怪物と戦って数日後、転生者である双子の子供たちは意識が回復した。
二人は兄妹でこの街で占い師をしていて、兄は特定の意思や感情を吸い取る特典、そして妹は自身も含む対象の思い出を具現化する特典を持っていた。
だけど最近のことがあって駒王町が物騒になってきたことにより、多くの客のストレスなどを吸い取り過ぎてしまい暴走し、妹の特典もそれに追随するように暴走してしまった。
つまりあの怪物の姿は兄が特典吸い取った負の感情を妹の特典によって形作られた存在であり、能力は二人の特典が合わさったものだったのだ。
トラウマを暴走させる能力も、それの応用とされる。
ただ二人とも、特典の影響もあって憔悴しきっていて、しばらく屋敷で世話になることになった。
さらに善逸が手にしたあの特典の宝石だが、それには善逸と紅音が殺された時の特徴と一致するものがあった。
ちなみに、二人が殺された時の状況だが、二人一緒にいたところで雷が落ちて撃たれ、そのまま即死だった。
だけどおかしなことに、その時は雨雲のない夜空で、二人の死体は黒焦げどころか、半分以上が粉々で損傷が激しかった。
それで、善逸の場合は今回、その特典で善逸と紅音以外にも何人かが殺されているのがはっきりとしていた。
しかも、共通点があって、それが居合の習っているまたはその使い手の他にも、転生者でも善逸と同じく雷の呼吸の特典を持ってる転生者も含まれている。
未だにその特典とその転生者は不明なのだが、どこかにいるということは間違いなかった。
おそらく次に宝石を見つけさえすれば、それがわかるかもしれないというところだった。
また、転生悪魔として転生した転生者のことでリアスたちから依頼を受けて戦うことになった。
善逸は相変わらず泣き叫びはするが、徐々に自分からも戦う意思を見せるようになった。
「~♪」
そんな中、切歌は庭に出て青空を眺めながら歌を口ずさんでいた。
いつも戦う時に歌うイガリマとは別の歌だった。
「…その曲って、シュルシャガナのだよな」
廊下を通ってきた士郎が切歌に聞いた。
「あっ士郎!
そうデスよ、あたしイガリマも好きデスけど、このシュルシャガナの曲も大好きデース!」
「そう言えばお前歌が好きだもんな」
「生前の時はいつも親友と歌ったりしてたんデスけどね…」
「…早く会えると良いな、その親友に」
切歌は少し寂しそうにしながら親友のことを思い出していた。
いつも楽しそうに一緒に歌い、遊び、そばにいた親友。
だけどある日突然集団に襲われ、連中は親友を連れ去ろうとしたから切歌が止めに入ったが、抵抗も無意味でその親友の目の前で殺され、連れ去られるところを見たところで息絶えてしまった。
それから転生してキラメイジャーとして戦ってる内に特典の宝石で、その親友のことが載っていて、その親友も転生してこの世界のどこかにいるということがわかった。
それで切歌は現状、生前の事件のこともそうだが、親友の居所を探してる状態だった。
「…あの子に、あたしの歌声が届いてくれてたら良いデスね」
「…今はきっと届いてると、そう願って戦うしかないさ…!?」
キラメイチェンジャーから通信コールが来て、士郎は操作して受け付ける。
「どうした!」
『悪い士郎、切歌!
今転生者と戦ってるが、俺たちだけじゃ捌ききれない!
すぐに来てくれ!』
「わかった、すぐに行く!
切歌!」
「わかってるデス!」
二人は急いで武たちのところへと向かった。
「あれは!」
向かった先では大量のゾンビで溢れかえっており、その中心に武と善逸といろはが戦っていた。
どうやら三人は奮闘してるが、数で圧倒されて圧されてるようだった。
「…っ、先行はあたしが行って蹴散らすデース!」
切歌はそう言うと変身し、キラメイサイズを振り回しながら切り裂いていく。
「トレース・オン!」
続くように士郎も変身し、キラメイショットでゾンビたちを撃ち抜いていく。
「お待たせデース!」
「おぉ助かるぜ!」
「来てくれたのか、二人とも…zzz」
「それで、このゾンビたちは何なんだ?
反応から察するに特典みたいだけど」
「あぁ…、その転生者ならすでに見つけてる。
あそこだ…フガッ!」
寝てるので善逸は首をカクカクさせながら指を指し方向を示す。
その先では、得意げに士郎たちを見下ろす少年がいた。
「…あれは、八男のヴェンデリンか?」
「見た目はそうだけど、全然違うの。
そもそもヴェンデリンなら、こんな力使わないはずなのに」
「ってことはさ、あいつヴェンデリンの姿した誰かってことだよな。
ほら、転生者にもそういうやついるし」
「けどこう話をしてる内にまた増えてるデスよ!?」
「…士郎、俺に合わせてくれ。
雷の呼吸 壱ノ型改・若式 霹靂一閃・旋!!」
「わかってる!
カラドボルグ!!」
善逸が前で出て回転しながら突っ込み、士郎がカラドボルグの能力を付与したキラメイバレットを装填して撃ち込み、ゾンビたちを蹴散らしていく。
そうして目の前まで来たところで。
「ふっ」
「…っ!」
少年が手を翳したと同時に何かを察した善逸は弾けるように回避する。
瞬間、少年の手から魔方陣が現れ、それがゾンビたち諸とも士郎たちに向けてビームを撃つ。
士郎も善逸の動きに察して、切歌たちの前に立ちロー・アイアスを展開する。
凄まじい衝撃と共にゾンビたちが消し飛び、士郎は腕を押さえながら耐える。
「ぐっ!」
「士郎、皆!」
「なんて野郎だ…!
