真実に至る宝石の勇者   作:ガンダムラザーニャ

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2年ぶりとなる投稿になります。

この作品の今後についてアンケートを用意しましたので、皆様の一票をお待ちしております。


第36話:死神の葛藤

『~♪』

 

『ふふっ、切歌って本当に歌が上手だね』

 

『はいっ、でも響と一緒に歌うのも好きデスよ?』

 

『えっ、でも私切歌みたいに歌は上手じゃないし…』

 

『そんなことないデスよ!

 

あたしは響の歌を聞くと元気いっぱいになるデスから!』

 

『私の、歌で?』

 

『そうデスっ!

 

じゃあっ、これから歌うデスよ~!』

 

『あぁ待ってよ切歌!

 

…もう、切歌ったら、ふふ』

 

響は夢を見ていた。

 

懐かしく、とても楽しかった過去の夢を。

 

響と切歌は、親友だった。

 

とても仲良しで、二人は一緒に歌うこともあった。

 

響は人助けが好きで、切歌と一緒に困った人たちを助けたこともあった。

 

とても楽しかった。

 

あの時までは。

 

ある日、二人で帰っていた時、突然謎の集団が襲い掛かってきた。

 

しかも銃を持っていて、切歌は咄嗟に響を庇うようにして前に立ち、撃たれた。

 

その時怖さに身をすくんだ響は怒りを覚え殴り掛かろうとしたが、大勢に取り囲まれ両手足を折られてしまった。

 

痛くて動けなくなった響を助けようと、切歌は止めに入ったが今度は頭を撃ち抜かれて死んだ。

 

それも目の前で。

 

その瞬間、怒りもそうだが同時に激しい憎しみも抱いた。

 

しかしどれだけ吠えようと、手足が折れて潰れてたので抵抗もできない。

 

それどころか、どこかわからない施設に連れ込まれ、体を弄くられた。

 

挙げ句の果てには何かを注入されたと思ったら体を醜い化け物の姿に変えられ、そのまま撃ち殺された。

 

悔しかった、大切な親友を殺しただけでなく、自身の尊厳を踏みにじり、化け物に変えられた上で殺されたから。

 

そして死んでから、転生した時に、神様が現れた。

 

どこの誰だったかはわからなかったが、自分を生き返らせてくれた。

 

その際、過去の弱い自分との決別を兼ねて、姿を神の色は違うがシンフォギアの立花響にしてもらい、特典のガングニールとエレクライトをもらった。

 

転生した時に、誓った。

 

今度こそ切歌を守りたいと。

 

そして自分のような犠牲者を出したくないと。

 

転生してから、人に襲い掛かろうとした転生者を見つけては叩きのめして武器を使えないようにしてから警察に突き出したりもした。

 

そんな日々を送っていた時、切歌を見かけた。

 

切歌もまた、転生者から人々を守るために戦ってるようだった。

 

でも、切歌の周りには、彼女の仲間らしき転生者たちがいた。

 

それが響にとっては気に食わなかった。

 

響にとって、転生者は自分の欲望のために人を弄ぶ異常者だから。

 

何より、切歌を殺し自身の体を弄くった挙げ句化け物にして殺した連中だから。

 

何としてもあの連中から切歌を引き離さなければならない。

 

そんなことを考えてる時だった。

 

そう、一度切歌を見かけてからすぐその場から離れた直後。

 

謎の黒いローブを纏った集団が響に襲い掛かってきた。

 

響も抵抗してローブたちを倒したが、そのボスとも言える人物に完膚なきまでに打ちのめされた。

 

それがペテルギウスだった。

 

見えない攻撃に打ちのめされてもなお、響はペテルギウスたちに屈しないとばかりに睨み付けた。

 

それを見て何か思い付いたみたいに笑ったペテルギウスは、懐から本を取り出した。

 

本人曰く、福音だという。

 

するとペテルギウスはこれだけ転生者に対して憎しみを抱いてる響を気に入ったのか、ローブたちに体を治させてこう言った。

 

『あなたのような勤勉な方にお会いできたことを、心より歓迎したしますデス。

 

故に福音に従い、あなたは私の指先になってもらうのデス』

 

それっきり、ペテルギウスたちは姿を消した。

 

何のことかわからなかったが、あとですぐにわかった。

 

それは幼稚園バスに襲い掛かろうとしたあの転生者と戦い終わってから、成り行きで一緒に戦った切歌たちと話をしていた時だった。

 

