【完結】春野ムサシは勇者(ウルトラマン)である 作:渚 龍騎
ダークザギは本能から感じていた。
目の前で雄々しく鷹揚とした雰囲気を漂わせる戦士に、とんでもない憎悪を抱いている。
自分とは根本的に全てが違う存在。神々しく輝く光。故に、ザギは見間違えた───。
アイツを模して作られた自分はアイツを殺さなければならない。
ノアを──ウルトラマンノアをここで殺す──!
『Noarrrrrrrrrrrrr──!!』
憎悪の底からその名を叫ぶ。
だが否。彼はウルトラマンノアではない。
宇宙に生きる生命の使命を見つめ、護り抜くために存在する伝説の戦士。その名は──ウルトラマンレジェンド。
勇者たちの諦めぬ心がコスモスとジャスティスに力を与え、全てを一つにしたのだ。
決してあり得ることのなかった至高の奇跡。
それが、今勇者たちの目の前に
「……コスモスとジャスティスの光が、一人の戦士を……」
「なんだろう。なんか安心する……」
光に見惚れていた風と樹に向かってバーテックスが飛びかかる。
油断していた彼女たちは、薙ぎ払われた触手に弾かれ、宙に大きく吹き飛ばされた。
「風!」
「イッツん!」
夏凜と園子が声を荒らげる。慌てて駆け寄ろうと飛び出す──だが、遅すぎる。
二人よりも早くクジラのようなバーテックスが風と樹に向かって口を開きながら突進する。
「くっ…!樹!」
「……!!」
風は手を伸ばす。それに合わせて樹も手を伸ばした。互いに手を取り、風は樹を自分の胸に引き寄せた。
間に合わないと諦観の表情を浮かべる。
風の行動は”無駄”なことだった。それどころか風が守っている樹ですら、生き残れるかどうかも定かではない。
そんな無謀なこと。ただ守ろうとした。妹を守ろうと咄嗟に取った行動が、
その瞬間、オーロラのような淡く美しい光から一人の戦士が、二人に向かって手を伸ばした。
バーテックスを一瞬で消し飛ばしながら、戦士は二人を抱くようにして手のひらに乗せていた。
「……え?」
困惑する。輝きはあまりにも美しく、人の形を象っている。
二人はゆっくりと目を上げその光を見上げた。
「新しい……ウルトラマン……」
──ポツリと呟いた。
輝きが消え、光の正体が顕となる。
まるで太陽のエネルギーを示すかのようなカラータイマーから放射線状に伸びていく白銀。コスモスやジャスティスの面影は無く、ただグレーを基調とした銀色のウルトラマン。
彼は、二人をゆっくりと地面に下ろして、微かに頷いた。
『
憎悪を撒き散らしながら、ザギが駆け出す。
その叫びを聞き、レジェンドは振り返ると同時に駆け出した。
一歩、二歩。ザギの駆ける先にレジェンドの姿はない。
背後だ。目にも止まらず、瞬きの一度よりも速く、レジェンドはザギの背後に回り込み、拳がザギの腹部に突き刺さっていた。
ザギは吼え、睨み、憎悪の限りを以て絶対なる一撃を振りかざす。
素人目でもその一撃で決着がついたと瞬時に理解する。だが、ザギは倒れない。
『□□□──ッ!』
声なき声を上げながら、世界を砕くような拳を振りかざす。
直截に、そして最速でレジェンドの頭部を狙って叩きつけるダークザギ。それまさしく一撃必殺を具現化させた攻撃だ。
体中のあらゆる急所を狙う。変幻自在の動きでダークザギを翻弄し、破壊するウルトラマンレジェンド。それはまさしく、相手を確実に殺すための技だ。
ザギが目を見開く。拳が弾かれたが
応じて、右膝蹴りを繰り出したザギに対しレジェンドは両手で膝を抱きかかえる。当然ながらザギの膝蹴りが顔面に突き刺さ──
レジェンドはザギの膝を抱えたまま、振りかぶって投げ飛ばした。ザギはビルに向かって真っ逆さまに落ち、下敷きになったビルは破砕音と共に崩壊する。
「す、すごい……」
勇者を超える圧倒的な異次元の戦い。そのあり
二人のウルトラマンを圧倒していたザギが、今では押されている。
その神々しさからは考えられないほど、大胆かつ疾風の如き瞬足は確実にダメージを与えていた。
「東郷!」
二体の神による戦いを眺めていると突然、風に名を呼ばれる。その声からは焦りが読み取れ、美森は一気に振り返った。
絶叫する。それはまるで、太陽のようだった。
宇宙で地球を見つめる赤き炎の塊。あまりにも巨大すぎる火球は、直進を始めた。
「あんなものを街中で……!」
爆発すればとんでもないことになる。
だがもう遅い。紅き紅蓮の塊が突き進む。
太陽の如き紅蓮の球は、近い創造物を一瞬で消し飛ばしながら美森に向かって突撃する。
「これ以上はっ!!」
──進ませない!
