八神はやてのでぃ~ぶいでぃ~=ハーメルン用ディレクターズカット版= 作:北乃ゆうひ/YU-Hi
記憶なのか妄想なのか――脳に仕掛けられた、知的ドッキリ。
一回の裏、なのはママチームのターン開始です。
果たしてどんな妄想が飛び出るのか――ッ!?
……ってノリノリでテンションを上げつつ、でもちょっと酷くない? って思ったりしたのはナイショです。
さて、気を取り直してなのはママチームです。
思い思いに室内を見て回っているその途中、ふとシグナムさんが、足を止めてじーっとテーブルの上に視線を落としています。
「思ったのだが」
「どうしたんスかシグナム姐さん」
「……料理好きの主が、料理を利用するのか――と、思ってな」
「ふむ」
その言葉にヴァイスさんはちょっと考え込みます。
他のメンバーの耳にも入っていたみたいで、少し考えてから、結論がでました。
「テーブル系はないかも」
「ですね」
ヴィヴィオ的には、料理が一つ増えてるくらいは、はやてさんならやっても不思議じゃない気がしますけど……うーん……。
ま――なんであれ、無いんですけどね。間違いなんて。
「それに、もしかしたら、隠し撮りかなんかしてて、どっかのメディアと協力して俺達をからかった映像を後々データ化したり放映したりとかあるかもしれねぇっすよ」
お、ヴァイスさん鋭いッ!
「にゃはは……完全には否定出来ないってのがまた……」
モニタールームの方では、はやてさんが、
『心外やなー』
などと呟いていますが、即座にティアナさんにツッコミを入れられていました。さすがティアナさんです。ツッコミに馴れてますねッ!
「でも、それを考えると画面写りの関係上、やっぱりお料理とかなさそうですよね」
「だねー、キャロ。わたし的には、こういうサイン色紙とか怪しいと思うんだよ」
「あれですよね。この下を通ったときとか、画面上に『解答三十センチ付近』ってテロップが出たりとか矢印がでたりとか!」
「そうそうエリオ。それそれ!」
アルトさん、キャロさん、エリオさん、ご心配ありがとうございます。でも、視聴者さん的にはもっと面白い楽しみ方をしていますので。
「そういう分かりやすいところが、やっぱり怪しいのかな?」
思わずなのはママまで納得してしまっていますが、ごめんなさい。そんなコト全然ありません――っていうか、そもそも間違いがないんです、本当にごめんなさい。
「そうすると、やっぱこのサイン色紙とか怪しくないっすか?」
先ほどモニタールームで話していた通り、フェイトママチームへの印象づけ作戦をヴァイスさんは開始のようです。
「そうなのか? キャロが先ほど見覚えあると言っていたようだが?」
……って、シグナムさん、さっきの話聞いてましたッ!?
「え、えっと……そうなんですけど、やっぱりそうでもないような気がして……」
キャロさんが慌ててそれをフォローしつつ、他のメンバーも話を合せ始めますが――
モニタールーム。
「今のシグナム、間違い無く素だったね」
「ああ」
「はい。間違い無く」
「リインもそう思いました」
「つまり……」
「あのサイン色紙は選択肢か外れたってコトですね♪」
なのはママチームの作戦、開始と同時に大失敗です。
「おかしいなー……シグナムやって、なのはちゃんとヴァイス君の一芝居うとうっちゅう話、ちゃんと参加してたはずなんやけど」
「そこはほら……はやて、あれシグナムだし」
「ですねーシグナムですし」
「ああ、シグナムだしな」
うあ。みんな結構ひどい。
「ああ……シグナム……。君は今……泣いてええ……」
神妙なセリフですが、笑い堪えてるのが見え見えですよはやてさん。
パーティルーム。
さてさて、シグナムさんの迂闊なセリフであっさりとバレちゃったんですが、うまくキャロさんが誤魔化してくれたと思い込んでしまっているなのはママチーム。
持ち時間の半分近い七分も利用して、印象づけ作戦続行中です。
ちなみに、シグナムさんはアルトさんに引っ張られパーティルームの片隅に移動しています。
どうやら、アルトさんから色々と説明を受けたらしく、頭を抱えつつ謝っていますが……まぁ、今更ですね。
