戦場を駆ける有翼ノ一角獣《アリコーン》   作:お猿プロダクション

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みなさま!今年は全然投稿できなくて申し訳ありません!5本しか投稿できてない!(調べたら去年も5本だった)
カスすぎ!遅筆極まりすぎ!

それはそれとして、今回も少し先まで行く予定だったんですがまた調子に乗って筆が乗ってしまいました。ちょっとしか進んでません!ゴメンネッ!!一万文字超えて年も越しそうだったので切り上げました!



隻腕の狂演

 

──────その可能性がある事は、彼女とて理解していた。

 

 アリコーンである彼女を分割したか如き2つの存在、"ユニコーン"と"ペガサス"………艦娘隊との交戦の経緯と、直接砲火を交えた経験から、前者に空母としての間接火力が、後者に巡洋艦としての直接火力が付与されているであろうと。そして、その特性上、アリコーンの最大の武装───SRC-03a──────口径600mmに達するレールキャノンを有しているのは、空母機能を持つ"ユニコーン"であろう、と。

 なぜならば、アリコーンにおいてレールキャノンが格納されていたその場所は、まさに飛行甲板そのものであって、リニアカタパルトのすぐ目の前に存在していたのだ。そしてその飛行甲板は艦娘艦隊の攻撃──────主に、金剛榛名の特殊砲撃に依る────── によって破壊され、甲板は穴が空き、カタパルトなどは完全にひしゃげて、使い物にならなくなっていた筈なのだ。

 

 航空戦力の持たない母艦など、果たして些か程も脅威になるであろうか?──────そう結論付け、故にこそ戦力を保持し、アリコーンをして脅威と見做す"ペガサス"への対処を優先した──────それが、まさか。

 

 ………ああ、誰かが言っていた気がする。「怪物の腕が2本とは限らない」なんて。

 

 

 

 〜〜〜〜〜

 

 

 20XX年

 

 

 

 9月30日 21時55分

 

 

 

 北太平洋沖合 アリコーン交戦海域   

 

 

 

 起きた事象への理解も儘ならぬまま、押し寄せる濁流の様に襲って来た鈍痛へアリコーンの眉間は深く溝を刻んだ。

 堪える宛もなく、反射的に左腕を抱いた彼女の右手はしかし、空を掻いていた。

 

「……!?」

 

 脳をかき回された様な混乱が最初に彼女を打って、次には、薄ら寒い感覚を覚えた。刹那にも近い機敏さで自身の左半身を直接目で確認した彼女に衝撃をもたらす。

 

「嘘───」

 

 左腕──────上腕辺りから下が、無くなっている──────暗闇に溶け込む紺の制服のせいではない。闇に慣れた眼は明確に、肘から先までを喪失した左腕を映し出していた──────脂汗を噴き出す余裕を取り戻した体が今更のように痛みを増幅させ、さらに彼女の背を丸める。憤然とし、この状態を作り出した元凶を睨めつけようとした肢体はだが、反復される脳の指令を聞こうともせず、只管に傷口を庇い腹直筋を硬くするだけだった。呻きながら、かろうじて動いたのが眼球だけ──────そこには効力を失って墜落するバリアドローンが存在した。その奥で、重厚長大な黒塊を抱えた異形の姿が見える──────レールキャノン……!

 

 バカな……!飛行甲板の半壊にも関わらず、レールキャノンが生きていた!それに気付いて、そして発生した時にはもはや全てが遅く、アリコーンは自身の失態を心身をもって痛感するより無かったのだ──────唯一、バリアドローンの影になって姿を確認出来なかった事が却って幸いし、レールキャノンの弾丸が電磁バリアに直撃。結果、進路を逸らされアリコーンの心の臓を外れた事は不幸中の幸いと言えたかもしれない──────レールキャノンの直撃など喰らっていれば、何の問題もなくバラバラになっていただろう。

 

 だが彼女にとっては、そんな欠片ほどの幸運はどうでもよかった。

 

「───っ!!」

 

 その時すでに彼女の目は、カッと別方向に見開かれていた。その先には、今まさにミサイルを放った"ペガサス"の姿─────────「チッ!」と舌打ちを重ねて迎え撃つアリコーンのミサイルとレールガン──────だが数が少ない!おまけに、左舷にコースをとったミサイルを、どの火器も射界に捉えられない事を今更ながらに知る。

 レールキャノンの一撃は、アリコーンから左腕を捥いでいっただけでなく左舷第二船体上甲板を抉り通し、レールガンからVLSに至るまでを根こそぎ破壊していたのだった。こんなところで、運が悪い!

