それと、現在狐白の雄英制服姿をイラストレーターさんに依頼中です、リクエストが通って完成したらお披露目できるかもしれません。
2020/3/24 指摘により上鳴の130万ボルトについて若干修正しました。
猛攻を躱し凌ぎ切った狐白を騎手とした騎馬隊、チーム出久。
彼等は今、先の障害物走で二位を獲った轟を騎手とした騎馬隊と対峙していた。
「悪いな玉藻、手加減抜きだ……そろそろ奪るぞ」
「もう少し後で来ると思ってたんだけどね……っ! いずちゃん、全速離脱!右後方!」
「気を付けてこーちゃん!仕掛けてくるとしたら一組だけじゃない!」
慌てて方向転換しながらかけ始めた出久達のチームを猛追せんと迫る、周囲の騎馬隊達。
その中で、現状最大の脅威である轟達に背を向けるリスクを狐白は承知した上で、緊急離脱を指示した。
そう、彼女の狐耳は小声で轟が八百万と上鳴に何かの指示を出していた事を……微かに拾っていたのだ。
そして、すれ違いざまに狐白のハチマキを奪おうとする他チームの猛攻を狐白が必死に腕でいなしその身を傾けるなどして凌ぎ、大急ぎで包囲網を抜けた直後。
「っ……勘が良いな、だけど蹴散らすには十分か。やれ、上鳴!」
「おうよぉ!無差別放電、130万ボルトォォォ!!」
チームメイト達が八百万が用意した絶縁対策を身に着けたのを確認した上鳴は、電力で放電を開始。
絶縁対策を施した轟チームを中心に放たれたその圧倒的な電流は大気を伝わる事で、包囲からぎりぎり抜け出した狐白達へ届く事はなかったけれども。
今この時も狐白達と轟達を狙い周囲を取り囲んでいた騎馬隊の動きを止めるには十分であった。
そして、生まれた隙を逃がさないとばかりに轟は右手に作り出した氷柱を地面へ突き刺し、放電によって足を止めた騎馬隊を凍らせてから狐白達を追い始める。
「振り切れない!いずちゃん反転、正対するよ!」
「わかったよ!麗日さん、常闇君は大丈夫?」
「大丈夫!まだまだいけるよ!」
「同じくだ緑谷、勝つぞ。必ず」
狐耳を動かし、飯田の足から放たれたであろうエンジン音が迫る事を察知した狐白は即座にメイン騎馬である出久へ反転を指示し、その言葉を受けた出久は自らの足を運動場へ突き刺すように軸にしながら向きを反転。
振り回される形になったお茶子と常闇もまた歯を食いしばり騎馬を維持しながら足を動かす事で、狐白達は隙を突かれる事無く追いついてきた轟達を相対する事が出来た。
油断なく、厳しい表情で互いに睨み合い隙を窺う二つの騎馬隊。
先に動いたのは、轟達の騎馬隊であった。
「八百万、上鳴!」
「常闇君、防御!」
飯田の持つ機動力によって突進しながら、八百万が創造の個性によって作り出した大きなヘラのようなものを振りかぶり、叩きつける瞬間を常闇のダークシャドウがその鉤爪のような腕で受け止める、しかし。
八百万が作り出したヘラから繋がったコードを握る上鳴が常に微弱な電流を流し放電させていた事で、ダークシャドウの出力が低下。何もなければ引き裂けた筈のソレを直撃しない程度にいなす事で精一杯となってしまう。
「創造、万能で凄い個性だけど相対するとこんなに厄介だなんて……」
「違う緑谷、あの程度なら今の状況なら本来は破れていた。だが上鳴の放電による雷光が泣き所になっている……!」
「そう言えば常闇君、この前のUSJ事件の時に個性の弱点言ってたけど、それが当てはまってる状態かぁ」
「ああ、俺のダークシャドウは闇が深ければ深いほど獰猛で強い。だが光が強くなればそれだけ弱くなってしまう」
ダークシャドウの迎撃によってひしゃげた得物を投げ捨て、新たに作り出した薙刀のような物を手にする八百万を油断することなく見詰めながら呟いた出久の言葉を、常闇は訂正すると。
今回起きている自分自身に不利な状況が重なっている事を常闇は説明し、その内容に共にUSJ事件で飛ばされた時に乗り切った狐白は得心が行ったとばかりに呟く。
せめてもの救いは、今この間も出久主導で轟から見て左側を陣取るように位置取りを続けているおかげで、一番厄介でどうしようもない氷結攻撃をある程度制限できている事であるものの。
総合戦力としては不利と言い切れないまでも、相性によって生じた拮抗状態に歯噛みせざるを得ない状態であった。
その中で発言せず考え込んでいたお茶子は、悩み迷いながらも小声でチームメイトへの提案を口にし始める。
「ねぇ皆、私だけじゃなくて玉藻さんも大変だけどもしかすると凌ぎ切れる作戦思いついちゃったんだけど、どうかな?」