美森は恐怖を、苦悶を押し殺し、ただ前を見て──暴力的な紅蓮の渦に美森は耐える。
だが、満開をした勇者一人だけでは受け止め切れない。
押し負けそうになり、瞳を閉じると──声が聞こえた。
「うぉぉぉぉぉぉっ!」
左を向くと、火球に手を伸ばして風が火球を受け止めている。そして、右側には樹がひたすら踏んばって耐えていた。
涙ぐむ。しかし泣きはしない。
正面を見つめ、火傷するように全身が熱い。熱すぎる。
それでも、耐える。そこに────もう二人。
「はぁぁぁぁぁぁッ!!」
「総攻撃〜!!」
四本の豪腕が持つ炎刀。それが振り下ろされ、紫電の輝きが火球に突っ込む。
「夏凜!!」
「そのっち!!」
紅の勇者も、紫の勇者も火球を押し止めようと踏ん張る。
だがそれでも、火球は止まらない。人類を殺戮するその一撃。太陽の如き紅蓮の炎。プロミネンスが猛る。体が焼かれているようだ。
───踏ん張る。踏み締める場所は無いが、宙を踏んで耐える。それでも、徐々に押し返される。
だが、諦めない。なぜなら────
────彼女がいるから。
「友奈ちゃんッ!!」
「勇者ぁぁぁっ!パァァァァァァァンチッ!!」
桜がぶつかる。桜が舞い踊った。
彼女には、夢を本当に変えて行ける力がある。
ウルトラマンは教えてくれた。生きる希望。いつの日か掴む夢を──。
逃げない強さをくれた。
その一撃、まさに鉄拳制裁。
火球は軌道が変わり、空へと弾き飛んで行く。神樹の作る結界に巨大な弧を穿つが、それはあっという間に元に戻った。
街に残った火球の跡。焦げ臭い臭いが漂わせながら、その街の一部は火球の跡を残していた。
「やった……!」
思わず美森はガッツポーズを取りかけたが、壮大な爆裂音が響き渡ると、大気がビリビリと震動。もう一発、火球が放たれていた。驚くことにその火球は、先程の二倍以上も巨大になっていた。
「うそ……」
勇者全員の力でギリギリ返せたというのに、更に巨大な火球が放たれた。
美森の表情は徐々に恐怖に包まれる。
そっと両手が握り締められ、美森は左右を見た。
「東郷さん」
左手を握るのは、友奈ちゃん。
「わっしー」
右手を握るのは、そのっち。
もう、怖いものはなにもない。
両手に花、とでも言うべきか──自然と笑みが溢れる。
みんないる。風先輩に樹ちゃん、夏凜ちゃんもいる。ならば百人力だ。
「勝ちましょう」
その瞬間どこからか鉢巻が
正直、あの太陽を破壊するのはほぼ不可能だ。だがそれでも、絶対に諦めない。
両手をぴんと伸ばし、衝撃に備えた。これ以上、街を壊させたりはしない。
太陽の如き火球の熱が全身に感じて、視界が炎に包まれる直前。
オーロラの光が、太陽を受け止めた。
「──ムサシさん!」
「──ジュリさん!」
ウルトラマンレジェンドは太陽を弾かず、飛ばさず、巨大な炎の塊を
───そうだ、そうだった。最後まで諦めず、不可能を可能にする。それが、
勇者たちに不可能だと感じられたことを、ウルトラマンは可能にした。
最後まで諦めなかった希望を信じた結果。勇者たちは一つの不可能に打ち勝つことができた。
『──シュワッ!』
レジェンドは吸収したエネルギーを跳ね返す。
更に威力が倍増した火球の一撃は、眩い閃光を照らし、耳を聾する爆発音を響かせながら、数万といる星屑を葬り去った。
あまりの巨大なエネルギーの放出に、余波が勇者たちを吹き飛ばそうとするが、互いに手を取り合い、なんとか耐える。
「なんて威力っ!」
苦悶を押し殺し、目の前のウルトラマンを見つめる。
神秘的な雰囲気を漂わせる光の戦士。
レジェンドは勇者たちを見もせず振り返った。
『□□□□──ッ!!』
視線の先には、怒りのままに咆哮するダークザギ。
ドン、と大地を蹴って四国中が揺れる。レジェンドは跳躍する。
宙に浮いたレジェンドがザギに向かって蹴りを放つ。
