイソードを、紅音が善逸の手を掴んで止めていた。

 

「紅音!」

 

「…全容はわかりまちぇんが、先ほどから善逸がぶつぶつと言ってることから察するに、そこの怪物に何かされたみたいでちね」

 

「紅音さんっあの怪物には気をつけてください!

今は士郎くんと武くんが止めてくれてるんですけど、どこまで持つかわからないんです!」

 

「怪物もそうだし、善逸も自殺しようとしてて、もう絶対絶命デス!」

 

「なるほど、そういうことでちか。

あいわかった。

…ふっ、全く困った息子でち、ね!」

 

そう言うと紅音は勢いよくキラメイソードを弾き、足を滑らせて態勢を崩させる。

 

そしてそのまま善逸の体の上に乗り、力を溜めるように頭を大きく仰け反らせる。

 

「ちょっと、落ち着くでちーーーーー!!!!」

 

紅音は、物凄い勢いで善逸に頭突きをするのだった。

 

しかも、ヘルメット越しでも響くほどの威力で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善逸は夢の中で、様々なトラウマに襲われていた。

 

捨てられる前、幼かった善逸は両親からことあるごとに暴力を振るわれていた。

 

しかも理由のほとんどが理不尽とも思える八つ当たりだった。

 

そんな環境でも、善逸は時々外に出ては、どこにでもいるような優しい親子を見かけ、そこから聞こえる優しい音に憧れていた。

 

だから自分が頑張ればきっと優しい音を出してくれると、そう信じてまだ読み書きもできない年で必死で読み書きを勉強したり、家族の絵を描いたりした。

 

だけも褒めてくれるどころか、それをゴミと言って目の前で破り捨てて、また殴られた。

 

それでも諦めずに家族の絵を描いたりしたが、結局気絶させられて、善逸は捨てられてしまった。

 

しかも、知らないどこか遠い街のゴミ捨て場に。

 

その時に知ったのだ。

 

両親は自分のことを愛していないし、何も期待してなかったんだと。

 

それを知った瞬間、凄まじい絶望と共に泣き叫んだ。

 

自分はいらない子だったんだ、生まれてくるべきじゃなかったんだ。

 

そう言う言葉が、当時まだ幼かった善逸の頭の中を埋め尽くした。

 

声が枯れるまで泣き叫んだ後、フラフラと知らない街を彷徨うことになった。

 

知らない人が行き交う中、誰も善逸のことを見てくれない。

 

道中ぶつかっても心配されるどころか、舌打ちしてその場から去られるのだった。

 

しかも善逸は人の心情を読み取れるくらい耳が良かったので、行き交う人たちの感情を一気に読み取って頭痛に苛まれるのだった。

 

暗闇に覆われた夢の中で、それらを思い出しながら彷徨う善逸。

 

もう、生きてる意味ないじゃん俺。

 

そんなことを考えた善逸の目の前に、まるで死を実現するように一本のナイフが現れる。

 

濁りきった瞳で、善逸はそれに手を伸ばす。

 

途中、何か強い衝撃が襲いかかるが、善逸はそれでも手を伸ばした。

 

邪魔をしないでくれ、どうせ俺はいらない子なんだから。

 

善逸には、ただその一心のみだった。

 

そうして、ようやくナイフを掴んだ瞬間だが、今度は凄まじい衝撃で吹き飛ばされ、ナイフが手元を離れ遠くに飛んでしまった。

 

そして間を置かずに、何かが善逸に乗りだし、物凄い勢いで頭突きをしてきた。

 

「いってぇっっっっーーーーーーーーーー!!!!????」

 

先ほどの暗さがぶっ飛ぶ勢いの痛さに、善逸は思わず叫んだ。

 

涙を溜めながら相手を見ると、着物とエプロンの格好の少女がいた。

 

「全く何をしてるでちか、このバカ弟子!」

 

「…弟子?

弟子って、俺のこと?」

 

「そうでちよ?

師匠にして育ての親の顔を忘れたでちか!」

 

「え…?

師匠、育ての親?

