【完結】春野ムサシは勇者(ウルトラマン)である   作:渚 龍騎

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ここからはほぼ戦闘パートに入ります


第九話 正義の巨人

 コスモスが敗北してわず二日。

 勇者部は休むことなく探し続けたが、手掛かりすらも見つけることはできなかった。

 そんな中で携帯は危険を知らせ、勇者部は平坦な場所で敵が来るのを待っていた。

 

「こんな時に敵さんの襲来とはね……」

「ジュリさん……いないですね」

「きっとヒーローは遅れて来るんだよ〜」

 

 樹は心配そうな表情で辺りを見渡した。

 ウルトラマンコスモスはまだ見つからない。新しく迎えたウルトラマン、ジャスティスは正義の巨人。宇宙の平和を乱す者は宇宙正義の名において、決して許すことはない。

 勇者部にとって()()()()()()はいなければならない存在。今の勇者部には相手を倒せる決定的な力がなかった。

 

「えぇい!アタシたちだけでも大丈夫よ!やる時はやるわよ!」

 

 風のその掛け声が、勇者部を鼓舞する。

 元々は『勇者』たちがこの世界を守って来た。今も昔と変わらないだけのこと。『ウルトラマン』に頼らずして、どうやって戦うのか、自分たちの力で切り開いていく。

 

「……来た!」

 

 夕暮れに染まる空を、暗黒の雲が覆い尽くす。

 雷鳴が轟き、山の頂から勇者たちを見下ろす一つの影。

 

「あの巨人は……!?」

 

 ムサシを、ウルトラマンコスモスを葬り去った暗黒の巨人。

 ダークロプスゼロが、傷付けられた箇所を修復して再来した。

 込み上げる憎しみに似た感情を抑えながら、勇者たちはそれぞれの武器を握り締めた。

 

「みんな、行くわよッ!」

 

 風の合図と共に勇者たちは駆け出した。

 ダークロプスゼロの頭部から二本のスラッガーが飛び出す。

 

「……ッ!それ〜!」

 

 一本のスラッガーに紫電の槍を突き出すと、槍の穂先が開き盾と変化する。

 刃先がガリッと盾を噛むが、園子はスラッガーを上空へと弾き飛ばし、もう一つを夏凜が刀で迎え撃った。

 

「──友奈ッ!」

「──任せて!」

 

 足りない分を友奈が補い、スラッガーを弾き飛ばした。

 スラッガーは弧を描いて持ち主の元へと戻っていく。

 ダークロプスに向かって突進する黄金を、スラッガーを以て迎え撃つ。

 二つのスラッガーの間を縫って、風は大剣を振り上げた。

 

「──だぁぁぁぁぁあッ!」

 

 腕を組んだまま見下ろしているダークロプスは帰って来たスラッガーを握り締めた。

 

『……!』

 

 打ち合わされたダークロプスのスラッガーと風の大剣に空間ごと震動。

 筋力に任せた重い一撃に風の大剣を握る手からビリビリと痺れが広がり、思わず片目をつぶる。

 風のチカラは勇者の中でもトップクラス。だが、決定的な差は数倍以上の体格の大きさだった。風を山の斜面に叩き落とす。

 間髪容れずに友奈は体を地面と並行にして、一気に跳躍。弾丸のような速度でダークロプスに突っ込む。

 

「ハァァァァッ!」

 

 共に神速で振るわれた拳が打ち合わされる。

 衝撃波で地面の埃と土が巻き上げられ、友奈は靴を激しく擦りながらノックバック。先に硬直が溶けたのはダークロプスだった。

 大きく一歩を踏み、友奈に向けて拳を振り下ろす。

 けれど、翡翠の(ワイヤー)と紺碧の光弾がダークロプスの拳を友奈から僅かに逸らした。

 巻き上がった土の中から友奈は跳躍する──大地に突き刺さった拳からダークロプスの腕を伝って眼前まで駆け出す。

 登ろうとする友奈を振り払おうとして空いた手が掴みかかる。

 

「させるかァッ!」

 

 その手に大剣が突き刺さる。

 

「──行って友奈!」

「──はい!!」

 

 皆が切り開いた道を駆け出し、友奈は繋いだ希望を踏み締める。

 膝をバネにして飛び上がり、ダークロプスの顔面に拳を突き出した。

 光をも超える速度で突進する友奈を、今やダークロプスに止める術はない。

 しかしそれは()()を逸脱した戦士には関係なかった。

 ダークロプスの赤い単眼に光が集まる。それが何を示すのか、友奈は一瞬で理解した。それでも、恐怖を殺して友奈は突っ込んだ。

 

 ──()()()()()()()()()()

 

「やらせないよ〜!!」

 