 

「テキダンガシャカイニハイリマセン!」「わかってる……!」

 指揮所かからの報告を煩わし気に突っ返すと、「くそッ!」──────悪態を吐きながら痛む半身を無理矢理捩って、右舷第二船体の対空火器を正面に向けた。これにら、左方向にも多少は射界を稼げる寸法だった………はたして目論見通り、CIWSの群れがミサイルを薙ぎ払い、レールガンの速射が迫り来るミサイルの矢状を光球へと変貌させてゆく。健在なバリアドローンが敵弾の進路上に展開し、発生した電磁バリアが弾体の大群を道半ばで潰えさせる。

 

 それでも鉄と電磁の網を潜り抜けた猛虎の如き火矢はアリコーンに牙を剥き、左舷側から猪突し──────直撃!

「ぐぁッ……!」

 爆轟と炎にまみれる中で、アリコーンの口から初めて悶絶の声が吐かれた──────ミサイルの直撃は、これ程の衝撃があるものなのか……!

 遅れてやってくる鈍痛……!肉骨に染みるが如きじりじりとした痛みが脳髄を襲い、半身を震わせ、自由な動きと思考を蹴り飛ばしてゆく。

 

 加えて──────

 

『ヒダリゲンセンタイカサイハッセイ!』「バッテリーか……!」

 

 アリコーンのパワーを支える大容量のリチウムイオン電池が被弾により損傷、短絡が生じ、燃焼を始めたのだ。彼女の心の内をそのまま吐き出したような、或いは地中深く地獄への蔵を開け放って漸く目にすることが出来るような、赤白い噴炎。

 照りつける炎は苦悶に皺を作るアリコーンの顔にさらに深い影を作り、紫電の髪色を闇を遮る燃え盛った篝火色に染め上げている。

 

「左船体放棄、全乗組員(・・・・)は船体の浸水防止に努めよ……!」

 

 アリコーンは思い切った決断をした──────本来、艦娘の艤装は妖精さんと艦娘本人の二人三脚(?)によって操られ、所詮は人間以上のマンパワーを発揮できない艦娘の操作をサポートすることが前提となっている──────それは、高度に自動化・省人力化が行われていた"軍艦"アリコーンも同じで、いま現在"艦娘"となったアリコーンも操砲、ミサイルの発射等の行動は指揮所に詰める妖精さんたちに任せる所が多い。

 ──────それを艦娘本人のみでやると……!けれども、当のアリコーンは完全にそのつもりであったし、この後に及んでそこに口を挟もうとするほど彼女の乗組員妖精さんたちは狭隘ではなかった。

 

『…リョウカイ!』『ヨンバンハツデンキヘノジョウキハカットダ!ゼンブニバンニマワセ!』『──アツリョクベンミハットケヨ!』

 

 続々と艦内状況を整理し、対応に当たってゆく妖精さん達──────艦のダメージコントロールは総じて乗組員妖精さん任せに出来るため、艦娘本人は戦闘に注力し、艦の安定性を高い水準で維持できるという意味では、これは「無い」選択肢ではなかった。自動・省人力化によって艦の規模に比して著しく乗組員の少ないアリコーンならば尚更であった。

 

 だが、今────── 彼女が対峙している敵手がそれで対応出来る存在であるか(・・・・・・・・・・・・・・)という点については、その限りでは無い。

 

「チッ……!」

 

 前方の暗闇──────火災の灯で夜に慣れた筈の目が効かなくなっていた──────から放射状の線が引っ掻き傷のように伸びて来るのを見た。それは紛れも無く"ペガサス"が放ったミサイルであって、それは間違い無くアリコーンを狙い澄まし放たれている。加えて、夜空はほぼ全天から敵の新型機(深海棲艦のSLUAV)が襲来、ミサイル発射の態勢に入っていた。

 

「迎撃っ!バリアドローン発進始め!SLUAVは敵機と"ペガサス"を攻撃……!」

 

 ──────的確ではあった。しかし彼女がその時に射出できたバリアドローンは10機にも満たず、敵ミサイルの雨は自身にまで到達するだろう………しかしそれが何だというのか(・・・・・・・・・・)!?

