八神はやてのでぃ~ぶいでぃ~=ハーメルン用ディレクターズカット版= 作:北乃ゆうひ/YU-Hi
これにて決着――なるのか!?
パーティルーム。
さぁさぁ攻守を交代致しまして、ついにやってきました最終回!
接戦なんだかそうでもないのかイマイチわからないですが、フェイトママチームによる最後の攻撃となったわけです。
フェイトママ達も何とか復活したようで、さぁどうなるのでしょうか――…ッ!?
「ちゅうわけで、フェイトちゃんチーム最後攻撃……開始や!」
はやてちゃんの合図の元、何やらリインさんとティアナさんが、他のメンバーを先ほどの貝の所へと集めています。
本当に、ハマグリを選ぶつもりなんでしょう。意識が彼方に飛んでいたフェイトママ達に説明をしてるようです。
そして――
「そんなワケでして、リイン的にはこのハマグリで行きたいと思うですが……」
リインさんが示す貝をティアナさんが手にとって、みんなに見せます。
「あたしは構わねー」
「うん。私もいいと思うよ」
「右に同じくです」
ヴィータちゃん、フェイトママ、スバルさんがそううなずいてから、一拍おいてぴったりと声を唱和させました。
「「「――っていうか、文句言う権利ないし」」」
あ、あははは……確かに、二回の表のコトを考えるとそうかもしれません。
そして、ティアナさんもルキノさんもリインさんに異論がないようです。
――と、言うことは……
「では、決定で~すっ! はやてちゃ~んっ!」
モニタールーム。
「おおおおっ!?」
「ええええっ!?」
「えらく巻いとるなー……フェイトちゃんチームは……」
三分経ってませんもんねー。早いってレベルじゃねーぞってやつです。
さすがに、はやてさんも、なのはママチームのみんなも驚きを隠せないようで。
ヴィヴィオだって、まさか即決するなんて思ってませんでした。
それでも、呼ばれたからには行くしかありません。
はやてさんは席から立つと、なのはママチームを引き連れて、パーティルームへと向かうのでした。
「さぁさぁ、フェイトちゃんチームの解答や。これで正解やったらなかなかにドラマチックやよー」
「ふふふのふ! リイン達が劇的に終わらせて、なのはさん達に奢ってもらうですよ!」
リインさん筆頭に、なにやら自信満々のようですけど、それ――記憶に騙されてるんですよ?
「フェイトちゃんチーム。最終回・表、まさかの五分経たずに答えを出したわけやけども……。
さぁフェイトちゃん――その解答……どうぞ!」
はやてさんに促され、フェイトママが一つうなずくと、
「答えは――」
リインさん達を信じるように、力強く、そのターゲットを指さしますッ!
「ハマグリのフタが一つ増えているッ!!」
「ほう! ……で、リイン。それどういうコトや?」
はやてさんに訊かれて、リインさんが嬉々としながら説明を始めます。
元々フタがなかったこと。それで焼いていた記憶があるのに、戻ってきたら
どこかテンション高めに説明するリインさんと、それを真面目に聞いているはやてさんの後ろで……
なぜか、なのはママとヴァイスさんがにやにやとしています。
……何か、ゲームがゲームだからでしょうか。今回のなのはママとヴァイスさんは妙に性格が悪いような気がするんですけど。
「さて、フェイトちゃんチームの【ハマグリのフタが一つ増えている】は――」
それはそれとして、ついに正否の発表です。
「ん~~~~~~~~~~~~~」
またも、はやてさんは周囲を焦らすように溜めに溜めに溜めに溜め――そして、
「ブぅぁぁぁぁぁぁぁぁツっ!」
手を大きく交差させました。
まぁ当然っちゃ当然なんですけどねー。
「いやいやいやいや、はやてさん。本当は?」
「本当もなにも、バツやっちゅうの」
納得しないスバルさんに、はやてさんは思わず苦笑して答えます。
「ちなみに、なのはちゃんチームの作戦参謀と副参謀からのメッセージです」
そして、ガッカリ具合MAXのフェイトママチームへ、なのはママチームがはやてさんに促されてネタバレを開始しました。
「交代の時の、スバルへの一言とか」
「何か貝を気にしてたリインさんに対して、貝から始まる会話だとか」
「さらに言っちゃうと、私はその貝のフタが最初から離れた場所にあったの知ってました」
笑いながら告げる、なのはママとヴァイスさん。さらに、申し訳なさそうに続けるキャロさん。
「私もさっき知ったのだが、全てはなのはとヴァイス――二人の計算だったらしい」
重ねるように補足するシグナムさん。
もはや補足というか、完全なダメ押しとなったその発言に――
「ぶーぶーぶー! リイン納得いかないです!」
「信じらんねー」
見事罠にはまってリインさんと一緒にヴィータさんがぶー垂れますが、そもそもヴィータさんは信じてたから罠にハマったんじゃないですか?
「ようするに、や。なのはちゃんが何とな~く、メッセージっぽいモノを出しておけば、フェイトちゃんかスバル辺りが勝手に深読みし始める。
そんで多分、冷静に対処するだろうリインやルキノ辺りの意見を肯定する空気を出しておけば、ガッカリメンバーが正気に戻った後、それを否定する可能性が減る……と。 そんな感じやろ?」
「ドンピシャな推理だよ、はやてちゃん」
「せやろ」
「うう……何それ……なのは、ヒドイ……」
「にゃはは――勝負の世界は非常なのだよフェイトちゃん♪」
何という策士ななのはママ。
シグナムさん辺りに対して巧妙にお芝居具合を隠して、敵を欺くにはまず味方からを地で行くとは!
