【完結】春野ムサシは勇者(ウルトラマン)である 作:渚 龍騎
ちゃちゃちゃちゃーんちゃちゃーんちゃんちゃちゃーん
今、音楽と共にコスモスが出てきました。
なぜ、こうなったのだろうか──。
目の前で勇気を纏った巨人と一人の勇者が、暗黒の巨人と激闘を繰り広げている。
周りには地面に倒れ伏せる三人の勇者。
体は、何故か動かすことができない。記憶も曖昧だった。
けれど理解できることもある。
それは『絶望』と呼ばれる漠然とした何かだ。
全てが暗黒に包まれ、太陽を背に戦う巨人は声を上げ、正拳突きのような構えで相手を見据えた。
瞬きをした一瞬の間で、空いた距離を詰め暗黒の巨人を吹き飛ばす。
彼は『光』だった──。
滲み出る光に、花たちは約束を交した。
希望の輝きを、懐かしく感じた。
語った
月の光に似た『優しさ』、太陽のフレアの如き『強さ』、そして彼は絶望の中で『勇気』を持って戦った。
光に濡れる。
絶望した彼女にとっては、もうどうでもよい。
自分を殺したい──。
皆の夢を潰した自分を。
遠ざけた夢を──。
儚い未来。
希望など無い。
幸せな日常。
夢のような未来。
笑顔で、笑い合える未来。
そんなもの、もうこの世界にはない。
夢を追いかけて、全てが変わった──。
曖昧なものを待ち続けて、絶望した。
恐らく、彼も呆れて見捨てたのだ──。
「なぜ、守ってくれたのだろう……」
疑問しか残らなかった。
誰にも聞こえず、誰に言ったのでもない。
笑われ、捨てられ、消された人生にもう何も残っていない。
巨人は両腕を交差させ、自らの莫大なエネルギーを溜める。
視線は暗黒の巨人に向いているものの、意識はどこか遠くを見ている。
大きく両腕で円を描くように広げ、金色の光は右腕に移る。
「──テェヤッ!!」
野太い声が発せられると、金色の光線は目の前の敵ではなく、自分へと放たれた。
驚く暇もなく、理解していた通りに、全てわかっていた。
自分は見捨てられたのだ。切り捨てられたのだ。
そう、理解して彼女は諦めた──。
視界が金色の輝きで覆われ────。
乃木家の庭で、冷ややかで気持ちの良い風が肌を撫でる。
腕、腰を捻り、体をほぐした。
前日よりも体に痛みを感じることは無くなり、随分と体調が優れてきているのを実感していた。
「────」
改めて辺りを見渡すと、そのあまりの豪邸に息を呑む。
綺麗に整えられた盆栽。積まれた石に、鯉の泳ぐ池。
和風そのものの家に、ムサシは声を漏らした。
「すごいや」
自分が帰るまでの住む場所が見つからず、今は乃木家に住まわせてもらっている。しかし、慣れない家庭に休むも休めない。
一週間という日が流れ、『怪獣』や『
今ではコスモスの傷も癒え、自分も完治したと言える。
次に敵が現れた時は端から全力で戦うつもりだ。
しかし、敵が現れないとなればムサシは案外暇なものだった。
ジュランでの生態調査も、開拓を進めるのも、頼まれた仕事も、この世界ではできない。
数日前、園子に「なにかを手伝わせてほしい」と頼んだが、園子は笑顔で「ムサシさんは楽にしてくださっていいですよ〜」と特徴的な口調で会話を流された。
だからといって何もしないのも、大人として失格だ。
なので、今はこの世界のことを学んでいる。
乃木家は伝統ある家系故に、大赦ではトップの存在だった。
書庫にはある程度のことが書かれている。しかし、ウルトラマンであるが大赦からすればムサシたちは異国の人間。
ある程度の行動には制限がかかっている。
勇者たちには信頼されているが、大赦にはされていない。
それも当然のことだった。
初めて来た人間を信用しろ、という方が無理な話だ。
「……ふう」
ため息をつく。
やはり、一人は暇だ。
コスモスは僕を見守っているだけで、あまり話しかけてくることもない。
自分で切り開く道を、僕のことを信頼してくれているからこそ、コスモスは何も話さない。
気分が落ち着くことはない。
今もジュランやアヤノとソラが心配だった。