 単眼から放たれた光線が友奈に当たる直前。紫電の輝きが光線を滑らせる。

 それは()()の人間ができるはずのない絶技。研ぎ澄まされた精神が成し遂げた感覚。

 足場のない空中で受け止めるなど不可能。故に、園子は空に流した。

 

 友奈は彼女たちに敬意を、感謝をする。

 繋がれた希望と覚悟をこの一撃(一殴)に込める。

 

「──勇者ッ!パァァァァァァンチ!!」

 

 視界が赤く染まった中で、友奈は神速の速さで突進。

 ダークロプスに最早防ぐ術はない。

 皆の希望を受け継ぎ、友奈は拳を引き絞る。

 チカラの限りその豪腕を振るい、ダークロプスの顔面を殴った。

 桜色の燐光が眩い光を放ち、ウルトラマンのチカラにも匹敵する拳がダークロプスを数メートルだが吹き飛ばした。

 辺りの空気が弾け飛び、衝撃波が友奈を吹き飛ばす。

 

「友奈!」

「友奈ちゃん!」

 

 空中に打ち上げられた友奈は態勢を立て直せずに落下する。

 あまりの巨大な衝撃波に意識が吹き飛んだ友奈を追いかけるが、立て直したダークロプスが邪魔をする。

 放たれたエメリウムスラッシュが勇者たちを吹き飛ばす。

 

「邪魔をするなぁッ!」

 

 夏凜がダークロプスに数本の刀を投げ飛ばすが、もう遅い。

 友奈の体が翼の失った鳥のように落ちていく様をただ見ていることしかできなかった。

 

 ───だが、光は間に合った。

 

 一つのオレンジ色に輝く光の球が友奈を包み込む。

 光は一つの巨大な光球を生み出し、光球の周りに輪が生まれる。

 正義の名の元に、赤色の勇者。ウルトラマンジャスティスが、友奈を両手で抱くようにして現れた。

 

「……う、あなたは…」

 

 友奈を地面に降ろし、ゆっくりと頷いた。

 

「ウルトラマンジャスティス!」

 

 ダークロプスの放ったエメリウムスラッシュから友奈を庇うように受け止め、ジャスティスは駆け出した。

 ジャスティスに向けて二本のスラッガーが襲いかかる。

 だが、ジャスティスは避けようとしない。そんなこと考えなかった。

 かつてコスモスに教えてもらった希望を、彼女たちを信じていた故に、防御の構えを取らなかった。

 

 ジャスティスに向かって回転するスラッガーを黄金の大剣が弾き飛ばし、もう片方のスラッガーは紫電の槍が地面に叩き落とす。

 

 ダークロプスの振り払う豪腕を弾き、往なして回避。

 ジャスティスはその絶大なパワーを以てダークロプスの腹部に拳を叩き込む。だが痛みを一瞬で振り払ったダークロプスの蹴りがジャスティスを数十メートル先に吹き飛ばした。

 先に硬直の溶けたダークロプスが腕を広げ、光線を放つための予備動作。

 紫炎の燐光が一瞬だけ煌めき、腕にエネルギーを溜め込み一気にL字に組む。しかしそれはジャスティスを掠めるだけで光線は止まった。

 

 ダークロプスゼロが腕をL字に組んだ瞬間に、その腕が樹の蔦によって引き離されたのだ。

 覚悟を決めた樹の行動に、苛立ちを覚えたダークロプスは大地を削り取るように樹ごと蹴り飛ばすと、ジャスティスを睨んだ。

 同時に駆け出す。二人は同時に回転し、互いの足がぶつかり合う。素早く足を組み換えて足を突き出した──しかし、これもぶつかり合って互いに次の攻撃に移行する。

 ダークロプスとジャスティスの伸ばした腕は互いの首を掴む。

 二人は巧みに足を使って相手を倒そうとするが、やがて同時に蹴り飛ばした。

 

『──ハァッ!』

 

 その瞬間、ジャスティスの体は光に包まれ、真の正義を貫く意思が発現。

 銀色のプロテクターは金色に変化し、彼は通常のスタンダードモードから正義執行の()()()()()()()()()へと進化した。

 

 彼は高く跳躍。一気に急降下してダークロプスを蹴り飛ばす。

 ジャスティスが駆け出すと、ダークロプスは両手にスラッガーを握り締めた。

 振り下ろされる刃を躱し、体を回転させ円運動を利用してダークロプスの腹に蹴りを叩き込む。

 だがダークロプスはドンと大地に足を叩きつけて態勢を保ち、一度回転しながらゼロスラッガーをジャスティスに投擲。

 

『──ッ!』

 

 渾身の力で放られた刃にジャスティスは両腕で応じる。炸裂音と同時に腕から火花が散り、切り刻まれる痛みが全身に届く。体がバラバラになりそうな痛みを堪え、ゼロスラッガーの全てをはたき落とし、一瞬で敵の前に躍り出る。

