戦場を駆ける有翼ノ一角獣《アリコーン》 作:お猿プロダクション
ところで皆さん秋刀魚は集まって任務はやりましたか?
私は幸運にも任務に必要な装備が揃っていたのですが、大体いつも装備が揃ってないので装備の改修開発はしっかりやしましょうネ゛ッ!
20XX年
9月30日 21時42分
北太平洋沖合 アリコーン交戦海域
彼我のミサイルが交錯し、レールガンの一撃が闇を裂き、バリアドローンが宙空を穿っても、アリコーンの心身は柔軟で緊張と危機感に硬直する事は無かった。それを指し示すかのように、このときアリコーンが放った言葉は いささか程も硬さを感じさせない声音をしている───
「敵艦隊?」
SACS隊からの報告に、だが彼女は緊張を煽られることはなくとも、不快そうには眉を顰めてはいた。
攻撃を加えたSACS隊ラファールMのRBE2
しかし、敵にもはや予備兵力など存在しないはずでは──────?………と、そこまで考えに至るほど、アリコーンの頭は硬くなかった。
主力の空母群を失った敵機動部隊の護衛艦が全速で接近してきたのだった──────思えば、伊201がそんな報告をしていた気もした──────基地航空隊や空母からの攻撃で損害を受けているだろう……とはいえ、有力な水上打撃部隊である事には変わりなく、"ペガサス"と"ユニコーン"の処理に注力したいアリコーンにとっては注意を散漫にさせるノイズであり、傷ついた艦娘隊、護衛艦にとっては脅威だ。
仕方がない──────とばかりに、アリコーンの空気が嘆息にまみれる。
「SACS隊全機、傾注せよ!新たな命令を伝える──────」
いうや、"ペガサス"を攻撃するために集っていた黒い影が、主君を護る近衛の如くにアリコーンの周囲に纏まって梯団を成し、その後に続く筈の命令に備えた──────轟く明滅と空に靡く火線が彼女の忠実にして勇猛なる
「敵艦隊を殲滅せしめよ!」
〜〜〜〜〜
同 21時45分
北方数十km
波間の白さそのを黒い闇に飲み込んだ夜の海は、その中で生じた荒々しい
前進、前進!ひたすらに前進を続ける深海棲艦艦隊──────否、群体あるいは群れ──────は水平線の未だ見えぬはるか先、数珠の如き火線の連なりと明滅の織りなす淡いオレンジ色に向けて突き進んでいる………軍隊が前進するとき、それを表わす言葉として「進攻」であるとか「進撃」と言った言葉が使われるが、彼女たちのそは「進攻」とするにはその隊列は乱れもはや原型を無くし、「進撃」とするには潰走に近過ぎるまでに無様な航跡を引き、さながら坂を転がる玉の様に、我先にと突き進んでいた。
空母艦載機による戦果も束の間、返す刀で飛来した橘花改の反跳爆撃や他空母艦載機による雷爆撃、銀河などの基地航空隊の襲来はこの近海に展開していたいくつかの深海棲艦機動部隊から艦載機運用等の有力な攻撃戦力を根こそぎ奪い去り、残された彼女ら護衛の巡洋艦、駆逐艦に取り得た道は、犠牲的な突入か無様な敗走しか有り得ず──────いかなる判断と意志が働いたのか知る術は無いが──────兎も角も、彼女らが選んだ道は前者であったのだ。
飢え散らかした肉食獣が、ただ一つの希望と見出した獲物を捕らえようとするかの如くに──────集団の統率こそ失ってはいても、その白い腹の中から煮え返る様に湧いてくる衝動の赴くがまま、爛々と青い眼を迸しらせた黒の群れは突き進む。だが彼女らは知らない──────その先に、不可視な鋼鉄の壁があって、それがどれほどの勇猛精進を凝らしても、粉骨砕身を尽くしても超えられない、高過ぎる壁が聳え立っていることを。
「……?」
最初の異変を見たのは、深海棲艦部隊の先頭をゆく2隻の駆逐艦ナ級だった。
この艦は、多くの場合艦隊の先鋒にあってやたらと先制雷撃を放って艦娘艦隊に被害を与えたり、一部の改修型は強力な対空電探と高角砲で航空戦力に多大な損壊を与える矛と盾を兼ね備えた強力な駆逐艦であった。だが今回に限ってはそうした性能によって深海棲艦部隊から突出した訳ではなく、単純に他艦艇と進行方向が同一であり、最大速力が速かった彼女らが結果として、自ずと先鋒を務めているだけでしかない。
その、部隊の先頭──────輪郭を伴わないポツネンとした明かりが彼女たちの前方に出現した。彼女らはこのような現象を知らなかったし、レーダーにも反応のない……いったい、あの灯りはなんなのか?ナ級の頭蓋を思わせる構造体は、もしかしたらそんな事を思ったかもしれない──────疑問は尤だっだが、彼女らが灯りの正体を知らなかったように、時間と"彼ら"もまた、待つ事を知らなかった。
………ドドドォン!!!!
