実は結構難儀して、展開に迷った末に大幅に書き直してます。
出久と勝己の決闘が印象深かったA組とD組の対戦が終わり、次々と対戦が進められていく。
その中で、髪の中央から赤髪と白髪が綺麗に分かれている少年轟を擁するB組対尾白と透明人間少女な葉隠のコンビのI組との対戦が、あまりにも呆気なく終わった事にモニタルームに何とも言えない空気が漂う。
何故ならモニタの向こうでは、ビル全体が轟の個性によって凍結させられ尾白と葉隠両名が何一つ抵抗する事が出来ずに、戦闘不能にされたのだから。
「凄い個性だ、今すぐにでもプロに通用するよアレ……!」
圧倒的とも言える轟の個性が齎した氷結に、身体のあちこちに焦げ跡を残したままの出久が目を輝かせて轟を称賛し。
先の対戦で圧倒的格下として見てきた出久と相打ちになった勝己は、一瞬その轟に敵わないと思ってしまった自分自身への苛立ちに一人下唇を噛む。
そして、ほどなくして狐白・砂藤・口田のF組がヒーロー役……瀬呂と切島のJ組がヴィラン役として対決する時間がやってくる。
出久に激励を送られた狐白は気合を入れ直しつつ、チームメイト達と共にビルへと赴いた。
結果は、数の優位を生かし切ったF組の勝利に終わったものの、ヒーロー側の人数が多いことから大目に用意されたヴィラン側の準備時間により。
瀬呂が己の個性によって縦横無尽に張り巡らせた、結界とも言える障害物テープに前衛として動いた砂藤と狐白が思った以上に苦戦、そこから更に真正面から突撃してきた切島への対処に難儀するも。
口田の個性でダミー核弾頭の警戒が手薄になっていると通信を受けた狐白が、砂藤に切島の対処を頼んで俊敏な動きでテープを掻い潜りながらダミー核弾頭へ触れて勝利という結果に終わった。
「お疲れ様こーちゃん、大活躍だったね!」
「いやぁ、でも瀬呂君のテープの配置も中々に大変だったよ。尻尾引っ掛かりそうになったしね」
その後モニタルームに戻って来た狐白へ出久は我が事のように悦びながら、狐白の手を取って上下にぶんぶん振りながら興奮冷めやらぬ様子で賞賛。
幼馴染の少年に自然な流れで手を取られた狐白は、嫌がる素振りを欠片も見せる事無く上機嫌そうに尻尾をぶんぶん振りながらも対戦相手の手腕を誉めた。
「あの二人、幼馴染って言う割には距離近くない?」
「緑谷ぁぁ…………!」
芦戸がそんな二人を囃し立て、峰田が嫉妬の血涙を流したりしつつ。
戦闘訓練は大きなハプニングもなく終了し、生徒達は誇らしげな気持ちで更衣室へと戻っていき、やがて時間は放課後を迎える。
そして教室に残っている生徒達が、思い思いに戦闘訓練の内容や講評によって得た経験を更に活かす為に話し合っている中。
勝己は鞄を肩に担ぎ、クラスメイト達の様子に興味を向ける事なく席から立ち上がる。
「お? なぁ爆豪! この後皆で茶店にでも行って感想会するんだけど行かね?」
「モブとのつるみあいに興味ねーよ……おいデク、話あるからちょっとツラ貸せ」
和気藹々と話が盛り上がっている中、一人さっさと帰ろうとする勝己に気付いた切島が手をぶんぶん振りながら呼びかけるが、勝己は振り返ることなくその申し出を取り付く島もなく断ると。
狐白がニコニコして見守る中愛用のヒーローノートへ、凄い勢いで何かを書きこんでいた出久へと有無を言わせない口調で言葉をかけた。
「何するつもり? 延長戦とかいうつもりなら僕が相手になるよ?」
「てめーはお呼びじゃねーんだよ陰険狐目」
