彼は僕のヒーロー   作:社畜だったきなこ餅

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前回の掲示板方式が好評だったので更新します。
また機会があればやりたいと思っております。

※感想からのご指摘により、葉隠ちゃんがほぼ全裸から半裸になりました。
あの子よく見るとハチマキ以外にジャージズボン履いてたやん。


26.駆け抜けろ駿馬の如く・前

 

 第一種目である障害物走を終え、第二種目である騎馬戦へ向けて準備を終えた学生たちは各々強い決意を顔に浮かべて開始の合図を待つ。

 

 割り振られたポイントは足切りの下限である42位を5ポイントとし、1位上がるごとに5ポイント上乗せされる事で各順位を獲得した生徒達の保持ポイントが決められており。

 先ほどの障害物走で上位に入った生徒ほど保持ポイントが多く、自然と狙われる形になるのだが……彼らの視線は二位以下の生徒には一部を除いて殆ど向けられていない。

 ソレは何故か……。

 

 

「いずちゃん、麗日さん、常闇君。よろしくね」

 

 

 幼馴染の狐白といつもつるむ四人組の内の一人である麗日、そして持っている個性から状況を打破する鍵になると目して誘い入れた常闇。

 彼ら3人で四人組を作り、正面の騎馬を担当している先の障害物走で一位を獲った出久の保持ポイントは、ヤケクソじみた1000万。

 そして、今も出久の肩に手を乗せて油断なく狐耳を動かしている狐白の額に巻かれたハチマキのポイントは、1000万+3人の保持していたポイントの合計分な代物である。

 

 もはや出久の持ち点が大きすぎて、少なくない筈の3人の合計ポイントがおまけにしかなっていない。

 だが大きすぎるポイントと言うものはそれだけ人目を引いて当然とも言える、何故かと言えば確保した上で守り切れば一位間違いなしの万馬券なのだから。

 

 

「こーちゃん、基本は逃げ切り。万が一の際は攻勢に出る……でいいんだよね?」

 

「うん、今も視線感じるし多勢に無勢だから守り切れないと思って損はないよ」

 

 

 司会のプレゼント・マイクが大きくカウントダウンする中、静かに言葉を交わす出久と狐白。

 当初は大きな逃げ切りを提案していた出久であったが、状況から困難であると狐白が反論し常闇もまた同意を示した事で、出久の考えていたプランから作戦は少し変更が加えられている。

 守りきれたならばソレに越した事なし、しかし無理ならば……。

 

 

「奪われたらすぐに機動力を生かして1000万以外を狙う……うぅ、緊張してきた」

 

「為すべき事を為せば良い、気負うな麗日」

 

 

 はぅぁー、と声にならない声を漏らしながら顔の高さにある狐白の尻尾に頬擦りしたお茶子が泣き言を漏らし、級友の尻尾にじゃれつこうとする個性ダークシャドウを宥めながら常闇は静かに呟いた。

 そして、開始の合図をプレゼント・マイクが叫んだ瞬間。

 

 二つの騎馬がほぼ同時に出久達へと突進を開始した。

 

 

「実質ソレの争奪戦だ!!」

 

「はっはっは!玉藻さん、いっただくよー!」

 

 

 1-Bの生徒で構成された騎馬と、1-Aの生徒……透明な中にハチマキだけ浮かべた騎馬こと、葉隠が大声で宣言しながら騎馬を突撃させてくる。

 

 

「葉隠さん、ハチマキしか見えないけどもしかして全裸になってるんじゃ……」

 

「今はそんな事を考えてる場合じゃないよこーちゃん!!」

 

 

 狐耳を忙しなく動かし正面を見ながら周囲からの奇襲を警戒している騎馬、狐白がクラスメイトで構成された騎馬を見てボソリと呟き。

 出久は赤面しながら叫ぶと共に、常闇もまたさり気なく少しだけクラスメイトの騎馬から視線を逸らした。彼もまた男の子なのである。

 

 無論葉隠も年頃の乙女なので、ハチマキ以外はすっぽんぽんだという事はなく、狐白から見えなかっただけでジャージズボンは履いている。

 だがしかし、上着は着ておらず振動や吹き抜ける風を受けるがままとなっていた、透明である故に見えてはいないがもし透明少女が見える個性持ちが居たらお宝映像案件である、

 

 ちなみに葉隠のチーム構成は、正面を耳郎が担当しているが後方左右は口田と砂藤……男子で構成されている。

 そして、彼らは見えないけども確かにそこにあるズボン越しの乙女の仄かな体温と、見えてないだけですぐそこに上半身真っ裸な女子がいるという事実に気まずそうに頬を赤くしていた。

