【完結】春野ムサシは勇者(ウルトラマン)である 作:渚 龍騎
※物語としてはゆゆゆは第一期が終わった後の物語です。コスモスの物語は知らなくても大丈夫のはず……です。
知らない方のために、あとがきで人物紹介をしようと思っています。
報告。 発信源不明。
我々、大赦に向けて一通のメッセージを受信。
しかし、何処にも存在しない言語。過去を遡り、かつてこの地球に送られたことのある言語だとわかった。
メッセージを翻訳。だが、理解を超える言語を発見し翻訳をすることは困難。
かつて、この世界にも『ウルトラマン』と呼ばれる存在がいた。
それは数々の世界、宇宙に存在すると言われている。
一人の地球人と同化し、異星人の侵略または「怪獣」と呼ばれる巨大生物による幾多の破壊と混沌から地球を守る守護神のような存在。
ウルトラマンは人々に希望を与え、諦めない心を教えてくれる。どれだけ傷つき、どれだけやられようとも、何度も、何度も立ち上がる。
ここから先は誰に送られたものなのか不明。
この世界は思っていたよりも残酷だ。
一言で表すのなら、ここは地獄。四国以外は全て炎に包まれ、バーテックスと呼ばれる存在が人類を脅かしている。
怪獣や異星人なんかよりも質が悪い。最悪だ。
それに、今回ばかりはバーテックスだけじゃないらしい。
これを誰でもない何者かに警告する。
この世界に来たのなら引き返すべきだ。しかし、私は残らねばならない。残された人類を守るために、戦わなければならない。託された希望を守るために。
──もしも、これを光の星の戦士が聞いたのなら。
私に力を貸してくれ
ジャスティス
思っていたより、現実は違った──。
神は死に、頼れる存在はいない。
今は怪獣と呼ばれていた存在も消え、『
残った人類は四国に籠もり、コソコソと暮らしている。
いつ終わるかと、恐怖に支配される。しかし、その恐怖を知らない者の方が多い。
人類に審判を下すのはいつも我々の信じる神であった。そして、人類に救済を与えるのもまたもや神。
天は敵、しかし地は人類の味方についた。
残された僅かな人類を守るべく、地の神たちは一つの巨大な樹──『神樹』へと姿を変え、少数の人類を守護し、無垢なる少女たちに『勇者』としての力を与えた。
恐怖するものは『神樹』に願い頼る。そして、狭い世界を束ねる者たちは『
天の神が従えるは数多の
地の神が束ねるは少数の
作り出されるバーテックスの数、それは無尽蔵。それに比べて勇者は数少ない一握りの存在。
天の神との壮絶なる戦いの最後。
それは、人類の敗北により終結した──。
この物語は幸せが破壊される。
絶望と動乱。暗黒に包まれる世界を守るべく立ち上がった『勇者』と『戦士』の物語。
神に選ばれた
光に認められた真の勇者。
この世界には光が、希望が必要となる。
今では『大赦』と呼ばれる政府のような機関が、人々の生活を守り、管理をしている。そして、『勇者』を扱うのも『大赦』だ。
この少女たちは勇者である。
『神樹』に選ばれ、
『勇者』として『守護者』として、勇者部は戦った。
その身を神に捧げ、絶望の淵に立ちながらも彼女たちは勝利した。
十二体の眷属であるバーテックス全てを倒すことに成功。
神に捧げた身が自分たちの手元に戻り、今少女たちは最悪だった出来事を思考の隅に追いやって、仲間と共に楽しく暮らしている。
今も、そう。
部室でうずくまっている少女が一人。
カチカチと歯を鳴らし、うずくまる──部長であり、
「──寒いッ!」
狭い部室に響き渡る風の声は、部員全員の耳に入るのに充分なほど大きかった。
ブルブルと両腕を持ちながら顔を振る。
傍から見たら今の彼女を部長とは思わず、わがままな部員と捉える人が多いだろう。しかし、彼女は部長。部員をまとめる存在だ。
今は、寒さに耐え切れず叫んでしまった。
「急になによ、うるさいわね」
うるさい
呆れた夏凜に対し、風はぷいとそっぽを向く。
「夏凜と喋れば温かくなると思ったけど、無駄そうね」
「どういうことよ!」
ニヒヒ、と風はニヤケながら妹に抱きついた。抱きつかれた
「な、なにお姉ちゃん!?」
突然のことに樹は体をビクッと驚かせる。しかし風は樹から離れず、悪戯な笑みで夏凜を見た。