ふと少し気を抜いた瞬間に、体の内側から自分ではない何かが前に出る感覚を覚えたのだ。

 

その時は何とか抑えたが、切歌たちから距離を放してから、ペテルギウスに言われた。

 

勤勉なあなたの手助けになればと、指先の一人にと。

 

つまり、響はペテルギウスに取り憑かれてしまったのだ。

 

それ故にまたペテルギウスが出る前に切歌を逃がそうとした、はずだったのに。

 

結果的に、切歌を傷つけてしまった。

 

おまけにそのことをペテルギウスに突きつけられて。

 

違う、自分じゃない。

 

全部、全部ペテルギウスのせいなんだと、言い切りたかった。

 

だけどできなかった。

 

ペテルギウスの言っていたことは否定しようのかい事実だから。

 

確かにペテルギウスに取り憑かれたが、それに抵抗しきれなかったのは、他でもない自分自身だ。

 

そのせいで、切歌を傷つけてしまった。

 

「…」

 

ふと、目を開けて空を見た。

 

あれから1日明けたらしく、路地裏から朝日が指していた。

 

それを遮るように、響の頭上に掛けられた傘が影を作る。

 

奇しくも今の響にとって、もう自分は後戻りできない、光の下を歩けないと悟らせるものだった。

 

「…ははっ」

 

そう考えただけで、響は膝を抱え顔を埋め自虐的に笑った。

 

もうどうでも良い、何も考えたくない。

 

どうせ自分なんか、守りたかった親友をこの手で傷付けるしか能がない女だから。

 

そうして思考を止めた瞬間、ペテルギウスの嘲笑う声が聞こえ、その直後に響の意識はなくなった。

 

一方その頃、気が付いた切歌はいろはから治療を受けていた。

 

「…一通り治せたけど、切歌ちゃん大丈夫?」

 

「はいっ、さっすがいろはデース!

 

あれだけの怪我もなくなっちゃったデス!

 

…まぁ、それよりも」

 

そう言って訝しげに目を横に向けると、その先には物凄い勢いで泣き崩れている善逸がいてそれを隣で武が慰めていた。

 

「お"ぉぉぉぉぉぉぉぉ…!

 

ぎりかぢゃんっごべんねぇ…!

 

おれ"があのとぎ言っでおけばっあんなことにぃ…!」

 

「おいおい、いい加減泣き止めって」

 

「切歌、気分はどうだ?」

 

「あっ士郎!

 

はいっ、この通りデス!」

 

「…そうか。

 

おい善逸、いつまでも泣いてないで、面と向かって言えよ。

 

ほら、ティッシュやるから」

 

「あ、ありがとうっ」

 

「ってそれ俺のシャツだやめろって!」

 

「ぶぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

「やめろてめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

「うわっ悲惨だなこりゃあ…」

 

食事を持ってきた士郎だが、士郎はティッシュを善逸に渡そうとしたら、善逸が士郎の服を掴んで思いっきり鼻をかんだ。

 

しばらくして落ち着いてから、善逸は切歌と顔を合わせた。

 

「切歌ちゃん、本当にごめん!

 

俺、響ちゃんに何かあるのは気付いてたんだ!

 

響ちゃんからその…、おぞましい音がしてたから!

 

でも、切歌ちゃんにとって響ちゃんは親友だから、疑って欲しくなくて、傷付けたくなくて、黙ってたんだ!

 

だけど、こんなことになるなんて思わなくて…、とにかく本当にごめんっ!」

 

「はぁ…、やっぱりそう言うことだとは思ってたデスよ」

 

「えっ、気付いてたの?」

 

「そりゃあ善逸の顔を見ればわかるデスよ。

 

善逸ってば耳が良いのにおバカでスケベで、デリカシーはないデスけど、同時に優しいやつデスから。

 

…あたしのために、気を遣ってくれてたんデスよね?」

 

「…うん、だって切歌ちゃんにとって響ちゃんは大切な親友なんだから。

 

そんなことを言える訳、なかったんだ。

 

二人とも、傷つけたくなかったから…。

 

…あと切歌ちゃん、俺のことそんな風に思ってたの?」

 

「…良いデスか善逸?」

 

「うぇ?」

 

目を硬く瞑った善逸の肩を、優しく叩く。

 

そこに怒りはなく、むしろ感謝をしている目だった。

 

「あたしは正直、今回は善逸に感謝してもし切れないデスよ。

 

…もし、善逸がその事を言ったら、身がすくんで会って話をするのも、躊躇っていたかもデス。

 

でも、そのおかげであたしは響に対して分け隔てなく話ができて、響の事情を知ることができたデス。

 

…だから、ありがとう、善逸。

 

あたしたちのことを思って、何も言わないでくれて」

 

「き、切歌ちゃん…!