かつては敵だったカオスヘッダーがいるから、と不安の気持ちを和らげているが、カオスヘッダーが全てをどうにかできるなどと、夢を見ることはできない。
ムサシは縁側に腰を下ろした。
ふと、乃木家の門に視線を移すと木の影に隠れて、誰かが立ってることに気がついた。
「……?」
黒い長髪に、合わせたような黒いドレス姿はまるで──。
「……ジュリ?」
唇から声が漏れる。
「ジュリとは?」
問いかけられ、振り返るとフカが立っていた。
ムサシはフカに視線を送り、慌てて視線を戻すが、黒いドレス姿の人はどこにも見当たらなかった。
思わず駆け出して近くに寄るが、そこには影も形も残ってはいなかった。
「ムサシ様、どうかなさいましたか?」
「……いや、なんでもない。所で僕になにか?」
フカはその場で正座をしながら、頭を下げた。
「お泊りになる場所が見つかりましたと報告に」
「……ありがとう」
「では、失礼いたします」
素っ気なく、必要最低限の会話だけをこなして、フカはその場から立ち去った。
「アヤノに怒られるかな……」
無理矢理にも思考を切り替え、改めて冷静に考えた。
結婚をして子どもがいるにも関わらず、知り合った中学生のしかも女子の家に泊まっていたなどと、口が裂けても言えない。
「いや、そこは黙っとこう……仕方がないから」
自分に言い聞かせる。
呼吸を落ち着かせ、この世界にジュリがいるはずもないと、思考を切り替えた。
「荷物をまとめる……といっても何もないからな……」
自分の私物と言えば、今着ている服のみ。それ以外は全て大赦から貰ったものだ。
念の為にそれもまとめることにする。
改めて息を吐き捨て、ムサシは自室に向かった。
自分の──乃木家に頂いた──服をカバンにまとめて、外に出た。
すでに門の前には園子とフカが立っており、横にはリムジンのような黒い車が停車していた。
「さあさあ、どうぞ乗ってくださ〜い」
「……え、これに?」
困惑する。
園子はこっちの気持ちなどお構いなしに、両手で車を見せるように広げ、おまけに「じゃじゃじゃーん」などと言っていた。
この間延びした口調にも随分と慣れてきた。
ここで断っても申し訳ないと思い、ムサシは黙って車に乗った。
流れゆく景色の中、ムサシは窓際に肘を置き、顎に手を置いて外を眺めていた。
そして、ムサシとは逆側から小さく音楽が漏れている。
横目に見ると、見たことのないぬいぐるみを抱きながらイヤフォンで音楽を聞いている園子の姿があった。
肩を揺らして、ノリノリで音楽を聞く園子は時々、音楽に合わせて合いの手を入れていた。
初めて会った時はまさしくお嬢様のような雰囲気を醸し出していたが、やはりどこをどう見ても普通の中学生だった。
こんな少女たちに戦わせるなんてあまりにも──。
残酷過ぎる。
それでしか人類の生き残る方法がない。
この世界に、ウルトラマンと呼ばれる存在は存在していない。いや、もしくは存在
いずれにしろ、この世界を『破壊』と『混沌』から守らなければジュランには帰ることはできない。
この世界と、この
乃木家を出発してから数十分が経ち、ムサシと園子は目の前に建っているマンションを見上げていた。
「ホントにここを僕が?」
「そうですよ〜ムサシさんは、
「犬吠埼姉妹の隣か……」
納得して頷き、改めて考えると眉を寄せた。「え!?」
「わからないことも多いと思ってフーミン先輩たちの隣の部屋にしました〜」
「……ああ、ありがとう……」
「色々家具とかも置いてありますからゆっくりしてくださいね〜」
「うん、ありがとう」
ムサシがマンションの入り口に歩みを進めると、なぜか隣には大きな荷物を持った園子が立っていた。
「え?園子はなんで荷物を?」
すると、園子はいつものように天真爛漫の笑顔で答えた。
「私もこのマンションに泊まるんですよ〜」
「え!それ本当!?」
はい、と答える。
まさか残った世界を束ねる『大赦』のツートップを成す『乃木家』のお嬢様が、どこにでもあるようなマンションに泊まるとは思わなかった。
