【完結】春野ムサシは勇者(ウルトラマン)である   作:渚 龍騎

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第十二話 闇と光、絶望と希望

 暗黒破壊神 ダークザギ

 

 その名は、口に出すのもおこがましい。

 ウルトラマンを模して創られた人工の命。英雄の鏡写しとして、守るために創られた故に「破壊」を、栄光はなく、ただ「絶望」を与える最悪の巨人。

 ウルトラマンノアを殺すため、全てを破壊するまで、ヤツは止まらない。その限界を知らないのだ。

 

 

 

 闇の柱が屹立して、数秒が経った。柱の中から獣のような咆哮が響き渡る。それはビリビリと押し潰されるように心の隙間から、滲み出ている。徐々に体を動かす気持ちが支配され、息が苦しい。体の震えが止まらない。

 

「……!」

 

 闇が振り払われ、中から姿を現した。

 漆黒に染められ、稲妻の如き深紅のラインと瞳。

 

 英雄の模造品だと認識をしたプログラムは、その在り方に苦悩し、増殖させては壊す。全てを虚無に変えるために暴走を始めた。

 かつて、星を訪れた来訪者は星ごとヤツを爆破させて、封じ込めた。と勝手に思い込んでいた。ヤツは()()()()()

 ヤツは不死身だ。殺すことなど現実的に考えて不可能。

 

 たとえ、ウルトラマンの力を以てしても───。

 

『Uuuarrrrrrrr──!』

 

 ジャスティスは驚愕を隠せぬまま口を開く。

 

『あれは、ダークザギ!?』

「ダークザギ……ですか?」

『一度だけ聞いたことがある。数々の星を滅ぼした破壊の神』

『手も足も出なかった。アイツはすごく強い』

「あの巨人が……」

 

 ザギの視線がこちらに向けられる。

 

「こっちを……見てる……」

 

 樹はあまりの恐怖に後ずさりする。

 こちらを見つめる深紅の瞳は、心まで見透かされているような恐怖があった。

 刹那。いつの間にかザギは勇者たちの背後にいた。

 

「──なっ!?」

 

 音速で振り払われた豪腕に勇者たちは弾き飛ばされ、いち早く気がついたコスモスとジャスティスが防御態勢を取る。けれど、それでもザギの一撃は重く、二人は山から転がり落ちる。

 

「──ゴモラッ!」

 

 青年の叫びに答え、ゴモラは咆哮しながらザギに突進する。

 それはミサイルの如く。大地が轟き、土を巻き上げ、地響きが鳴る。

 だが、ザギはゴモラの姿を確認する仕草もなく、片腕で突進を止めた。

 ゆっくりと、まるで嘲笑うかのように、首を傾ける。

 

「超振動波だッ!」

 

 ザギはゴモラの角を握り締めている。ゴモラとの距離はゼロ。ザギの傲慢さが招いた一瞬だった。

 ゴモラの角が閃く。直後、爆大なエネルギーの塊が大気を震動。EX超振動波がザギを吹き飛ばす。

 街並みを一瞬で焦土と化す一撃。それをゼロ距離で放たれた。まさに問答無用の必殺技。たとえザギであれとただでは済まない。

 だが────

 

「なんだと!?」

 

 青年は驚愕する。

 ザギは吹き飛ばされて()()()。多少押してはいるが、耐えられている。両腕を交差させ、ゴモラの放ったEX超振動波を受け止めていたのだ。

 あり得ない。超振動波が無理やり振り払われる。目を眩む激しい閃光と耳を聾するけたたましい破裂音が巻き起こる。

 

「ゴモラ!──ッ!」

 

 青年の体が崩れ落ちる。それがなにを示しているのか、すぐにわかった。

 

「ここまでか……!」

 

 青年と怪獣(ゴモラ)を繋ぎ止める糸が切れかかっている。それを指し示すように背後の景色が見えるほど、己とゴモラの体が透き通っていた。

 ウルトラマンに与えた光。この世界にいる為、過剰に使ったエネルギーが限界を迎え、肉体と精神が元の世界に帰ろうとしている。

 