「……聞かせてもらっても、いい?」
遠慮がちにお茶子が口にした内容に、即座に狐白は食いつくとその先を促す。
狐白にとって、この勝負は出久の足を引っ張らない為にも負けたくなかった、故にこそ必死だし本気で今の状況に抗っているのだ。
しかしこの時お茶子の表情は、狐白や出久からは見えなかったが苦渋に満ちた表情をしていたのだが……その事に気付いたのは共に後方で騎手を支えている常闇だけであった。
そうして膠着状態のまま小競り合いを続けている間に時間が過ぎ、残り一分となったその瞬間。
『残り時間約一分!轟がフィールドをサシ仕様にしてまで追い詰めてるが、粘っているぞ玉藻!』
『緑谷を機動力の主軸にし、常闇で防御を行い麗日で機動力を補助。その上で玉藻が上半身だけで際どい所を避け続けたからな、この状況で良くやってるよアイツらは』
実況であるプレゼント・マイクと、解説として無理矢理引っ張り出されたイレイザーヘッドこと相澤の声がスピーカーを通して会場に流れる。
だが最早その言葉がBGMとしか感じられない程度に集中している出久は、汗だくになりながらもその顔から戦意は消えておらず……。
出久を友であると同時に越えるべき壁と認識している飯田は、一つ決意をもって轟へ自分がこの後動けなくなることを話した上で、詳しい説明をする時間も惜しいとばかりにチームメイトにしっかり掴まっているよう指示を出した。
だが、狐白達もまた逃げ切る為の最後の策を用意しており、奇しくも2チームも切り札がほぼ同時のタイミングで切られる事となる。
「獲れよ轟くん!」
「今だよ、皆!」
狐白自身の動体視力でも対応が困難なほどの加速を轟達がすると同時に、狐白が叫んだ瞬間出久は地面を踏み抜く勢いで全力で跳躍し。
轟の左手は狐白が額に巻いているハチマキに触れる事無く、何かが破れる音を伴いながら通り過ぎていった。
左手の感触に轟は獲り損ねたことを確信し、身体を捻りながら空へ飛び上がった出久達めがけて右手から氷塊を幾つも放つが、彼等を撃ち落とすべく放たれたソレは常闇のダークシャドウによって薙ぎ払うように防がれてしまう。
狐白達の切り札、それはチーム全体の力を結集した即席連携である。
言葉にしてみたら簡単な話で、出久がその身体能力に物を言わせて飛び上がるジャンプジェットを担当し、お茶子が負荷軽減と対空の為に無重力によって浮遊、下方向からの攻撃は常闇のダークシャドウで防ぐというモノで……。
そのままでは厳しい負荷の大きい出久とお茶子の負担を軽減するために、騎手である狐白が空腹に苛まれながら自身が蓄えた燃料を消費するという、シンプルなモノであった、
『こいつは驚きだ何が起きたー?! 飯田が超加速したと思ったら玉藻達が遥か上空へすっ飛んで…………おいおい少しばかり刺激の強い映像がお届けされてしまっているぞー!』
だが一つ誤算というか大問題が発生してしまった。
「た、玉藻さん!! 上着、上着ぃ!?」
「へ?」
吐き気に堪えながら目を真ん丸に見開いて大慌てで叫んだお茶子の言葉に、自らの体を見下ろした狐白は自身に起こった問題を察してその表情をこわばらせた。
轟に掴まれたであろう袖部分は破けてなくなり、高速移動の勢いに合わせて引っ張られた力と急上昇によって生まれた反発力によって……狐白が着ているジャージの上着は胸元から大きく破れてしまった結果。
狐白は会場映像のみならず、電波に乗せてお茶の間に黒いブラジャーに包まれた乳房を晒してしまったのだ。
しかも修復の個性でまた胸が少し小さくなり、芦戸以上八百万未満な状態である。
下手をするとズレて丸見えになってしまう、そんな危険極まりない状態だ。
その後時間終了と共に着地した狐白チーム、というより狐白は呆けた表情で両腕で自らの胸を隠す様に会場にへたり込み。
吐き気に悩まされつつも友人のピンチに慌てふためくお茶子と、目を丸くし顔を赤面させながらも躊躇なく出久が己の上着ジャージを狐白へ羽織らせるまで、狐耳尻尾の少女はフリーズ状態となるのであった。
なお、そんな惨状を招いたという事実は轟と飯田に敗北の悲しみと苦しみを味わうよりも先に、物凄い罪悪感に襲われたらしい。
さすがにこの時期の力求め系天然ボーイの轟君でも、やらかしたと思ったらしい。
ついでに観戦してたエンデヴァーさんは、勝利を確信した瞬間の肩透かしとハプニングに腕を振り上げたまま硬直してたらしいよ。
あ、勝ち抜けチームはある意味原作通りの、出久チーム・爆豪チーム・轟チーム・心操チームの4組です。