何を言って…あっ」

 

少女の言ってることに、善逸は思い出した。

 

そう、知らない街をフラフラと彷徨ってる時に、善逸はある食堂へとたどり着いた。

 

その時善逸はお腹が空いてて、お金もなかったから、物乞いをしようと入った。

 

だが、その食堂の女将らしき人物が近づいてきたところで、意識を失い、倒れてしまった。

 

それでその人物が善逸を看病したり、ご飯も出してもらったりと面倒を見てくれたのだ。

 

それからその人物に訳を話した後で、色々あって善逸はその人物の養子になり、しばらくしてから居合の達人でもあった人物の弟子になった。

 

その義母にして師匠が、今夢の中で、自身の目の前にいる少女、いや少女の姿をした女性だった。

 

とても厳しい人だけど、善逸のことを思って根気よく叱ってくれて、何度も逃げようとした善逸を連れ戻してくれた優しい人だった。

 

「かぁ、ちゃん?」

 

「思い出したでちか?

…全く、いらない子とか言って、本当に困った息子でちね」

 

「いやいやそれはそうかもだけどさ!

何で母ちゃんここにいるの?

ここは夢の中なんだよ!?」

 

「…そう言えば、さっき思いっきり頭突きしてからの記憶が飛んでるでちね。

気がついたらここにいたでち」

 

「まさか意識だけでここに来たのぉ!?」

 

夢の中で、そんなあり得ないことはあるかと叫ぶ善逸。

 

「そう叫ばれても、来てしまったものは仕方ないでち。

…さ、早く戻るでちよ?

皆様方が待ってるでち」

 

「あ…」

 

紅音の差し伸ばした手に、善逸は躊躇いを覚える。

 

「どうしたでちか?」

 

「…ごめん、俺には無理だよ母ちゃん。

母ちゃんも知ってるだろ、俺は物凄く弱いって。

母ちゃんが教えてくれた居合もそう、特典の雷の呼吸もそう。

一つの技しか、覚えれてないだよ。

一応生前でもさ、母ちゃんの期待に応えたくて、こっそり修行してたけど、全然成果が出なくて…。

それでよく母ちゃんに怒られたしさ。

だから、俺には…」

 

「…そう言えば、そう言うことあったでちね。

生前も言ったと思うのでちが、善逸はそれで良いんでちよ。

それが善逸の才能だと言うのなら、尚更」

 

そう言って紅音は善逸の前に座り、微笑みながら、優しく頭を撫でる。

 

「そもそも生前唯一覚えれた技も、あちきが使う技の中でも基本中の基本、それだけ出来れば万々歳でち。

それしかできないと言うのなら、それを極めること。

それが生前でも今でも、善逸にするべきことだったでち。

皆様からお聞きした話でちたが、善逸は壱ノ型を極めるのに、皆様にどうしたら良いか聞いて、それで自ら技を発展させようとしたことがあったようでちね」

 

「うっ、それは…」

 

気まずそうに善逸は目を逸らす。

 

生前唯一覚えれた技と壱ノ型は、呼吸の力を使う以外はほぼ同じだったためすぐに覚えれた。

 

だが同時に直線しか行けない、障害を置かれると中断せざるを得ないなどの弱点があった。

 

だから漫画の鬼滅の刃を読んだり、士郎たちから聞いたり、戦いの中でどんな技を使うのかを見たりとしていた。

 

それでいくつか壱ノ型を起点にした技を作ろうとしたが、コツを掴んだ所でバテてしまうことがよくあり、少なくとも善逸が知る限りでは、技が完成していなかった。

 

「…でも、結局俺には」

 

「チュチュン、それが案外完成してるようでちよ。

ここが夢の中なら、善逸は見てるはずでち」

 

「えっ?」

 

一瞬訳がわからなかったが、すぐに夢で見たことを思い出す。

 

レジスチルの転生者との戦いで、硬い敵を想定して編み出した技を。

 

ある転生者との戦いで全方位を囲われた時に、壱ノ型の一閃を利用して竜巻を巻き上げる技を。

 

はぐれ悪魔と手を組んだ転生者との戦いで、毒沼など足を取られた時に使える飛ぶ斬撃を、そして一瞬の隙も許さない刺突技を。

 

透明になる転生者との戦いで、武の春雨を参考にした防御技を。

 

そして先ほどの怪物との戦いで、周囲からの攻撃を一閃する技を。

 

「これ、全部俺がやってたんだ…」

 

「そうでちよ。

皆もスゴかったって言ってたでちから」

 

「…俺なんかで、良いのかな?