 

「"命を求めるなら命を捨てよ"……!」

 

 かつて自身の胎内に彼がいた時、そう言っていた。

 

「"退路はない"」

 

 考えずとも、唇が勝手にそう紡いでいた。

 

「"生き残るには相手の命を奪うしかないぞ"……!」

 

 マティアス・トーレスが演説する様にいつしか謳っていた言葉のそれを、アリコーンが自己暗示をする様に今になって口にしていた。そしてその言葉を実行せんとし、彼女の艤装は噴煙を吐き出した!

 

 新たに射出されたSLUAVが敵機の射界からアリコーンを外し、SAMが迫り来る敵ミサイルを叩き落とす。それでもやはりと言うべきか、至近にまで迫るミサイル──────弾幕──────爆発!………壁の如くに現れた光弾の大群がミサイルの前に覆い被さり、瞬く間に爆発光球の中にミサイルを沈めていった。あえてSLUAVとミサイルの迎撃域を絞る事で、突入方向を限定。今の彼女でも対応出来る範囲で最大限の火力投射を行ったのだった。

 

 そして主人の指令を忠実に実行する無機の尖兵たちは、その与えられる多様な任務を達するために持たされた高度な自己完結型アルゴリズムを駆使し、あらゆる光学、非光学センサを駆使し敵手の攻撃手段、その能力を判断──────そこに生命が自己の危機に陥った際、必ずや溢れる恐怖や、躊躇は存在しない──────ただ只管に冷たく無情なまま突っ込んでゆく!

 ウェポンベイが開け放たれ、次の瞬間には弾かれた様にしてミサイルを打ち出してゆく。放たれたら止まらない、その火矢はSAMの迎撃と嵐の様な弾幕とを潜り抜け、遂に標的まで到達する──────!

 

 ドン……ドン!

 

 明滅──────命中だ、間違いない。脂汗を浮かべながらも、ギラリとアリコーンの歯が鈍く光った。

 

 ………隻腕となったアリコーンは、"ペガサス"と渡り合っていた。それと言うのも、彼女がこれまでの間"ペガサス"に与え続けていたダメージが累積していて、左船体を破壊して左腕を奪ってもなおその差を覆す迄には至らなかったから、だろうか………だが、この状況が長く続くと思えるほど彼女は楽観していない。

 ──────"ユニコーン"!……彼女をして始めて経験する大被害を与えせしめた其奴は、今もレールキャノンに必要な大電力を充電しているのに違いない。彼女も同様同種のレールキャノンを持っているので分かるが──────おそらく──────もう直ぐで充電が終わるはずだった。

 

「バリアドローン左舷へ展開、面舵いっぱい!左舷バラストタンク注水、両舷全速‼︎」

 

 瞬間、彼女の足元から噴き出す熱水の如くに海面が泡立ち、アリコーンの黒体を押し出す様にして前進させる。速度が出ると同時に右側へ進路を取ってゆき、比例して彼女自身と艤装が左側に傾斜してゆく…………正面の"ペガサス"のバリアドローンに隠れる様にして、レールキャノンの充填を手ぐすね待っている"ユニコーン"がいるはずだった。それを躱し、かつ、無事な右舷側レールガンの射界に収めるため、艦を限界以上に傾け、横方向だけでなく縦方向の角度も付けて"ユニコーン"を狙う腹積りだった。

 これは左舷第二船体を予め棄てたからこそ出来る荒技(・・)だった。

 

(あの時艦長がやった事と比べれば、大した事もない筈……!)

