【完結】春野ムサシは勇者(ウルトラマン)である 作:渚 龍騎
口調が難しくて、皆さんの脳内で変換をお願いいたします。
これが、何を示しているのかは理解できない。しかし、これから何か漠然とした恐怖が待ち受けていることは確かだった。
暗黒の首魁と真の勇者。
真の勇者とは恐らく、昨日出現した
ここから考えるに、暗黒の首魁とは恐らく闇の巨人たちを束ねる存在。
勇者たちを圧倒する闇の巨人。
勇者たちを守った青色の巨人。
二つは全く逆の対となる存在。
これからは勇者がどのようにして闇の巨人を圧倒できるか、それによって全ての勝敗が決まる。必ずしも青色の巨人が勇者たちを助けてくれるかなど、そんな不確定要素に世界をかけるほど『大赦』も馬鹿ではない。
しかし、どの住民とも顔が合わず、身分を証明できるものを一切持っておらず、青色の巨人が消えた場所で気を失っている人を見つけた。今は、この家で眠っている。
恐らく、その人が青色の巨人。
一人の少女──
「じゃあ次は〜どうやって教えてもらうかだよね〜」
長い髪を翻しながら少女は振り返った。
「
園子は
世界に降り立った闇に立ち向かう光。考えただけでも彼女の脳内には、あらゆる期待を抱いていた。
だが、喜びとは裏腹に漠然とした恐怖も感じた。
いくつにも並ぶ本の背表紙を指先にそって視線を動かす。
過去に
暗黒の巨人に関する弱点や対策。今後の目標、を探す必要がある。
園子は数多の蔵書からいくつかの本を手に取った。
園子の手にはいっぱいなほど本を抱え、本の数は五冊を超えた。そして、机に戻ろうとして目を見張る。
「……戻し忘れ、た?」
一瞬、自分を疑った。しかし、その本を出したことも、机の上に本が出ていることも、記憶には無かった。
所々は虫に喰われ、半ば朽ち、繋ぎ止める糸も解けそうになっている。
古文のようにも見えるが、それは
園子は眉をひそめながらその本を手に取った──表紙には何も書かれていない。
半分朽ちていながらも、本は思っていたよりも丈夫でぺらぺらとページを何枚かめくる。
「───!」
園子は一瞬、本に描かれた絵を見て驚愕し、本を床に落とした。
刹那の瞬間だったが、『絵』は園子の脳に焼き付く。
表すのならそれは『恐怖』や『絶望』を感じさせるほどに、黒く染まっていた。
人の形をしながらそれは鮮血の如き瞳と影よりも黒い体持ち、まるで金縛りにでもあったように己の体は動かなかった。
「なに、これ……」
二十回の『満開』と『散華』を繰り返し、園子はかつて『半神』として讃えられていた。
己の中に潜む『恐怖』と呼ばれる概念を捨て去り、全てのバーテックスを殺すために全てを捨てた。
────
それほどまでに絶望を潜り抜けた園子が『恐怖』を思い出すのなら、何も知らない人間が見れば大変なことになっていたのかもしれない。
園子は恐る恐る床に落ちた本を手に取り、もう一度表紙を見る。
表紙には文字が
「……
震える手を抑えて、園子はもう一度ページをめくった。
──しかし、『絵』などどこにも描かれていなかった。
だがその代わりに、
園子は無言で文字を眺める。
過去に教わった知識を遡り、恐らくまだ世界が残っていた時代の文字。これだけ昔の本が残っていることが珍しく、今まで見たことがなかった。
「わからないなら……聞いてみるしかないよね〜」
一人で呟き終わるのと、書庫の扉が開くのは同時だった。
扉を開けたのは一人の女性──園子の身の回りの世話をしてくれているフカさんだった。
フカは着物を身に纏って深々と頭を下げた。
「園子様、あの方が目を覚ましました」
園子は「わかった」と頷き、フカと共に書庫を後にした。
────『冥王』と書かれた本を片手に持って。
──夢を見た。
闇が光を覆う瞬間。
夢や希望などと、曖昧なものを絶望が覆い尽くす。
炎に呑まれる世界の中で、暗黒の巨人が嘲笑う。
闇に消えた希望。その中で、光が途絶えた。
「……シ……」
優しく、誰かが呼ぶ声が聞こえる。
「……厶……シ」
何度も聞いたことのある声。
誰だった?