風の思考を理解できずに夏凜は眉を寄せると、風は机の上にあるカイロを指差した。
「夏凜に樹はやらないわよ。そこにあるカイロでも使ってなさい!」
「別に貰わないわよ!」
風は夏凜をおちょくり、夏凜は風に言い返す。
いつもと変わらない景色に二人の少女は笑みを浮かべた。
一人は
友奈は元気よく手を上げた。
「私ストーブ借りてきます!」
「友奈ちゃんが行くなら私も行くわ」
友奈の横で東郷もそっと手を上げる。
パアッと目を輝かせ友奈は東郷の手を取った。
「東郷さんが来てくれるなら寒いのもへっちゃらだね!」
「もう、友奈ちゃんたら」
二人は手を取り、まるで結婚したての夫婦のように部室を出ていった。
そんな二人を風は優しげな眼差しで見ていた。
「初々しいのぉ」
「……お姉ちゃんが、おじいちゃんみたいになってる……」
「ちょっとやめて!」
風は涙目になって否定する。追い打ちをかけるように夏凜が聞こえる声で呟いた。「近所のおばさんね」
「うわー!やめてやめて!」
風は耳を塞ぎ、聞きたくないとばかりに頭を振る。
これだけ楽しく平和に暮らせるのは、共に戦ってきた友だからこそ。時には争ったが、一緒になって戦った。絶望の最中、乗り越えてきた勇者部だからこそ、見えない絆が芽生え、楽しく暮らせている。
最後の敵──バーテックス・レオを倒し、捧げた身も帰ってきた。
今では『大赦』からの連絡は無く、最後のメールは『残りの中学生活を堪能せよ』とだけだった。
少女たちは『人類の守護者』のように重い荷物を背負うことなく、一般の中学生──バーテックスも勇者も忘れ、普通の少女として過ごしている。
だが、風は悔やんでいた──。
皆を危険に巻き込んだことを、皆を普通の少女から遠ざけたことを、自分のせいだと悔やみ、『大赦』を『自分』を憎んだ。
「樹はやっぱりあったかいぃ」
「ちょっとくすぐったいよぉ」
風は樹にピッタリとくっついたまま離れない。そして、羨ましく二人を眺める夏凜に風は気がついた。
「夏凜はそこで凍えてなさいよ!」
「私にもちょっと温まらせて…!」
夏凜は顔を赤らめながら樹に抱きついた。三人で抱き合っていると流石に温かくもなり、三人はそのまま離れようとしなかった。
風や夏凜は丁度よい暖かさだが、樹は違った──二人に抱かれている故に、サウナのような暑さで徐々に汗をかき始めていた。
おかげで作業もままならない。
「うぅ〜暑いぃ……」
ニヤける風と夏凜。眉を寄せる樹。
三人は暖を取っていると全員の携帯から耳を遮たくなるほどの大音量が響く。着信音は危険を知らせる警報のようにも聞こえ、音が収まるのを堺に、世界が止まる。
鳥の羽ばたき、木々のざわめきは静止。自分の心臓の鼓動だけが聞こえる。人の姿は最初からいなかったようにパッと消え、空は虹色に染まった。
胸の奥がざわめく。
背筋が凍り、三人はゆっくりと振り返った。
携帯から鳴り響いていた音は消えて、辺りには静けさが戻っている。しかし、携帯の画面には
前と少し違っているものの、それはまさしく『樹海化警報』と同じだった。
それは世界を守護する神樹の四国保護の守護結界。時を止め、世界を書き換える。神樹が作り出した異空間のようなもの。
だがしかし、今回は少し違った──。
本来ならば世界は全て七色に輝く世界へと変わる。けれど、今回は樹海が
「……え?なに?」
「樹海化……警報?」
「戦いは終わったはずじゃないの!?」
風は声を荒らげる。それも当然だった──今回の警報のことを風や夏凜も大赦から聞いていない。バーテックスが来るなどと伝えられていない。
三人が困惑していると、地響きが鳴り響く。地震のようでもあったが、それは一定のリズムで──歩みのようにも感じた。
何か違う重大なことが巻き起こるような、漠然とした不安と恐怖がある。
「風先輩!」
扉を開き、友奈が声を荒げた。
「友奈!東郷!」
「先輩……これは……」
東郷の言いかけた言葉を、風は誰よりも理解していた。
「アタシもわからない。夏凜は?」
「なにも言われてない」
「じゃあこれは、大赦にとっても予知できなかったと」
「かもしれない。取り敢えず外に出てみよう」
風の後に続いて、五人は走って校舎を出た。