 ダークロプスは驚愕する。

 直後に両手に戻したスラッガーを交差させて防御(ガード)する。

 正面から激突した拳と刃。凄まじい衝撃波が二人の全身を貫く。

 ジャスティスの豪腕はスラッガーを粉々に破壊すると、ダークロプスを紙くずのように吹き飛ばした。

 山の木々を薙ぎ倒しながら山に激突、ダークロプスの体から火花が散る。

 

 大地を蹴り、倒れるダークロプスに向けて膝突き出す。だが、体を転がしてジャスティスの攻撃を避ける。一度距離を離し、自分の単眼に手のひらを重ね、真っ赤な光線を放った。

 一瞬早く光線に気がついたジャスティスは回避を試みるが、光線は山を一つ消し飛ばした。

 そこにジャスティスの姿は無く、ダークロプスは思わず肩を震わせて笑った。

 

 けれどそれは、ジャスティスが死んだのではなく、遥か上空に()()()()()()()()から姿がなかったのだ。

 

 重力と重ねてジャスティスは急降下。ダークロプスを蹴り抜く。

 

 よろけたダークロプスにいくつもの光弾が放たれる。

 一発にそれほどの威力はないものの、美森は光線を雨の如く放ち続けた。

 ダークロプスにとっては無駄な行動。しかし煙幕が視界を遮り、ダークロプスは邪魔になる美森に向けて拳を振り下ろす。けれど拳が美森に辿り着くことは無く、大地を踏み締めて友奈が拳を叩きつけた。

 

 その行動が、ダークロプスの敗北に繋がった。

 

 その一瞬が、彼に光線を撃たせることが可能になる。

 両手を広げて大きく回すと、夕陽に似た光を頭上に掲げる。

 ウルトラマンジャスティス、クラッシャーモード最強の技。その名は、ダグリューム光線。

 威力の高すぎる光線故に、エネルギーの消耗が激しい必殺の光線。

 

 煌めく焔は、爆発的な一撃(エネルギー)へと姿を変える。

 それはまさに正義の鉄槌。

 己の命を削るその一撃は満身創痍のダークロプスに直撃。

 ダークロプスを構成する機械類がショート。破壊され、地面に倒れると同時に凄まじい爆発が巻き起こる。辺りの木々を根っこから吹き飛ばし、あまりの巨大な衝撃波に勇者たちの体は宙に放り出された。

 

「勝った……!」

 

 友奈は嬉しさと目の前の出来事に震える息を吐く。

 衝撃波の勢いを殺し切れず、空中でくるくると空回りしながら落下すると、地面に背中から激しく打ち付けられ呻く。直後に跳ね起き、爆心地を観察する。

 爆発した際に起こった炎が山を焼き尽くそうとしている。ダークロプスの姿はその中に跡形も無く残っていなかった。

 完全なる消滅を確認すると、友奈はウルトラマンジャスティスを見上げた。

 

「……ウルトラマンジャスティス。正義の巨人……」

 

 ぼそっと友奈は呟いた。

 その輝きは強さともう一つ、コスモスと同じ優しさを見て取った。

 

「友奈ちゃん!」

 

 遠くから呼ばれ、振り返ると美森が走って来る。

 

「東郷さん!大丈夫だった?」

「うん!私は大丈夫。友奈ちゃんは?」

「私も大丈夫!」

 

 美森と友奈は互いに無事なことを確認してから、皆と共に合流。

 ウルトラマンジャスティスは勇者たちを見下ろしていた。

 

「勝った……」

「ええ……勝ったわね」

 

 風はジャスティスを見上げ、あの巨大な体でも聞こえるように大声で叫んだ。

 

「ありがとう!ウルトラマンジャスティス!」

 

 けれどジャスティスは返答せず、どこか遠くを見つめていた。

 その鋭い光の目は何も見えない空を見ている。

 

「……風先輩、何かおかしくありませんか?」

 

 突然の美森の問い掛けに、風と他の勇者たちは辺りを見渡した。

 いつもとあまり変わらない景色。燃え盛るはずの炎は静止したままで時は止まっている。それが、何か漠然とした不安の答えだった。

 ()()()()()。それでも()()()()()()()()()()

 

「まだ敵が来る?!」

 

 どこからか雷鳴のような轟音が響く。

 辺りを見渡しても気配は感じるが、それ以上は何も見えない。

 突如、遥か上空から蚊や蜂のような羽音が響く。

 それは闇が来る前兆のようなものであり、ジャスティスの侵した過ちそのもの。

 ジャスティスは勇者たちの前に飛び出て上空を見上げた。

 

「──ヤバイ!」

 