優しさの勇者(ウルトラマンコスモス)正義の勇者(ウルトラマンジャスティス)、そして──花の勇者たち」

 

 ゴモラは光に包まれ消えた。

 そして、青年は眼前に広がる景色を見つめる。破壊神(ダークザギ)と勇者の戦い。

 

「あとは、任せたぞ」

 

 最後の一言は、誰にも聞こえず、ザギと勇者たちの咆哮にかき消される。

 青年がいたことすらも気が付かずに、彼は光になって消え去った。

 

 

 

 

 

 

 ムサシは考える。

 自分が駆け抜けた、未来の夢に向かう戦い──無論、いつ如何なる時でも全力で戦った。そう胸を張って断言できる。手を抜いたことなど一度もなく、誰かを侮ったこともない。

 だが、それは相手を救おうと考えている中での全力だ。

 ────かつて、ジャスティスと戦った。

 断固として意見を聞かなかった彼が地球のために戦ってくれたのは、僕たちの仲間や他の人の優しさに触れたからだ。

 地球上全ての生命をリセットしようとした相手も説得することができた。

 それは、相手に聞く意思があればできること。

 

 今、目の前にいる敵からは対話する意思が感じられない。

 ただ「破壊する」それだけがヤツから感じられることだ。

 

「──行くわよ夏凜!」

「──了解!」

 

 戦う。強い力は、更に強い力を引き寄せる。

 ただひたすらに単純(シンプル)で、それ故に必然なる在り方だ。

 何より────。

 

 高速で振り下ろされる黄金の大剣と紅蓮の炎刀。闇は悉くを凌駕する。

 必要最低限の動き──右足を後ろに下げるだけで大剣を回避。次々と振り払われる炎刀を圧し折り、蚊を払うかのように夏凜を大地に叩きつけた。

 

 ソイツは、あまりにも強過ぎた──。

 

 すかさずコスモスとジャスティスが息の合った連携(コンビネーション)で、ダークザギの両側から攻撃を仕掛けた。

 始め、コスモスは回し蹴りを放ったが首の動きだけで躱される。素早く足を踏み替えると続く二撃目、後ろ回し蹴りを繰り出す。

 狙い過たずコスモスの放った後ろ回し蹴り(バックスピンキック)がダークザギの顔面に直撃──()()()()()

 渾身で放たれた蹴りはダークザギにがっしりと掴まれ、アッパーの如く振り上げられた拳が腹部に直撃し、コスモスを吹き飛ばす。

 

『──ダァッ!』

 

 背後からジャスティスの渾身の(いちげき)が突き出される。

 絶大なる一撃をザギは片手で受け止め、勢いを乗せて背負い投げ。ジャスティスは体を動かして態勢を立て直したが、ザギは驚く仕草も見せずにジャスティスを蹴り飛ばした。

 肩を上下させ、息を荒くするジャスティスの肩を掴み、ザギは手刀を叩きつけようと右手を上げる。

 

「ダメぇぇ!」

 

 樹は恐怖の感情を圧し殺して、数百の(ワイヤー)をザギの右手に巻き付かせた。

 一瞬、ザギは樹に視線を向け、自分の腕に巻き付く蔦を睨んだ。そして、ジャスティスを力に任せて突き放した。

 

『…………』

 

 視線が向けられる。

 怖い。恐い。まるで獣が獲物を見つけたように、ザギは樹を睨んだ。

 殺される。本能がそう叫び続ける。それでも樹が蔦を離さないのは、皆を守ろうとする意思が恐怖を上回ろうとしていた。

 

『□□□□──ッ!!』

 

 ザギの咆哮に、樹は一瞬怯む。

 その瞬間、蔦を握り締め、力いっぱいに樹を叩きつけた。

 

「よくも樹ちゃんを!!」

 