俺、何か気絶してる時しかまともに戦えてないけど、さ」

 

「良いんでちよ。

焦らずゆっくりと、頑張っていけば良いんでち。

その過程で、泣いても逃げても構わないでち。

でちが、諦めちゃダメなんでちよ!」

 

「…それ、我妻善逸のじいちゃんみたいなセリフだよ」

 

「むぅ、せっかく良いこと言ってるのに、余計なこと言っちゃダメでちよ!」

 

「ごめん!

…でも、うん。

ありがとう、母ちゃんは俺のために必死で考えて言ってくれてるんだよな?

皆も、そんなんだよな?」

 

「そんなの当たり前でちよ!

さっ、行くでちよ。

皆様方が、善逸の帰りを待ってるでち」

 

「…!」

 

善逸は無言で紅音の手を握る。

 

その瞬間、暗闇だった夢は、光に満ち溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうやら戻れたみたいでちね」

 

紅音は目が覚めて、現実に戻ってきたことを確認する。

 

士郎と武は怪物からの攻撃を防ぎ、切歌といろはが心配そうに善逸と紅音を見ていた。

 

どうやら夢では数分いた所、現実ではほんの一瞬だったようだ。

 

善逸はうつ向いたままだったが、ピクリと指を動かした。

 

そしてフラリと立ち上がると、落ちていたキラメイソードを拾い、そのまま士郎と武の前に飛び立つ。

 

そのあとすぐに皆に向かって。

 

「皆、耳を塞いでくれ」

 

『えっ?』

 

「雷の呼吸 壱ノ型改 鳴式 霹靂一閃・響!!」

 

瞬間、善逸から凄まじい音と衝撃が発し、士郎たちは耳を塞ぎながら耐える。

 

それに対して怪物は何が起こったのかわからず、その音と衝撃によって圧倒され、攻撃を中断してしまう。

 

「うっ、今のは!」

 

「…皆、ありがとな。

こんな俺のことを、待っていてくれて」

 

「えっ」

 

士郎たちに背を向けたまま、善逸は言う。

 

「俺は生前捨てられてなら、何もできなくて、誰にも期待されてないって思ってた。

でも、母ちゃんも皆も、期待してくれてるし、俺のこと、ちゃんと仲間だと思ってくれてるんだよな」

 

「善逸、お前ひょっとして起きて…」

 

「だから、ようやくはっきりとわかったよ。

俺は一人じゃない。

皆がフガッ、皆がいてくれるから…zzz」

 

『…』

 

まさか今のが寝言だったとはと、紅音は呆れ、士郎たちは呆然としていた。

 

しかもよく見たら首をカクカクと傾けている。

 

起きてなどいない、完全に寝ているのだ。

 

「まさか、今のが全部寝言だったなんてな」

 

「けど善逸って、寝てる時は技以外言わないはず、だよな?」

 

「…やれやれ、どうやらこの子にとっては、これが大きな一歩なのかもしれないでちね」

 

「…そうしれないな。

まぁ、これはこれで結果オーライだけど」

 

「でも、これで善逸は戻ってきたデス!」

 

「じゃあ、皆であの怪物を倒そう!」

 

「あぁ!」

 

士郎たちはそれぞれの武器を構え、怪物に立ち向かっていく。

 

態勢を立て直した怪物は叫びながら触手とヘドロを飛ばしていく。

 

それに対して士郎はロー・アイアスで防ぎながら突っ込み、切歌は肩に装着したキラメイサイズを展開して切り刻み、いろははキラメイショットをマシンガンのように使って撃ち落とし、武は五風十雨で善逸は技を使っていないが呼吸の力で避けながら突き進む。

 

先にたどり着いたのは善逸だった。

 

「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃!」

 

触手とヘドロの隙間を縫って、技を放とうとした瞬間だった。

 

「…!」

 

何かを感じて、あと一歩で当たる所を避けて距離を取った。

 

「どうした善逸!」

 

「あの中に、子供が二人いる。

音からして、これの転生者だ。

だけど、徐々に弱ってる感じだ」

 

「なるほどな!