随分とお金持ちのイメージからかけ離れていた。
ムサシが考えうるお金持ちは『わがまま』なものと認識をしていたが、それもまた違った考えだった。
ただの偏見。金持ちはわがまま、そんな考えは破棄する。
「園子はどの部屋に?」
「一個下の階ですよ〜」
「僕よりも園子が風や樹の部屋の隣がいいんじゃない?」
「それも考えたんですけど、隣に誰かいると安心するものですよ〜」
「あー……気が気でないよ……」
エレベーターに乗り込み、園子が先に降りて。ムサシは一人で壁にもたれかかる。
深くため息をついた。
重いカバンを置き、エレベーターが一階を昇ることが遅く感じる。
とても、園子と話している時は遅く感じなかったのに、なぜか一階昇るのがさっきよりも長い。
ふと、腕に付いた時計に視線を移した。
「あれ?壊れた?」
時計の針は動いていなかった。
電池が切れたのだと思い、ムサシはため息をついて天井を見上げた。
長い、とても長い。
ただせっかちなんかじゃなく、エレベーターが遅すぎる。
「いや違う……これは──」
エレベーターが止まっている。否、時が止まっていた。
階を示すエレベーターのモニターは点滅していたはずが、今は点滅を繰り返していない。
時計も壊れたのではなく、時が止まっていたから動かなかった。
ムサシは慌ててエレベーターの非常用ボタンを何度も押すが、当然動くはずもなく、扉の隙間に指を入れた。
「くッ!開けぇ!」
渾身の力を込めて扉を開こうとするが、思った以上に扉は重く閉ざされていた。
ムサシは諦めずに天井を見上げる。
通気口ならば、エレベーターから脱出できる。
手すりを踏みつけ、通気口を蹴り破った。
エレベーターの天井に足をつけ、目の前には扉がある。ちょうどカゴ一個分だけ進み、時が止まっていたらしい。
ムサシはもう一度扉の隙間に指を入れて、さっきよりも力を込めた。
重い鉄製の扉は徐々に開き、大人一人がやっと通れる隙間が開くと、ムサシは体を横にして外に出た。
突如、大地からマンションへと振動が伝わり、大きく揺れる。
「階段からはやく行かないと!」
慌てて階段を駆け下り、ムサシはマンションの外に出た。
学校の方角に視線を向けると、既に
全ての人類と人類の創造物を見下す暗黒の巨人。まるで嘲笑うように、巨人は腕を組み、空中で静止し、全てを見下していた。
漆黒の体に稲妻が走ったような銀色のライン。
人類の創造物を映す鮮血の赤い瞳は、心の奥までも見透かすような漠然とした恐怖を相手に与えていた。
「見たことがある。あの巨人は──ッ!」
全ての始まり、人類に『光の巨人』の存在を記憶と心に叩きつけた原初の光。
終わりかけた世界を、全力で終わらせるために現れた漆黒と銀色の巨人。
見覚えのある姿だが、光とは根本的に違う闇の姿に、ムサシは驚きの声を上げた。
「ウルトラマン……」
原初のウルトラマンをコピーしたカオスロイド
セブンやコスモスなどのように特徴的な技や武器などを持ち合わせてはいないものの、ウルトラマンは決して油断することはなく、どの敵に対しても全力で挑む光の戦士。
ムサシやコスモスもウルトラマンには出会ったことがある。
その戦闘スタイルや、全てのウルトラマンの基本となるスペシウム光線を磨き上げた原初の巨人。
ウルトラマンをコピーして作られたのであれば、全てが彼を上回っている可能性すらある。
「少し遠いけど、仕方がないッ!」
コスモプラックを天に掲げ、戦友の名を叫ぶ──瞬間、ウルトラマンの体が輝き出した。
己の闇に相反した対の光は、カオスロイドUの体を包み込む。
数キロと離れているムサシの周囲をも呑み込む光は、やがて四国を全て覆い尽くした。
光に呑まれたムサシの意識は遠く────。
時は、少し遡る。
勇者たちは、
元々勇者部とはバーテックスと戦うために集められた部。勇者たちを管理し、人類を守らせる役目の部活。だが、勇者としてのお役目が無いのであれば、勇者部の目的とは『みんなのためになることを勇んで行う』という活動趣旨。いわば、ボランティアサークルのようなものだ。