しかし距離が遠い──のであれば、ザギにとって防ぐことも避けることも簡単。だが刹那──レジェンドはザギの頭部を蹴り抜いていた。
あれは、超スピードなどと速度のそれではない。二度も見せられたあの動きは、もはや
だが、ダークザギも普通を逸脱し過ぎていた。
「ウルトラマン!」
風が声を荒げた。
ダークザギの姿が消え、レジェンドの背後に立っている。神速で振るわれたハイキックは、レジェンドの側頭部に放たれる。
だが、レジェンドもまた全てを超越した戦士である。
放たれたハイキックを両腕で
───その瞬間。両者の姿が消えた。
場所は神樹の結界外。プロミネンスが舞い踊る世界で、二人の神は光速の如き怒涛の攻撃。
ザギの放つ
視界からザギの姿が消え、理解したレジェンドも遅れて瞬間移動。
二つの光が、空で舞い踊る。暗黒とオーロラの二つの流星が衝突する度に、大地を震わせる振動と破裂音を響き渡せる。
神速で飛翔し、果ては時折この次元から遊離する二つの流星。暗黒とオーロラの光を撒き散らしながら、二人は追随する。恐ろしい眼力と予測能力。
互いに次元から離脱した途端、彼らは次に相手がどこに出現するかの見当をつけて跳躍する。その推測が誤ることはない。
音を凌駕する速度の飛び込み。あまりに圧倒的な速度故に、並の戦士であれば一瞬で砕け散るであほうその突貫を、レジェンドは構えて迎え撃つ。
踏み込むことも不可能な状況にも拘わらず、
遥か上空から、流星たちは墜ちる。
輝く光が激突し、
高圧縮した竜巻の如く、周囲を巻き込んで、ただ破壊を続ける。
大量の土を巻き上げ、二人は互いを蹴って距離を離す。
「私たちにできることは……」
美森が声を漏らす。
そこで、
「──あるよ」
ザギとレジェンドの戦いは、見ている限り両者互角。
このままだと、決着が付く頃には四国が滅んでいるだろう。それだけではない。この世界は、
ウルトラマンは違う世界のことでありながらも、自らの命を張って戦っている。
「アタシたちもできることがあるはずよ」
風と友奈はレジェンドの横まで跳躍。
ザギとレジェンドは互いに距離を取りながら睨んでいる。その横で、風は腹の底から叫ぶ。
「ウルトラマン!!聞こえる!?」
レジェンドはザギを睨んだまま動かない。
決して、無視ではない。一瞬でもザギから目を外せば、負ける可能性がある故に、レジェンドは勇者たちを見ない。
それがわかっているのか、風は続ける。
「アタシらみんな、ウルトラマンの力を信じてる!」
教えてもらった数々の夢と希望。
信じれば、夢は叶うと──彼らは吼えた。
何度もウルトラマンに救われた。だから───
「今度は
────勇者は訴えた。
『『ウルトラマァン!!』』
レジェンドは姿勢を低くする。そして、構えた。
まるで、「いつでも動ける」と勇者たちに伝えているようだった。そこで風は叫んだ。
「左へ走って!ウルトラマン!」
瞬間。レジェンドは左へ走り出した。
「よしっ!通じた!」
次々と放たれるザギの光弾を躱す。
「そのまま回り込んで!」
風の指示に従い、レジェンドは回り込むように駆け出す。
ビルの合間を駆け抜け、前傾姿勢で転がりながら回避。そこで、風は最後の指示を叫ぶ。
「
大地に足を叩きつけ、今までつけてきた勢いを一気に殺してブレーキ。
ザギは両腕を広げる。紅蓮の如き暗黒を纏わせ、突き出す直前。
「だぁぁぁぁぁぁっ!!」
障害物がない一本の道路。
黄金の大剣が伸び、その巨大な大剣を叩きつけ地面を砕く。同時に、ザギの体に数百の
態勢を崩したザギは紺碧の輝きに視界が阻まれ、紫電と紅蓮の勇者が突進。煙幕の中から紫電がザギを吹き飛ばす。そして、紅蓮が煙幕を斬り、ザギの体を切り刻んだ。
「友奈っ!」
「友奈ぁ!」
「友奈ちゃん!」
「ゆーゆ!!」
「
刹那。桜がその身を躍らせる。大地を蹴り飛ばして友奈は跳躍。ザギの顔と同じ高度まで跳躍し、拳を握り締め引き絞る。
「勇者ァァァァァッ!!!」
束の間、すべての