なら武、頼むぜ!」

 

「あぁ!

時雨蒼燕流 攻式 八の型 篠突く雨!」

 

武が乗りだし、中の子供が傷つかないように浅く、そして大きく斬った。

 

すると、中から二人の子供が、衰弱して触手に縛られていた。

 

しかも性別は違うが、顔立ちがそっくりなことから、双子だと思われる。

 

「あれか!」

 

「けどちょっとヤバいデス!

また触手で再生しようとしてるデス!」

 

「だったら俺に任せろ!

…トレース・オン!!」

 

士郎は黄色の槍を投影し、怪物の前に立ち、構える。

 

「喰らえ、ゲイ・ボウ!!」

 

子供たちが出れるくらいの大きさに切り裂くと、再生しようとしていた触手が何かに阻害されるように動かなくなる。

 

「よし、これで再生しなくなったはずだ!」

 

「あとはこの邪魔な触手を!!」

 

「切歌ちゃん、行くよ!

ストラーダ・フトゥーロ!!」

 

『災輪・TぃN渦ぁBェル』

 

士郎が子供たちに衝撃がいかないようにロー・アイアスを張り、切歌といろはが触手やヘドロを切り裂き吹き飛ばす。

 

その隙に武が子供たちの前に立ち、そのまま子供たちを引っ張ろうと手を突っ込む。

 

「うぐっ!」

 

「一人じゃ無理だ武!

俺も手伝う!!」

 

善逸も加わり、二人はトラウマを発露しそうになるが、踏ん張って子供たちを引っ張る。

 

「「う、ぉおおおおおおおおおおおお!!!!」」

 

やがて触手が千切れ、子供たちを救出する。

 

怪物は発狂したように叫んで、触手とヘドロを飛ばしながら逃げるが、触手に対して抗体があったのかすぐに態勢を立て直した善逸が。

 

『キラメイチャージ!』

 

「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃 六連!!」

 

『チェックメイジ!!』

 

あらゆる場所を跳躍し、一瞬で怪物を切り裂いた。

 

その威力はいつもよりも速く強く、その雷鳴が轟く音は、おぞましき怪物の断末魔をも掻き消し、怪物は宝石となって消滅した。

 

善逸は降り立ち、キラメイソードを腰に添えて空いた手で落ちてきた宝石を掴み、変身解除する。

 

「善逸!」

 

「…皆」

 

目が覚めて、駆けつけた士郎たちを見つめる善逸。

 

寝ぼけ眼ながら、どこか気恥ずかしそうにしていた。

 

「もう起きたデスか?」

 

「あ、あぁ…、今さっきね。

気がついたらこれを手に持ってたんだ」

 

「じゃあお前、今までのことは覚えてないのか?」

 

「ぼんやりとだけど、何となく俺は皆と一緒に戦って、勝ったんだなって、そう思えるんだ」

 

「前までは全く覚えなかったけど、今回はそういう感じなんだな」

 

「でもこれは大きな一歩だよ善逸くん!

この調子で、皆で頑張ろうね!」

 

「あ、ありがとう…。

何だかそう言われると照れるな…「善逸、頭を下げるでち」…母ちゃん?」

 

照れてる善逸は紅音に言われるがまま頭を下げる。

 

すると、紅音は優しく、善逸の頭を撫でた。

 

「うえっ、ちょっ母ちゃん何やって!?」

「何って、息子が頑張ったんでちから誉めてるでち。

これで一歩踏み出せたでちね善逸。

えらいえらい♪」

 

「うっうぅ…!」

 

あまりにも嬉しかったのか、善逸はポロポロと涙を流して泣いていた。

 

「ふぅ、今回はどうなるかって思ったが、良かったな善逸…」

 

士郎はそう言いながら、暖かい目で皆と一緒にその様子を見るのだった。

 

ちなむにあとでわかったのだが、今回手に入れた宝石には善逸の死に関する情報が載ってあって、善逸は一歩真実に近付くのだった。

この作品について

  • このまま続けて欲しい
  • リメイクして欲しい

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