 弾丸の如き速度で大地を駆け抜け、ザギに詰め寄って跳躍。拳を引き絞り、音速で渾身のストレート。それに対してザギも拳を突き出した。

 辺りの空気が弾け飛び、巨大な力の衝突によって生まれた衝撃が、建物の窓を残らず粉砕。

 

「く……ッ!」

 

 圧される。押し返される。

 ヤツ(ザギ)を仕留めるにはこの一撃では不足。

 道路を陥没させると同時に、友奈を押し切り地面に叩きつける。

 

「友奈ちゃん……!」

「援護は任せたよわっしー!」

 

 美森の砲台から爆音を散らしながら光を噴く。ザギに向かって放たれた牽制の一撃が、友奈を見下ろすザギの肩を捉える。

 光の銃弾が直撃した肩から火花が散り、ザギが美森を見つめた。

 

「まるで効いてない……!」

 

 アサガオが咲く。更なる追撃を加える。再びの雷鳴音と共に、ザギは片手を突き出した。ヤツの正面にはっきりと紫炎の光が見える。

 それは円状のバリアだった。

 光弾がバリアに当たるとけたたましい音を撒き散らす。何事もなかったかのように、ザギは悠然と立っていた。

 しかし、それは油断だった。

 彼女から気を引ければそれで良いのだ。

 

「いっくよ〜!総攻撃〜!」

 

 紫電の槍が盾へ変形。背後から無数の槍が出現し、園子はダークザギに向かって突撃する。無数の槍はザギに突き刺さり、突撃した園子が建物を巻き込んでザギを吹き飛ばす。

 

「ウソ……!」

 

 眼前の光景に目を見開く。咄嗟に漠然とした不安が背筋を走り、背後に飛び退いた。

 巻き上げられた煙が風に流され、正面の光景がはっきりと見える。

 そこに、ダークザギの姿はなかった。

 

「どこに行ったの!?」

「そのっち!後ろ!」

 

 美森の声に弾かれて、反射的に振り返った。

 そこにはいなかったはずのザギが骨を鳴らすように首を回していた。まるで、全ての行動が無意味だと、動作で告げているかのようだった。無論、その通りだ。

 園子の視界に、一瞬だけ黒い何かが下から上に上げれた。

 

「そのっちいい!!」

 

 それは、ザギが右足を振り上げたのだ。

 

「くっ!」

 

 黒い何かを理解するよりも速く、園子は動き出した。

 園子が背後に飛び退くのと、ザギが踵を振り下ろしたのはほぼ同時だった。

 ザギの振り下ろした踵は園子に当たらず、音速で道路を蹴り抜く。まるで隕石が衝突したかのような轟音が響き、大地に亀裂が走る。あまりに強力な踵落としの衝撃波は園子を吹き飛ばした。

 

「強過ぎる……!」

 

 ザギは振り返るなり、美森に向けて拳を突き出す。その拳から数発の禍々しい光弾が放たれ、直撃せずとも余波が美森を吹き飛ばし、建物の壁に叩きつけられる。

 その瞬間、勇者たちの変身が解けた。

 華奢で華麗な服装は元の制服へと戻り、友奈は目を上げてザギを見上げた。そして、自分の今の姿に驚愕した。

 慌てて携帯を取り、アプリを立ち上げようとして体の異変に気が付く。

 

「ウソ……なんで?」

 

 足が動かない。下半身全体に力が入らない。

 風や樹が満開した際には満開の後遺症──『散華』をしていなかった。

 それなのに、なぜか友奈の下半身は動かなかった。

 力を込めている。それでも足は動かない。

 ブワッと全身から汗が溢れる。呼吸が荒く、鼓動は早い。

 あの時の恐怖が、蘇る。

 

「足が……っ!」

 

 

 

 

「左眼が──」

 

 ──見えない。呟くよりも早く、反射的に樹の方を見た。

 

「……!」

 

 樹は必死に何かを伝えようとして、口をパクパクしていた。それがどういう意味なのか、はっきりと理解できた。あり得ないと現実を否定するように、ゆっくりと問いかける。

 

「声が……喋れないの?」

 

 樹は上下に頭を振る。

 最悪だ。なにもかもが最悪だ。

 「散華」は無かったはずなのに──!