 彼らもまた、男の子なのである。

 

 

「っ、動くよ!」

 

「おーけー!右前方が手薄だよいずちゃん!」

 

 

 しかし次の瞬間足元の感覚が僅かに変化したことを察知した出久が注意喚起すると共に、高速移動を開始。

 突然の出久の行動に、後ろ二人がついていけるワケがないと状況を見ていた他の騎手たちであったが……。

 

 

「っ! くそっ、緑谷がメインエンジンってレベルじゃねぇぞ!?」

 

 

 騎手の狐白の尻尾をマフラーのように首へ巻き付けたお茶子が個性を発動し、自分自身と常闇の重量を軽減させて出久へ体重を預けると。

 全身に雷光を纏わせた出久が、不安定になり始めた足場に構う事無く駆け出しはじめ、包囲網を脱したのである。

 

 無論こんな個性の使い方をすれば、お茶子は個性である無重力の反動でとんでもない吐き気に見舞われる事は最早避け難い。

 しかし、多少気持ち悪そうにしつつも包囲網脱出後に見事な早業で両手の肉球を合わせ、個性を解除したお茶子には今にも吐き出しそうな様子は見受けられない。

 

 ソレは何故か? 無論この土壇場で彼女がヒーロー映像のような急成長を遂げたわけではなく、彼女の首に今にも柔らかく巻き付けられている狐白の尻尾がその原因だ。

 競技開始前の僅かな時間、検証として狐白の尻尾を腕に巻きつけながら自分を浮かせたお茶子は、無策に浮かせたときに比べて吐き気が大幅に軽減されていたのである。

 無論狐白の負担がその分増える形となるが、障害物走でも個性は殆ど使わなかった事もあり朝蓄えてきた狐白の栄養やカロリーは十分にある為、この競技中は凌げそうだという事でゴーサインが出たのだ。

 

 しかし、何事も上手い話はないもので……。

 

 

「あ、いずちゃん。コレちょっとマズイ、長時間コレ使うと僕の燃料すっからかんになるかも」

 

「わかったよこーちゃん!」

 

 

 くぅぅ、となり始めたお腹をおさえつつ報告された幼馴染の言葉に出久は方針を脳内で組み上げながら油断なく視線を巡らせ。

 その間も迫りくる耳郎のイヤホンジャックや1-Bの女生徒が放った茨の髪を、常闇の個性によって弾きつつ場内を必死に逃げ回る。

 

 だがしかし、生徒達もまた一発逆転ボーナスキャラ状態である出久のチームから狙いを外す事はなく。

 

 

「緑谷ぁぁぁぁ!往生しろやぁぁぁぁぁ!!」

 

「峰田くん……何その状態!?」

 

「それよりいずちゃん!足元注意だよ!」

 

 

 さながら重戦車が如き様相で突進してくる障子の背中から聞こえた声に、思わず出久はびっくり仰天。

 しかし峰田の声が聞こえたという事は彼の個性による妨害も考慮に入る事から、騎手の狐白から注意が飛ぶ……だがその注意喚起は既に遅く、幸いにも粘着性の非常に強い峰田のもぎもぎを踏んでいる騎馬は居なかったものの。

 回避を優先して動こうとした場合、身動きがとりにくい程度には周囲に撒かれている状況に追い込まれていた。

 

 そして、障子の背中の包み状になっている腕から放たれた長く撓る舌に狐白は細い狐目を見開くと、大きく前かがみとなり出久に体重を預けながら咄嗟にソレを回避。

 不意打ち気味に出久の後頭部に幼馴染の柔らかで豊満な乳房が勢いよくぶつけられたが、コラテラルダメージである。

 

 

「さすがね狐白ちゃん」

 

「梅雨ちゃんまで……ねぇ梅雨ちゃん、そんな狭い所に峰田くんと一緒にいて変な事されてない?」

 

「けろ、今の所平気よ」

 

 

 首まで赤くしながら動きがぎこちなくなった幼馴染の少年を気遣うように、狐白は出久の肩を叩きながら身を起こして隙間から顔を覗かせた蛙吹と言葉を交わす。

 その際にまず真っ先に出たのが彼女の貞操を心配する言葉な辺りに、峰田がクラスの中でどう思われているのか火を見るより明らかな有様である。

 

 

「緊急回避、いくよ麗日さん!」

 

「オッケー!デクくん!」

 

 

 身動きが取りにくい足場なら、出来る事は限られる以上この空間からの離脱を出久は決意。

 即座に反応したお茶子がチームメイトの重量を軽減し、仲間達が自身に体重を預けてきたのを確認してから出久はワンフォーオールを起動して勢いよく空中へと飛び上がり。

 