「………!?」
灯りは突如として矢状に伸びたと思いきや、目にも止まらぬ素早さで先頭の2隻のうち1隻を炎と閃光の渦中に叩き込み、爆沈させていた。それが何であるかを知る前に、眼前で起きた光景が自身に差し迫った未来の姿である事を識った生き残りのナ級が、目標の認識も識別も定まらぬまま、狂った様に対空砲火の咆声を上げる。
それに触発され、上空の脅威"だけ"を認識した後続する深海棲艦群も対空火網の光を叩き上げ始めた。さながら、弾幕の壁とでも言うべき弾丸の群れが、空を埋め尽くさんとして闇夜の中に向かい消えてゆく。四方八方、考え得るあらゆる方角に向けて放たれる銃砲弾は、本来ならば却って混乱の元凶となり避け得るべきものであったが、こうして撃ち続けない事には、彼女達は自らの正気を保てないでいた──────尤も、深海棲艦に正気も狂気も有るのかは疑問の余地がある──────
そこに。
ダァンッ!!と振り下された光……糸が切られた様に沈黙するナ級。
ぐらっと、そのオタマジャクシの様なシルエットが傾いた瞬間、構造物の穴という穴から彩色豊かな炎が吹き出し、次には爆音と共に数十mにも達しようかという巨大な火柱を残して海中に没していた。
「───!」
強力な友軍駆逐艦の瞬間的な轟撃沈により波及した衝撃が、深海棲艦の心胆を震え上がらせる。そして数秒の後、立ち上がった炎と煙の壁を押し除け現れた超音速の刺客が、彼女らに致死の火矢を喰らわせようとする頃には全ての深海棲艦が深海よりも深い絶望の色で目を染め上げていて、そこに打てる手段を考える時間も能力も、僅かほどにも残されていなかった。
最初の着弾より数秒──────駆逐ナ級の作り出した黒煙の墓標から幾つもの尾が波打っていく様にして着弾の火柱が上がってゆき、破壊と炎の嵐は連綿として続いてゆく。
炎の波間の中で、撃ち上げられる銃砲弾の煌めきが虚しく空を掻いた。そんな羽虫のようなささやかな抵抗すらも、第二、第三の炎波が押し潰し、破壊し、海の波間へと押し込んで、その存続の一切を許さない……!
戦闘──────と呼ばれるには、甚だ一方的に過ぎたが──────が終わったのは、それから5分も経たぬ頃だった。星々の散りばめられた夜空に黒々として伸びる煤煙の摩天楼を突き抜け、暗色の鋭角が過ぎ去る。その先端には、新たなる獲物を見出した猛禽の如き鋭さと剣呑な輝きが伴っていた──────
〜〜〜〜〜
同 21時50分
深海棲艦群後方
遠雷が轟く様に水平線の向こうから見える光と音響には少なからぬラグがあった。海空を圧する嵐のような戦闘の光景は、水中にあって、ただ見ているだけであれば感嘆の伴った声と眼差しを許されるものであった。
「すーーーっ………げ。」
……ただし、実際にしてその声と眼差しを持った者がそれを許されるとは限らない──────伊号第二百一潜水艦こと伊201は、そんな声と眼差しを持っていて、かつ本来ならそれを持つことが許されない艦娘であった。
──────そもそも彼女を含めた潜水艦娘は、敵艦隊捜索の為の散開線構築とその退路遮断の為に出撃したはずだった。だが伊201は敵艦隊発見を報せた直後、その発信電波を深海棲艦艦隊に傍受され、その護衛駆逐隊の執拗な対潜哨戒を受けたのだった。それを躱し、五体満足のまま任務に戻っていれば百点満点だったものだが、伊201という水中性能の高さとそれに裏打ちされてしまった自信が、彼女をあらぬ行動へ駆り立てた。
ブチギレて追跡を開始してしまったのである。
もし、ここに提督が居れば「命令違反だぞこの大馬鹿野郎!」と叱咤しアリコーンだったならば「命令を無視すれば軍人じゃなくなりますよ。」と真顔で戒めたであろう。だが、それはたらればの話でしかなく、結局この場に居るのは彼女だけだった。
よって、彼女の
「しかし、バッテリーが上がったのが夜で助かったな……お天道様が出てたら蜂の巣だったぜ。」