 立ち上がる。樹の前に立ってザギを見上げた。

 

『Uarrrrrrrrrrrr──!』

 

 獣のように、両手を広げ、大きく咆哮する。

 ザギは突如、海の向こうへと視線を向け、両拳を突き出した。両拳から放たれた黒色の超重力光線(グラビティ・ザギ)は海の向こうへと消え去る。その瞬間、大量の水を巻き上げ爆発──神樹の結界が、一部破壊された。

 

「──そんな!」

 

 ハッと携帯を見ると、無数の赤い点が青い海を覆い尽くそうとしている。溢れるような点は徐々に街に進行している。その赤い点一つ一つ全てが、バーテックスだった。

 星屑と呼ばれる最弱のバーテックスだが、その数はほぼ無限。一体はあまり脅威でないもの数が多い。今、眼前に広がるこの光景はまさに、地獄そのものだった。

 神樹の結界にぽっかりと巨大な穴が空き、その中からバーテックスが次々と進行し、風の見上げる空いっぱいに広がっていた。

 

 

 

 

「………」

 

 右腕は動かない。神樹に捧げてしまったらしい。

 その事実に唇を噛み締めながら、痛む体を抑えて園子は立ち上がる。

 

「その……ち」

 

 背後を振り返り、美森の側まで慌てて駆け寄る。

 

「わっしー……」

「足が……」

 

 美森の向けた視線を辿り、園子は彼女の足に目を移した。

 恐らく美森は足を動かそうとしている。それでも、()()()()()()

 どれだけ踏んばって、どれだけ力を込めても、立ち上がることができない。

 

「わっしー」

 

 園子は美森に向けて優しげな笑みを浮かべる。

 美森の震える手を取って。まるで子どもに語りかけるように、まるで元気づけるように、園子は笑って闇を一瞥した。

 

「私に任せてよ、わっしー」

「そのっち……だめ…!」

 

 手が離れる。その背中はどこかに行ってしまう。遠く、更に遠くへと、消えてしまうような気がしてならない。

 ダメ。側にいてほしい。

 どんなに手を伸ばしても、もう届かない。

 追いかける足は、もう消えて(捧げて)しまったから───。

 

 空から、数多の星屑(バーテックス)が体の八割を占める巨大な口を開いて、足の動かない少女を見つけた。

 そんな少女に襲いかかろうとして、紫色のバラが──星屑を切り裂いた。

 そして、己の体を捧げ、少女は叫ぶ──。

 守るために。なにより、勝ち残るために──。

 

「──満開!」

 

 (バラ)の少女が光に包まれるのと、時は同じくして、少女は一人虚しくも倒れていた。

 全身を貫くような鋭い痛み。左腕は──捧げてしまったらしい。

 自分では動かしているつもりでも、指の一本すらも動かせない。それでも他の捧げていない部位を動かす。全身に走る痛みは体が引き裂かれるようだ。苦悶の声を上げながら、夏凜は立ち上がった。

 

「はあ……はあ、はあ」

 

 辺りを見渡して、瞬時にその状況を呑み込む。

 最悪だ。自分のこの様子だと、周りの勇者たちも恐らく変身が溶けているはずだ。

 痛みはあるのに、なぜか恐怖はない。

 あまりの絶望的な状況に、感覚が麻痺したのかもしれない。

 流れる汗が、顎から落ちて足下を濡らす。

 空を見上げると、無数の星屑が空を染めていく。

 

「誰も、ザギ(アイツ)の相手をしてない。コスモスとジャスティスは……?」

 

 ふと、背後を振り返ろうとして大地が揺れた。

 あまりの震動に思わず倒れる。そして、自分の頭上を青い巨人(コスモス)が飛び越えた。後を追いかけるように赤い巨人(ジャスティス)も飛び越える。

 彼らはまだ諦めていない。

 不安定に、胸の発光体(カラータイマー)を鳴らしながら──。

 