「まぁ、でも色紙だけに拘ってないで、一応他のところにも目を向けてみようよ」
かなり自然な流れで、お芝居を切り上げたなのはママチーム。
でも、もうバレバレなんですよねー……。
「あのー……僕、あの郵便受けが気になってたんですけど」
そうしてエリオさんが差したのは、部屋の片隅にある赤いレトロな郵便受け。
「あそこに新聞が入ってるじゃないですか。でもあれ、あったかなーって」
ふむ――っと、一つアルトさんがうなずいて、それを郵便受けから抜き取ります。
「確かにちょっと怪しいかもですねー……なにせ、この新聞の日付、今日のですし」
「ふむ――レトロな雰囲気の店にはそぐわない気はするな」
アルトさんが手に取った新聞を横から覗きながらシグナムさんもうなずきます。
他のメンバーも周囲を見渡しつつ、それでもピンと来るものが無かったのか――
「それじゃあ、そろそろ時間だし、決めちゃおうか」
そう言ってなのはママが手に取ったのは、先ほどのサイン色紙。
「その色紙か、新聞か……すね」
ここへ来てダメ押しとばかりにもう一回サイン色紙を話題に入れる辺り徹底していますが、でももうバレちゃってますから。
モニタールーム。
「あはは。なのはちゃん達も、ようやるなー。バレてるのに気付いてへんのやから、しゃーないんやろうけど」
笑っているはやてさんの横で、スバルさんが何やらマジな顔をしています。
「どうしたのよスバル?」
「あ、うん……ティア。ちょっと思ったんだけどさ」
「何よ?」
「あれ、本当にこっちを騙すためのお芝居なのかなーって……」
「え?」
完全にお芝居だと思って観ていたフェイトママチームに、スバルさんの一石投じました。
「いや――ほら、こっちはフェイトさんやティアみたいな執務官組がいたし、それでなくとも、捜査慣れしてるリインさんとか、洞察力の高いヴィータさんとかの最強布陣でしょ?
ルールのリスクとリターンに気付く可能性はすごい高かったワケで……でも、向こうってエリキャロにアルト。それに、失礼ながらシグナムさんなワケで」
「さすがになのはとヴァイスは気付いてるだろうよ」
ヴィータさんの言葉にうなずきながらも、スバルさんは続けます。
「気付いた上で、それでもどっちかだけが奢りになるような状況を作りたくないのかもですよ。なのはさん優しいし」
……なのはさん優しいし――その言葉に、フェイトママがぐらりと傾いたのをヴィヴィオは見逃しません!
「いやいやいやいや、こういうコトにあんま口出しするんは反則やと思うんやけれども、言わせてなースバル」
何やら憮然とした顔で、はやてさんが割って入ります。
「それやったら、私の全額負担は問題あらへんっちゅうんか?」
「まぁ、もともとはやてさんのお誘いですし――何よりほら、なのはさんって、悪い人には容赦ないじゃないですか」
その発言ははやてさんを悪い人だと切って捨てる発言だったりしますが、きっとスバルさんは気付かずに言ってるんですよねー……。
「ああ、確かに……」
何かを思い出したのか、ティアナさんの体が一瞬だけぶるっと震えます。
「でもさースバル。それだとシグナムさんの発言をフォローするキャロとか、シグナムさんに説明するアルトの行動とか、矛盾しない?」
「いや、案外その辺も折り込み済みなのかもしんねーな。深読みしすぎかもだけどよ、色紙だけじゃなくて新聞も最初から怪しいとか思ってたのかもなー」
あれ? ヴィータさんも、なのはママは優しいって言葉に傾いちゃってません?
確かになのはママは優しいママですが、勝負事に対してはわりと勝ちを狙うタイプじゃないですか? 結構な負けず嫌いさんだと思うんですけど。
あれ? ヴィヴィオの思い違いかなー?
「つまり、あの色紙芝居は、なのはさんからの、怪しい場所を示すメッセージ?」
「うーん……まぁ、みんなの話を総合すると、ルキノの結論なのですがー……」
唯一(?)冷静なリインさんが、こめかみに指を当てて、眉を顰めています。
「私は……なのはを信じるよ」
えええっ! フェイトママッ!! 信じるって言葉を使うタイミング間違えてませんかーッ!?
