【完結】春野ムサシは勇者(ウルトラマン)である   作:渚 龍騎

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今回、力尽きたせいかかなりグチャグチャになってしまったと思います……自分には限界でした。


第八話 煌めき

 ダークロプスを見下ろして、ウルトラマンジャスティスは屹立する。

 

「ウルトラマン……ジャスティス」

 

 ジャスティスの名を呟いた友奈はハッと我に帰って園子の手を握った。

 

「どうしたの?ゆーゆ、今日は大胆だね〜」

「コスモスが……」

 

 友奈は溢れそうになる涙を必死に堪え、園子に訴える。

 

「ムサシさんとコスモスが私たちを庇って……」

 

 友奈の言葉に気がついて、園子は慌てて辺りを見渡し、その現実に気がついた。

 

「まさか……」

 

 勇者たちを守っていたコスモスの姿はなく、友奈が一体何を訴えようとしているのか、園子は理解した。

 

「……ゆーゆはそこで待ってて」

「そのちゃんは……?」

 

 優しげな笑みで園子は友奈を見る。

 

「私は大丈夫だよ〜こう見えてすっごく強いんだよ?」

 

 それだけを言い残して、園子はその場から立ち去る。

 

 

「ジャスティスさん!」

 

 立ち上がったダークロプスを睨んで、ウルトラマンジャスティスは腰を低く構え拳を突き出した。

 ジャスティスは決してダークロプスから視線を逸らさずに、園子の声をしっかりと耳に入れる。

 

「私も手伝います!」

 

 ジャスティスはゆっくりと頷く――共に戦うことを了解した。

 正義(ジャスティス)の巨人と(バラ)の勇者はダークロプスを睨んだ。

 ダークロプスの肩は勇者たちによる一撃(大剣)で抉られ、機械である部分が露出していた――時々、機械部分から火花が散る。

 

「コスモスさんが負けたようです……」

 

 一瞬、ジャスティスは驚いたように視線を園子に向けた。

 その瞬間を見逃さなかったダークロプスが単眼に手を重ね、膨大なエネルギーを溜めた。そして単眼から放たれた光線に、ジャスティスよりも素早く前に出た園子が槍を突き出した――突き出された槍が盾へと変形し、ダークロプスの光線を防いで、ジャスティスが神速の踏み込みと共に鋭く拳を突き出した。

 あまりに巨大な体格と凄まじい威力の拳に、当たったダークロプスは山の斜面に勢い良く叩きつけられた。

 

 ジャスティスは両手を上げてガッツポーズのような姿勢を作った――体に巡るエネルギーを溜め、ビクトリューム光線を両手から撃ち放つ。だが、ダークロプスはその場から逃げ出し、ギリギリの所でビクトリューム光線を躱した。

 爆発した瞬間に大量の土が巻き上げられ、ジャスティスと園子がそこにダークロプスの姿が見えないと気がついた時にはもう遅く、ダークロプスは遥か彼方の空に逃げて行った。

 

 

 

 

 

 

「みんな大丈夫?」

 

 荒く息をしながらもゆっくりと整え、風はボロボロになった他の勇者たちに視線を向けた。

 

「はい……私は大丈夫です」

 

 風の心配に友奈だけがボソッと答えた。

 風は土に塗れた制服のスカートに目線を落とし、ため息をつきながら土埃を払った。

 ひとまず危機が去り、神樹によって勇者部は気がつくと学校の屋上に運ばれていた。

 いつもは笑顔で駆けてくるムサシの姿はなかった。

 

「コスモスさんは――」

「言わないで東郷さん」

 

 美森の言葉は友奈によって遮られる。

 目線を落とし、美森は「ごめんなさい」とだけ呟いて口を閉じた。

 あの場にいた全員がコスモスを見た。

 光を失い、命を掛けて勇者を守ったコスモスの姿。最後に二本のスラッガーがコスモスを穿き、光となって弾け飛ぶ姿を、全員はその目で見た。

 

 ぽっかりと穴が空いたように、悲しみだけが勇者たちの感情を覆い尽くした。

 さっきまで勇敢に挑み、勇者たちに『夢』と『希望』を与えていた人が、目の前で()()()()

 

「コスモス……ムサシさんは――」

 