「さすが……真の勇者(ウルトラマン)ね」

 

 負けてられない。

 それだけでなく、同時に『守りたい』という気持ちが彼女を動かした。

 

「これで諦めてたら、完成型勇者の名が廃るわ」

 

 直後、彼女は光に包まれるのと同時に二人の巨人が、夏凜の頭上を吹き飛んだ。

 そんなことを気にもせず、夏凜はまだ動く右腕で炎刀を握り締め、ザギと無数の星屑を睨み付けた。

 

 そして、覚悟を決める。

 記憶に蘇る楽しかった勇者部の日々を胸に抱いて、彼女は叫ぶ。

 

「さあさあ! ここからが大見せ場ッ!」

 

 ザギとコスモスたちの間に、ちっぽけな一人の勇者(少女)

 

「遠からんものは音に聞けぇ!」

 

 そんな少女を見つめるのは久遠の闇と、希望の光。

 

「近くば寄ってぇ!目にも見よ!!」

 

 少女の叫びに、全員は刮目した。

 闇は何時だって彼女を殺すことはできる。だが、()()()()()()()()。理由はわからない。傲慢か、ましてや情けか、それは闇にしかわからないことだ。

 それでも、少女は叫び続ける。

 

「これが讃州中学二年!勇者部部員!」

 

 全員に、この声を届ける。

 絶望しきった勇者たちに、声を届けた。

 

「三好夏凜の実力だぁぁぁぁッ!!」

 

 彼女の左肩に刻印された花が輝く。

 

「さぁ!持ってけぇぇぇぇ!」

 

 その叫びはバーテックスに向けてではない。ましてやザギでもない。

 勇者たちを喰らう『満開』

 捧げる相手──『神樹』に向けて、彼女は己の体を捧げる。

 どこでも構わない。

 視覚。聴力。腕。足。

 ならば、『心臓』でも構わぬ。

 全てを捧げてでも、相手を斬る──!

 

「──満開っ!」

 

 無数の星屑を斬り捨てて、彼女は叫んだ。

 その瞬間、花は咲く。蕾にあたる中心の部分には、一人の勇者。

 情熱の証。(サツキ)の勇者。

 その名は──三好 夏凜。

 

 そして、隣にはもう一人。

 

 優雅、尊敬の証。(バラ)の勇者。

 彼女の名は──乃木 園子。

 

 二人の勇者のもとに、優しさと正義は残り少ないエネルギーを振り絞って並んだ。

 

「バーテックスは私たちに任せて!」

「コスモスとジャスティスはダークザギを!」

 

 二人の勇者(ウルトラマン)は頷く。

 まだ決して、諦めていない証拠だった。

 だが、状況は変わらない。

 かつて倒したバーテックスまでも、復活している。最悪な状況だ。

 

「行くわよ!園子!」

「任せてにぼっしー!」

 

 それでも、二人は突き進んだ。

 迫り来る星屑を斬り捨て、薙ぎ払う。

 布のような触手が突進する二人に目掛けて薙ぎ払われるが、夏凜の炎刀が受け止め斬り捨てた。

 

「ここから出て行けぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 園子は叫びを撒き散らしながら、バーテックスに向かって突進。濛々たる砂塵や岩石が舞い上がり、星屑やマンションをも巻き込んで押し返した。

 今となっては建物を破壊しないなどと甘い考えは捨て去る。今はただ、この残酷な闇を葬り、この世界を守ることだけを考える。

 一体目のバーテックスから逆四角錐型の御霊が出現し、音速で夏凜は炎刀を振り下ろす。

 まさに一刀両断。御霊は一太刀で真っ二つに破壊され、バーテックスを撃破。

 

「危ないっ!!」

 

 園子の慌ただしい叫びに振り返ると、眼前には暗黒の光弾。その後ろにはコスモスたちを薙ぎ払ったダークザギが拳を突き出していた。

 