 

 ………そして、アリコーンの目論見に気づいた"ペガサス"も当然動く。バリアドローンを展開し射界を遮り、矢継ぎ早にミサイルを打ち込んでくる……!ほぼ同時にアリコーンもミサイルを放ち、互いの火線が交錯する。傷ついていた"ペガサス"も、左舷の武装を喪ったアリコーンも、敵手の砲火を躱し切って無傷で済ませるほどの手数を残していない。張り巡らされた迎撃の前に、花と散ったミサイルの断末魔の爆炎を突き抜け、水柱と明滅の群れが彼我の間に生じた。

 

「くそ……!」

 

 出血からか、痛みからか。握り潰される様な感覚で思考が遮られてゆくのを、アリコーンは耐え忍んだ。そして──────"俺たちが海底で戦った2年間"──────頭の何処かでその言葉がはじけた。

 "それ以外を忍耐と呼ぶことは、俺が許さん"──────いつかの言葉。深くて冷たい海の底で、海の重さそのものになった様に倒れていた時…………その頃を思い返せば、どんな艱難辛苦だってぬるま湯だと、言い聞かせていた。

 

 そうだ!とアリコーンはほくそ笑んだ。こんなもの、耐え忍ぶほどの物でもないのに──────それを忘れていた!

 

 瞬間、痛みとは違う、ピリッとした感覚が彼女の脳を駆け巡る──────さながらシグナル伝達を掌るシナプスが光ファイバーとなって、脳内に情報革命が起きた様だった──────刹那、急激に霧が晴れてゆくかの如くに視界が広がってゆく。これまで半目片目で世界を見ていたのかと思うほどに全てが広い……!

 澄み切った頭が余分な思考を全てを捨て去って、ただ一つの目的のために必要な思考を全て拾い上げかき集めて、正しく爆速と言うべき速度で採るべき手段を導き出し、全身に指令を伝えてゆく。

 

「私は一度沈んだ、幽霊のようなもの!今更死を恐れるか……!」

 

 気合いを入れ直す様にして、艤装を構える。残った右手の掌は、洪水にでも見舞われたのかと言うほどに手汗で濡れていた。緊張───?否……!今の自分は、これまでで最高のパフォーマンスを発揮できる!という自信が今の彼女にはあった。これは、その高揚の証なのだ。傷ついた手負の贋物相手に、何を緊張する事があろうか⁉︎

 

「取り舵ィ‼︎」

 

 翻って"ペガサス"を正面に見据える形に陣取り──────攻撃、攻撃!攻撃!!

 

 ミサイルが、レールガンが、無人機が!彼女の持つあらゆる戦闘オプションがその真価以上の威力を発揮し、"ペガサス"を追い詰める!──────突然とも言える形で自身への突貫を始めたアリコーンを前に"ペガサス"は困惑する………そこへ、これ幸いとばかりにSLUAVが寄って集ってミサイルを投げつけ、"ペガサス"が爆轟に包まれる。

 

 当然、そんなごときで沈む艦ではない。反撃の砲撃とミサイルが全天に投げかけられ、数機のSLUAVが弾丸と火矢に射抜かれて爆散する──────それでいい!

 

 これで撃沈できるとは毛頭考えていない。大体これだけ撃ち込んで沈まない彼奴も、左舷第二船体を破壊されても浮いていられる自分も、いったいどれだけ撃ち込み、撃ち込まれれば沈むのか、今の彼女でももう分からなかった。それは、奴の背後ににあって必殺の槍を構えている"ユニコーン"にも同じ事が言える。それでも──────だが、ひとつだけ分かっている事がある。

 

「お前は射線に入らないだろ……!」

 

 レールキャノンの一撃、それはアリコーンですら葬るだけの力がある!………それはつまり、彼女が贋物とする"ユニコーン"、"ペガサス"も同様、レールキャノンを喰らえば撃沈に至ると言う事。"ユニコーン"="ペガサス"=アリコーンが一列に並んでいる時、奴らはレールキャノンを撃てないし、撃たせたくない!

 それを悟ったのだろう。形相を変えた"ペガサス"がミサイルを繰り出して、アリコーンの針路を逸らそうと必死の抵抗を試みる─。だがそれを──────

 

「───舐めるなァ!」

 

 ただその一言で踏み潰し、蹴散らしてゆく。レールガンの砲撃をバリアドローンで防ぎ、襲来するミサイルをSAMとレールガンが迎え撃つ、そして近接したミサイルはCIWSが弾幕の壁を形成し薙ぎ払ってゆく。残存した武装で捌き切れないミサイルは、破壊された左舷側船体を盾にしてまで防いでいた。

 全てを鑑みない、まさに狂気──────捨て身の進軍!