なのはママってすっごい負けず嫌いだってコトを忘れてません? そもそも、これが間違い探し
「そうだな。ま、そういうコトにしといてやるか」
いやいやいやヴィータちゃんもッ!!
そもそもなのはママがそういうコトを考えていたとしても、色紙が不正解だっていう可能性がありますよね!?
「じゃあ、次はそれで行きましょうか」
「ったく……アンタってばほんとお気楽なんだからー」
あの……ティアナさん。口では何のかんの言ってますけど、スバルさんの発言を肯定してますよね?
えー? いいのー? フェイトママチームはそれでーッ!?
「………………」
「どうしたですかルキノ?」
「いえ――その……いまいち釈然としないといいますか……」
「あ、あはははは……実はリインもです」
よかった……。二人は正気みたいです。
「でもこのノリはー……」
「はいー……逆らい辛いですよねー」
何だか諦めの境地っぽい顔のお二人。気持ちは分かりますけどね。
それにしても、恐るべきは【なのはママ
フェイトママとスバルさんは元より、まさかヴィータさんとティアナさんにまで感染していたとはッ!?
……でも、ヴィヴィオもママのコト大好きですので、きっと感染患者ですよねー♪
パーティルーム。
そうして、なのはママ達の相談も終わったところで、フェイトママチームとはやてさんをパーティルームへと呼んでの、解答です。
「それじゃあ、なのはちゃんチーム。解答をどうぞー」
「はい。そこの郵便受けに入ってる新聞です!」
そう答えるママに、
「では、【郵便受けに入っている新聞】は……」
はやてさんはちょっとだけ溜めてから――
「残念!」
両手をクロスさせてバッテンを作ります。
まぁ、答えがないんだから当り前ですよねー。
そんなワケで、攻守交代です。
そして、両チームがすれ違うその一瞬、なのはママの呟くような声をマイクは拾っていました。
「スバル……よろしくね」
「え?」
意味深なすれ違い。
そしてなのはママは一瞬だけ振り返り、フェイトママチームに意味ありげな笑みを見せると、モニタールームへと入っていきました。
いったい、あれはなんだったのでしょうか?
何はともあれ、二回の表、開始です。
「じゃあ、これで」
『いやいやいやいやいやいやいやいやいや!』
躊躇わずに色紙へと向かったフェイトママに、リインさんとルキノさんが即座に制止します。
――っていうか、他の人は誰も止めようとしないっていう。
「フェイトさん! 一応時間はあるんですから、もうちょっと他を見るですよ!」
「でも、なのはが……」
「そうですよー、なのはさん、すれ違い際に私によろしくとか言っていきましたし!」
「じゃあ、これだねスバル」
「はい!」
「ああああああああああああああああああッ!
なんかフェイトさんとスバルに理屈が通じなくなってるぅッ!?」
頭を抱えるルキノさんを余所に、かなり切羽詰まった様子で、リインさんが周囲を見渡しまくってます。
そして、ふとテーブルに目を向けた時に何かに気が付いたようですが――
「はやて、なんかOKみたいだからよろしくぅ」
リインさんが何か言おうと顔を上げる前に、ヴィータさんがはやてさんを呼んでしまいました。
両手を床に付き、うな垂れるリインさんやルキノさんの二人をフェイトママとスバルさんは不思議そうな目で見ていましたとさ。
……ちなみに、ティアナさんは、二人の様子を見て正気に戻ったみたいですけど、もうどうしようもないくらい手遅れな気が……。
周りに気付かれないように頭を抱えているようですが――残念、ヴィヴィオにバレバレでしたー。
そんなワケで、フェイトママチームの二回目解答!
「それじゃあ、フェイトちゃんチーム。正解をどーぞ!」
うな垂れている三人を捨て置くように、ビシっとフェイトママとスバルさんはサイン色紙を指差します。
「「サイン色紙ッ!!」」
さて、その解答は――
「ぶぷー」
溜めすらせずに、はやてちゃんはバッテンを作ります。
あってるハズありませんよねー。だって答えないですもん。
さてさて、二回は早くも攻守交代です。
自ら色紙作戦に踏み込んでいったフェイトチーム!
はやてに奢らせる為の運命の二回の裏、なのはチームの結末は……!?