「くっ!」

 

 超高エネルギーの光弾が夏凜を吹き飛ばすと、勇者の満開が解ける。足に感覚がない。自分の足がもう使えないことを理解し、すぐさま痛みを振り切って『満開』。

 ダークザギから放たれる光弾を、斬って斬って斬りまくる。高速で振るわれる炎刀。ザギの眼前まで迫り来て、悪寒が背筋を襲い、慌てて体を翻した。

 コンクリートを巻き上げ、大地からクジラのようなバーテックスが夏凜のいた場所に突進。ギリギリの所で回避した夏凜に触手を叩きつけた。

 そして、ザギの拳が振るわれ、咄嗟に四本の刀を交差させて防ぐ。

 

「マズイっ!」

 

 それでも、勢いは殺せない。

 巨大すぎる豪腕が夏凜を大地に叩きつけた。そこで二回目の満開が解ける。

 

「ああ……く…!」

 

 イルカのように大地を飛んでクジラのようなバーテックスが夏凜に降りかかる。

 

「させないっ!!」

 

 そこで園子がバーテックスを吹き飛ばした。けれど、ザギの回し蹴りが狙い過たず園子をビルに叩きつける。

 コスモスとジャスティスは!?

 

 ヤツの相手をしていたはずのコスモスとジャスティスを探す。

 見つけたのは大地に倒れ伏せているジャスティスだけだった。その近くにコスモスの姿は見えない。

 

『──シェアッ!!』

 

 声のした方向──上空を見上げると、コスモスが一直線に飛んで、ザギを蹴り飛ばしていた。だが、完全に油断していたザギは蹴り飛ばされる寸前に、腕を交差(クロス)させて防御していた。

 神業めいた反射神経と対応能力は、バケモノと呼ぶ他なにもない。

 コスモスは反撃を受けて地面を転がったが、すぐに態勢を立て直すと、コスモストライクを撃ち放った。

 コスモストライクがザギに当たると更にエネルギーを放出させる。

 しかし、防がれる。バリアを展開することもなく、ザギは両腕のみで防いでいる。

 無理やりコスモストライクが払われると、ザギは両腕に闇を纏わせながら大きく広げた。

 

「──コスモス!」

 

 いち早く察した夏凜は痛む体を無視して叫んだ。

 だが、もう遅い。光線が放たれる。コンクリートの建物や止められた車が吹き飛び、光線が全てを破壊する音にコスモスの雄叫びが被さる。

 やがて辺りが静まり返ると、コスモスはその場で崩れるように倒れた。

 

 その瞬間、彼らのカラータイマーは消える。

 

 生命を示すその光が消え、二人の体は銅色に染まり、溶けるように消えていった。

 

「そんな……!」

 

 彼らの下に駆け寄ろうとするが、バーテックスの触手に叩きつけられる。

 あまりの衝撃に、彼女の意識は遠くへと────。

 

 

 

 

「……夏凜ちゃん!」

 

 叫びは届かない。一人残された友奈は、ただ恐怖に怯えていた。

 コスモスとジャスティスは倒れ、夏凜と園子はやられた。風と樹の姿は見えない。

 いつもは明るい彼女の心はどんよりと、絶望に包まれていた。

 怖い。恐い。辛い。痛い。逃げたい。

 そういった人の(よわさ)が彼女を呑み込む。

 携帯を持つ手が震える。

 画面をタッチしようとしても、体が拒否する。

 

「なんで……!お願いだから!」

 

 誰に願っても、その願いは届かない。聞こえない。

 絶望の圧倒的な威圧感が彼女に()しかかる。

 弱い自分。守れない自分が嫌で、嫌で仕方がない。

 全てが苦痛に塗り潰されて、目の前を見たくなかった。

 『諦めたい』ただそれだけが、彼女を弱らせる。

 

 全てを諦めようとする気持ちと、皆を助けたいと思う気持ちが混ざり合い、やがて携帯を投げ捨てる。

 すると、ザッと砕けたコンクリートの破片を踏み込む音が聞こえた。

 