 

うっ、うぅ…」

 

頭を下げて、善逸はしばらく泣き続けた。

 

「それで、響と話をして、確信したんだろ。

 

響の中に誰かがいるって」

 

善逸が落ち着いてから、士郎が話し掛ける。

 

「はい、ペテルギウス・ロマネコンティだと言ってたデス。

 

魔女教大罪司教・怠惰担当だって」

 

「そうか、実は俺たちも駆け付ける時にローブを被った連中と戦ったんだ。

 

今思えば、あれも魔女教の連中だったってことだな」

 

「確かペテルギウスってリゼロのやつだったよな?」

 

「うん、最終的にスバルに倒されたんだけど。

 

まさか転生していただなんて」

 

「けど、一番の問題は響の中にペテルギウスがいることだ。

 

あいつが響を自分の指先として憑依してやがる」

 

「そんなの、大丈夫デス!

 

あたしがイガリマを使って「切歌」…ふぇ?」

 

名乗り出るように提案しようとする切歌に、士郎が遮る。

 

「お前に、それができる自信はあるのか?

 

確かに、お前の特典ならいけるかもしれないが、相手が相手だ。

 

場合によっては、お前抜きであいつを止めに行く」

 

「そ、そそ、そんなことないデスよ!

 

あたしの手に掛かれば、響を「切歌」…っ!」

 

今度は厳しく、そして強い言葉に、切歌は思わず萎縮してしまう。

 

「…手、震えてるぞ」

 

「あ…」

 

士郎に指摘されて、切歌は自分の手が震えてるのに気付き、手で押さえた。

 

「本当は、怖いんじゃないのか。

 

さっきみたいにやられたりしたし」

 

「……」

 

図星なのか、切歌は俯いて黙り込んでしまう。

 

それは、士郎の言葉を否定しきれないことを意味していた。

 

「それに、お前にそれだけの覚悟があるのか?

 

お前に、響を助けるための覚悟が」

 

「……ッ!」

 

士郎の問いに、切歌は押し潰されそうになる。

 

正直な話、あのときの憑依された響がとても怖かった。

 

自分の差し伸べした手を、見えざる手で握り潰された。

 

それでもわかってる。

 

響はペテルギウスに取り憑かれて苦しんでることも。

 

でも、怖かった。

 

響を安心させるために優しく笑ったが、すごく怖かった。

 

響をペテルギウスから助けられるのかも、自信がないし、怖い。

 

もし、失敗したら?

 

仮にペテルギウスの魂を切って追い出すことに成功しても、響の魂も巻き添えに切ってしまったら?

 

もし、そうなったら響はもう二度と帰ってこなくなるのではないか。

 

そう思うと、切歌は動けなくなってしまうのだ。

 

そうして悩んでいると、士郎が立ち上がる。

 

「これはお前の問題なんだ、お前がどうしたいのか、よく考えろ。

 

今はまだ暴れてないみたいだから、考えるだけの時間があるんだ。

 

それまでに、お前の答えを見つけろ。

 

俺たちは、お前を待ってるからな。

 

…行くぞ」

 

「……わかったデスよ」

 

そう言い残してから、士郎たちは部屋を出て行った。

 

残された切歌は一人、ベッドの上で膝を抱えて考えていた。

 

(あたしは、響を助けたいデス……。

 

でも、その方法がわからないデスよ……。

 

あたしには、そんな勇気はないんデス……。

 

あたしなんかじゃ……。

 

あたしみたいな臆病者には……)

 

すると、ドアが開いてそこから大河が現れた。

 

「おーい切歌ちゃん。

 

飯持ってきたぜー?」

 

「あっ……」

 

大河がいつもの虎のきぐるみの格好でご飯を持ってきた。

 

「いろはちゃんに怪我を治してもらったみたいだし、これでも食べて英気を養いさない」

 

「あ、ありがとデス。

 

…あむっ」

 

お盆に載ったおにぎりを一口食べる。

 

鮭の風味のある美味しい味が切歌の口内に広がる。

 