とても大切な──。
「ムサシ……」
嗚呼、そうか。彼だったのか──。
「……コスモス……」
消えてしまいそうなほど弱々しく、コスモスは名を──。
目蓋の裏にチクリと光が差し込む。
ゆっくりと閉じていた瞳を開くと、眩い太陽の光で視界が遮られた。
瞬きを数回繰り返し、目を慣らしてやっと視界が安定した。
「……ここ……は?」
見覚えのない場所。
日本の和風を思わせる内装。畳に敷かれた布団の上で、ムサシは横になっていた。
起き上がろうと上半身に力を込め、全身にほとばしる激痛に顔を歪めた。それでも激痛に耐えて起き上がった。
「はやく、ジュランに戻らないと……!」
記憶に蘇り、思い出したのは自分が敗北したこと。
ムサシが住んでいた遊星ジュランに現れた謎の暗黒の巨人は、同化したコスモスを、謎の空間に吹き飛ばした。
早く戻らなければアヤノとソラや怪獣たちが危険だ。やっとの思いで叶えた夢と希望を潰されるわけにはいかない。
体に流れる痛みに苦渋の顔を浮かべながら、ムサシはゆっくりと立ち上がる。だが、体は石のように硬く重かった。
「お目覚めになりましたか?」
声の方に振り返る。
長身で凛々しい姿の女性と、その隣には綺麗な黄な粉色の髪を伸ばした少女が立っていた。
「まだ安静にしていてください」
長身の女性がムサシを座らせ、少女の横に並ぶ。
「──君たちはいったい?」
ムサシの問いには少女が答える。
「私の名前は乃木園子で〜す。そしてこちらはお世話係のフカさんです〜」
軽く手を振りながら、少女は乃木園子と名乗り、フカと呼ばれた女性は深々と頭を下げた。
「僕は……
ムサシは包帯に手を当てた。すると、園子が「そうですよ」と間延びした口調で笑顔を浮かべて答えた。
「ありがとう」
素直にムサシは短く感謝を述べると、園子は両手を軽く振って謙虚にかえした。
「いえいえ、お気になさらず〜。早速ですが〜ムサシさんに聞きたいことがあります」
自己紹介から急いで話題を変え、園子は丁寧にその場で正座をし、ムサシとの視線を合わせた。
話を再開する。
「あの青い巨人。ムサシさんですよね?」
「────」
数秒の沈黙、ムサシは口を開いた。
「そうだよ、彼はコスモス……ウルトラマンコスモス。僕の大切な友人だ」
「
「君たちは何者なんだ?」
ムサシは少し警戒しながら聞く。
当然だ。味方か敵かもわからぬ、少女たちを信じろ、その方が無理な願いだった。
しかし、ムサシに比べて園子は軽い口調で答える。
「私たちはこの街を管理する『大赦』のものです」
「大赦……」
「率直ですが願いを聞いていただけませんか?」
「願い?」
ボソリと呟き、口を開いたまま硬直する。
「私たちに協力してほしいんです」
園子の後ろで立っていたフカが、横に正座し代わって説明を始めた。
「もちろん、ただでとは言いません。大赦の結論では貴方と私たちの世界は別。貴方のような
「じゃあ僕は……いつの間にかこの世界に来てしまったのか……」
「あまり驚いていないのですね」
ムサシは頭を抑え「まあ」と小さく呟いた。
過去にムサシとコスモスは別の宇宙に行ったことがある。今になって、「世界が違う」などと言われても驚きはしない。しかし、また厄介なことに巻き込まれてしまった。
いち早くジュランに戻らねば。そう考えながらも、この世界に現れたカオスヘッダーを思い出した。
浄化した故にわかる。あの暗黒の
一体なぜ?