「諦めちゃダメだ」

 

 振り返ると、そこにはボロボロになったムサシとジュリ姿があった。

 

「私たちはまだ戦える」

「だから、友奈も諦めちゃダメだ!」

 

 ゆっくりとムサシは痛む体を無理やり動かして、友奈に先程投げ捨てた携帯を渡す。

 

「見るんだ」

 

 ムサシの視線を辿ると、その先には黄金と翡翠の花びらが舞っていた。風と樹がバーテックスを倒しながらザギと戦っている光景だった。

 どれだけ傷つけられ叩かれようと、二人は『満開』していた。

 

「みんなまだ諦めていない。夏凜や園子、東郷も──」

 

 (サツキ)に一瞬閃いて、(バラ)が煌めく。

 そして、蒼碧(アジサイ)が輝いた。

 まだ誰も諦めていなかった。

 留めていた何かが外れたように、涙が溢れる。

 

 ────知っていた。

 

 勇者部は諦めない。

 どれだけ強大な敵と出会おうと最後まで諦めず、絶望を呑み込んで立ち上がる。

 恐れを消さず、模索を忘れず、希望を捨てず。

 ────その上で、自分を疑わず。

 人類の未来なんてものを背負わされた上で、戦い抜いた勇者が、目の前で戦っていた。

 

「僕らもまだ諦めてなんかいない!」

「だから、立ち上がれ!」

 

 ムサシとジュリは友奈に向かって言い放った。

 皆は諦めない。勇者は諦めない!

 誰かのために戦う──!

 守るために、勝つために立ち上がる!

 

 立て! やれ! 勝ちに行くんだ! 結城友奈!

 

「────本当の戦いは!」

 

 ムサシはコスモプラックを握り締める。

 

「────本当の戦いは!」

 

 ジュリはジャストランサーを掴み取った。

 

「────本当の戦いはああ!」

 

 友奈は携帯を握り締めた。

 そして、三人の声が重なり合う。

 

 

 ────より高く。

 

 ────より、強く願った。

 

 

 

 

『『『本当の戦いは、ここからだ!!』』』

 

 

 

 

 ────光が(はし)った。

 その瞬間に、誰もがその光に目を奪われた。

 あらゆる闇を焦がし尽くすオーロラの輝き。

 ザギでさえも、その光に目を覆った。

 一つの巨大な光の柱。その横には巨大な桜の花びら。

 

「……友奈ちゃん!」

 

 一つの光の正体は勇気の証。

 (ヤマザクラ)の勇者。その名は、結城友奈。

 ────そして、もう一つ。

 二人の大いなる意志が一つとなる。あらゆる希望、あらゆる奇跡を超えて、光が屹立している。

 

 

 聞いたことがあるだろうか?

 この素晴らしく広大な全ての宇宙には、語り継げられて来た伝説がある。

 それは────、

 

 

 

 

宇宙の大いなる二つの力が出会いし時

その輝きの中で、真の姿を現す

 

 

 

 

 全ての神々と居並ぶ至高にして最強の伝説。神撃の力は全てを超越し、その力と栄光が語られる英雄の伝説が今、ここに彩られる。

 極限至高の伝説が、ここに絢爛す────!

 

 

 翡翠の輝きに包まれ、その輝きの中から、一人の戦士(ウルトラマン)が顕現する。優しさと正義の二つの光が、眠っていた伝説の戦士を呼び醒ましたのだ。

 ────その時、誰もが上を見た。

 奇跡を諦めぬその心が、彼を呼んだ。

 崩壊した世界ならざる宇宙の彼方より───

 ───伝説の戦士が、今此処に!

 

 

 

 

 ウルトラマン レジェンドが、ここに顕現する───!




ええ!まだ続きます!次回は勇者&レジェンドVSバーテックス&ダークザギです!すぐに投稿できるように頑張りますのでよろしくお願いします!
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