「よいしょ」
俺はどこにでもいる大学生。今日は一週間前にきた
「よっ、と」
俺は一週間前に座っていた岩に腰掛け釣り糸を垂らす。
何匹か釣れたので俺は持ってきた串に刺して焚火の前に置く。
「ウホッ、美味そう」
徐々に焼き目がつき香ばしい匂いが立ち上る。表面から油が浮き上がる魚を見ながら、俺は一週間前と今の状況を比べる。
「あの時もこんな空だったよな」
俺は空を見上げる。澄み切った青空。ゆっくりと流れる魚のような雲。俺の頬を優しく撫でる暖かい風。
一週間前と違うのは今回は一匹も釣れなかったボウズではなかったこと。そして……高校の時からの親友、
「藤田……」
俺は暗い影を落とす。その一週間前に藤田が帰らぬ人となったからだ。
死因は練炭による一酸化炭素中毒。
遺書は残されていなかったが、普段汚いはずの彼の部屋が綺麗にされていたことと、外部の犯行による形跡などがなかったこと。そして『「部屋の掃除をするから当分来ないでくれ」と息子に言われた』という母親の証言から自殺と判断された。
俺はショックを受けた。大の親友が自殺したということもそうだが、その親友と自殺する日に会っていたということ。その親友の自殺を止めることができなかったということ。気付いてあげられなかったということ。そして
「なんで俺に相談してくれなかったんだ……」
この世と別れを告げるという重要な決断を俺に話してくれなかったということ。親友が自殺を考えていたのにそれに気付いてあげられなかった自分の観察力のなさへの怒り。親友を助けることができなかったという無力感。そして胸の内を話してくれなかったと言う藤田への不信感。
様々な感情が頭の中をぐるぐると回る。
「俺はどうしたらいい? 教えてくれよ藤田……」
当の本人が死んだ以上その答えは見当たらない。
「くそっ!」
俺は程よく焼けた魚を骨ごと食った。ムシャムシャと歯で身も骨も噛み砕き、すりつぶす。
塩などの調味料を振ってなくても焼き魚は美味しかった。しかし俺の心は美味しいと思えていなかった。
美味しいのに美味しくない。
そんな矛盾を抱えながら俺は焼き魚を貪った。
「くそっ! 藤田! お前のせいでせっかくの魚の味がわかんねぇじゃねえかよ!!」
俺は涙を流しながら歯を食いしばる。
「藤田……今に見てろよ」
俺はこの時、俺をこんな思いにさせた親友に復讐することを思い付いた。
「俺はこれからエンジョイする人生を送ってやる。いい女を嫁にもらって、子供を作って、子供の成長を何よりの楽しみとする……そんな親バカな父親になって、いっぱい幸せになって……家族に見守られながら死んでやる! そうして言ってやる……『自殺なんていうバカなことをしなければこんな幸せな思いができたんだぞ!!』って大笑いしてやる……覚悟しておけよ、藤田!!」
そう誓うと俺はほどよく焼けた魚に手を伸ばした。