彼は僕のヒーロー   作:社畜だったきなこ餅

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感想が77件でラッキーセブンなので更新します。


16.お昼の騒動と悪意の足音

 

 

 ナンバーワンヒーローであるオールマイトが、国立雄英高等学校で教鞭をとっている。

 このビッグニュースは瞬く間に全国を駆け抜け、一晩明けた翌日の早朝には雄英高校の前で報道機関の人間が所狭しと群がり、好き勝手に取材活動に勤しんでいた。

 彼らは通学してきた生徒達を捕まえては相手の都合を考える事無く、興味の赴くままに質問を矢継ぎ早にぶつけ対象の学生が足早に歩き去れば、また違う学生へ不躾にカメラとマイクを向けては質問を投げかけていく。

 

 

「オールマイトの授業はどんな感じです? それと隣の男の子はボーイフレンドですか?」

 

「急いでるんで失礼します。行くよいずちゃん」

 

 

 カメラを向けられた白銀色の髪と狐耳尻尾を持つ少女が、冴えない印象が拭えない男子との関係を揶揄うような発言をしたリポーターへの不快感を隠そうともせず通り過ぎ。

 

 

「オールマイト……あれ?! 君、『ヘドロ』の時の!」

 

「やめろ」

 

 

 不機嫌そうに大股で歩いていた目付きの鋭い少年が、ずかずかと踏み込むような言葉を投げかけてきたリポーターを一瞥する事なく通り過ぎていく。

 

 お世辞にも学校で学ぼうとしている学生達に配慮しているとは言い難いその動きは、競合他社に負けまいとばかりに加速する一方で。

 彼らの取材攻勢を見かねて応対に出た教師である、相澤が彼なりに柔らかい口調で報道機関へのお引き取りを願うも……。

 

 そんな言葉で素直に引き下がるのならば報道機関で仕事を続けてるワケがなく、若いリポーターが我慢しきれずに雄英高校の門を潜ろうとした次の瞬間。

 通称『雄英バリアー』と呼ばれている侵入者対策の隔壁が稼働し、報道機関の人間達を強制的にシャットアウトするのであった。

 

 

「……ッケ、いい気味だぜ」

 

「君と同じ意見ってのは癪だけど、こればかりは同意だね」

 

「勝手に同意してんじゃねぇよ陰険狐目」

 

「あ、アハハ……」

 

 

 隔壁の向こうで好き勝手報道の自由だとか喚いてる連中に対して、カメラが回ってないのを良い事に目付きの鋭い少年こと勝己が言葉を吐き捨て。

 偶然近くにいた銀髪の狐耳尻尾少女こと、狐白もまた悪態を混ぜながら勝己の言葉に同意を示し……いけ好かない幼馴染が勝手に同意を示してきた事に勝己が憤慨するのを。

 冴えない印象が強い少年こと出久は、額に汗を浮かべて苦笑いしながら見守るのであった。

 

 だが、この時彼らは知る由もなかった。

 今まさに、悪意の塊がすぐそこまで迫ろうとしている事を。

 

 

 

 

 そして今日もまた予鈴と共にホームルームが始まり、担任の相澤は昨日の戦闘訓練についての小言を一部の生徒は一言二言かければ、本題として学級委員長の選出を生徒達へ告げ。

 紆余曲折の末に、委員長として出久が4票集めた事で就任し、副委員長には2票集めた八百万が就任する事となった。

 

 

 そんなこんなで時間は流れ、お昼休み。

 

 

「すごい人の数だなぁ」

 

「そうだねいずちゃん」

 

「ヒーロー科以外にもサポート科や経営科の生徒まで一堂に会するからな」

 

 

 お茶碗に盛られたご飯を一口頬張り、お米の美味しさに満面の笑みを浮かべているお茶子を他所に。

 広すぎる食堂の席数がほぼ満席になるほどに集まった人の数に出久が驚嘆し、狐白もまた幼馴染の言葉に同意する中飯田が軽く解説をしていた。

 

 飯田の言葉になるほど、と頷きつつ出久は自身の前に置いたカツ丼に手を付ける事なく、ホームルームで決まった委員長就任について不安を口にする。

 人生初とも言える肩書に、もうこの時点で出久の心には不安しかない状態であった。

 

 そんな幼馴染の様子に狐白がそんな事ないよ、と口を開くよりも早く飯田とお茶子が出久を励まし始める。

 君には人をけん引するに値する、だから君に投票したのだと飯田は言い……お茶子は朗らかな笑みを浮かべながら、君なら務まると微笑みかけた。

 そしてその言葉を皮切りに、出久と飯田とお茶子の談笑は始まる。一方昨日勝己から過保護だと言われた狐白はと言えば、出久に友達が増えたことを心から喜んでいた。

 

 さながら、引っ込み思案な子供に友達が出来た事を心配する姉のような雰囲気である。

 

 

「友達が出来てよかったねぇ、いずちゃん」

 

「いきなり何言い出すのさこーちゃん……」

 

「まるで、姉みたいだね玉藻女史は」

 