今のカオスヘッダーはあんなことを絶対にしない。
考えれば考えるほど頭が痛くなる。
そして、ムサシは自分と共に協力した少女たちの存在を思い出す。
「あの少女たちは……?」
園子に問いかけ、園子は笑顔で答える。
「この世界をバーテックスと呼ばれる敵から守る『勇者』ですよ〜」
「バーテックス……勇者……」
ムサシは少しの間を空け、園子の目を見た。
「この世界のことをもう少し教えてほしい」
待っていたと言わんばかりに、園子は両手を合わせ「もちろんいいですよ」と、変わらず間延びした口調で答えた。
それから、ムサシは園子と名乗った『先代勇者』の少女に全てを聞いた。
この世界がすでに、終わっていること。
天の神が従える
地の神が束ねる
四国以外の全ては炎に呑まれ、バーテックスが四国を守る『神樹』を狙って結界の外から現れる。そして、バーテックスを倒せるのは無垢なる少女に託された素質──『勇者』のみ。今は『勇者部』がそれらしい。
昨日現れた謎の黒い巨人に関しては世界を管理する『大赦』ですら予測できず、正体が不明とのこと。
そこに現れたのが、ムサシとコスモスだった。
「乃木──」
「園子でいいですよ〜」
ムサシが呼ぼうとして、それよりも早く園子が笑みを浮かべて遮った。
コホン、と園子の名前を呼ぶことを止め、改める。言いづらいが、言わなきゃならない雰囲気。ムサシは少しながら緊張して口を開いた。
「そ、それじゃあ園子にいくつか聞きたいことがあるんだ」
「なんでもどうぞ〜」
「この世界にウルトラマンはいるのか?」
「私は見たことないですね。だけど〜昔の本には
園子は持ってきた本をムサシの前に出した。
差し出された本は表紙に『冥王』と書かれていた。所々が虫に喰われ、朽ちて、あまりにも本とは呼び難いものだったが、確かにそれは本だった。
ムサシは「これは」と疑問に感じながら本を手に取る。
「秩序と正義の巨人……暗黒の首魁……」
「その本を初めて見たとき『絵』が書かれていたんですよ〜」
「絵?」
園子は頷き、両手を広げた。
「こんな感じで黒色の何かが獣のように吠えている絵でした」
「獣のように……吠える……」
ムサシの脳裏にはジュランに現れた暗黒の巨人が過ぎった。
暗闇から現れた漆黒と赤いラインの巨人。
力は圧倒的にコスモスよりも遥かに上だった。
もしも、この世界にカオスヘッダーが現れたのと関係があるのであれば、この世界を見捨てるわけにはいかない。
だがしかし、アヤノやソラたちの安否も気になる。
カオスヘッダーが守護してくれていることを祈り、自分たちはこの世界から帰る方法を見つけなければ。
「ムサシさんどうかしましたか?」
「……もしかすると、その黒色の何かが異変の起こっている元凶かもしれない。僕とコスモスは一度、
園子とフカは目を見開き、ムサシは視線を逸して続ける。
「圧倒的だった。僕とコスモスがまるで歯が立たなかった」
「
「わからない」
正直に言うならば、
自分の無力さを再度実感してしまう。
あの時は一瞬でも恐怖を感じ、逃げ出してしまいそうだった。
そんな自分が憎い。勝てる自身がないのだ。
昨日のカオスヘッダーとの戦いでさえもかなり厳しく、『勇者』たちがいなければ僕はやられていた。
今、コスモスには戦う力が残っていない。
カオスヘッダーとの戦いでコロナモードにすらも変化できなかった。
それだけ僕もコスモスも弱っている。
今は傷の回復を待つしかない。
それまでに、この世界のことをもっと知る必要がある。
「ムサシさんの傷が治り次第、『勇者部』に行きませんか?私の友達がいっぱいいるんですよ〜」
「わかった。彼女たちにも感謝をしなきゃいけない。もちろん、君にも。ありがとう」
園子は「いえいえ」と謙虚に返した。
『神樹』の結界外。
音速を超える速度で、
一人は暗黒の巨人。頭部に特徴的な角を持ったカオスロイド。
カオスロイドS同様にタロウの技を身に纏った
破壊の限りを尽くすカオスロイド
銀と黒のプロテクターを身に纏った赤色の勇者。
漆黒から放たれた光線を躱し、赤色の勇者はカオスロイドTを火の海に浮かぶ大地へと叩き落とした。
この世界にはすでに大地ですら面影が残っていない。
二人の巨人が立っている大地は徐々に火の海に呑まれつつあり、少しの振動ですら壊れてしまうほどに大地は崩れかかっていた。