校庭には部活をしていた生徒の姿は見えず、この世界は勇者部の五人だけが残されていた──世界を守るために。
歩みのような地響きは収まらず、辺りを見回す。
徐々に地響きは大きくなり、四国の端にそびえ立つ山から
ビルやマンションほどに巨大な人型の何か。
不気味に光る赤い瞳。黒く歪んだ神秘とは言い難い別のもの。
山の向こうから見える暗黒の巨人は跳躍し、山の頂に降り立った。そのあまりの大きさと重量に四国は揺れ、付近の土が大量に巻き上げられた。
「新しいバーテックスなの!?」
「じゃあなんで樹海化が始まらないのでしょうか?」
東郷の質問に、風がわからないと答える。
誰にもわからない。またバーテックスが現れたこと、樹海化が始まらないこと、全てがわからなかった。
わかったことは、いつの間にか全員の携帯に無かったはずの
バーテックスは四国を見下ろし、ゆっくりと浮かび上がる。その巨大な体が宙に浮き上がると、四国中を飛翔した。
音速を超える巨人の飛行速度はマッハ7。人間の動体視力で追える速度ではない。
バーテックスが上空を過ぎ去るだけで建物の窓が粉砕する。
吹き荒れる
「みんな……」
「風先輩」
風の言いかけた言葉を友奈が遮る。携帯を握りしめ、振り返る。
友奈を含めて四人は携帯を片手に笑みを浮かべていた。
怒られると、見放されると思っていた予想を覆し、四人は、友奈は手を差し出した。
「私たちも覚悟はできています」
「友奈さんの言うとおりだよ。一緒に戦おう」
自身のなかった樹がたくましく、不安なんて感じさせない笑みで風に言った。
四人はまた共に戦ってくれる。もう一度、巻き込んだというのに、四人は怒りを表すどころか手を取り合って笑みを浮かべた。あの時と同じように、手を差し出してくれる。
溢れそうになる涙を堪え、風は四人に笑い混じりに呟いた。
「────ありがとう、みんな……!」
覚悟を決め、この瞬間、もう一度戦うことを決意した。
バーテックスは飛翔を止め、四国の大地に降り立った。
まだバーテックスは飛翔し着地しただけ。あまりのサイズと見た目からでもわかる凶悪な一面の欠片すら見せていない。しかし、何もできない人間にとっては脅威だった。
神樹の作り出す守護結界すらも無ければ、この世界は蹂躙されるのをただひたすら待つのみ。
バーテックス──カオスロイド
ウルトラ警備隊七番目の戦士、ウルトラセブンを
カオスロイドSが歩みを進めるだけで道路は陥没し、水道管が破裂。付近の乗用車が一つ残らず横転した。
バーテックスは、限りなく破壊し尽くす。
頭部に装着された全てを切り裂く
ウルトラセブンをコピーしたのであれば、当然ウルトラセブンの扱う武器や技も全て身につけている。
アイスラッガーが無造作にも振り下ろされ──しかし、目的を達する前に黄色と桜色の閃光が行く手を阻む。
「だぁぁぁぁぁぁッ!!」
「勇者ッ!パァァァァァァンチ!!」
黄金の大剣が。
桜色の拳が。
暗黒の一閃を弾き返した。巨大な破裂音。衝撃波が空気を揺らす。
「東郷!」
「……了解しました」
遠くで紺碧の光が、バーテックスの顔に命中──視界を奪った。
すかさず紅蓮が切りかかる。
「はぁッ!」
燃え盛る一閃。渾身の一撃はしっかりとバーテックスの腹部を捉え、切り刻んだ。
「これが完全体勇者の力よッ!」
確実に決まった。夏凜は思わずガッツポーズをしかけるが、バーテックスを見て目を見開いた──バーテックスには傷一つとして付いていなかった。
「────なッ!?」
夏凜にとって渾身の一撃でも、バーテックスにとってはただの掠り傷程度でしかない。
もっとも火力の高い友奈と風の一撃ですら、武器にはヒビも入っていなかった。それだけでなく、バーテックスの一撃を友奈と風の二人でやっと押し返せる程度だった。
確かに、『勇者』は強い。誰もが一目見てわかるほどに強い。そして、勇者部は地獄を生き延びた勇者。並の勇者よりも遥かに強かった。
だが、それよりもバーテックスが上回っていた。
カオスロイドSの手刀が振り向き様に夏凜に振るわれ、咄嗟に十字に重ねた刀で防ぐ。
「──ぐッ!」
しかし、勢いは殺せない。
夏凜の体はボールのように吹き飛んでいく。
「夏凜さんッ!」
追撃を加えようと再度カオスロイドSはアイスラッガーを振るう。