 風が何かを言おうとして、誰かが声を遮る。

 

「――コスモスは生きている」

 

 全員が「え?」と口を開いて、声のした方向に視線を向けた。

 そこには見覚えのない全身黒ずくめの女性と、真剣な表情の園子が立っていた。

 

「いま、なんて……?」

 

 女性の言葉にすがりつくように、友奈は途切れ途切れ喉から声を出す。そして、女性は崩れ落ちる友奈に、膝を曲げて視線を合わせた。

 

「コスモスは、ムサシは生きている」

「それは……本当なんですか?」

 

 女性の言葉を聞いていた風が横から消えそうなほど小さく聞き、女性は「ああ」と頷いた。

 

「コスモスはエネルギーを失い、その姿を消しただけだ。死んでなどいない」

「それじゃあいまどこに!」

「さあな、だがどこかで必ず生きている」

「アナタはいったい何者なんですか?」

 

 美森に向けて女性は鋭い眼光を向ける。そして、その問い掛けには園子が一歩前に出て答えた。

 

「ウルトラマンジャスティスのジュリさんだよ〜わっしー」

「ウルトラマン……ジャスティス?」

「ムサシさんの世界にいるもう一人のウルトラマン、って言ったらわかりやすいかな〜」

「なんで……なんでもっと早く来てくれなかったんですか?」

「友奈……」

 

 しがみつく思いで、友奈は溢れる涙を堪えて問い掛けるが、ジュリは表情を一切変えることなく口を開く。

 

「私は私のやらねばならないことがある。お前たちがいま生きているのは園子のおかげだ」

「ごめんねみんな……」

「園子さんが謝ることないですよ」

「そうよ、ムサシさんが生きているなら早く探しましょう」

 

 いち早く飛び出そうとした風を止めたのは、夏凜だった。

 

「今考えるべきなのは今後の対策でしょ。コスモスが生きているのなら、私たちはそれを信じるだけよ」

「だからって放っておくの?」

 

 命を掛けて守ってくれた人を放っておくなどできない。その思いは皆同じだった。だが、今は目の前のことを見なければならなかった。

 

「ムサシさんたちは私たちに任せて〜。みんなは少し休んでて」

「……けど」

「いいんだよ〜」

 

 そうして、ウルトラマンコスモスを失った勇者部に新たな勇者。ウルトラマンジャスティスを迎えた。

 

 光を失ったコスモスを捜すため。

 敗れたムサシを助けるために、探す覚悟を決めた瞬間だった。

 

 

 

 かつて、ウルトラマンジャスティスとウルトラマンコスモスは対立したことがあった。

 理由は人類が二千年後に宇宙の脅威になると、予言されたからだった。

 ジャスティスはかつての過ちから人類の敵となり、邪魔をするコスモスを倒してしまった。だが、コスモスの信じた希望と少女の優しさに触れて人類を守ることを誓った。

 

 人類を守った二人のウルトラマンは、それからも伝説として語られた。

 

 正義の巨人と、優しさの巨人。

 二人の巨人は全ての生命が持つ『希望』を信じて戦う。神のような存在となっていた。

 

 

 

 街が夕陽に染まる頃、二人の姉妹は海を眺め、黄昏れていた。

 

「ムサシさん……どこにいるんだろ……」

 

 園子に休め、と言われたが黙って休むわけにも、ムサシを救いたい気持ちで溢れていた。だから風と樹、そしてその他の勇者たちは街中を探し続けた。

 だが、なにも見つからなかった。

 

「ムサシさんは、最後まで私たちを守ろうとしてくれたよね……助けてくれた」

「うん、だから今度はアタシたちがムサシさんを助けなきゃいけない」

 

 命をかけて守ってくれたコスモス。絶望の淵から救ってくれたムサシを今度は自分たちが救う番だ。

 

「風先輩!」

 

 波の音に紛れて声が響き、振り返ると友奈と美森、夏凜の三人が駆けてきているのに気がついた。

 

「なにか見つけた?」

「いえ、なにも……けど!」

 

 悲しみに暮れるさなか、友奈は顔色を変えた。

 

