真実に至る宝石の勇者   作:ガンダムラザーニャ

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第31話:怨嗟と悲哀に満ちた奏者に安らぎの歌を

「ほ、本当に、翳里 響、デスか?」

 

「うん、そうだよ」

 

切歌は目の前の少女に問う。

 

翳里 響、それは切歌の生前の親友の名で、目の前で連れ去られた少女の名だった。

 

「な、何でその姿に?

髪色と性別以外もう別人デスよ?」

 

「…これはあいつらに見つからないために、転生した時に神様に頼んでもらったんだ。

それに、目の前で殺された切歌を守れなかった弱い自分との決別も兼ねて」

 

「え?」

 

「それよりも、私にも聞かせて」

 

少女、響はいろはに目を向けると、キッと睨み付ける。

 

まるで親の仇を見るような目で。

 

「そこの女は転生者だよね?

何で切歌はそいつといるの?」

 

「えっ?」

 

「答えてっ!

どうして切歌のそばにいるの、転生者!」

 

「うっ!?」

 

一瞬でいろはに詰め寄り胸ぐらを掴んで響が食って掛かる。

 

「ちょっ、響!?

いろはに何するデスか!

彼女は敵じゃないデスよ!?」

 

「き、切歌…」

 

切歌に止められ、悲しい表情になった響はそのまま二人から距離を取り始める。

 

「敵じゃないって、どういうこと?

転生者は、私利私欲のために人を殺す異常者なんだよ?

だから、やっつけなきゃいけないんだよ?」

 

「だからって、いろはに敵意を向けるのは間違ってるデス!

それに、転生者は決して異常者なんかじゃない、一人の人間デス!」

 

「…っ、切歌だって。

切歌だって、その転生者に殺されたくせに!!」

 

「っ!」

 

「あ…」

 

ワナワナして怒鳴った響の言葉に、苦虫を噛んだような気分になった切歌だが、響はそんな切歌の表情を見て泣き出しそうな顔になる。

 

「ご、ごめんね切歌、嫌だよねこう言うこと言われると。

ごめん!」

 

「ちょっ、どこに行くデスか響!」

 

マフラーで顔を隠してそのままどこかへ行こうとする響を、切歌は止める。

 

「…切歌がどうしてその女と一緒にいるのかわからない。

この前見かけた切歌と一緒にいた他の奴らも。

でも、私は転生者を許さないし、許せない。

切歌を殺し、私を弄くった挙げ句に殺したあいつらが…!」

 

「響…」

 

怨嗟と悲哀が入り混ざった言葉に、切歌は何も言えなかった。

 

「今日のところはこれで帰るけど、また会ったら、聞かせてね、切歌…」

 

「あっ待つデスよ響!」

 

切歌が止める間もなく、響はそのままジャンプしてどこかへと消えてしまった。

 

「響…どうして」

 

「切歌ちゃん…」

 

いろはは切歌を連れて帰ったが、そこに言葉は交わされることはなかった。

 

屋敷に帰った後、士郎たちにこの事を報告し、響を説得することになったが、どうすべきか迷い、夜が更けてしまったので眠ることにした。

 

だが切歌は眠ることができず、庭から夜空を見上げていた。

 

夜空に浮かぶ月、それを見てるだけで、生前を思い出してしまう。

 

翳里 響という少女は、元々空手を習っていた少女だった。

 

しかも道場の中では男子にも勝ってしまうくらいに強く、最強だった。

 

それに対して、切歌は空手を習ってる訳でもなければスポーツを習ってるわけでもなかった。

 

精々趣味として歌を歌ったり聴いたり、それから音ゲーなどのリズムゲームをやってる程度だった。

 

だけど二人は気が合って、仲が良かった。

 

二人で学校の帰りや休みなどでカラオケに行ったり、人気のない屋外で一緒に歌を歌ったりしていたし、響も道場が終わった後の楽しみにしていたほどだ。

 

切歌から見て、響は熱心で正義感のある少女だった。

 

誰かを助けたいからと、進んで人助けもするし、その誰かに手を伸ばさずにはいられない質だった。

 

それで誰かを助けれたと思った時には、優しく微笑みかけるのだ。

 

切歌もそんな響と一緒に人助けをすることもあった。

 

だけど、転生してようやく再会できた響の姿は。

 

「響のあの目は…」

 

再会した響の姿は、髪色は違ったが生前一緒に見ていたシンフォギアの主人公の、立花響のそれだった。

 

響は立花響のことが好きで、憧れていたから、転生した時に神様に頼んでその姿にしたのだろう。

 

だが、一番驚いたのは、響のあの時の目だった。

 

かつてのような、優しさと正義感に溢れたものは既になく、あるのは悲しみと怒りだった。

 

響の目の前で殺されてしまった切歌には、響のその後のことは知らない。

 

でも、あの言動から察するに、襲い掛かった集団に何かをされたのだろう。

 

だけど、知ろうにも情報が足りなさすぎる。

 

だから知りたいのだ、何があったのかを。

 

そして、いろはたちに対する誤解を解きたいと願った。

 

できれば、響の傷付いた心を癒してあげたい。

 

そう思う他何もなかった。

 

「響、あたしはあの後に何があったのかわからないデス。

…だけど、今はその心に安らぎを与えてあげたいデース。

~♪」

 

切歌は友を思うが故に涙を流しながら、月に向かって歌う。

 

歌声を聞き付けて来た士郎たちも、そんな切歌の背中を見て察し、ただただその歌を聴くだけだった。




翳里 響の生前の姿については、ポケモンのサイトウをイメージしてます。

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