眼前に迫る深紅の瞳。舞い上がる桜の花びらがスローモーションで視界に映じる。舞い踊る桜の中、ザギと眼が合った。彼は憎悪を撒き散らすように、獣の如く咆哮した。
『□□□□──ッ!!』
ヒュオッという風の音が耳から抜けていき、時間の流れが戻る。まさに、乾坤一擲。
「──パァァァァァァンチッ!!!」
アッパーの要領で振るわれた天地を砕くような断罪の
そして、最後は彼らに託した────。
『『『行っけぇぇぇぇぇぇぇッ!!!』』』
勇者たちは、吼え猛ける。答えるように、レジェンドは跳躍。
ザギは、抗う。両腕を引き絞り、縦にした左肘に右拳を打ち付ける。刹那、赤黒い光線──ライトニング・ザギが放たれる。
だがレジェンドは避けもせず、真っ向から光線を受押し返した。
その瞬間。両手を広げるように伸ばすと、オーロラのような輝きがレジェンドを包み込む。そして、レジェンドは全身にみなぎる超絶エネルギーを放出させ、
『□□□□□□□□□□□──ッ!!!』
天を覆い尽くさんばかりの莫大な炎。天地に轟くダークザギの咆哮は、儚くも光に掻き消えていく──。
爆散した風圧は大地にも吹き荒れ、花火のように炸裂した紅蓮は天を焦がす。
天地を燃やし尽くす紅蓮の中で、ウルトラマンレジェンドは見守るように地球を見下ろす。
やがて────
撃ち放たれた極光は、超新星爆発の如き破壊力で押し迫る暗黒を跳ね返す。そして無数の星々、月光もない闇が、オーロラの輝きに満ちた──。
公園は日差しを遮るものがなく、非常に心地よい陽気だった。
見頃が終わっていたと思っていた桜が、最後の力を振り絞って懸命に咲き誇っている。風に吹かれる度に、気持ちよさげに花弁を散らす芝生を、勇者たちは歩いていた。草木の萌えいずる匂いが鼻孔一杯に広がる。
「これからどうするんですか?」
ムサシは「うん?」と振り返る。
「もう……帰っちゃうんですよね」
風の声はどこか切なく、寂しげだった。
ダークザギとの死闘を繰り広げ、勇者たちの体は「散華」し神樹様に捧げてしまった。だが、徐々に体の機能は回復しつつある。これは奇跡なのかもしれない。伝説の戦士が齎してくれた光。
とびっきりの奇跡は、しっかりと起きてくれた。
死闘から数日。カオスヘッダーや怪獣、バーテックスも出現していない。恐らくは、すべての闇を打ち払ったからだろう。
平穏な日々が、戻りつつあった。
故に、ムサシとジュリがここにいる理由はない。
「そうだね。ジュリが帰り方を知ってるんだ」
「私の部隊が迎えに来る。そうすれば、私たちは元の世界へと帰ることができる」
「そうなんですか……」
ムサシは膝を降り、車椅子に座る友奈との視線を合わせた。
散華によって足を捧げた友奈は、完全に回復するまで車椅子で生活している。
友奈の手を取って、ムサシが告げる。
「大丈夫、また会えるよ。決して諦めなければきっとまた……」
「そうよ友奈。こうして会えたんだから、また会えるわよ」
「ゆーゆ、いつか神樹様が会わせてくれるよ〜〜」
「園子の言う通りよ。ま、今度また敵がくれば私が一瞬で片付けてやるわよ」
夏凜は筋肉を見せるかのように腕を曲げて堂々と胸を張る。
そこで樹がノートにすらすらと書き始め、終わるとみんなに見せる。そこには「私も頑張ります」とやる気に溢れているのを感じられた。
「東郷さん?」
意識がどこに行っていたのか、友奈に呼ばれて美森は押していた車椅子を止めた。皆の歩が止まる。
「ムサシさんたちに感謝します。私たちの未来を救ってくれたこと、すべてに」
「いや、感謝するのは僕たちだ。君たちがいてくれなかったら、負けていた。この奇跡を、僕らは決して忘れない」
「ああ、私も感謝している。こうして、コスモスともまた会えたからな」
「ジュリさんともっとお話したかったな〜〜」
園子はいつものように間延びした口調で、両手を合わせながら呟いた。
