八神はやてのでぃ~ぶいでぃ~=ハーメルン用ディレクターズカット版= 作:北乃ゆうひ/YU-Hi
――さて、そんなワケで延長五分のサドンデスが始まります。
両チームが怪しいと思ったところを五分間ひたすら選び続けるというこのサドンデス。
当然のことながら、誰も正解を出せませんでした。
まぁ、間違いなんてないのに間違いを探そうとしてるから当然なんですけどねぇ……。
サドンデスでも決着がつかず、げんなりとした様子で席についたみんなを見渡しながら、はやてさんが切り出します。
「えー……この企画に決着を付けるために、ひとつ究極のゲームを用意しました」
やはりこの企画、そう簡単には終わらないようです。
「究極なんだ……」
「ちなみに、至高のゲームというのも考えよう思いましたが、何も思いつかへんでした」
どうでも良い補足情報を交えつつ、
「そしてこのゲーム……個人戦になりますんで、敗者は一人へと変更ですー」
『えええええええええええッ!!』
はやてさんの恐ろしい発言に、全員が一斉に悲鳴を上げます。
敗者は一人――つまり、さっきまでチームで勝っていれば、チームで割り勘になったはずのお勘定が、一人が全額自腹という、もっと恐ろしい企画に変更となったわけです。
ちなみに、ゴチでやれというツッコミは却下ですが、はやてちゃんは今度ゴチをやろうか……などと画策しているようです。
まったく、色んな意味でダメな大人に権力を持たしちゃいけないよい例な気がします。
「なんで正解出来なかったんだよそっち!」
「うあ。ヴィータちゃんがそれを言う!?」
そんな感じで、みなさんが良い感じでテンション高くなってきたところで、
「では――例のアレ、よろしゅう頼んますぅ」
パンパンとはやてさんが手を叩くと、お店の人が大きなお皿にシュークリームをたくさん載せて盛ってきました。
もしや……これは……ッ!?
「罰ゲームの定番、からしシュークリームや!」
十三個のシュークリーム。
十二個は美味しくて、一つは激辛。ほんと、定番中の定番ですねー。
勘だけを頼りに一つ選んでパク。激辛だったらごめんなさい。分かりやすいルールです。
「こ、こんなコトで……」
「単純ながら、からしダメージ+自腹って地味にひどいような……」
「うう……」
どうやらみなさんにも大好評のようで。
「まぁ、私だけ食べない言うんもフェアやないっちゅうコトで……ヴァイス君」
「ういッス」
「一個好きなの選んでええよ。それを私が食べるから」
「マジっすか!?」
確かに数えてみると、シュークリームの数は十三個あります。
はやてさんも結構律儀ですねー。司会者だからって理由で、やらないっていうのも手なのに。
「もちろん、それが激辛やったら、私の負けや言うコトでOKや」
「よっし。その言葉忘れないでくださいよー」
意気込むヴァイスさん。じーっくりとシュークリームを選び……。
――と、ここでドクター八神からコメントです。
えー……実はこのシュークリーム。最終実験の材料だったりします。
人は思い込みだけでどこまで自分を追い詰めるか……
その辺りを楽しんで頂きたいと思いますんで、もうちょうお付き合いのほどよろしゅうお願いしますー。
では、ヴィヴィオ。ラストスパートよろしゅうなー。
おまかせあれ!
そんなワケで、ヴァイスさんが選んだ一つを――
「それじゃあ、いただきまーす」
はやてさんはためらいなく口の中へと放り込みました。
「うん。美味しいよー」
固唾を飲んで見守るみんなに、そう言って笑顔を一つ。
何を仕掛けているのか知りませんが、絶対に自分はからし入りを食べないって確証があったんでしょうねー……。
「ちゅうわけで、みんな好き勝手順番決めてよいよー?」
全員が顔を見合わせますが、すぐには誰も手を挙げません。
ですが――
「じゃあ、スバル・ナカジマ。一番やります!」
覚悟を決めたように、スバルさんが名乗りでました。
「おおおっ!」
どよっとみんなざわめく中、スバルさんは立ち上がり、じーっとお皿を眺めます。
「自分のタイミングで食べてええからなー」
はやてさんにうなずいて、しばらく色々なシュークリームを見てから……
「これだ!」
一つ選び、スバルさんは手に取ります。
でも手に取るだけで、なかなか口に運ばず、じーっと手の中のシュークリームを見ている瞳が、なんだか仕事中の時のように真剣です。
「なんか……すっごいドキドキしてきた」
見てるヴィヴィオもハラハラものですよ。
「よし! 行きます」
自分を激励するようにそう叫んでから、パクっと行きました!
「クリィィィィィィィィィィムッ!!」
おめでとーございまーす!
