彼は僕のヒーロー   作:社畜だったきなこ餅

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感想が70件突破したので更新します。

割と本作は原作の流れを踏襲しつつオリジナル展開を交えて進めていく所存なのですが……。
どうしても展開が遅めになっちゃうので、これからもお付き合い頂けると幸いです。


14.吼えろクソナード

 

 

 出久がヒーローの卵として重大な一歩を踏み出した次の日。

 朝礼、午前の授業に学生にとって重要な栄養補給時間である昼休みを経て、正午一発目の授業時間。

 

 ナンバーワンヒーローであるオールマイトが講師を務める、ヒーロー基礎学なる授業内容に出久をはじめとした生徒達がそわそわしながら教師を待つ中。

 勢いよく教室のバリアフリーも考慮された大きな扉が開かれ、画風が違うと良く評される外見の筋骨隆々な大男が姿を現した。

 

 

「わーたーしがー! 普通にドアから来た!!」

 

 

 威風堂々とポーズをとりながら宣言する教師を、生徒達が歓声を上げながら迎える。

 その中でオールマイトはヒーロー基礎学について軽く説明しながら、BATTLEと書かれたカードを生徒達へ見せながら宣言する。

 

 

「早速だが今日はコレ! 戦闘訓練だ!」

 

 

 告げられた内容に生徒達がざわめく中、オールマイトが何かのボタンを押した瞬間教室の壁に継ぎ目のような物が現れ。

 そこから、全自動式図書館の書棚がごとくナンバリングが振られたケースの納められている棚が幾つもせり出してくる。

 

 納められているケースの中身、ソレは入学前に生徒達の個性や要望からデザイナーらによって作成された、生徒達専用の晴れ着とも言える戦闘服であった。

 その中で一人、自身の母が拵えてくれた戦闘服を納めている鞄を出久は抱き抱えるように抱き締め、これからの授業について思いを馳せた。

 

 

 そして、男女別に更衣室で戦闘服に着替えた生徒達はオールマイトから指示されたグラウンドに集まってくる。

 己の要望通りに仕上がった戦闘服に満足そうにしている生徒もいれば、思った以上にセクシーな仕上がりにされて困惑する生徒もいる中。

 狐白もまた、袖を通した戦闘服に身を包んだ状態で軽く体操をする事で動きが阻害されない事を確認し、満足そうに頷いた。

 

 狐白の戦闘服は、袴をベースに胸元を甲冑で集中的に防御しつつ、両腕や両足に甲冑付きの手甲や具足を身に纏うような形状となっている。

 また、稲荷の個性によって強化された視覚や聴覚を防護すべく……彼女の顔には口元が露わになる形の半面の視覚保護機能付き狐面が着けられており、その狐耳には彼女の耳の形状に合わせた聴覚保護器が取り付けられていて。

 腰には様々な応急処置用キット入りのポーチを取り付けた上で、手には伸縮式の柄が特徴的な刃潰し済の長巻が携えられていた。

 

 

「物々しい重装備ですわね、玉藻さん」

 

「あ、八百万さん。うん……僕の個性自体はいずちゃんとかとは違って攻撃に応用しづらいからね」

 

 

 中々に重装備な狐白に近付きながら感想を述べてきたクラスメイトの八百万に狐白は答えつつ、話し掛けてきたクラスメイトの露出過多気味な戦闘服にたじろぎながらも応える。

 なんせ、八百万の戦闘服は両腕や両足は殆どむき出しな上に豊満な胸元に留まらず、腹部すらも露出している格好だったのだから。

 

 

「玉藻さん凄いかっこよくて可愛いよ!」

 

「ありがとう、麗日さん。その……うん、君の衣装も可愛いよ」

 

「ありがとう! ……もっとちゃんと希望強く出しとけば良かったよー、ぱっつぱつにされちゃった」

 

 

 そうやって女子3人固まって戦闘服談義を続けていれば、私も私もとクラスの女子が3人を中心に集まり始め。

 互いの戦闘服について褒め合いも含めた談笑が始まり、女子たちの華やかな装いに一部のスケベ男子達はガッツポーズをしながらヒーロー科最高などと呟く中。

 遅れ気味だった、ジャンプスーツをベースとした戦闘服に身を包んだ出久がグラウンドに到着した事で、状況を見守っていたオールマイトが口を開いた。

 

 

「さぁ始めようか有精卵共!」

 

 

 生徒達一人一人の戦闘服の装いを誉めながらオールマイトが宣言した内容に、ヒロイックな人型ロボットのような戦闘服に身を包んだ飯田が挙手と共に質問をぶつけ。

 市街地演習による訓練かという生徒からの問いに対して、オールマイトは首を横に振って否定した。

 

