手間のかからない男   作:筆先文十郎

8 / 16
他人は自分が思った以上に気にかけてなどいない……


誰も見てはいなかった

 とある番組で聞いたことがある。

『自分に自信のない人間ほど他人の噂や評価を気にする傾向がある』って。

 その時は何の気もなしに聞いていただけだったが、今になってわかる。

 

 まさしくその通りだったなと。

 

 思えばその通りの人生だった。人から誉めて貰いたい、ちやほやされたい……。そのために俺は大好きな建築とは関係ない、大して興味のない経済の大学に進学した。

 大学を卒業し就職した後は、自ら進んでやりたくない仕事をやった。「今の時代は○○だ」、「今の社会に必要な資格はこれだ」、「現在流行しているファッションは……」、そう言ったものによく吟味せず飛びかかった。

 おかげで「本当に必要だったのか? 他に時間とお金を回した方がよかったのではないか?」という後悔と無駄な物だけが増えた。

 なんか違うと思った彼女も、「あんな人と付き合えるなんて!」という周りの評価で最終的には結婚した。しかしそれでも思う。

 

 本当は顔は決して美人とは言えなかったが、気も利いていろんなことも話せた別の女と結婚した方が良かったのではないかと。

 

 進学、就職、結婚……。どれも後悔しか残らない選択ばかりだった。

 人間誰しも人からよく思われたいと思うものだ。しかし俺の場合それが度を越すことになった。『自分が何をやりたいか』ではなく『他人が自分をどう見る見ているのか』。そればかり気にして生きてきた。そうして俺は縛られた、他人の評価に。

 もっとアニメや漫画などを見て、オタクと呼ばれる奴らと同じことをしてみたかった。バカみたいな格好で周りの迷惑にならない程度に騒いでみたかった。

 しかし今までのイメージが崩れて他人にどう思われるのかを恐れた俺は結局しなかった。

 仕事でも自分が「これはいい!」と思う企画も、周りの評価を気にするあまり周りに相談し、結果企画を横取りされる。その繰り返しだった。

 趣味もラジコンやプラモデルなどやってみたかったことではなく、ただ「カッコいい!」とちやほやされる堅苦しい本の読書、ピアノやバイオリンだった。

 おかげで俺は好きでもないことでしか周りの評価を確認することが出来ず、嫌々好きでもないことを続けるしかなかった。

 今にして思う。

 

 優先するべきは他人の評価より自分の満足。虚栄心の奴隷になるより等身大の自分の自由を感じることだと。

 

 嫌われてもいい。評価をされなくてもいい。失敗してもいい。結果につながらなくてもいい。ただ自分がやりたいことをする。やりたいことを行動に移す。

 

 それが重要なのだと。

 見栄や面子(めんつ)、世間体……そんなのを気にしすぎた結果、俺は不幸になった。

 病室で危篤の状態にもかかわらず、医師と看護師以外誰もいない。俺は思った。

 

 

 

 他人は自分が思った以上に気にかけてなどいなかったのだと。




人は評価を欲しがります。しかしその評価を得ようとするあまり本来したかったことよりやりたくなかったことを優先。その結果後悔だけが残る。それは誰しもが経験したことがあると思います。
また評価をもらえずやる気を失った。これも経験したことがあると思います。

過度に評価を得ようとするあまり、自身の正義を曲げたり無駄に落ち込んだり後悔したり……皆様がそうならないように筆先文十郎は祈っております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。