これも皆様のおかげです、本当にありがとうございます。
……段々と捏造展開や、原作にないやり取りを増やしていきたいなぁ。
2020/3/1 感想からの指摘で見直したら、緑谷家一軒家じゃないやんという事を再認識。
それに伴い、デク君家ではなく狐白ちゃんのお部屋にデク君は連れ込まれる事となりました。
少しばかり一悶着二悶着あった個性把握テストであったが、最終的に無事誰一人除籍と言う形で脱落することなく終える事が出来た。
成績最下位となった生徒も勿論いたのだが、相澤はその生徒に除籍を宣告することなく『合理的虚偽』という大どんでん返しを、イイ笑顔で生徒達へ告げたのである。
その内容に一部の真面目過ぎる生徒や、帰宅後幼馴染である狐白からの説教が確定している出久が絶叫を上げたりしたがそれも些細な問題であろう。
そんなこんなで始まった雄英高校の初日であったが、その後は特に変わった事もなく授業が進んでいく。
その中で……。
「入学試験の時はありがとうね、玉藻ちゃんって呼んでいい?」
「え? ああ、あの時の人かぁ、うん気にしないでくれていいよー……うん、よろしくね蛙吹さん」
「梅雨ちゃんと呼んで」
授業の合間の休み時間、入学試験の際に玉藻によって救助された蛙っぽい印象が特徴的な少女が、玉藻へと話しかけた事を皮切りに彼女に助けられたり治療を受けた生徒達が集まってくる。
「試験の時はありがとな、おかげで受かる事が出来たぜ」
「君の実力だと思うけどなぁ、僕にはあのロボットを拳だけで破砕する事は出来ないしね」
見た目は美少女な狐白と面と向かって話す事に照れがあるのか、少し緊張しながら厚い唇を持つ大柄な少年こと砂藤が大きな右手を彼女へと差し出し。
狐白は差し出された手を躊躇なくそのほっそりとした右手で握り返すと、柔らかく微笑みを浮かべた。
この狐白と言う元男子な少女、強引に手を握られる事には若干抵抗を見せるが友情を前面に押し出してくる、常識的なスキンシップには忌避感を余り持たないという不思議な習性を持っていた。
「あの時巨大ロボに立ち向かった学生は救助ポイントが多めだったらしいぜ、おかげで俺も受かったよ……ありがとう」
「君は、えーっと……尾白君だっけ? こちらこそ君達がアレを足止めしてくれたおかげで、梅雨ちゃん助けられたんだから誇っても良いと思うよ」
同じ尻尾持ちという事に若干共感を抱いていた影が薄い印象を持つ少年、尾白からもお礼を言われた狐白は若干照れくさそうにしながらもあの時勇気を振り絞った彼や他の生徒達を素直な気持ちで褒める。
祖母から武術の手ほどきを受けていた少女は、元男子という事もあってそういう暑苦しいノリが決して嫌いではなかったのである。
「オイラ峰田と言います!指チュパしてください!!」
「……ふんっ!」
「あべし!?」
そんな少女を中心とした集団の中に物怖じせず突入した小柄な、葡萄のような頭を持つ少年峰田が己の人差し指を突き出しながら狐白へとどさくさに紛れて懇願する、しかし。
狐白は柔らかな微笑みを浮かべたまま予備動作無しの貫手を手加減しつつ峰田の眉間へと叩き込み、手痛い一撃の直撃を食らった峰田はのけぞりながら白目を剥いて昏倒した。
「アイツ、ある意味漢だな……」
「いや、タダのアホじゃねぇか?」
峰田の行動から轟沈までの一部始終を見守っていた上鳴が戦慄しながら呟き、先ほどまで彼と談笑していた瀬呂は割と情け容赦のない感想を述べる。
「あはは、人気者だねこーちゃん」
「目新しいだけだと思うけどねぇ、後さっきの件はきっちり家で問い詰めるからねいずちゃん?」
「お、お手柔らかにお願いします……」
角ばった印象の眼鏡少年こと飯田と緊張しながらも雑談していた出久が、賑やかな幼馴染の様子にのんびりとした感想を告げ。
そんな言葉を向けられた狐白は若干苦笑交じりの微笑みを浮かべながらも、逃げ道を塞ぐかのような圧力を感じる笑顔で出久へと宣告し……出久は若干縮こまりながら頷いた。
