真実に至る宝石の勇者   作:ガンダムラザーニャ

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第33話:怠惰なる指先

「まず、響が好きなお肉をデスね…」

 

「あっ、待ってよ切歌ちゃん!」

 

「…」

 

バイオトリケラの転生者(?)を倒し、響との会話をして翌日、武を除くキラメイジャーたちは買い物に出掛けていた。

 

武は現在、部活の助っ人に行ってるのでこの場にはいない。

 

それで、切歌は昨日言ってたように、響と一緒に食事をするために買い物をすることになったのだ。

 

そんな中、善逸は心配そうに切歌を見ていた。

 

「どうしたんだ善逸?」

 

「ふぇっ士郎!?

い、いやぁ、何でも、ない、よ?」

 

「そうは言うが、お前昨日から様子がおかしいぞ?

切歌のことで、何か気になることでもあるのか?」

 

「…いや、切歌ちゃんというか、響ちゃんのことでちょっと…」

 

(どうしよう、言うべきなのかな?

けど、俺が一瞬だけ聞こえたってだけで、ちゃんと確証もないし…。

でも、本当にあれは…)

 

「善逸?」

 

「…っ、大丈夫だよ!

それよりも、さ。

あのバイオトリケラから出てきたあの機械、結局なんだったの?」

 

「……あぁ、あれのことか。

…」

 

「士郎?」

 

「悪い、少し場所を変えるぞ」

 

「えっちょっ!?」

 

士郎がほんの少し切歌たちを見てから、善逸を連れて外に出て、人気のない場所へと連れていく。

 

「お、おい士郎!

どこまで連れていく気なんだよ!」

 

「悪いな、ちょっとあそこじゃ話しにくい内容だったからな」

 

「えっ?」

 

「あの機械はな、中にあれが入ってたんだよ」

 

「あれって、何だよ?」

 

「…」

 

士郎は少し考えるように少しだけ目を瞑ってから、口を開いた。

 

「人間の脳だ。

それが容器に収まってる状態で入ってたんだ」

 

「…!」

 

善逸は少し口を押さえるが、話を聞こうとする。

 

「そ、それって、まさか、特典の影響?」

 

「凛に調べてもらったが、あれはそういう類いじゃなかったんだ。

むしろ、誰かに無理矢理摘出されて、特典を発動するだけの装置にされちまってたって話だよ」

 

「うっ…!」

 

「…無理はするなよ。

トイレはそこだからな」

 

「…っ!」

 

青ざめて気分が悪くなった善逸はすぐさまトイレに駆け込む。

 

そしてすぐに外からでもわかるほど嗚咽と嘔吐の音がした。

 

そのあとしばらくして、善逸が戻ってきた。

 

「うっうぅ…」

 

「…悪いな、こんな話をして。

けど、買い物をしてる最中に言うのもあれだったからな」

 

「…うん、大丈夫だよ。

けど、転生者をそうしたのって、一体…」

 

「さぁな。

…そう言えば善逸、お前さ何か言いたそうにしてたが、やっぱり何かあるんだろ?

この際だ、言ってみろよ」

 

「う、うん…。

実は響ちゃんのこと、なんだけど、さ…」

 

善逸は響のことを伝えた。

 

「…響からおぞましい音が?」

 

「うん、ほんの一瞬だったけど…。

けど、同時に響ちゃん本人と隣り合わせになってると思うんだ」

 

「お前の耳で、響はどんな音だったんだ?」

 

「…俺たち、というか転生者に対して、怒りと憎悪の音がしたけど、切歌ちゃんに対してはまるで過保護な親みたいな音だったよ、多分生前の影響なのかなあれは。

けど、同時に人を守りたいって音が大きかったんだ…。

多分今は当たりがきつくても根はお人好し、なんだと思うよ」

 

「そうか…」

 

「切歌ちゃんもそうだけど、響ちゃん大丈夫なのかな?

何か変なやつに何かされてるんじゃないかって」

 

「さてな。

…けどそうなると、嫌な予感がするな。

転生者の特典の中には、転生者本人すら気付かない能力とか副作用のあるやつがあるからな」

 

「うん…」

 

「あっ、二人とも!

ここにいたんだ。

もう探したよ?」

 

二人が話をしてる最中に、いろはがやってきた。

 

「んっ、いろはか!

悪いな、少し善逸と話をしてたんだ」

 

「あれ?