他の部活の手伝いや、勇者部ホームページに届けられた仕事など、勇者部は様々なことを成し遂げている。
保育園の子どもたちに人形劇を見せたりもする。街のゴミ拾いや、折り紙教室、捨て猫の里親探しなど活動は多岐に渡る。
全ての活動を全力で行うからこそ、勇者部は讃州の人たちに信頼され、仕事を任されている。
今、犬を探しているのもホームページに届けられた仕事だった。
内容は『帰って来なくなった飼っている犬を探して欲しい』とのことだった。
写真を頼りに二人と、三人に別れて探していた。
珍しく友奈と美森は別れて風と友奈が二人になり、他の三人に決まった。
「友奈いたぁ?」
「見つからないです」
草むらの中をかき分けて、友奈は顔を出した。
風と友奈は海の近くを任され、かれこれ一時間以上探していた。
「案外見つからないものね」
「前はすぐに見つかりましたけど、今回は全然ダメです……」
わかりやすく赤色の首輪をした真っ白な犬とのことで、すぐに見つかると踏んでいたが、やはり警戒して逃げてしまうのかもしれない。
風は腰に手を当ててため息をついた。
「ここら辺は結構探しましたけど、どうしますか?」
「そうねー、樹たちから見つけたって連絡も来ないし、かなり難航してるわね」
そうですね、と友奈は頷いてなんとなく海を見た。
太陽の光を反射して、キラキラと波に動いて煌めく。
波が砂浜に打ち付けられ、海が緩やかな鈍い音を何度も単調に繰り返す。
心が落ち着き、とてもこの世界が終わりを迎えているとは思えなかった。
「風先輩?」
「んー?なにー?」
「ムサシさんの住んでいる星はここよりも綺麗だと思いますか?」
「んー……ここも負けてないと思うよ」
今では信じられない。だが、『ウルトラマン』や『神樹様』がいる故に信じられないことではなかった。
ムサシとコスモスが来たのは開拓惑星のジュラン。
怪獣と人間が共存している星。ジュランでは様々な命が支え合って生きている。たくさんの怪獣たちと、カオスヘッダー。
かつては人間の敵だった彼らとも、今は一緒に生きていると、ムサシは言っていた。
「敵と仲良く暮らしているなんて、アタシたちの世界じゃ考えられないわね」
「ホントにすごいですよね!」
「羨ましいわ」
友奈は海を見ながら、ジュランを想像して目を輝かせていた。そんな友奈を横目に、風は一人で犬を探している。
一度犬の捜索を中断して、風は膝やスカートに付いた土を払った。
腰に手を当て、友奈の隣に並び、一緒に海を眺める。
「綺麗な奥さんに可愛い子どももいて、アタシもあんなカッコいい人と付き合ってみたいものよ」
「風先輩にだっていつか素敵な人と出会えますよ!」
「そうだといいわ」
誰もができるはずのない夢だと言いながら、ムサシという人間は決して夢を諦めずに追いかけた。
真っ直ぐな志はまさに勇者そのものだった。
自分の夢など、もう遠く儚いものだ──。
風にとって樹や他のみんなが無事でいれば、それでよかった。
皆を巻き込んで、絶望させたのは誰でもない部長の自分。
そんな自分には未来など、夢などは持ってはいけない。
皆が幸せであれば、自分はどうでもよかった。
「風先輩?」
「……ん?なに?」
「風先輩の夢ってなんですか?」
突然のことに思考が
「夢……」
小さく友奈に問われた言葉を呟く。
「私はずっと、勇者部のみんなと笑って過ごしたいです!」
「友奈……」
「東郷さんや夏凜ちゃん、樹ちゃんに風先輩、もちろん園ちゃんも。東郷さんのぼたもちを食べたり、風先輩と夏凜ちゃんの会話に笑って、樹ちゃんの歌も聞いて、園ちゃんの眠る姿を見たり、みんなと変わらず楽しく過ごしたいです」
友奈に悪気はない、決して風を責めているわけでもない。
ただ自分の夢見た世界を思い描いているだけ。
友奈は、花のような笑顔で呟いた。
「私は勇者部に入ってよかったです!」
「────」
友奈は、優しかった。