「ねーねー、玉藻と緑くんって付き合ってるの?」
「ファッ?!」
自然な様子で飛び出た家という単語や先ほどの個性把握テストでの様子から、ピンク色の肌と触覚のような角が特徴的な少女である芦戸がそんな言葉を投げかけた瞬間、教室の中の空気がざわめく。
多感な時期の少女達はコイバナか?と言わんばかりのワクワクとした輝きをその目に宿し始め……。
同級生の八百万に引けを取らないどころかもしかすると上かもしれないバストの持ち主である、狐白がフリーなのかどうか強い興味を抱いていた男子達は一斉にそちらへと注意を向けた。
なお突然の芦戸の言葉に緑谷は目を見開き、声にならない叫びを上げた。
「え? 違うよ」
そして芦戸の問いかけを否定する言葉が狐白の口から紡がれた事に、女子達は残念そうな空気を滲ませ男子達は内心でガッツポーズを上げる、が。
「いずちゃんは大事な幼馴染で親友だからね!」
否定の言葉から続けて狐白の口から飛び出してきた言葉に、出会いと女体に夢を抱く男子達は膝から崩れ落ちた。
彼らの内心を明確に言葉にするのならば……『親友とか言ってるけど異性を愛称で呼ぶ幼馴染とかそれもう、殆ど確定してるようなものじゃねぇか!』と言ったところであろうか。
ついでに、女子陣の一部はキャーなどと言って盛り上がっている。
「なるほど幼馴染、それならばあの取り乱しようも納得だな」
「比翼連理の仲、と言ったところか」
飯田が個性把握テストの時に、出久が重傷を負った瞬間飛び出した取り乱しようから二人が不純異性交遊する仲ではないかと心配していたのだが、純粋に心配していたのだと知ってどこかズレた納得をし。
漆黒の烏が如き頭部を持つ少年、常闇もまた二人の仲について腕を組みながら意味深な事を呟きつつ、深く頷いていた。
そんな具合に、初日からハードな試験やらを受けたり三年間共に学ぶ事となる級友達と交流を果たした出久と狐白であった。
その際放課後駅までの道を二人で帰ろうとした際に、飯田と麗日が合流し4人で帰る事となったのだが……。
「えっと、いずくんとデクくん、どっちで呼べばいいのかな?」
「あの、本名は出久でデクはかっちゃんがバカにしてる呼び方なんだ……」
「えーー、そうなんだ!ごめんね! でもさ、デクって頑張れって感じでなんか好きだな、私!」
「デクです!」
「ちょっと、いずちゃん?」
出久の呼び方について、麗日が悪気無しに持ちかけた問いかけに対して慣れない女子との会話に、相変わらずしどろもどろになる出久であったが。
朗らかな笑顔と共に麗日が告げた言葉に、顔を真っ赤にしながら迷わずにデクと呼ばれる事を選んだりする事件が起きたりもした。
なおだらしない幼馴染の様子に、隣に立っていた狐白がジト目を出久へ向けたのは言うまでもない。
彼女としても蔑称であるデク呼びについて思うところがないワケではないが、麗日に悪気が欠片もない事は彼女も理解しており……。
同時に、麗日が愛称として出久をデクと呼び続けることは、出久の心に汚泥のようにこびりついている劣等感を緩和する事にもつながるんじゃないかと、狐白は思考する。
この間実時間にして一秒未満、とりあえず狐白は麗日の幼馴染へのデク呼びについてはどうのこうの言わない事にするのであった。
だがしかし、だらしない表情を浮かべる出久に無性に腹が立ったので帰宅後の個性についての問い詰めは、情け容赦しない事を決定した。
そして麗日と飯田と途中で別れ、家路に向かう出久と狐白。
少しずつ家へ向かう足取りが重たくなる出久であるが、救いを求めるように狐白へ顔を向ければ……。
「あ、あのさこーちゃん。少し寄り道しない?海浜公園とか、さ……」
「ん? いずちゃん、何か言った?」
唇を震わせながら一抹の望みをかけて言葉を掛ける出久……が、ダメ!