今の防いでなかったら、俺たちまで吹っ飛んじまってたぜ」
「ちっ、今のやってもまだ死なないのか」
「…お前、何者だ!
見た目はヴェンデリンみたいだが、あいつはこんなことするわけないだろ」
「ヴェンデリン?
あぁあの愚弟のことか。
俺をそんな愚弟と一緒にするな。
全く、どいつもこいつも、あいつを見やがって」
「…愚弟か。
お前、もしかして長男のクルトか?」
「ほう、俺の名を言い当てるとは。
ふっ、俺も有名になったものだな」
「けどクルトの場合、確かに長男デスけど、お山の大将で、出来の良い弟さんたちを殺そうとして悪魔に魂を売ったような人で、最終的に大勢の人を巻き込んで自滅したことで有名デスよ?」
「…っ、仕方ないだろ!
家を出たヴェンデリンたちが力を付けて名声を得たりしたから!」
「けどだからって、領土の市民まで巻き込むやつがあるか!
親父さんに言われたりして追い詰められてたとは言え、他にやれたことはあっただろうに!」
「うるさい、知ったような口を聞くな!
親父もヴェンデリンも、どいつもこいつも俺の邪魔ばかりしやがって!
お前らも、そういうことを言うのか!!」
ぞろぞろと、ヴェンデリンの姿をしたクルトを取り囲むように新しくゾンビが出現する。
「元からそういうつもりだったが、お前たち諸ともこの街の愚民どもを殺して、俺だけの領土にしてやる!!」
激情に走るクルトの言葉に呼応するように、ゾンビたちは声にならない雄叫びを上げて士郎たちに襲い掛かる。
「ぐっ!」
「どうだ!
俺のこの力は!
かつてこの地で死んだ愚民どもの魂を引きずりだしてゾンビに変えてやったんだ!」
「くっ、そんなことを!」
「あぁそうさ!
俺は長男だからな、元々あの領土の跡取りになれたならそれで良かったんだ!
ここもそうだ、あの領土じゃないがこの力を使って、ここを俺の領土にして、ここの領主になるのだ!」
凶暴化するゾンビの軍勢が、容赦なく士郎たちに襲い掛かり、そこからさらにクルトが魔法を使って攻撃してくる。
「死人しかいない領土の主になってどうするってんデスか!
領主なら、民を守るのが務めのはずデスよ!」
「黙れぇ!!
言ったはずだ、俺は領主になれればそれで良いとな!
俺の邪魔しかしない民なんぞ知ったことか!」
「だから、そう言うところが歪んでるってんデスよ!
このバカーー!!」
クルトの身勝手に頭が来た切歌はキラメイサイズで一気にゾンビたちを切り裂いていく。
「皆、あたしこれから絶唱を使うデス!
だから援護お願いするデスよ!」
「っ、お前本気か!?
いくら死ぬことはないように凛に特典を調整されてるとは言え、絶唱はお前の体にかなりの負担がかかるんだぞ!」
「それでも、あのバカをどうにかするために必要デース!」
「…士郎くん、ここはやらせてあげよう?
このゾンビたちを、いつまでもこのままにしておくわけにはいかないから」
「くっ…、仕方ないか。
いろは、終わったらすぐに切歌を治してくれ。
武と善逸も、それで良いか?」
「わかってるぜ!」
「…仕方ないよ。
切歌の絶唱はあいつの力と相性が良いから」
そう言うと四人は切歌の周りに立ってゾンビたちを凪ぎ払い、切歌はキラメイサイズを突き出すように構え、歌う。
「~~♪」
それは命の歌、かの少女たちの命と引き換えにして紡がれる歌。
それに呼応するように、切歌の特典のイガリマが展開され、キラメイサイズもイガリマのものに変形する。
すなわち、これなるは魂を刈り取る死神の鎌。
それを起動するために、天へと届かんと、その歌が紡がれる。
そして。
「な、何だこれは…!」
切歌はキラメイサイズを地面に突き刺し、その反動で空中に飛び上がるとキラメイサイズに跨がる。
イガリマに変形したキラメイサイズは巨大化し、装着されたブースターが蒸気を噴き出す。
「…ゾンビの皆さん、今からのは、ものっすごく痛いデス。
だけど、どうか安らかに、成仏してくださいデス」
『キラメイチャージ!』
「そしてそこのわからず屋!
この一撃で、反省するデース!!!」
『チェックメイジ!!』
瞬間、巨大化したキラメイサイズは、切歌と共にゾンビたちを一閃し、クルトをも切り裂いた。
ゾンビたちはどこか安らかな表情になりながら光となって消えていく。
「こ、こんなことが…!」
魔法を使う間もなくクルトは倒れ、特典の宝石は回収される。
絶唱を終えた切歌はその場で膝をつく。
「やっぱり絶唱はキツイデスね…うっ!」
「切歌ちゃん!」
「大丈夫か切歌!」
いろはに直してもらいながら、士郎たちに支えられる切歌。
「士郎、皆…、これで終わったデスよね?」
「あぁ、お前の絶唱であいつが出したゾンビは全部消えたし、特典を失ったあいつは後で師匠たちが回収するから心配するな」
「そうデスか。
うぅ~、体中が痛いデース…」
「だから本気かって聞いたんだろうが…、まぁあいつを倒せたんだし、良しとはするが」
「今後は善処するデス…?
今誰かあたしたちを見なかったデスか?」
「…?
いや気のせいだろう、ここには俺たち以外いないし」
「うーん、何かいたような…」
切歌は未だ痛む体を士郎たちに支えられながら考える。
一方、その様子を遠くから見ていた少女がいた。
灰色の髪を揺らし、マフラーをまなびかせながら、どこか複雑そうな顔をしていた。
「…切歌、ここにいたんだ」
少女はそう言うと、静かにその場から去った。
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