「ジュリさんから伝言を預って来ました」

「伝言?」

「ムサシさんは、りょうしてきくうかん?いわゆる異次元に閉じ込められている可能性が高いって!言ってました!」

「異次元かぁ、生きてくれている可能性があるならアタシたちはなんとしても探さないとね」

「はい!ムサシさんからもらったものを今度は私たちが!」

「が、頑張りましょう!」

 

 おー、と全員の声が重なり、沈み行く太陽に拳を掲げた。

 

 

 

 

 

「……?ここは?」

 

 

 目を覚ますと、そこは何も見えない真っ白な空間だった。

 残っている記憶には自分が、ダークロプスゼロに敗北したこと。それが記憶に残っていた。

 

「……!みんなは!?」

 

 勇者たちがどうなったのか、気になって辺りを見渡したがそこには何一つ見えず、どれだけ歩を進めても進んでいるように思えなかった。

 自然と自分の腹部に手を当て、なんともないことを無意識に感じる。

 

『……ムサシ…』

 

 名を呼ばれ、声の主がわかったムサシは振り返った。

 

「コスモス!」

 

 コスモスの姿は見えなかった。だが、瞳を閉じて焦る気持ちを落ち着かせると、目蓋の裏にコスモスの姿が映し出された気がした。

 

『また君を……傷つけてしまった……』

 

 コスモスはどこか悲しげな雰囲気でムサシに謝罪した。

 ムサシは怒ってなどいない。コスモスを蔑んだりも、恨んだりもするわけがない。だから、彼は笑みを浮かべて答えた。

 

「いいんだ。今は休むことが最優先だと思う」

『ありがとう……ムサシ』

 

 とは言ったもののやはり皆の安否が気になる。だからといってここで体を痛めては休む意味がない。

 ムサシはその場で座り込んで、眼前の出来事に気がついた。

 何も見えない真っ白な空間に、ガスのような黒い(もや)が霞がかっていた。やがてそれは光輝く粒子となり、ムサシの前で形を作り始めた。徐々に人の形になっていき、翼の生えた人のような姿を変えた。

 

「君は……カオスヘッダー?」

 

 その姿はまるで、カオスヘッダーに酷似していた。否、その姿はカオスヘッダーそのものだった。

 『憤怒』のような感情は見られず、どこか悲し気な表情でムサシを見ていた。

 

「カオスヘッダー!!」

 

 思わず近づこうとして歩みを進めるが、カオスヘッダーとの距離は一切縮まらない。

 

「君は、まだ闇に呑まれていないんだね」

『――――』

「どうすれば、君を……」

『春野……ムサシ……』

 

 神々しく神秘的な輝きを放つカオスヘッダーは突如としてその姿を変化させていった。その姿はかつてムサシやコスモスと対峙した悪魔のような姿へと変貌させようとしていた。だが、悪魔のような姿になりつつもカオスヘッダーは頭を抱え、どこかもがき苦しんでいるようだった。

 

『コスモス……』

「本当の君を取り戻すんだ!!」

『私はもう……自分の力を制御し切れない……!』

 

 禍々しく変貌を遂げたカオスヘッダーはかつてと同じ姿をしていた。

 悪魔のように凶悪な姿。ムサシは目を見張った。

 

「自分を見失ってはダメだ!」

 

 近寄ろうとするムサシに向けて、カオスヘッダーは光線を撃ち放った。

 それはムサシの足下を抉り、余波が彼の体を吹き飛ばす。

 

「くっ……!」

 

 当たらなかったのは幸運ではない。偶然でもない。

 カオスヘッダーは完全に闇に囚われていない。だからムサシに光線は当たらなかった。それがわかったと同時にムサシは決意した。

 必ずカオスヘッダーを元の姿に戻す――救ってみせる。

 

『□□□□――ッ!』

 

 頭に響く悲鳴のような咆哮。

 それは歓喜でも憤怒でもない。悲しみだ。悲しみこそが彼を止めていた。

 

「カオスヘッダー!」

 

 ムサシはカオスヘッダーの肩を掴む――否、掴めた。

 進めなかった歩みが。

 離れていた距離が、ムサシの一瞬の覚悟が歩みを進めた。

 

「君ならできる!希望を信じるんだ!」

 

 カオスヘッダーを覆い尽くす『憎しみ』は『優しさ』を持って埋め尽くす。

 

『やめろ……!』

 

