「えっ、誰かにつけられてる?」
学校からの帰り道、いろはは切歌からそう聞いて驚いた。
「そうデスよぉ…、特にこうして外に出てる時はずっとそう言うのを感じちゃうんデス。
何だかこそこそとあたしの後ろをついてきてるみたいデスが、振り返ったら誰もいないって感じで…」
「そうなんだ…。
ねぇ、何だったら今度から私や士郎くんたちと一緒に帰る?」
「うぅ~それもそうデスけど…」
そう言ってると、目の前で誰かが誰かを蹴り倒してるのが見える。
しかもよく見ると、その蹴り倒されてる側は善逸で、怯えてる子供を庇ってるように見えた。
「善逸くん!?」
「ちょっ、そこの君!
何をしてるデスか!?」
二人は善逸を蹴り倒してる少年を止めに入る。
だが少年は悪びれない様子で言った。
「何って、そこにいる子供が手に持ってたアイスクリームで俺のズボンを汚したんだ。
だからちょっと立場を教えてあげようとしたんだけど、金髪の彼がしゃしゃり出てきてね」
「うっ、うぅ…!」
よく見ると、どれだけ蹴られたかわかるぐらいに善逸は血を流していた。
「この子はただ、アイスクリームに気を取られて前を見てなくて、ぶつかっただけなんだ…っ。
お前の服を汚そうなんて考えてなかったんだよ!」
「へぇ、まだそんな口利けるんだ…。
んで、君たちはこいつの味方なわけ?」
「仲間デスよ」
「仲間、仲間かぁ…。
じゃ、君たちも俺の邪魔をするなら、俺にとっては悪だ。
俺の正義の下に消えなよ」
そう言うと少年は巨大な鎧を身に纏い、巨大な刀を構える。
「これって、まさか…!」
「装甲悪鬼の!?」
「そうさ。
さっ、とっとと消えてもらうよ」
『…!』
刀が振り下ろされると同時に切歌といろはは変身し、切歌はキラメイシールドを展開して防ぐ。
「へぇ、今の防ぐんだ」
「ぐっ、生憎とあたしたちはこれでも戦い慣れしてるデスから!」
キラメイシールドで振り払って距離を放し、キラメイサイズへと変形させて構える。
「善逸、ここはあたしたちが何とかするデスから、その子を安全な所に連れていくデス!」
「わ、わかった!」
「へぇ、仲間を逃がすんだ。
まぁ良いさ、どうせあの怪我だとそう遠くは行けないだろうし」
「けど、あなたを行かせない!」
「じゃあ、やってみなよ」
凄まじい力を発揮した少年に、二人は立ち向かう。
切歌がキラメイサイズを構え前に出て、素早く手数の多い攻撃で切り刻み、後ろからいろはがキラメイショットをマシンガンのように撃ち込む。
「ぐっ、痛いな…。
でも、それがどうした!」
「っ!」
痛みをもろともしない少年はそのまま斬りかかる。
先程よりも強い一撃が放たれようとした瞬間、切歌はある異変に気付き、一瞬速く避ける。
「…っ、その装甲悪鬼の、もしかして正宗のデスか!」
「へぇ今のでわかるんだ」
体の節々を見ると、切歌といろはが傷付けた箇所とは別に、明らかに新しい傷ができてそこから血が流れてるようだった。
「そうだよ、これは装甲悪鬼の正宗、正義を体現する鎧さ。
ま、力を使えば使うほど体に負担がかかって痛いんだけどね」
「じゃあどうしてそこまで…!」
「それは俺が持つ神器の力さ」
そう言うと、少年の体の傷がなくなっていく。
「な、治ったデス!?」
「そうだ。
俺は神器トワイライト・ヒーリングで体を治すことができるんだよ。
だからこの正宗の副作用はハンデにもならないんだよ。
そういうことで、君たちはただ俺にやられるだけ、わかったかな?」
上から目線で小馬鹿にした言い方で見下す少年。
だがいろはと切歌は構えるのをやめなかった。
「じゃあ聞かせて。
あなたにとっての正義って何なの?」
「はぁ?