しかしこれ……何か仕掛けがあると分かっていても、見てるこっちの心臓にも悪いです。
そして、参加者のみなさんはスバルさんの喜びように、逆に青ざめてます。確率があがるんですもんねー……。
「よし、スバルがいったなら私も!」
次に名乗りを上げたのは、なのはママ!
じーっとお皿を見ていると……
「これ――よく見ると、わざわざ全部のシュークリームに、からしを入れました的な穴が開いてるんだけど……」
いやはや。徹底してますね。はやてさんは。
「えぇい! 悩んでても仕方ないからコレ!」
そして意を決したなのはママは、手早く一つ選んでためらわずに口の中へ。
「良し! 甘い!」
ガッツポーズのなのはママと、それに拍手を送るはやてさんとスバルさん。他の人はもちろん青ざめ度がアップです。
「ところでこのシュークリーム、なんかとっても食べ慣れた味なんだけど……」
「シュークリームの提供は翠屋でお送りしております」
「わざわざッ!?」
でも、桃子さんとかこういうノリ結構好きそうですよね。
はやてさん同様に桃子さんも関西出身ですし。
ちなみに、おばあちゃんと呼ぶには、見た目があまりにも若すぎる人なので、ヴィヴィオは桃子さんと呼ばせてもらってまーす。
どうでもいい情報ですねごめんなさい。
さてさて、収録時間ももうあまりないので、ちょっと巻いていきますよー。
この後も、神妙な顔で口に入れ、歓喜の甘さを味わう人達が続々と。
その興奮ぷりといったら、もはや単なるゲームとはいえないほどです。
そうして白熱のシュークリームバトルも終盤。残ったシュークリームは二つ。
「こんなコトってあるんやねー……」
「映像的にはすごい美味しいっスけども……」
食べていない人は二人。
エリオ・モンディアルさん。
キャロ・ル・ルシエさん。
二人とも、かなり顔色悪いです。そして、それを見守るフェイトママの顔が、もはや完全に泣きが入ってます……。
その横で、フェイトママが暴走しようものならすぐにでも抑えようと、なのはママがスタンバイしてたりも……。
それにしても、フェイトママにそんな顔されると、ヴィヴィオもちょっと……。
いやいやいや。ナレーターが私情を挟んではいけませんね。すでに挟みまくってるだろというツッコミは却下して続けますよー。
「よし!」
おもむろに立ち上がったのはエリオさん。
この後に続く、キャロさんじゃなくても思わず『惚れてまうやろ~』と言ってしまうようなカッコイイ発言に酔いしれて下さい。
「僕が辛いのを当てればいいんだよねキャロ」
「え?」
「僕ですね、ずっとこれにからしが入ってるんじゃないかって思ってたんですよ」
そう告げて、エリオさんが手にしたのは、なんと自分でからし疑惑を持っていると示した方のシュークリーム!
「行きます!」
味が分かったあとの発言にも、みなさん注目ですよー。
ぱくッ!
「……………キャロ、ごめんッ!」
血を吐くように、エリオさんは謝罪を口にしたのです!
『えええええええっ!!』
驚いたのはキャロさん以上に周囲の人達。まさかここまでドラマ的な展開になるとは誰も思っていなかったことでしょう。
……同時に、私はその……色々とこのドラマを台無しにしてしまう推理が脳裏に浮かびました。
「さてと、キャロ。中途半端は無し言う約束やったからな。ちゃんと食べてなー」
「うううっ」
涙目になりながらも、キャロさんはそれを受け取ります。
「うー……えっー……と、あのね、エリオ君。気に掛けてくれてありがとう。キャロ・ル・ルシエ、行きまーすッ!」
健気な表情でそうエリオ君に微笑み掛けてから、キャロさんはあまり大きくないそのお口を大きく開けて、ぱくりと半分だけ噛み付きます。
同時に、はやてさんはにやりと笑いました。
――ああ、やっぱり。
「もぐもぐ……………あれ?」
キョトンとした顔をするキャロさんを横目にはやてちゃんは立ち上がると、ポケットからお財布を取り出します。
その行動の意味が分からないまま、みんなはキャロさんに改めて視線を向けると、彼女は改めてさらに半分だけ食べます。
「……あれ? あの……これ、甘いです。たぶん……最近流行のカスタードと生クリームのダブルクリームっていうやつかと……」
あまりの混乱によく分からないコトを言い始めるキャロさんですが、それは見ているみんなも同じです。
「???」
そしてみんなが呆然とするなかで、ここではやてさんがネタ晴らし。
「えーっと、今日の企画はですねー。同窓会を兼ねつつ、私個人的に【人間はありもしない答えを求めてどこまでプレッシャーを受けるか】を楽しませてもらいましたー」
はあぁッ!? なにそれッ!?