太陽の光のように暖かく、花のような柔らかな心。
勇者部の誰もが、友奈の広く暖かな心に救われた。
風を尊敬し。
樹を可愛がり。
夏凜を受け入れ。
美森を敬い。
園子を信頼し。
勇者部を信じて。
勇者部を守った──。
誰よりも広く勇敢な心を持った勇者だ。
だからこそ、友奈を心配する。
友奈は満面の笑みを浮かべているが、瞳はどこか切なく煌めく海を映していた。
「……友奈の夢も良いと思う。そうだなあ……アタシの夢はね、樹の夢が叶うこと」
「樹ちゃんの?」
「そ、樹の夢が叶って、アタシは横でそれが見れればいい」
「……風先輩らしいですね」
二人の視線が合う。
何かが吹っ切れるように、二人は笑った。
嬉しかったのかもしれない。
最近の敵による襲撃でこころを休めることのできなかった二人にとっては、この夢を語り合うだけでもどこか心が安らいだ。
一人で責任を背負ってしまった風。
自分を犠牲にしてしまう勇気の友奈。
誰よりも責任感が強い二人は、改めて皆を守ろうと奮闘する。
お互いの夢を、皆の抱く希望を守ると覚悟した。
だが、希望がある場所には絶望もある──。
優しく夢を語り合う二人に、容赦なく絶望はやってくる。
ポケットからでも鳴り響く警報。
一瞬、警報に驚くが二人は同時に携帯を手にする。
毎度のように携帯の画面には『怪獣出現』の四文字。
大地が揺れる。
──それは、一度だけだった。
そびえ立つ山に視線を向けたが、そこからは何も
あまりの重量と質量による大地の揺れも、
起こるはずもなかった──。
神秘的とは言い難い雰囲気の漠然とした何か。
鮮血のような赤い瞳は四国を映す。
光とは根本的に違う闇の巨人。
漆黒の体に稲妻のような銀色のラインが入った戦士。
一番最初に戦った巨人よりも、遥かに違うなにかが、その巨人から感じられた。
巨人は沈黙を貫き、腕を組んで空中で静止している。
ただ、見下していた。
カオスロイドSのように嘲笑うのではなく、ゴモラのように破壊するのでもなく、ただ見ている。
それが、あまりにも不気味で仕方がなかった。
「また新しい敵……!」
「今度はまたウルトラマンが来たのね」
二人は同時に携帯を握り締め、勇者アプリをタッチした。
二人をモチーフとする花びらが舞い踊り、神樹の加護を、全ての人類の希望を預ける。
桜と黄の花は舞う。
絶望に抗えと、神樹は二人に『勇者』の力を与える。
制服の姿から一変して、二人は変身を遂げた。
「不気味ね」
「あれだけ高いと攻撃が届かない……」
漆黒と銀の巨人を見上げる。
勇者の跳躍力を持ってしても、巨人は遥かに高い位置で見下ろしている。
対策を考え──そこで初めて、巨人は目線を変えた。
────二人を見た。
友奈と風を見ていた。
見られているだけで、不安と恐怖が意識を支配しようとする。
とてつもない威圧感があった。
すると、巨人は両手を交差させた。
闇とは裏腹に、眩い光が巨人の体を包み込む。
勢い良く両手を引き離した瞬間、包み込んだ光が解き放たれ、四国すべてを覆い尽くし、光がシャワーのように降り注ぐ。
『ウルトラマン』が持つはずがない、持ってはならない。
『神樹』の作り出す守護結界に似た性質の異空間。世界を、カオスロイドUは神樹よりも強い闇の力で世界を、
光に包まれる世界。
神秘的でありながら、どこか無機質の光。
二人は、眩い光に意識を呑まれる────。
▽東郷美森
▽14歳
▽ 友奈の同級生で大の親友。良き理解者。
交通事故に会ったらしく後遺症で半身不随になり車椅子で生活をし、かなりふさぎ込みがちだったが、友奈と出会い乗り越えた。現実はそうした暗い過去を感じさせないほど上品で穏やかな性格をしているが、パソコンやお菓子作りなどその他諸々と多才な面で同級生からも一目置かれている。友奈とは家も隣同士で、よく一緒に行動している。
東郷美森の後遺症はかつて乃木園子、三ノ輪銀と共に行った『満開』が原因であり、東郷美森のかつての名前は『鷲尾須美』となっている。