 今日の授業はそこからさらに踏み込んだ内容、屋内での対人戦闘訓練をやると生徒達へ告げる。

 様々な戦いを潜り抜けてきたナンバーワンヒーローは生徒達へ告げる、屋内の方が凶悪ヴィラン出現率が統計的に高いと。

 そして……真に賢しいヴィランは闇である屋内に潜むと教え、ヒーローは生徒達に組み分けをした後2対2の屋内戦を行うように告げた、のだが。

 

 

「待って下さい!我らは総勢21人です、これでは一人あぶれる形となってしまいます!」

 

 

 朗々と報告する飯田、そう言えばそうだと生徒達を無言で見回すオールマイト。

 今年度は、とある事情により一人でも多く見込みのあるヒーロー候補生を増やそうと、試験的に定員を一名増員しての21人体制で始めた雄英高校であったが……。

 通常のカリキュラムならいざ知らず、担任ヒーローの匙加減で色々と決まる個所については、たまにこういう事が起きる事があるらしい。

 

 若干の混乱はあれども、最終的に一つの組は3人体制で試験を進める事が決定しヒーロー側の人数が多い場合は準備時間の増加、その逆の場合は準備時間の短縮と言う裁定で進める事となった。

 そして、問題の組み分けがどうなかったかと言えば……。

 

A組:緑谷、麗日

B組:轟、障子

C組:八百万、峰田

D組:爆豪、飯田

E組:芦戸、青山

F組:砂藤、口田、玉藻

G組:上鳴、耳郎

H組:常闇、蛙水

I組:尾白、葉隠

J組:瀬呂、切島

 

 以上の形で組み分けが完了し……戦闘訓練はヒーロー側A組VSヴィラン側D組の対戦から始まる。

 A組、およびD組以外の生徒達はモニタールームへと集められ、戦闘訓練に励む同級生達の闘いを見学しながら己の糧とするようオールマイトから言われる中。

 狐白はモニタに映し出されている出久の様子に、尻尾を忙しなく振りながら心配を隠すことなく出久と麗日を見守っていた。

 

 

「俺、爆豪達に勝ってもらいてぇかも」

 

「奇遇だな、オイラもそう思う」

 

 

 狐白の様子に上鳴が複雑そうな吐息と共に漏らした呟きを聞き取った峰田が見た目以上に素早い動きで彼へ接近し、その腰を軽く叩いてこれ以上ないほどに真剣な顔で同意を示していた。

 そんな男達に耳郎や八百万と言った、ストイックな性質を持つ女性陣は肩を竦めながら冷ややかな目を向けつつ、動きがあったモニタの中の様子へ注意を向ける。

 映像では今まさに、警戒しながらビルの中を進んでいた出久と麗日へ爆豪が凶悪な笑みを浮かべながら、襲い掛かろうとしていた。

 

 

「爆豪ズッケぇ!奇襲なんて男らしくねぇ!!」

 

「奇襲も戦略!彼らは今実戦の最中なんだぜ!」

 

 

 立ち向かうなら真っ向勝負が心情である切島がモニタに映し出された光景に非難を口に出すも、隣に立つオールマイトが真剣にやってるからこそだと切島の言葉をやんわりと窘め。

 一部の生徒達は、身をよじるかもしくは為すすべもなく吹き飛ばされるしかなかったタイミングで、出久が一歩前に踏み出し身を屈めながら爆豪の腹部へ掌打を打ち込んで弾き飛ばした事に目を見張る。

 

 

「すげぇな緑谷、あの一瞬で反応して逃げるんじゃなく迎撃成功させたぞ」

 

「テストで見せた凄まじいパワーにあのテクニック、んーんエレガントだね☆」

 

 

 己の尻尾という個性を十二分に生かす為に武術を身に着けた尾白が、一瞬の攻防で出久が見せた思い切りの良さに自身も熱くなってくるのを感じながら賞賛し。

 入学試験の際に同じブロックにいたが故に、巨大ロボットを一撃で粉砕した出久のパワーを知っている青山は出久が力押しだけではないと知って、気取った言い方で褒め称える。

 

 

「ふぅ……よかったぁ」

 

 

 そして、狐白は忙しなく振っていた尻尾をしんなりとさせながら、安堵の溜息を漏らした。

 彼女が安堵の溜息をもらしたのは、あの一瞬の攻防を逃れる為に出久が無茶な個性の運用をしないかどうかだったのだが、周囲のクラスメイトは単純に幼馴染が怪我せずに済んだことをホッとしていると勘違いした。

 その結果峰田とかの嫉妬カウンターが溜まって言ってるが、些細な問題なので割愛する。

 

 そうしている間もモニタの向こうでは出久と勝己は向かい合っており、出久の掌打によって体勢を崩した勝己に対して出久が何かを宣言しているのが見えるも、音声は拾われていない為モニタルームにいるクラスメイトは何を話し合っているのかはわからず。