 カオスヘッダーに振り払われて、ムサシは転がる。

 額から流れる血を拭い、痛む体を無理矢理起こした。

 

『なぜそこまで……!』

 

 ムサシは優しげに笑みを浮かべる。

 

「君は……僕たちの『仲間(家族)』だ」

 

 光は絆だ。それは受け継がれる。人に受け継がれる希望()だ。ムサシはそれを信じる。誰かに受け継がれ、また光り輝く。

 

「どんな姿になって、どれだけ憎しみを抱いても、僕は君を助ける」

 

 放たれた光線を回避せず、ムサシは歩み寄るが、あまりに強い衝撃波はムサシは軽く吹き飛ばした。ごろごろと辺りを勢い良く転がる。

 

 ――それでも、彼は立ち上がった。

 

 真の勇者は決して諦めることを知らない。恐れることはない。何度も立ち上がり、夢を――誰もが持つ希望を信じて立ち上がる。

 その瞬間、光は彼を見ていた。

 眩い光に包まれて、ムサシの目の前には一人の光が屹立していた。

 それはあまりにも神々しく、神秘的な輝き。

 胸に赤き光を宿して、その姿は銀色に包まれている。連鎖(ネクサス)の煌めき、絆の力――。

 

「銀色の巨人……」

 

 その姿はコスモスよりも巨大で、異常なほどの光を放っていた。銀色の巨人はムサシに向かって手を伸ばしていた。

 

 太古より全宇宙の平和を守り続ける存在があった。

 永い時を超え、受け継がれてきた光と絆。まばゆい白銀の光に身を包み、闇から守りし伝説の巨人。

 

 人々は彼を――()()()()()()()()と呼んだ。

 

 巨人の放つ光に包まれ、ムサシの持っている青い輝石が光に輝いた。

 

「……!」

 

 輝石はムサシの前で光を放ちながら回転する。

 全ての記憶が蘇った。ムサシが両手を翳すと、輝石は一つの光となる。

 そして、ムサシは輝石を撃ち放った――!

 

 輝石は弧を描いてムサシを包み込み、光を形としてムサシの希望を現す。巨人の光とさらに輝石が包み込まれる。

 ムサシの希望と巨人の光によって弱ったコスモスに命の炎を灯す。

 金色の光に包まれて、ムサシはコスモスと共に顕現した――!

 

「――シェアッ!」

 

 コスモスは両手で掬い上げるようにして光を集め、ゆっくりカオスヘッダーに押し出す――フルムーンレクトがカオスヘッダーの体を包み込み、闇はそれを逃れようとコスモスに光線を放った。だが、コスモスは諦めない。

 退かない。逃げない。

 カオスヘッダーの体を包み込む闇が徐々に離れていく。

 

 そして、闇がカオスヘッダーから飛び去った。

 

 悪魔のような姿が変化し、かつての『優しさ』を取り戻したカオスヘッダーの姿を取り戻していく。

 美しい金色の輝きに身を包み、カオスヘッダーは驚いたように自分の姿を確認する。

 

『コスモス……私はまた……救ってもらった……』

「いいんだ。でも、いったいなにがあったんだい?」

 

 その問いかけにムサシとコスモスの脳裏にフラッシュバックする。

 それは、誰かの――カオスヘッダーの記憶だった。

 ムサシとコスモスが敗れ去った後、カオスヘッダーはムサシの家族を両手で包み込むようにしていた。

 

「これは……アヤノとソラを守ってくれている?」

 

 振り返ったそこには昆虫のような姿をした怪獣兵器――スコーピスが何体もジュランに降り立っていることがわかった。そして、暗黒に包まれる空から闇のようなガスがカオスヘッダーを包み込む。

 真っ暗な闇の中で、カオスヘッダーは抗った。

 けれど、圧倒的な闇の力でカオスヘッダーは支配されてしまった。

 最後に見えたのは四つに裂けた口の怪獣だった――。

 

「ありがとうカオスヘッダー。あとは、僕たちに任せてほしい」

 

 そう告げると、カオスヘッダーはゆっくりと頷いて、どこかに飛び去って行く。

 

「……アヤノ、ソラ。無事でいてくれ」

 

 先の見えない真っ白な世界で、ムサシは希望を信じて瞳を閉じた。

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