「うん、お姉ちゃんみたいだよね」

 

 

 しみじみと呟いてきた幼馴染の言葉に、出久は頬張っていたカツ丼を呑み込んだ後に突っ込みを入れ。

 飯田とお茶子二人の言葉に、僕が弟なの?!と心外そうな表情を浮かべた。

 

 のんびりとしたお昼の食事時、しかし次の瞬間大音量で食堂どころか学校全体に響き渡った警報がその空気を粉々に打ち砕く。

 続いて放送された内容は、校内に侵入者が現れた事を示すセキュリティ3が突破されたというもので、避難をすべく動いた生徒達が我先にと出口へと殺到した結果食堂のあちこちでパニックが起き始める。

 

 

「ひゃぁっ?!」

 

「こーちゃん、しっかり掴まってて!」

 

 

 人混みに流されそうになる狐白の腕を出久が力強く掴み、無我夢中で自身の胸元へと引き寄せると、突然の怒号に驚き狐耳をペタンと倒し震えている幼馴染を守るべく。

 少女を抱き締める両腕に力を込め、気合と根性で踏ん張り続ける。

 

 そして偶然外の様子が窺える位置まで流された飯田は、外に大量に入り込んでいた報道陣の存在に気付き彼らが原因だと悟る。

 声を張り上げても誰も耳を貸さない、教師陣も動けないという中飯田は思考する。

 

 こんな時、短い付き合いであるが敬意を払える相手である緑谷ならどうするか、そして己が信じるヒーローの兄ならばどうするかを必死に模索する。

 その思考による模索は飯田の脳裏に一つの閃きを与え、少年は無我夢中で比較的近くにいたお茶子に自身を個性で浮かせるよう指示すると、己が持つ個性エンジンによって人混みの中から勢いよく飛び上がり。

 

 人の意識と視線が集中する、食堂唯一の出口の真上へ一直線に飛び込むと。

 意図せずに非常口のマークのようなポーズをとりながら、パニックを起こしていた生徒達に今回の警報の原因を大声で報せ、事態の鎮静化を訴えた。

 

 飯田の体を張った訴えは、パニック状態だった生徒達を鎮めるには十分な効果を発揮し……落ち着きを取り戻した生徒達がパニックの中で怪我人が出ていないかを手分けして確認を始める中。

 

 

「もう大丈夫だよ、こーちゃん」

 

「え、えっと……ありがと、いずちゃん」

 

 

 ぎゅうぎゅうに人混みで揉まれる中でも、何とか守り切る事が出来た腕の中の幼馴染へ語り掛け、守られる形となった狐白はぺたんと倒していた狐耳を起こしてピコピコと動かすと。

 狐白は思った以上に逞しくなっていた出久の胸に抱かれていた事実に、顔を真っ赤にし照れ臭そうにしながら俯き上目遣いで幼馴染の少年へとお礼を述べた。

 

 この時のこの狐白の行動、彼女にはあざとい思惑とかそういうのは一切存在していない。

 ただ、親友である幼馴染に庇われた事と思った以上に男らしい仕草に何故かドキリとしてしまった事が恥ずかしくなり、真正面から出久の顔を直視できなかっただけなのだ。

 

 だがそんな彼女の考えなど出久が知る由もなく、脳天を突き抜けていくような幼馴染が見せた態度と表情が齎した衝撃に出久は硬直。

 先ほどまで体全体で感じていた彼女の柔らかさと匂いに、今更股間のリトル出久が反応しかけた事もあり……咄嗟に脳内にバニースーツ姿の担任相澤とバニースーツ・プレゼントマイクを召喚して事なきを得るのであった。

 

 

 その後、お昼からの授業の一枠を使って各委員長を取り決めるとなった際。

 出久は食堂での騒動と、その騒動を鎮圧せしめた手腕から飯田を学級委員長に推薦し、彼もまた全力でその推薦を拝命する事で1-A組の学級委員長は飯田が就任する事で決定となるのであった。

 

 余談であるがこの時の狐白は、未だに出久に引き寄せられがっちり守ってもらった事に自覚できないフワフワとした感情で夢見心地となっており……。

 余りにもだらしないその様子から、思わず勝己が憎まれ口をたたくも反応が芳しくない事で、憎まれ口をたたいた張本人である勝己が焦るなどという珍事が発生したらしい。

 

 

 

 この時彼らは知る事は無く、また気付く筈もなかった。

 今回の報道機関の侵入が、彼らでは決して起こしえない『雄英バリアー』の破壊によって成されたという、悪意の忍び寄る足音に。

 

 




原作そのままな流れはバッサリダイジェストしていくのです。
知りたかったら、原作を読んでほしいのだ!面白いから未見の人はぜひ読んで欲しい!未見の人がいるかはわからんけど!!

デク君が狐白を庇ったのは割と無自覚です。
狐白が自分よりも体格が劣っていたのと、突然の大声によって敏感な聴覚が仇となって反応が遅れた幼馴染を庇う為に勝手に体が動いてたそうです。
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