 夏凜の声が響き渡るのと、上空から赤黒い光弾が放たれたのはほぼ同時だった。

 ジャスティスは勇者たちを守るようにして光弾を片っ端から叩き落とす。

 そして、甲虫のような見た目をした怪獣兵器が大地に降り立った。

 

 その姿は、破滅魔超獣の生み出す怪獣兵器──スコーピスだった。

 

 スコーピスの姿を見た直後、ジャスティスは一瞬で駆け寄る。

 すくい上げるようなアッパーを放ち、スコーピスの頭部の角をへし折った。スコーピスは苦し紛れにジャスティスの背後に尾を回す。だが、ジャスティスに到達する寸前で大剣が切り落とした。

 

「──勇者パンチッ!!」

 

 ジャスティスと友奈による力に任せた渾身の一撃がスコーピスを殴る。全身に衝撃が走り、スコーピスは内部から粉砕。

 

「こっちは任せて〜!」

 

 二人に放たれた赤黒い光弾を切り落とす。間に合わないと理解した園子は槍を展開。盾に変化した槍を突き出して回避した。

 直後、鮮やかな紅蓮がスコーピスの足下から飛び上がり縦に一閃。切り開かれた傷口に美森の放った光弾がスコーピスを貫いた。

 

「見た目より弱いわね」

 

 大剣を担ぎ、残り一体になったスコーピスを見て風はニヤリと笑った。

 これ以上に強い敵など、数多と戦ってきた。だがそれはスコーピスが弱いのではなく、培った友情と信頼の賜物。それが勇者たちを確実に育て、強くしていた。

 スコーピスが打ち上げられ、風の前に倒れる。そしてヒョコリと友奈が飛んでくる。

 

「その虫持ってきたよ!」

「サソリでしょ……」

「お姉ちゃん今は何でもいいよ……」

 

 「それじゃあ」大剣を大きく振りかぶる。

 一気に跳躍。倒れたスコーピスにトドメの一撃を振り下ろそうとして、スコーピスを赤黒い光線が粛清した。

 

「あぶなっ!」

 

 間一髪の所で回避すると、風たちは空を見上げた。

 雲一つとして見えない晴天を闇が包み込む。ガスのような闇は少しずつ広がっていき、勇者たちの前に降り立つ。

 その瞬間、ジャスティスが駆け出した。

 

「ジャスティスさん!」

 

 樹の静止の声も聞かず、ジャスティスは闇の中に拳を突き出す。だがジャスティスの体は弾かれるように宙に吹き飛ばされた。

 

「……いったいなにが?」

 

 美森は冷静に闇を見やり、引き金を絞る。光弾を放った反動が全身に渡り、視界が一瞬だけ紺碧の(フラッシュ)に覆われた。

 一直線に駆ける光弾は闇の中に入っていく。爆発した音が聞こえたわけでもなく、闇から光弾が突き抜けることもなかった。それがあまりにも不可解であり、不可思議な出来事だった。

 

「みんな気をつけて!」

 

 風の声で全員が戦闘態勢に入る。

 闇はガスのように空気を侵食。闇が空気に消えていくとその異形が姿を現した。

 柱のような二本の角。花のような腕を持った最悪の破滅超魔獣。闇の超能力者──サンドロスが姿を現した。

 

「□□□□──ッ!!」

 

 サンドロスの咆哮。あまりの異形な姿に勇者部は後ずさりした。

 泥のような闇を纏わせながら、サンドロスの口が四つに裂けた。

 その姿はまさしく『魔獣』と呼ぶべき存在だ。

 ジャスティスはそんな姿にも動じず、拳を突き出し構えた。

 かつての日に侵した過ち。無念が降りかかってくる。そんなこと覚悟していた。

 最悪の形、最悪の状況で──。

 倒したはずの奴が生きていることは不可解だった。これは『試練』だ。過去の自分を乗り越えるための試練。

 魔獣(サンドロス)が抱く剥き出しの憎悪を、真正面から叩き潰す。

 

 

 

 ジャスティスはそうして、覚悟した───。




▽ウルトラマンジャスティス
▽変身者 ジュリ

▽宇宙正義に基づき、一度はウルトラマンコスモスと対立したことのある正義のウルトラマン。正義に対する真剣な眼差しと、一度決めたことを最後までやり通す強い意志の持ち主である。
かつて宇宙の脅威と予言されたサンドロスに猶予を与えたが、その結果としてサンドロスは邪悪な存在となり、数多の惑星を滅ぼしてしまったことからそれ以来責任感が凄まじく、苦戦するコスモスのもとに駆けつけ共にサンドロスを撃退した。
地球の生命が持つ『夢』『希望』『優しさ』を知り、コスモスと共に地球を守った。
地上ではジュリと呼ばれる女性のような姿で活動する。
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