だが、樹の
ワイヤーを握りしめ、樹ごと持ち上げ無造作にも地面に叩きつける。
────巨人の腕で小爆発が起こる。
美森の放った数発が腕に命中した。しかしそれも、気を逸らす程度でしかない。
美森は目を見開き、驚愕する。
数キロをも離れているバーテックスは視線をこちらに向けた。
額のビームランプが輝く。
ウルトラセブンの牽制技──エメリウムスラッシュが美森に向けて放たれた。
美森は念の為に跳躍し、回避を試みる。「外れる」そんな考えは甘かった。美森が狙撃していた
回避は出来たが、着弾時の爆発による余波が美森を吹き飛ばす。
「東郷さん!!」
目を凝らし、バーテックスは頷き、まるで笑っているかのように肩を震わせる。そして一直線に向かって来る桜色の閃光に目掛けて拳を叩きつける。
焦って前だけを見ていたのが仇となり、友奈は防御を構えることができずに地面に叩き落とされた。
「友奈ッ!」
叩き落とされた場所はクレーターが生まれ、バーテックスは友奈を踏みつけようと足を上げた。
しかし、『仲間』がそれを許さない。
風は友奈の前に立ち、大剣で踏み潰そうとする巨人の足を支えるが、巨人は全ての体重を片足に乗せる。
カオスロイドSの重さは約3万5000トン。
勇者の力を持ってしても耐えることができない。
「だぁぁぁぁぁぁッ!!」
風は吠え猛る。
責任感は人一倍。仲間は絶対に守り通す──!
「────!?」
カオスロイドSの足を押し返し、風は大剣を大きく振り上げ、叫びと共に振り下ろす。
彼女は勇者部の中でも最も火力の高い攻撃型の勇者。素振りは大きいが、一撃で勝敗が決まることもある。
故に、カオスロイドSも風の攻撃を阻止しようとする。
カオスロイドSは地を踏みしめ体勢を立て直し、拳を突き出す。
だが、紺碧と紅蓮の勇者は
美森の放った銃弾と共に、鮮やかな紅蓮が駆け抜け、バーテックスの腕に衝突。拳は軌道がズレ風を掠める。
今のバーテックスは攻撃も防御をすることも不可能。
風は決して見逃さず、東郷と夏凜に心から感謝する。がら空きになった顔面に
しかし、バーテックスは
顔面には当たらずとも、肩部を大きく抉り破壊する。
一瞬だが初めてバーテックスは仰け反った。
しかし、まだ致命傷にはならない。
バーテックスは体を捻り、足を振り上げた。
大剣を大きく振り下ろした風は防御姿勢をとることもできず、バーテックスの反撃を受け、数百m先の地面に叩きつけられた。
許さない。
カオスロイドSは風を、勇者を決して許さない。
大きく跳躍し、空中で静止。アイスラッガーに両手を添え、それは淡く紫根に輝く。そして、勢い良く投げ飛ばした。
一つだったアイスラッガーは空中で不規則に動き、いくつにも分裂を繰り返す。
目掛けるは
「
風の瞳に映ったのは飛んでくる紫根の輝き。
分裂を繰り返したアイスラッガーの数は10を超え、不規則な動きで荒ぶりながら建物を破壊。
回避を試みようと立ち上がる瞬間。
左足に激痛が走る──捻ったのかもしれず、回避ができない。
ブーメランが眼前に迫り、風は大剣を構え、防御の姿勢を取った。
瞳を閉じ、迫り来る死に備えた。中学生の彼女にとって、死を見据えられるほど強くはなかった。
一秒経過。
空間が割れる。
二秒経過。
いつまで経っても死は訪れない。
恐る恐る風は閉じた瞳を開くと、自分に投げられたはずの数十のブーメランは突然上空に打ち上がった。
思わず上空を見上げる。
風とバーテックスの間の空。空間にヒビが入っていた。
アイスラッガーがヒビを通過する直前。
硝子が割れるような破砕音と共に、眩い光がアイスラッガーを消し去った。
光が着地する。
暗黒の巨人に匹敵する大きさと重量に大地が揺れ、光は立ち上がる。
「新しいバーテックス……?いや──」
──ぽつりと風は呟く。
何かが違った。言葉を失うほどに、光は綺麗だった。
光からは敵対するような意志が見えず、神々しく神秘的な雰囲気を漂わせていた。
絶望や恐怖といった負の感情は薄れ、気持ちが安心していく。
神話の体現。暗黒と対面する光明。
徐々に光が消え、その姿が顕になった。
暗黒とは異なる青い巨人。
月のように淡く、優し気な顔をしていた巨人の胸のタイマーは、赤く点滅をしている。