銀河の彼方。誰かに呼ばれて、救われた優しさの勇者。駆け付けた正義の勇者。そして、神を護る花の勇者たち。
「怪獣さんも、どこに行ったのやら」
風の言葉に、全員は唸った。
助けてくれた古代怪獣のゴモラ。だが、もう一人いたことに、ムサシとジュリは気づいていた。
「きっと彼も元の世界に帰ったんですよ!」
それにムサシは「そうだね」と肯定する。
彼らとも、きっとどこかでまた会える。そう信じている。
夢と希望。優しさと強さ、そして勇気。未来を信じる心を、勇者たちは教わった。彼らのおかげで、諦めることがなかった。
感謝してもしきれない。
よし、と己に活を入れて、風はムサシたちの前に出る。
「勇者部部長として……えっと……」
樹がノートに「固くならないで」と書いて見せる。
やがて、吹っ切れたように「そうね」と呟く。
その瞬間、空の彼方から一つの巨大な翼が現れた。それはジュリが呼んだ帰りの船。宇宙船と呼ぶのが正しい物体だった。
「もう時間のようだな」
「みんな、ありがとう」
ムサシは爽やかな笑顔で、告げる。そして、ジュリも笑みを浮かべた。
「ほら、風。アンタ部長でしょ」
夏凜に背中を押され、風は「わかってるわよ」と前に出た。
「ありがとうございました。ムサシさん、ジュリさん」
「君たちのように勇気ある少女は見たことがなかった。だから、これからも未来を見て、夢を諦めないで」
「はい、ありがとうございました!」
友奈が頭を下げる。樹は少し涙を浮かべながらも、堪えてノートに「ありがとうございました」と一言書いた。
「ありがとうございました〜。いつでもこの星に寄って下さいね〜」
いつもと変わらぬ笑みで、園子は話す。
「ありがとうございました。私もウルトラマンを超える勇者を目指すわ!」
自信満々に、夏凜は言い放った。
そして、後に続いて美森も口を開く。
「ありがとうございました。お二人に大和の栄光あれ!」
目を輝かせ、美森はビシッと敬礼。横目で風と夏凜が苦笑。
そこで、いち早くジュリは胸に付けられたジャストランサーを握り締め、ウルトラマンジャスティスへと変身する。
光の柱が屹立、ウルトラマンジャスティスが出現した。
「君たちはもう、一人で飛べる。最後まで、諦めないで。この星を、任せたよ」
ムサシはコスモプラックを握り、勇者たちを見つめた。
『『『はい!!』』』
慌てて樹もノートに「はい!」と声に出せぬ分、大きく書いた。
「……それじゃあ、みんなホントにありがとう」
ムサシが笑みを浮かべると、勇者たちはそれぞれ咲き誇る花のような笑顔で、見つめ返した。
ゆっくりと頷く。そして───
「──コスモォス!」
銀河の彼方から、光が公園に屹立。眩い光を放ちながら、優しさの勇者──ウルトラマンコスモスが神秘的な輝きと共に現れた。
見上げる勇者たちを、コスモスとジャスティスは見下ろす。
微かに頷くと、コスモスとジャスティスは互いに視線を合わせた。
空にまるで竜巻のような巨大な渦が現れる。それが、元の世界へと帰る道だった。
そして────
『──シュアッ!』
『──シュワッ!』
大きく声を上げ、二人は飛び立った。
皆は慌てて駆け寄り、大きく手を振る。至高の感謝を、示して叫んだ。
『『ありがとう!ウルトラマン!』』
これで、花の勇者と宇宙を守る勇者の物語は終わる。
少女たちのもとから、『冥王』と付けられた名の本は消え去った。
花と光の
これは、ずっと忘れることのない
これからも語り継げられる伝説である。
吹き抜ける風は、草原に似た爽やかさだった。
残された仄かな光の輝きも、
瞬く間に消えていって────。
決して、消えることのない希望の物語。
巡り続けた理は、因果を捨て去った────。
かなり短めな話でしたが、どうだったでしょうか?
これにて、完結でございます。
皆様、今までお付き合いいただきありがとうございました。
花と光。告げられた栄光の伝説。この物語は、終わりです。