出久を庇うように、狐白が勝己と出久の間に割って入るが……ズンズンと大股に近づいてきた勝己が乱暴に狐白を押しのけ、座ったままの出久を見下ろす。
問答無用と言わんばかりの怨敵とも言える幼馴染の行動に、狐白は尻尾をパンパンに膨らませて攻撃態勢へ移ろうとしたのだが、この時勝己の後ろ姿を見る形になっていた狐白は言うに及ばず。
注意深く状況を見守っていたクラスメイト達にも、勝己の顔は良く見えなかったのだが……。
真正面から見上げる形となった出久にだけは勝己の顔がよく見えており、その顔はぶつけようのない苛立ちと焦燥感が複雑に入り混じったどこか助けを求めるような貌をしていた。
苦手であるが同時に強い憧れも抱いていた幼馴染のその顔に、出久はノートを畳んで鞄にしまうと席を立って勝己と共に教室を出ようとする。
「ちょ、ちょっといずちゃん大丈夫? そのクソ煮込み爆発頭に襲われたりしない?!」
「襲わねーよこの陰険狐目! つーかてめーも過保護過ぎんだよ!!」
「あ、あはは……心配しないでこーちゃん、戻りが遅かったら先に帰ってくれていいからさ」
抵抗する様子なく勝己についていこうとする幼馴染の姿に狐白は尻尾をピンと立てながら叫び、その内容に勝己は全力で叫びながら言い返す。
相変わらずの水と油どころじゃない二人の様子に出久は苦笑いを浮かべながら狐白へ声をかけると、二人はそのまま教室から退出していった。
「心配だなぁ……」
「まぁアイツもヒーロー志望だし無茶はしないんじゃねーの?」
肩を力なく落とし、尻尾を項垂れさせた狐白を慰めるかのように切島は声をかけ、折角だから緑谷達が戻るまでここで感想会しようぜとクラスメイト達へ呼びかければ。
先ほどまでの一触即発と言える空気で茶店やファミレスに行くという気分でもなくなったこともあり、クラスメイト達は同意の返事を返した。
「早速だけどよ……砂藤おめーすげぇな!全力で硬化したのにめちゃくちゃお前の拳響いたぜ!」
「そういうお前の硬さも凄かったぜ切島、お世辞抜きの全力で拳打ち込んだのにビクともしてなかったじゃねえか」
同意を得られた事から、話の切っ掛けとなった切島は今日の戦闘訓練で真正面から殴り合った砂藤と盛り上がり始め。
他の生徒達もまた、自分の課題を自己分析しながら対戦相手について感想を述べていく、その中。
「みんなは凄いなぁ……あたし、良い所なかったし」
ぐてり、とテーブルに突っ伏しほふーと悲し気に麗日が溜息を吐く。
彼女はある意味出久と勝己の真正面決闘騒ぎの被害者で割を食った人物であり、個性を活かしてダミー核弾頭確保を狙うもなすすべもなく飯田に捕縛されてしまっていたのだ。
そんな級友の様子に、狐白は尻尾をゆらゆらと振りながらどうしたものかと思案する。
この女子は幼馴染である出久にとって、黄金よりも貴重な同級生の女友達であるのだ……そんな彼女が悲しんでいたら、出久もまた悲しむに違いない……と。
故に狐白は、もふもふの尻尾を麗日へ差し出してこう告げた。
「大丈夫? 尻尾モフモフする?」
突然の狐白の行動と発言に、一瞬空気が固まる1-A。
一部のスケベ極まりない男子が……大丈夫?おっぱい揉む?的な雰囲気に勝手に脳内変換し興奮したりする中、凹んでいたお茶子は差し出された狐白のふかふか狐尻尾へ恐る恐るその手を伸ばし。
狐白を浮かせないように自身の手の肉球が触れないよう注意しながら触れた狐白の尻尾は、今まで彼女がその手で触れた何物よりもふかふかでもふもふしていた。
「ふわぁぁ……」