 しかし、出久の言葉によって激昂したであろう勝己は咆哮を上げながら、己の爆破の個性によって急加速して出久へと攻撃を開始。

 その間に出久に何かを言われた麗日が頷き、退避したのを見届けてから大きく息を吸い込んで迎え撃つための構えを取った。

 

 この時、モニタルームにいる狐白を始めとしたクラスメイト達にはわかっていなかったが、出久は一人内心かなり焦っていた。

 昨日の夕方、狐白の協力もあって全身にワンフォーオールを巡らせながら一撃を放つ事に成功こそしたものの、その運用は未だ限定的すぎる状態だったのだ。

 故にこそ、出久は勝己の奇襲を迎撃した際に個性を使わなかった……否、使えなかったのである。

 

 身体全体の筋力、力の流れを連結させた一撃を無意識に放てるほどには、出久は武術を極めてはいなかったのだから。

 

 

 そして出久が焦燥に駆られている間、勝己もまた内心に激しい苛立ちと無自覚な焦燥を抱いていた。

 その苛立ちの原因は、無個性であるが故に自分達の顔色をびくびくと窺い後ろをついてくる事しか出来なかった、幼馴染の少年が生意気に立ち向かっているという事。

 焦燥感の原因は、何も出来なかったはずのデクが無個性の癖に事あるごとに自分へ手を差し伸べてきた過去と、力を身に着けた事で圧倒的格下の筈だった出久に追いつかれようとしてる無意識によるものだった。

 

 

 二人の幼馴染の少年達は、モニタルームで見守るオールマイトと狐白、クラスメイト達が見守る中やがて激しくぶつかり合い。

 状況的制限からワンフォーオールの発動に踏み切れない出久と、デクが個性を使わず立ち向かってくる事に苛立ちを募らせていく勝己は激しく咆哮しあいながら、訓練会場であるビルのあちこちに傷を残しながら激闘を繰り広げ。

 

 そして、その激しい攻防は出久が正拳突きの構えを取り……勝己が全身を使って飛びかかるかのような構えを取った時に、一瞬の静寂を迎えた。

 

 

「せ、先生止めた方がいいって!爆豪も緑谷も、このままじゃ大怪我じゃすまねぇぞ!?」

 

「いや……このまま見守る、爆豪少年は最大火力を緑谷少年へ直接ぶつけてはいなかったし……緑谷少年もまた、致命的な個所への拳撃は避けていた。二人はすこぶる冷静だよ」

 

 

 真剣な表情を浮かべて訓練風景を見守りながら、切島からの訴えに対して返事をしたオールマイトの言葉にクラスメイト達は生唾を飲み込む。

 やがて、画面の向こうで出久が全身に赤白い雷光のようなものを僅かに纏いながら拳を放ち、勝己が凶悪な笑みを浮かべて爆炎を放ちながら右の大振りを放った次の瞬間。

 

 激しすぎる衝撃によって舞い上げられた粉塵がモニタ画面を覆い隠し、その煙が晴れた先には……。

 大の字になって床に転がっている勝己と、前のめりの姿勢で床へ倒れている出久が映っていた。

 

 手に汗握る決闘の結末、ソレは引き分けに終わった……が戦闘訓練の勝敗はと言えば。

 その事に気付いた生徒達と、ついうっかり出久と勝己の闘いに見入っていたオールマイトもダミー核弾頭が映し出されている画面へ視線を移すと。

 そこには、トホホと言わんばかりの表情で項垂れた麗日が、飯田の手によって捕縛用テープによって捕えられていた。

 

 出久VS勝己の激闘は引き分け、しかしヒーローチームVSヴィランチームとしては勝己と飯田の勝利という形で終わるのであった。

 

 

「あっちゃぁ、惜しかったなぁ……緑谷」

 

「だなぁ、だけど爆豪をあそこまで釘付けにした緑谷がすげぇよ、麗日は相手が悪かったよな」

 

 

 訓練会場からロボットらによって運び出される出久と勝己に、クラスメイト達は素直に賛辞を送りながら画面の向こうの麗日の奮闘も称え。

 五体満足な事から、一足先に戻って来た麗日にクラスメイト達はドンマイコールを送るのであった。

 

 

 その後、訓練の総評によって戦いに固執した出久と勝己に対して厳しい評価が下され、奮闘した麗日と飯田には高評価が下される中。

 体のあちこちを煤けさせた出久の体を、真剣な表情を浮かべた狐白がぺたぺたと触れながら治療を施すのであった。

 

 




原作通りデク君とかっちゃんが真正面から殴り合いつつ、少しだけ違う展開になりました。
本作のデク君は、オリ主の影響とコネで本格的な武術の指南を受けているという点と、それに伴って体も鍛えていたという下地が出来ていました。
なので、身体を咄嗟に動かしたり力を振るうという点で、原作デク君よりも対応力が上がっているのです。

なお今回、狐白はハラハラしながら見守るだけというオリ主にあるまじきヒロインムーブでした。
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