そんなの決まってるじゃないか。
どんなことがあっても俺に楯突くやつだよ。
さっきの子供も、俺のズボンをアイスクリームで汚したから悪なんだ。
つまりは俺そのものが正義なんだ」
「そう、なんだ…。
…切歌ちゃん、私があの人に撃ち込んだら、走ってくれる?」
「了解デス」
「何、作戦会議かなにか?
おいおい、俺には勝てないって、わかってるのか、なっ!!」
少年が二人に向かって走ってくる。
「悪いけど、あなたはここで終わり!」
『キラメイチャージ!』
『チェックメイジ!!』
「っ!!」
少年に向けて、いろははキラメイショットでキラメイバレットを撃ち込み、少年はその衝撃でよろける。
「…はっ、無駄だってのがわからないかな?
こんな傷、俺の神器でっ!?」
少年は体に何か異変を感じて、足元がふらつき、次第に膝をついて血を吐いた。
「ごぼぉっ!?
な、なんだこれっ、どうなってるんだ!?」
「今あなたに、過剰回復させるバレットを撃ち込んだの!
私の特典は、魔法少女環いろはの力、つまりは治癒魔法を取り扱ってるから、バレットに治癒魔法の魔力を過剰に入れたんだよ!」
「なっ!?」
つまりは治癒も過剰にすれば毒となるもの。
治癒魔法を過剰に付与したバレットを受けて、それだけでも強力だが、さらに自身の持つ治癒の神器で回復をしてるから、回復すればするほど体中の組織が破壊される。
破壊されれば回復し、破壊されれば回復を、少年の体の中で繰り返している。
「うわぁ、相変わらずデスけど、過剰回復がえげつないデース…」
「切歌ちゃん、後はお願い!!」
「了解デース!!」
『キラメイチャージ!』
切歌はキラメイサイズを鎖鎌のように変化させ、鎖で少年を縛り付ける。
「ぐっうくっ!」
「フィニッシュデース!!!」
【縛鎖・Aァン怒Ro女蛇】
『チェックメイジ!!』
「ぐぅあっはぁ…!!」
少年は身動きが取れないまま、キラメイサイズの回転切りを直接くらい、そのまま倒れ、特典の宝石を回収される。
また、神器が止まったからか、身体中の破壊も止まったようだった。
「…ふぅ、何とか勝てたデス」
「うん、お疲れさま切歌ちゃん…!?
切歌ちゃんっ後ろ!」
「ふぇっ?」
後ろを振り返ると、少年が血塗れで立ち上がり、手にはナイフが握られ、血走った目で二人を睨んでいた。
「ま、まだ動けるデスか!?」
「こふっはぁはぁ…!
俺が、俺が正義なんだぁああああああああああああ!!!!!!!」
少年はナイフを握り締め、二人を刺そうとした瞬間だった。
「転生者が、これ以上切歌に手を出すな」
『えっ?』
声が聞こえたと思ったら、切歌たちと少年の間に、マフラーをたなびかせオレンジ混じりの紫の装甲とを纏い、灰色の髪をした少女が降り立った。
「な、何だお前はっ!?」
少年の言葉は続かず、腹に目掛けて少女の拳が突き出され、続けざまに上段蹴りにて少年を蹴り飛ばした。
あまりにも威力が高かったからか、少年はそのまま気を失った。
「…灰色の、立花響?」
切歌は、その少女の姿を見てそう呟いた。
少女は切歌たちに振り向く。
「…切歌を見つけて、転生者が襲ってこないか気になってつけてたけど、まさか切歌も戦える力があったなんて…」
「えっ、あたし?
あの、何であたしを?」
「…やっぱり私のことがわからないよね。
姿が生前と違って変わってるし。
できればこの姿で会いたくはなかったけど…」
少女は複雑な表情で口元のマフラーをずらし、改めて言う。
「久しぶり、切歌。
私だよ、翳里 響だよ」
「えっ、翳里 響?
えっえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!???????」
目の前の少女の発言に、切歌は驚きのあまり叫んだ。
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