そうして、少し美味しそうに食べる切歌に、大河はいつもとのギャグ的な雰囲気とは違う、まるで優しく微笑む年上のお姉さんのような雰囲気で笑う。

 

「いやー、にしてもとんだ災難よねー。

 

お友達が、大変なことになってるでしょ?」

 

「…はいデス。

 

ペテルギウスに取り憑かれちゃって、あたしの特典のイガリマなら、助けられるのかもデスが、どうしたらいいのか…」

 

「ふぅーん…」

 

そこで、大河は椅子に腰掛けてから、真剣な眼差しを向ける。

 

「ねぇ切歌ちゃん」

 

「なんデスか?」

 

「切歌ちゃんにとって響ちゃんってどんな子かな?」

 

「えっ?」

 

いきなりの質問に戸惑いながらも、切歌は答える。

 

「う~ん、響はあたしの親友デス。

 

正義感が強くて、困ってる人がいたら助けに行こうとする、優しい子デスよ。

 

あたしも、よく響の人助けのお手伝いをしてたデス。

 

ま、まぁ、あたしは響みたいに鍛えてたわけじゃないデスから、よく助けられたりしたデスけど…」

 

あははと、切歌は照れくさそうに笑う。

 

「うんうん、切歌ちゃんから見た響ちゃんのことはよくわかったよ。

 

……それでね切歌ちゃん。

 

あなたは響ちゃんをどうしたいの?」

 

大河の言葉に、切歌は言葉を詰まらせる。

 

響には今、ペテルギウスが憑依している。

 

イガリマの絶唱を使えば、響を助けられるかもしれない。

 

でも失敗したら?

 

もし、ペテルギウスがそれに警戒して、響の魂を盾にするようなことをすれば?

 

そう考えたら、手が震えて仕方ない。

 

何より、今の響に会うのが怖い。

 

取り憑かれてるとはいえ、あの狂気に満ちた顔を見ると、自分の中の優しい響の思い出が壊れてしまうんじゃないかと思うと、怖いのだ。

 

そんな切歌に、大河は優しく笑いかける。

 

「ごめんごめん、ちょっと言い方が悪かったわね。

 

切歌ちゃんは響ちゃんを助けたいの?

 

それとも、助けたくないの?」

 

「そ、それは…っ」

 

士郎たちの前では気丈に振る舞ってたけど、怖くて怖くて仕方ない。

 

でも、もし。

 

願いが叶うのなら…!

 

「あ、あたしは…っ!」

 

ポロポロと、大粒の涙を流しながら、震える唇を動かし、言葉を紡ぐ。

 

「あたしは……っ、助けたいデス……。

 

響を、親友を、助けたいデスッ!!」

 

その言葉に、大河はニッコリと笑って見せる。

 

「だったら迷うことなんてないじゃん。

 

やるべきことは決まってるんだし」

 

「…え?」

 

「そのために、切歌ちゃんたちキラメイジャーには、それぞれキラメイストーンがいるんでしょ?

 

ね、マッハ?」

 

『う、うむっ、確かにそうだが…』

 

少し戸惑いながらチェンジャー越しに喋るマッハ。

 

『切歌、俺はあくまでも手段としてお前に教えることができるんだ』

 

「手段、デスか?」

 

『あぁ、お前と響を、心と心を通い合わせる手段だ。

 

これがうまく行きさえすれば、もしかしたらこの状況を打破できるかもしれないんだ』

 

「ほ、本当デスか!?」

 

思わず立ち上がって聞き返す切歌。

 

『あぁ、そのやり方は────』

 

マッハの言うやり方。

 

それを最初に聞いた時には驚いた様子を見せる切歌だが、それで響を開放できるならと、強く頷く。

 

そんな彼女に、大河は笑みを浮かべたまま言う。

 

「だからさ、切歌ちゃん。

 

まずは、あなたの大切なものを取り戻すために、戦うことから始めよっか?」

 

「……はいデスっ!」

 

こうして、切歌は再び立ち上がる決意を固めた。

 

それと同時に、転生者の反応を感知した。

 

恐らく、ペテルギウスに取り憑かれた響なのだろう。

 

だがもう怖くない、だって一番苦しんでるのは、他の誰でもない、響だから。

 

玄関では、士郎たちが待ってくれていた。

 

切歌も皆と肩を並べ、チェンジャーを使って変身する。

 

キラメイサイズを掲げる。

 

全ては親友を開放するため、宝石の死神の鎌は、再び振り下ろされようとしている。

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