そう言えば切歌ちゃんは?」

 

「それが、買い物の途中で、響ちゃんに会って、それで響ちゃんが切歌ちゃんと話がしたいって…」

 

『えっ?』

 

「え?」

 

いろはの言葉を受けて、嫌な予感が確信へと変わった二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、切歌と響は人気のない場所に来ていた。

 

「…」

 

「あの、響?

話って、どうしたんデスか?」

 

「…ここまで来れば、あいつらは来ないよね」

 

「え?」

 

瞬間、響が切歌の肩を掴んでこう言った。

 

「切歌、今すぐ私と一緒に逃げよう!

こんな、転生者がいるこの異常な世界から!

転生者のいない、どこか平穏なところへ!」

 

「えっ響!?」

 

「大丈夫だよ、私はガングニールの他にもエレクライトって言う特典もあるから直ぐに別の世界に連れていってあげるから!」

 

「ちょっ、いきなり何を言ってるデスか響!!」

 

突然のことに困惑が隠せない切歌は響の手を振りほどく。

 

「一体どうしたんデスか響?

どうしてそんな話を」

 

「この近くに危険なやつがいるんだよ。

だから、やつが来る前に!」

 

「やつ?

響、そのやつって誰のことデスか?

もしかして、転生者デスか!?

だったら皆も連れて…」

 

「ダメっ!!」

 

「っ!?」

 

「そんなことすれば、切歌は戦わざるを得なくなる。

もう私は切歌が転生者に殺されるところなんて見たくないんだよ!!」

 

「けど、そんな危険な転生者がいるなら、放っておけな…」

 

「一度転生者に殺された癖に、何で戦いにいくの!?

相手は異常者なんだよ!?」

 

「…っ、確かにあたしは生前転生者に殺されたデス。

けどだからこそ、あたしのような思いをしてほしくないし、その転生者には誰一人として、殺して欲しくないから、戦うんデス!!

それに、転生者は決して異常者なんかじゃない、一人の人間なのデスから!!」

 

「…っ、どうして、そんなことが言えるの!?」

 

「あたしは、これまで色んな転生者と戦ったことがあるデス。

響が言ったように、私利私欲で戦う異常者もいれば、静かに暮らしてる人たちだって、この世界にはいるんデス!

人間も転生者も、同じデスよ!!

善人もいれば悪人もいるように、色んな可能性を持ってるデス。

それに、響だってそうじゃないデスか!」

 

「えっ」

 

「響は、あたしたちを元転生者から守ってくれたデス。

あたしたちだけじゃない、あの幼稚園バスだって」

 

「あ、あれは、その…」

 

「…どうして、気付かないデスか?

響だって、転生者なんデスよ!!

転生者でありながら、人を守るヒーローデス!!」

 

「あっあぁ…っ」

 

響は自身の本質と転生者であるという矛盾を突き付けられ、切歌の言葉に反論できず、後ずさりをする。

 

それに構わず、切歌は響に手を差し伸べる。

 

「だから、一緒に戦ってくれないデスか?」

 

「き、切歌、私、私はっ『あなた、怠惰デスねぇ?』」

 

「ふぇっ?」

 

瞬間、切歌の差し伸べた手が、見えない強い力で握り潰された。

 

血が飛び散り、二人を汚す。

 

「なっあっ…!?」

 

潰された手を押さえ、切歌は膝をついた。

 

痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

 

壮絶な痛みが切歌を襲う。

 

苦痛に耐えながら、切歌は響の顔を見上げる。

 

驚愕、呆然、そんな感情が入り交じっていた。

 

だがその瞬間、響の顔が狂気に歪み、高笑いをする。

 

「…ひ、ひひ、あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!

何と言う、何と言う怠惰っ!!

あなたがやろうとしていたことは、よりにもよって一人のキラメイジャーを、あなた諸とも別の世界へと連れていくとは、何たる怠惰デスか!!

あぁ脳が震えるるるるるぅ!!!」

 

「…!?」

 

響が、少女であることも忘れたかのように笑う。

 

「しかし、そんなあなたでも、やはり私の指先としては体が馴染むのデス!!

怠惰であるのに対して、このことについては勤勉だと思うのデスよ!!」

 

切歌は戦慄を覚えた。

 

今の言動から察するに響が、別の誰かに取り憑かれて狂っていたのだから。

 

「ひ、響?」

 

「これはこれは、ご挨拶が遅れました。

指先ながら自己紹介を。

私はヨドンヘイム幹部兼魔女教大罪司教『怠惰』担当、ペテルギウス・ロマネコンティ…デスっ!!!」

 

狂気に歪んだ笑顔で、響がそう名乗った。

 

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