「────!!」
バーテックスはまるで怨敵を見つけたように声を張り上げ、拳を構えた。
青い巨人はバーテックスを見るなり、両手を翼のように大きく広げ、左足を上げる──その姿はまるで『獲物を狙う猛禽類』のように見えた。
青い巨人は拳ではなく、平手で戦闘態勢に入る。
「風!」
「お姉ちゃん!」
夏凜と樹が声を荒げて風の元に駆け寄った。
「二人とも無事だった……よかった……」
安心も束の間の休息。その最中、カオスロイドSはエメリウムスラッシュを青い巨人に放った。
青い巨人は寸前で受け止め、紫根の光を無理矢理にも振り払った。
一瞬。瞬きを一度した時にはもう、青い巨人は数百mと離れていたカオスロイドSに掌打を叩き込んでいた。
よろけたところに、もう一度腹部に追撃を叩き込む。
怒りに任せてカオスロイドSがアイスラッガーを振り下ろした。しかし、青の巨人は往なす。
相手の行動を読んだ動きは、まるで台本でもあるように青色の巨人は敵の攻撃を全て回避し、受け止めた。
大胆で靭やか、滑らかな動きで敵を翻弄。
しかし、至近距離で放たれたエメリウムスラッシュを受け、巨人はその場で膝を付いた。
アイスラッガーを片手に、カオスロイドSは振り上げ、力いっぱいに振り下ろされ──けれど、それを許さない勇者がいた。
「やらせないッ!!」
振り下ろされる豪腕を桜色の閃光が弾く。
そこで初めて、青色の巨人は『
友奈は感じていた。
青色の巨人は禍々しいものとは別の、神秘的でどこか見たことのある存在。天使や神といった神々しさはまるで敵なんて思えない。
怯んだカオスロイドSの胸部にすかさず青色の巨人は掌打を叩き込む。だが、カオスロイドSは足で踏み込み体勢を立て直した。カオスロイドSも簡単には倒されない。
偽物故に戦士の誇りなど欠片もない。
カオスロイドSは全てを破壊する混沌。故に、諦めは悪い。
誰かを道連れにしてでもと、カオスロイドSは青色の巨人の背後──風たちのいる建物に目掛けて
通常よりも太く放たれた光線は一直線に放たれ、犬吠埼姉妹と夏凜は刹那の時で死を悟った。
視界が紫根で覆われる刹那──。
紫根ではなく、青色に染まった──。
風たち目掛けて放たれた光線は、青色の巨人が身を挺して遮り、次々と放たれる
「守ってる……?アタシたちを……?」
光線の雨が降り注がれた後、巨人は困惑する風たちを見て頷いた──まるで「大丈夫だ」と告げているかのように。
青い巨人は立ち上がり、両手ですくい上げるようにして光の粒子を集束させる。
すると、巨人はゆっくりと光の粒子をカオスロイドSに向けて押し出した。
怒りに狂い、最後まで邪魔をする巨人に向かってカオスロイドSは走った。
青色の巨人に辿り着く手前、光の粒子はカオスロイドSを包み込む。
キラキラと煌めき、輝く光が空に消えた時、いたはずのバーテックスは影すらも見えずに消えていた。
その瞬間、時は動き出す。
虹に染まる空は青く、人々の姿が戻っていた。
世界の寂蒔が解かれ、傷ついた世界が元に戻る。破壊された建物は復元されるが、それもたった心もとないものであり、破壊された建物は少なからずあった。
世界は傷つきながら、日常がゆっくりと帰ってきている。
世界が元通りになる中、青色の巨人は膝をつき、空気に溶けるように、光になって消えていった。
闇は消えた──
新たに現れた光の巨人。
残された人類を守るために現れた。否、暗黒に敗北し、運良くこの世界にやってきた光。
────物語は此処から始まる。
正義と悪の物語。
現れた敵は
味方は二人の戦士──。
過去の神話が此処に顕現す──!
▽カオスロイドS
▽カオスヘッダーを利用してウルトラセブンをコピーしたニセのウルトラ戦士。
▽結城友奈
▽13歳
▽桃色の勇者。明るく前向きな性格で友だち思い。常に元気いっぱいな勇者部のメンバー。運動神経が良く、運動部の助っ人として呼ばれることも多々ある。行き当たりばったりで能天気だが、いざというときには頼れる性格で皆から一目置かれている。しかし、これらの性格は周囲を和ませるためにわざと演じている表向きのもので、実際は周囲に対して相当に気を遣っており、友達のためなら冗談抜きで命を賭けてしまう危うさを持っている