「この人、チカンです!!」
「え?」
私の悲鳴に男は
私に訴えられた男は「違う! 私はやってない!」と言う。しかし周囲は聞く耳を持たない。
ちなみに男は本当にやっていない。
なぜならば私に痴漢をしたというのは真っ赤な嘘だからだ。
そう。私が痴漢の被害にあったというのは私の自作自演だ。だけど私はそうだと悟られないようにシクシクと嗚咽を漏らす。そうすることで私が『痴漢にあった可哀想な女子高生』という印象を周囲に認識させる。
私の演技に騙され、周囲は男が本当に痴漢をしたと思い込み、本当のことを言う男を非難する。
そうして私は『男が本当に痴漢をした』とでっち上げる。
こうなっては男の取るべき方法は二つだ。
刑務所に入れられるか示談金を支払うかだ。社会的信用の失墜を恐れて、男は示談金を支払った。
そう、私の目的はこれだ。
自分がこんなことを考えているとは思わない、従順そうで可愛らしい容姿であることを利用して冤罪をでっち上げるのだ。そうして痴漢の実行犯に仕立てあげて示談金を支払わせる。
こうして私は電車、バスと様々な場所で男達を痴漢の犯人仕立てあげ、多額の示談金を支払わせた。
私は笑いが止まらなかった。普通の女子高生が欲しいバッグや靴、アクセサリーを私は思うがまま買うことが出来るのだから。
唯一「俺はお前を探しだして復讐してやる!」と言った男がいたが、その男は痴漢の罪に問われて刑務所に送られた。
判決は有罪とのことだが、私は興味がなかった。
大学の推薦が決まった頃、あまりの痴漢被害の多さに周囲から疑われ始めた私は痴漢のでっち上げを渋々ながらやめた。大学への準備もあったからだ。
そして。大学への推薦が無事終わり、来年から大学に進学することが決まった時だった。
「来年から始まる大学生活。今より自由を満喫して素敵な彼氏を見つけて、そして……ん?」
そんな夢と希望の大学生活を想像しながら家へ帰る道中。誰かに見られている気配を感じて、私は振り返った。しかしそこには誰もいない。
「……気のせいかな」
そう思い、私はその場を立ち去る。
しかし誰かに見られているという感覚は行く先々で感じるようになる。
私は意味が分からなかった。なぜ自分が誰かに見られているような感覚に陥っているのかと。
「……!」
私は駆け足で家へと向かった。逃げるようにして走った。得たいの知れない不気味な感覚は無くなるどころか一層強く感じられた。
(早く、早く早く早くっ!!)
恐怖でいつも以上に家までの距離が長く感じられる。小刻みに揺れる手で鍵を差し込み家に入る。鍵だけでなくチェーンロックを掛け、覗き穴を見る。そこに誰もいないことを確認した私はすぐさま自分の部屋へと入り鍵をかけた。
「……ふぅ」
私は小さく息を吐き、その場にへたりこんだ。
「ここまで用心しておけばもう安心……え?」
その時、ふと私の前に影が入った。私は見上げる。そこには一人の男が立っていた。
「ッ!?」
私は恐怖で声が出なかった。
「復讐の時だ」
男はそう呟くと私の首に向かって何かを降り下ろした。
首に伝わる焼けるような痛み。首から液体が漏れる感覚。そして脱力感。強制的に遠のく意識。
(……え、……何?……何が、起こった……の……?)
次第に狭まる視界。先ほどまで想像していた明るい世界が閉ざされていく絶望感が私を無慈悲に支配していく。
(…………)
瞬く間に私の心を支配した黒い感情によって、私の頭は何の言葉も浮かばないほど完全に麻痺してしまった。そんな何も考えられなくなった頭に、『罪』という言葉が浮かんだ。『罪』は『積み』へと変わり『詰み』と変わったところで
「──」
。