その大地の上で、それでも二人の巨人は構わずに戦闘を再開した。
赤色の勇者はカオスロイドTの回し蹴りを回避。勢い良く回した肘がカオスロイドTの顎に直撃する。
怒りに任せて振るわれた一撃を上手く回避すると、勇者は相手の勢いと体重を利用して地面に投げた。
あまりの重量に大地にヒビが入る。隙間からプロミネンスが現れた。
だが、それでも二人の巨人は戦いを止めることはなかった。
カオスロイドTは勇者との距離を離し、大きく跳躍した。
体を翻して一気に急降下。スワローキックを放つ。
両腕をクロスさせ勇者はスワローキックを防御するが、強力な一撃に体は吹き飛ばされ、地面を大きく転がる。そこに追撃を加えカオスロイドTはさらにスワローキックを放ち続けた。
カオスロイドTの足を掴み取り、地面に叩きつける。
一旦、距離を離して勇者と暗黒は互いを睨んだ。
地球の源ともとれる高熱が二人の巨人の体力を奪い続ける。
四国の結界外を探索している途中、いきなり攻撃を仕掛けられた。
通信も無ければ、この世界から抜け出す方法が見つからない。この巨人を倒せば、何かが見つかるのかもしれない。見つからないにしろ、倒さなければ生き残った人類に被害が及ぶ。
地球上全ての生命が持つ『希望』を信じ、今まで探索を続けたが、ここまで酷いとは──。
「──シュワッ!」
赤色の勇者は声を張り上げ、拳を突き出した。
「────!!」
暗黒の巨人は両腕を広げ、獣のように吠えた。
二人は全力で地を踏みしめ、距離を詰める。
カオスロイドTよりも遥かに赤色の勇者は
だが、怯むだけで倒れはしない。
カオスロイドTが両手を頭上で合わせ、次に引き絞った。
怪しげな紫根の光がカオスロイドTの全体を包み込む。
光線が放たれることをいち早く理解した赤色の勇者も合わせて、ガッツポーズのようなポーズで構えエネルギーを頭上の光に集束。
カオスロイドTが腕をTの字に構えて一気に溜めたエネルギーを放出──ストリウム光線を放つ。そして、赤色の勇者も同時に光線を放った。
二つの巨大なエネルギーがぶつかり、空間に狂ったような暴風を巻き起こす。立っている大地が崩壊。
二つのエネルギーが爆発する寸前──勇者は飛び上がった。
目を見張り、驚愕する。
炎に呑み込まれた大地を見下ろし、舞い上がった炎を見つめていると、炎が渦を巻き一点に集まり始めた。
爆発に巻き込まれたはずのカオスロイドTが炎の中で、紫根の炎を身に纏い吠え猛ける。
確実に仕留めるために、カオスロイドTは己の全てを使って相打ちになったとしても相手を破壊する。
決めた。そう決めた。これが覆されることはない。
赤色の勇者は危険を察知してもう一度、エネルギーを集める。
カオスロイドTは獣のように咆哮。音速を超える速度で一直線に飛翔する。
カオスロイドTの体はもう既に溶け始め、原型を留めてはいなかった。
衝突する寸前──もう一度、赤色の勇者は光線を放つ。
光線同士の爆発よりも、遥かに巨大な爆発が巻き起こる。
周囲の炎を吹き飛ばすほど強力なエネルギーは全てを跡形もなく吹き飛ばした。
例えウルトラマンだとしても、無傷では済まない。
彼もまた、無傷ではなかった。
赤色の勇者──ウルトラマンジャスティスは爆心地を見下ろし、肩を荒く上下させていた。
「一度、引き返さなければ……」
ジャスティスは一言、誰にも聞こえない世界で呟き、その場を飛翔した。
▽春野ムサシ
▽コスモスに認められた真の勇者。心優しい青年でありながら、強大な敵にも立ち向かう勇敢さも持ち合わせている。遊星ジュランでは開拓チームのリーダーとなり、保護した怪獣たちを移住させ共存する夢を実現させ、同じ隊員だったアヤノと結婚し、一人息子のソラも生まれている。
▽ウルトラマンコスモス
▽変身者 春野ムサシ
▽優しさと強さを併せ持ち、全ての命を慈しむ慈愛の勇者。戦いを好まず、相手と傷つけずに仲間になることを心から望んでいるが、邪悪なる者に対しては勇敢に立ち向かう勇者。
ムサシが子どもの頃、バルタン星人を追ってやってきた際に友人になる。
平成のウルトラマンが代表するモードチェンジをコスモスも行うが、コスモスの場合は戦闘の目的に応じてモードを使い分ける。