ポンポンと頭に帽子のように被ってる艤装を叩きながら呟いた。いかな水中性能に優れるとは言え、その速度、機動力共に水上艦とは比べるべくもない。途中でバッテリーが上がってしまい、現在に至るまで
遠方にいる彼女が知る由もないが、それ正確には戦闘と呼べるかも怪しい一方的な展開で、更に言えばその戦闘は既に終わっていて、戦場は次なる海域に移動しようとしている。
「このまま追ってりゃ、追いつくだろ。マジで五、六発くらい泡吹かせてやるからな。」
目の前でその敵が全滅した事も知らずに、伊201はシュノーケル深度のまま潜航し進んで行った。
〜〜〜〜〜
同 21時53分
北太平洋沖合 アリコーン交戦海域
『───トラエタ、コウゲキカイシ!』『オマエハミギヲタタケ、コッチハヒダリノテキダ。』『リョウカイ!』『──イッセキゲキチン!』
幾つもの戦果を報せる通信とデータリンクによってリアルタイムでもたらされる情報から考えるに、"雑兵"の処理は順調なようだった。
「いい……良い!もっと撃て!鉄のかけらで命を砕け!」
壇上に立つ為政者か、或いは舞台に立つ役者の如くにアリコーンは大きく手を振るい、音吐朗々として言う。それは自身に掛けた暗示のようでもあり、ここより距離を置いて戦うSACS隊への激励のようでもあった。
振るった手を更に掲げ、クラシックの指揮者のような細やかな動きをした後にヒュと空を切って振り下ろした。
刹那──────ドドォ!
左右に広がる艤装の、羅列されたVLSから放たれたミサイルの群れまた群れ─────────事前に打ち込まれた飛行制御プログラムに基づき放射状の軌道を成すや、次には弧を描いて殺到する……!
立ちはだかった電磁バリアを乗り越え、"ペガサス"の懐へ──────爆発!……生き残った対空火器が直撃コースを取るミサイルを撫で切り、新たに突入するミサイルにはレールガンが速射し打ち砕いた。だが──────
「───」
爆炎の明かりと爆煙のカーテンの向こうで、不意に口角が上がる。
衝撃音───!!
「……ッ!?」
紫電の輝きが"ペガサス"の視界すべてを奪ったとき、全身に走ったビリビリとした激痛に気づく──────レールガン………!艤装だけではなく、本体に向けて放たれたレールガンの
「"ではなく人を撃つ。それが砲術"───こういう事でしょうか?」
『悪くない。』
マティアス・トーレスが「艦長」という肩書きを持っていた頃に、いつか自身の内で語っていた言葉をアリコーンは反芻する。それはきっと、生命を奪う仕事に就く者がどこかで持っておくべき心構えなのかも知れなかったが──────当時のマティアス・トーレスにとってはその限りでは無く、そして今のアリコーンには「ヒト型の深海棲艦か相手だからイメージしやすい」程度で留まっていた。
『──────難しく考える必要はない。SACS隊の攻撃で、敵の防御火力はお前よりかなり低い。その隙を突け。』
マティアスは言った。つまり──────やる事はシンプルだった。命令を受け、命を消す!
戦場に立ちながら、通信機越しではあったものの逢瀬の様にやり取りする彼女の内は、最早一角の様に有頂天でその背中には翼が生えていた──────
今や決したかに見える勝敗の行方などもはや眼中になく、眼前に居座る不愉快な偽物の自分を如何にして処理するかが彼女にとって重要だった。
しかし──────
『───アリコーン、撃破した"ユニコーン"は、もう沈んでいるのか?』
「は……?いえ……。」
マティアスは何故か、半身不随の
『では、"ユニコーン"から先に始末したほうが良い。』
「戦力を保持する"ペガサス"を放置するのは危険ではありませんか?」
『いや、俺の予想だが、恐らく』
バッゴォッ!!!!!!!!!
脱字ではありません!お使いの端末は正常です!
来月にも、もう1話投稿したいが…3199の円盤とウマ娘の独占配信が俺から時間を奪うんだ……!
それはそうと、感想と高評価お待ちして〼