満面の笑みを浮かべた幼馴染の少女、狐白は有無を言わせない口調で出久の提案を全力で聞こえなかったフリをして却下した。
出久が焦っているのは、容赦がない時は本当に容赦がない幼馴染に怯えているワケではない……否少しはソレもあるとはいえ。
信奉していると過言でもないオールマイトから、個性についてはたとえ親や親友であっても秘密にしてほしい、そう言われているからこそなのである。
何か良い言い訳はないかと必死に思考を巡らせる出久であるが、いつもは別れる分岐点でも流れるような動きで出久の腕を取り自らの家へ連れていこうとする幼馴染の様子に、出久は。
あ、これ言い逃れも誤魔化しも利かないヤツだ、と悟る。聊か遅すぎたかもしれない。
そうしてる間に玉藻と書かれた表札が掲げられた家へと二人は到着し、狐白は当然として出久もまた慣れた様子で挨拶をしながら玉藻家にお邪魔する。
狐白の母である女性もまた特に不審に思う事無く少年を家に上げ、若干緊迫した二人の間の様子に何か喧嘩でもしたのかしら。などと思いつつ在宅で請けているデザイナーの仕事へと戻っていった。
「それで、いずちゃん。 詳しく聞かせてもらおうかな?」
「えっと、何から……かな?」
「勿論、入学試験で負った怪我の下りからだよ」
母へ心配をかけない為に浮かべていた笑顔を消し、真顔で親友である出久を見据えながら狐白は部屋に備え付けてるソファに腰かけて出久にその隣へ座るよう、ソファの空いたスペースをその手で軽く叩き始め。
尻尾を忙しなく振っている狐白の様子に、部屋に漂う女子の匂いに若干ドキドキしていた出久は観念したかのような表情を浮かべて彼女の隣へと腰掛けた。
そして、出久は口ごもりながらも言葉を選び……オールマイトから個性を譲渡されたという事実を何とか隠蔽しながら、幼馴染へと入学試験の際に負った怪我について説明を始めた。
己の肉体を壊すほどの個性に突然目覚めたという出久の言葉に、狐白は若干不審に感じた個所があったものの個性が発現した結果女体化した自分がいるのだから、そういう事もあるかと納得し……。
しかし、無我夢中で飛び出して個性を発動させた結果己の肉体に損傷を負った、と説明を終えた出久の言葉に……狐白は非常に重たい溜息を吐いた。
「いずちゃん、君はバカなんだね。それもとびっきりの」
「ひどくない?!」
苛立ちを隠そうとする事無く、ふわふわの尻尾をばっさばっさと振りながら呟いた幼馴染の言葉に、出久は抗議するかのように叫ぶがじぃっと狐白に見つめ返されて言葉に詰まる。
「いずちゃんがオールマイトに憧れて、ヒーローになる事を渇望していた事は僕も知ってるよ。だけどさ……先生も言ってたけども、それでいずちゃんがボロボロになって助けられた人は喜ぶの?」
「それ、は……」
苛立たし気に振っていた尻尾の速度を段々と緩めながら、問いかけてくる幼馴染の言葉に出久は碌な言葉を返せずにただ俯いてしまう。
彼が心の底から憧れたヒーローは、たとえどんな苦難や逆境に置かれても不敵に無敵に豪快に笑いながら、それらを打ち砕いて全てを救う存在だ。
その理想を知っているからこそ、出久は真正面から見詰めてくる幼馴染に反論できなかった。
「僕は顔も名前も知らない人の命と引き換えに、いずちゃんが傷付く事なんて見たくないよ」
「こーちゃん、それは……」
「言わせていずちゃん、極論僕にとっては他人なんかよりもいずちゃん。君が一番大事なんだよ」
ソファの上に置かれた出久の手に、そっと己の手を重ねながら狐白は必死に訴える。
あまりにも薄情すぎる彼女の言葉に出久は何かを言いかけるが、その言葉に被せるように少女は言い募る。
どうか、自分の体を投げうってまでどこかの誰かの為に自分を投げ捨てないで、と。
「だけど、僕がヒーローになる為にはもっと、人よりも何倍も努力して頑張らないと……」
狐白の手が重ねられた手を出久は強く握りしめる。
彼の脳内にあるのは、無個性だからと夢を否定されて鬱屈していた日々の苦すぎる記憶。
それらは汚泥のように出久の心にへばりつき呪いとなって、出久に強い焦燥感を与えていた。
「……わかったよいずちゃん、だけど一つだけ約束して?」
「……こーちゃん?」
「せめて、僕が治せるところで……僕の手が届くところで無茶をして? それなら、すぐに治してあげられるから」
そして、出久の想いと苦悩を知る少女もまた……己では取り払えなかった少年の呪いに沈痛そうな顔を浮かべ。
せめて……コレならば手伝えると懇願にも似た声で出久へと訴える。
訴えられた出久は目を見開くと、その目に涙を浮かべて俯き狐白の手が重ねられていない方の手で己の目に浮かんだ涙を拭う。
何も持っていない無個性だった自分が救えたと、胸を張って言える親友の言葉は確かに少年の心へと響いたのだ。
出久は慰めるようにそっと優しくハグをしてくれる幼馴染の体温を感じながら、彼女の気持ちを裏切らないヒーローになりたいと強く願うと共に。
自分の体を壊さずに、受け継いだワンフォーオールを使いこなせる道を模索する事を決意した。
まだヒントも気づきの切っ掛けもない状態だけども。
親友で幼馴染からの懇願と言う枷によって、出久君は自身の体の損傷と引き換えに力を引き出すやり方とは、また別な方法がないか模索する事を意識し始めました。
別名、フルカウルフラグ早めに建築とも言います。