思った以上のリラクゼーション効果に、お茶子は亡者のようにもう片方の手も狐白の尻尾へと伸ばし、両手で子猫が毛布を踏むかのような動きで差し出された狐白の尻尾を堪能していく。
その光景に、ごくりとクラスメイト達は生唾を飲み込み……また一人のクラスメイトが、恐る恐る二人へ近づき口を開いた。
「あ、あの私も触れてよろしいでしょうか?」
「ん?いいよー、強く握ったりしないでね」
ドキドキしながら問いかけてきたのは長身かつ豊満な胸を持つクラスメイト、八百万であった。
問いかけられた狐白も、特に断る理由はないので素直に許可を出すと八百万は恐る恐る手を伸ばし、ふかぁ……と己の手を沈めて受け止める尻尾の手触りに恍惚の表情を浮かべる。
「素晴らしい手触りですわ……良く手入れされた極上の毛皮、いえそれ以上ですわ」
「えへへ、ふかふかぁ」
どこに出しても恥ずかしくないお嬢様な八百万は、時折ゆらゆらと動く狐白の尻尾の手触りに戦慄しながらも魅入られたようにもふり続け。
尻尾セラピー受診者二号なお茶子は、だらしない顔を浮かべながらも先ほどまでの凹んだ表情からは遠く離れた癒しに満ちた表情を浮かべていた。
ちなみに尻尾セラピー受診者一号は出久であるのは言うまでもない。
何はともあれ、そんな光景を見せられて可愛いモノ好き盛りな女子たちが我慢できるわけがなく。
「私も触りたいー!」
「玉藻ちゃん、私も触っていい?」
「うちもー!」
「ウ、ウチも触っていい……?」
わらわらと狐白の周囲へと群がり、思った以上に大事になったなぁなどと狐白は呑気に思いながらも、女子たちの手でなすがままに尻尾をもふられ続ける。
「凄いさらさらでふかふかだねー、なんか特別なお手入れしてるの?」
「うん、母さんも愛用しているブラシとかシャンプー使ってるんだ」
指で梳くようにしながら尻尾を撫でてくる芦戸に、狐白は特に隠す事でもないしと言葉をつづけながら答える。
割と敏感な彼女の尻尾であるものの、そこは女子だからか乱暴にする事無く絶妙な力加減でも振り、撫でてくるので狐白も割と心地よさそうな顔をしていたりする。
「あ、あのお耳触ってもよろしいですか?」
「ごめんね、耳はちょっと敏感だから……いずちゃん以外には触れられたくないな」
「まぁ」
時折ピコピコと動いている狐白の耳に視線が釘付けとなった八百万が遠慮がちに問いかけるも、はにかみながらやんわりと拒否した狐白の言葉に頬を赤らめて謝罪する。
八百万の脳内で出久と狐白がお付き合いしている事が決定された瞬間であった
なお現状そんな事は一切ないのは言うまでもない。
「今のオイラなら、憎しみで新たな境地へと至れる……!」
「気持ちはわかるぜぇ、峰田ぁぁ……!」
「嫉妬はこうも容易く、男を悪鬼羅刹へと変えるのだな」
拳をギリギリと音を立てながら握りしめた峰田が血を吐くように呻き声を上げ、その隣で上鳴もまた昏い表情で同意を示し。
そんな級友二人を、鳥のような頭を持つ少年こと常闇は溜息を吐きながら諌めるように呟いた。
常闇踏陰君は、色恋沙汰よりも男の子心擽るワードや装飾品の方が興味が強い男の子であり、色恋に対して斜に構えたところのある年ごろなのであった。
その後教室に一人戻って来たデク君は、一部の男子達から嫉妬と敵意の籠った視線を向けられたそうです。
今作のかっちゃんも、原作かっちゃん同様デク君が突然個性を得た事に対して懐疑的なのは変わらないのですが……。
身近なところに、中学二年生になった直後に個性発現の結果狐耳と尻尾が生えた挙句女体化したトンチキ生物がいるので、デク君への疑惑が確信レベルに至れてません。