「ひどいですよなのはさん!」
「いやースバルありがとうね。色々信じてくれて」
「だからヴァイスさんはろくな大人になってないんですね!」
「何とでも言えって。勝てばよかろうなのだーってな。あっはっはっは」
スバルさんとルキノさんが思わず喚きますが、もう後の祭り。ご愁傷様です、としか。
涙目だったり怒ったりと忙しいフェイトママチームを笑いながら、はやてさんの宣言で、攻守が交代するようです。
「さぁさぁ、最終回の裏を始めようやないか。
これで劇的なサヨナラ勝ちを迎えるかどうか……攻守交代や!」
三回の裏。
「向うはすぐに時間使いきってくれましたからね」
「うん。こっちは、時間ギリギリまで使おう!」
えいえいおーっと気合いを入れて、なのはママチーム最後の攻撃開始です。
「みんないいか? 先ほどの正否発表の時に少々気になったものがあってな」
どこか自信ありげに、シグナムさんが言います。何やら見つけたみたいですが、はてさて。
「あのとき、ふと見えたのがあれだ」
シグナムさんが指で示す先。そこにあるのは、天井に付いている大きな看板でした。
「あの看板に地球名物と書いてあるだろう?」
確かに【お寿司(O-SU-SHI)】と書いてあるその看板の右上の方に、緑色の養生テープで【地球名物】という張り紙がやっつけで付いています。
その姿もさることながら、地球名物ってなんだよと思わずツッコミたくなってしまうシロモノです。
「あの緑色のテープ確かに、わりと色んな仕事で使うよね」
確かに無意味な紙が、テープで貼られている姿は怪しいですが――
「でもシグナムさん、ここの汚れが看板と繋がってますよ?」
イスを持ってきてそれに乗って紙を観察していたアルトさんが、汚れを示します。
「む? そうか。なら違うな」
あれ? 結構あっさりと。
「あの、姐さん。どことなく自信がありそうだったんスけど……これっスか?」
「ああ」
うなずくシグナムさんに、思わず他のメンバーが嘆息します。
「実は私も見つけてはいたんだけど、たぶん違うかなーって」
「そうなのか。なのは? ならば言ってくれれば良いものを」
「あの……私、実はそれ。最初に見た記憶がちょっとあるんですが……」
「そういうのは言ってくれキャロ。一人胸の裡で盛り上がっていた自分が少し恥ずかしいではないか」
「す、すみません……」
バツの悪そうなシグナムさんに思わずキャロさんが謝りますが、別にどっちが悪いって言うのもないので、謝ったりする必要はないと思いまーす。
それはさておき――
「まぁそうなると私はもう戦力外だ。みんな私の分までがんばってくれ」
「シグナムさんにしては珍しく弱気ですね」
「そう言うがなエリオ。確かに私は勝負事は好きだが、この手の頭脳戦はさっぱりなんだ」
「それはまぁ、何となく分かりますけど」
そんな感じで、なのはママチームは、改めて怪しいところを探し始めますが――
「残り三分やよー」
「もうそんな時間ッ!?」
探して回るものの、中々結論が出ず、しかも時間ギリギリのせいで変なプレッシャーがあるのか、出る案出る案がどうにも変な内容ばかり。
「超難解ってくらいだから、この水槽の砂が一粒増えてるとか?」
「そこまでいくと、もう難解ってレベルじゃねぇだろ」
「ここに飾ってあるスイカ、大きい方だけキンキンに冷えてません?」
「あ、ほんとだー。何でだろ?」
「こっちの貝殻を飾ってあるザルの中に、綺麗な石が一つだけ落ちてるんですけど……」
「確かにこれは怪しいが……あからさま過ぎないか?」
とまぁ、そんな感じでみんなの意見がまったく合わず、そして結論が出ないまま……
「タイムアップで無回答扱いになるんと、腹括って解答するのどっちがええ?」
そんな感じのはやてさんの声が聞えてきて、なのはママチームは観念したようです。
「なのは。もうお前に任せた。色々出てきたが、お前がどれを選んでも私は文句は言わん」
「え? ちょっとシグナムさん!?」
「姐さんに賛成」
「先輩に賛成」
「アルトさんに同じくです」
「エリオ君に同じくです」
「み、みんなしてッ!?」
極限の状況に追い詰められた中で、答えを見いだせず他人を尊重するように見せて、決定も選択も全て託すという言葉に置き換え放棄する行為――人、それを丸投げと言う……なんちゃって。
「はい、なのはちゃん! 私が到着するまでの僅かな待ち時間にネタを探すんはあかんて」
「うう……だってぇ……」
「ちゅうか、罠を仕掛けるのに夢中になりすぎて、みんなの意見を纏め忘れとるとか、本末転倒もええとこやろ」
まったくもって、その通り。
そんなワケでなのはママも観念したのか、うーうー悩みながらも、よしっと決めたようです。
「それじゃあなのはちゃん。正解をどうぞ」
「正解は……」
なのはママは、最後の方に見つけた飾り付けてある貝の上に乗っている蒼い宝石(偽)を指さしました。
「あの、なんかジュエルシードっぽいの!」
「貝飾りの上に乗っている【なんかジュエルシードっぽいの】は――」
今回はあまり溜めずに、はやてさんは手をクロスさせちゃいます。
「ばつ!」
当然ですよねー。答えが無いわけですし。
……でもあれ? これって決着ついてないけどどうするの?
決着ならず……!
……はやてはどう決着を付けさせるのか……!?