だいたいみなさんそんな感じのリアクションでした。
実験は大成功って感じですかねー。
「それじゃゲームを終わったところで、奢る言う約束の通り、ちょっとお金払ってくる。みんなまだ食べたかったら食べててええけど、これ以後の追加注文は自腹で頼むよー」
そんなコトを楽しそうに告げるはやてさん。
「え? あの……はやて?」
「ちょっとはやてちゃん!」
みんなが呆然とするの中で、スキップでもしそうなくらい軽やかな足取りでパーティルームの入口を目指します。
「ああ、お姉さん。おあいそ。このカード一括で頼むなー。それと、このメモの宛名で領収書もお願いや」
「かしこまりました」
そうして、部屋の外にでてすぐ近くにいた店員さんにはやてさんは自分のクレジットカードを渡してから、向き直ります。
「それじゃあ、私はこの後、仕事があるんで先に失礼するなー」
「ちょ……ちょっと、はやてさん!」
「なんや?」
「えっとあれ……あのあの……えっっと……あれですあれ!」
「落ち着けスバル。主……先ほどの間違い探しの答えは?」
にやにやにやにや。
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「その顔って!」
「ええと……その……まさか!!」
「ぷ……くくくく……あははは………っ!」
「はやてちゃん!?」
「うあ、もしかして、もしかする?」
「さっき、何か増えてるとか言ったのって……」
「おう。何も増えてへんよ?」
『うああああああああああッ!?』
ほんと、みなさんご苦労様でした。
「ちなみに、なのはちゃんチームの想像通り、この宴会最初から録画しててな。今度、チャンネル11に、今回の出来たて映像データを編集しに行くんよ」
「うわぁ……」
「たぶん、みんなが探し物してる時、画面の下の方に『答えなんて無いのにそれらしいコト言って興奮してる』とかなんとか出てると思うよー」
「もう笑うしかないッスね……」
「あたしは、とりあえず食えるからどうでもいい……」
からしの方は、改めて見てもらうと、みんなありもしないからしに必死だよーって、笑えてくるかもしれませんよ。
「ううっ……本気でエリオとキャロが可哀想だった私はなんだったの……?」
「何だったんやろうなー」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ……………っ!」
恥ずかしいのと悔しいのと悲しいのと、何だか色々な感情まぜこぜになったフェイトママが顔を真っ赤にして、てうずくまります。うん気持ちはとってもわかりますよフェイトママ。
「それじゃあ、みんな今日は楽しかったよー。また機会があればよろしゅうなぁ!」
そう言って颯爽と去っていくはやてさん。
しばらく呆然としていたみなさんでしたが、ほとんど同時に正気に戻り、声を唱和させました。
「楽しかったのは……
アンタだけだぁぁぁぁぁ!!」
お後がよろしいようで。
本日のナレーションは高町ヴィヴィオでしたー。
みなさん、お疲れ様でしたー。そして番組に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
それでは今宵はここまでです。では。
9。
初めましてもそうでない方も、おはようございます北乃ゆうひです。8。
今回は『伊集院光のしんばんぐみ』の編集版DVD『伊集院光のでぃーぶいでぃー』のパロディにてお送り致しました。7。
実は某サークルさんの『リリカルどうでしょう』という『なのは』で『水曜どうでしょう』をやるという本が面白すぎて、自分でもやってみたいなーと思って、自分の好きなバラエティとのクロスオーバーネタをやった次第。可能な限り、元ネタ分からんでも楽しめるようにしましたが、いかがだったでしょうか? 6。
パロディもそうですが、その場にいないヴィヴィオの一人称というちょっと無茶な手法を試してみましたが、中盤やらなきゃ良かったと思うほど厳しいっていうか後悔とかしてました。その苦労の甲斐があったかどうかは、読んで頂いた方が、どう思われたかどうかですが、楽しんで頂けたらと思います。5。
あれ――いつもと違ってあんまし、あとがきで書くようなネタがないぞ? 4。
ええっと……。3。
そうそう。今回はろき君に表紙と挿絵を頼んだんですが、表紙絵はぶっちゃけ予想の斜め上に、素晴らしい表紙を作ってくれましたw 2。
正直、このジャケット絵はパロ化は不可能だろうと勝手に思ってましたからw 1。
そして、最後の挿絵。ほんと、良い仕事してくれました。ろき君、今回の無茶振りにしっかり応えてくれてありがとさんでしたー。0。
さて、カウントがゼロになったところで……別に何も起きないんですけどね。重大発表とかもなよ? 何か在ると思い込んでましたか?
本編であれだけみんながイタズラされたんですから、読者のみなさんにもイタズラしてみたんですがどうでしょう?
最初に書いてあるじゃないですか。思い込み系あとがきって(ぉ
そんなわけで、今回はこの辺で失礼します。
手にとって下さった方、買って下さったみなさん、手伝ってくれた人達にに最大級の『ありがとう』を。では~。
おれ、原稿が終わったら魔装機神やるんだ…