 

 高らかに笑いながら炎に塗れたアリコーンを前に、"ペガサス"はたじろいだ。明確に目を剥き、体が後ろに傾いている。主人の心理状態にも影響されるのだろうか、後ろに控える艤装を模した怪物もジリジリと後ずさっている様に見えた。その姿を見て、アリコーンの口角は更に上がる──────その動きは、捕食者を前に隙と弱みを見せた被食者のそれに等しい。そしてその生じた間隙を、アリコーン(捕食者)は見逃さない!

 

「生き残っている全ての火器を、"ペガサス"に向け発射!」

 

 まさに肉食獣の跳躍!撃ち放たれたミサイルの群れはその1発1発が獰猛で賢しい猛禽であって、一つの例外もなく"ペガサス"へ向け爆裂する。主砲の砲撃も交えた攻撃は、まさに火力の殺到。だが──────眼前に飛来する低速の何らか──────紫電の光球!

 

 バリアドローン!突っ込めばタダでは済まない。しかもそれが一つではない──────二つ、三つと………!

 

(………なるほど。)

 

 本来守勢的な装備であるバリアドローンを進行方向に配置する事で、行動を阻害する攻勢的な一面を引き出したのか。巧い使い方ではある──────だが甘い!

 

 右舷のバリアドローンローンチベイから飛び立ったバリアドローンを、ぐぁしっ!と右手でひん掴み、それを破壊された左舷第二船隊に無理矢理取り付けた──────ただ置いただけだが──────刹那。

 

 船体を駆け抜けるグリーンフラッシュ!左舷第二船体を前方に傾け、そこから傘を広げる様にして電磁バリアの薄い皮膜が進行方向に向けて形成される。敵のバリアドローンが展開した電磁バリアまで、目と鼻の先──────視界いっぱいにまで電磁バリアの球形が迫った時、アリコーンは叫んだ。

「総員、衝撃に備え───っ!」

 

 カァッ!と稲光の如き閃光が迸った後、バリア同士の反発力と干渉によって起きた放電がバリバリと蛇の様にのたうつ。ごごごぉ、と重低音が轟き、直後、全体としての質量に負ける深海棲艦のバリアが弾け飛ぶ。

 

 当然、アリコーンが無傷なわけではない。だが彼女は元々左舷を棄てている(・・・・・・・・・・・)!左舷第二船体は電磁バリアの中で瘡蓋を剥がされた傷口の様にみるみるボロボロになっていくが、アリコーンにとってはどうでも良かった。続々と前面に展開される電磁バリアを自身の質量と運動エネルギーとで弾き飛ばし、"ペガサス"からの直射を防ぐ。

 

「主砲!弾種徹甲、バースト射撃!用意!」

 レールガンに回す電力を一時的に充填する事で、アリコーンのレールガンは最大毎分80発相当の連射が可能だ。これを全て近距離で打ち込めば──────"ペガサス"はともかく、"ユニコーン"は限界を迎えるはずだ。そうでなくとも、レールキャノンを無事ることさえ出来れば勝利は確定する。

 

 ……だがその時、予想外の飛来音が彼女の耳朶を打った。

 

 ヒュゥゥーーー………

 

「………!?」

 

 "ペガサス"の向こう、"ユニコーン"のいる場所に向かって、闇夜の彼方から光弾の群れが到達。嵐の様に着弾の瀑布を上げ、"ユニコーン"を包もうとしていた。

 

「一体何が……?」

 

 一瞬状況を図りかねた彼女の下で、通信機が反応した。いつからかうんともすんともいわなかった通信機が生きていたのだ。その声の主は、彼女が幾久しく求めてやまなかったもの──────

 

『……アリコーン!聞こえるか?』

「艦長……!」

 

 何処か感動すら覚える気になって、昂っていた全身が余計に熱を帯びてくる──────けれどもその声の主が伴ってきた言葉は、必ずしも彼女が求める言葉ではなかった。

 

『───撤退だ!』

「……え⁉︎」

 




というわけで少し切りが悪いですが、今年は此処で締めさせて頂きたく思います!

……では改めまして皆様、良いお年を!
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