 

「逃がさねえぞ!デクと陰険狐目ぇ!!」

 

「げっ、クソ煮込み爆発頭! 常闇君防御!麗日さん全体浮遊!」

 

「任された」

 

「りょ、りょーかい!」

 

 

 飛び上がった出久チームに襲い掛かって来たのは、単身で凶悪な笑みを浮かべながら飛びかかって来た勝己であった。

 咄嗟に常闇に防御を頼みつつ、万が一に備えて自らの尻尾をお茶子が窒息しない程度に強く彼女の首へ巻き付けながら狐白は叫び。

 

 次の瞬間勝己が狐白達へ放った爆風は、ダークシャドウがカーテンのように受け止めてもなお衝撃を貫通。

 そのまま無策に受けていたらチームが物理的に空中分解しかねない威力であるも、お茶子がチーム全体の重量を大きく低減する事で、風に流される綿毛のように出久チームは爆風で吹き飛んでいく。

 

 

「麗日さん、続いていずちゃんの重量低減解除!対衝撃姿勢!」

 

「うぷっ、対ショックおーけー!」

 

「とっくに対ショックだ」

 

「了解こーちゃん!」

 

 

 ひらひらと吹っ飛ばされてく幼馴染たちのチームに歯噛みする勝己を置き去りにしながら、狐白は即座にお茶子へ指示を出し……。

 指示を受けたお茶子は狐白の尻尾が齎す心身への癒しによって吐き気を堪えながら、出久の重量低減を解除。その結果下側が重くなった出久チームは騎馬側を下向きにする形で大きく離れた地面へ無事着地。

 その際の衝撃によって狐白の姿勢が大きく崩れ、出久の頭にしがみつくような形で密着するが些細な問題である。

 

 若干負担が大きくなった出久が両足にダメージを抱えるも、両肩に乗せられた幼馴染の手から送られる修復によって少年の痛みは即座に消えていき……突発的な個性使用によって吐き気を感じたお茶子もまた、即座に本調子へ立ち直る。

 しかし、時間にして数秒の攻防であったが騎手である狐白の姿勢は、中々もとに戻る様子を見せなかった。

 

 

『おおっと、何かアクシデントかー!? このままだと狙い撃ちだどうする暫定一位ー!!』

 

「だ、大丈夫こーちゃん!?」

 

「だ、大丈夫……だけどごめん、ちょっとこのまま少しだけまっててもらっていい?」

 

 

 プレゼント・マイクの声が聞こえる中、姿勢を崩したままこっそりともぞもぞ動き何やら衣服の調整と思しき行動をとっている狐白に、後方から支えている常闇とお茶子は不思議そうに首を傾げる。

 しかし、狐白に体重を預けられ彼女の身じろぎを最も身近に感じている出久は、気付いてしまった。

 

 先ほど押し付けられた時より、ほんのり狐白の胸が小さくなっている事、そしてズレたっぽいブラをなるべく人に気付かれないように直そうとしている事に。

 ちなみに狐白が愛用している彼女の母印のブラは、個性使用によってサイズが細かく変わりがちな狐白の事情に合わせたアジャスター機能付きの優れものである。

 しかし、着け心地を優先している仕様上自動調整機能は未だ未搭載となっている結果、このようなハプニングが発生してしまった。

 

 

「よしもう大丈夫、ごめんね皆!」

 

「う、うん、だいじょうぶだよ」

 

「どうしたのデク君、やっぱりどこか痛めたの?」

 

「……緑谷、お前もまた男であったか」

 

 

 そして漸く調整が落ち着いた狐白、一方少し動きがギクシャクしている出久を心配するお茶子である。

 一方で何かを察した常闇は大きく溜息を吐きながらも、しかし峰田達ほど明け透けでもないからわざわざ苦言する必要もないか、などと考えつつ周囲警戒を密にしていた。

 

 

 

 そうしている間に残り時間は半分を切った、その時。

 狐白達のチームの前に、障害物走2位の轟を騎手とした騎馬隊が立ち塞がった。

 

 

 




Q.なんで狐白のブラは、マウントレディとかの体型可変系プロヒーローが使ってるような素材じゃないの?
A.女の子初心者な娘(元息子)の体型を崩さない為、そしてブラに苦手意識をもってもらいたくない母心によるものです。
 伸縮系素材はやはりゴム系になると思うんですが、そうなると着け心地に難を抱えてしまうため。
 デザインや着け心地を損なわないよう細心の注意を払った上で、調整機能を設けるという手段に狐白の母は出た模様。


そして、一話に収められませんでした。
多分次回で騎馬戦は落ち着きます、多分。
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