すまん、すまん轟……次話でお前の株なんとかするから……!
【ある日の幼馴染二人の会話~玉藻家のふしぎ1~】
ある日の日曜日、いつものようにオールマイトグッズに囲まれた出久の部屋で出久と過ごしていた狐白であったが。
出久が開いたヒーローの動画を狐白が出久の肩越しに覗き込むように、密着した姿勢で視聴していた時の事である。
「そ、そういえばこーちゃん」
「どうかした?いずちゃん」
狐白にはその意図は全くないであろうが、首筋にかかる彼女の吐息に背中に感じる柔らかくて大きな二つの膨らみの感触。
そして、出久の鼻腔から脳髄へと届けられる少女の香り、平たく言うと出久の理性がピンチであった。
故に出久は、己の知的好奇心を優先する事で欲望を鎮める方向へと思考を傾ける。
ちなみにヒーロー達のバニーメンズ脳内召喚は、オールマイトからいざそういう時が来た時に自動脳内再生されてエライ事になる恐れがあるから止めなさいと言われたため、自重しているらしい。
「こーちゃんの一族、ええと玉藻家の歴史というかオリジンって何なのかなって気になったんだけど、何か知ってる?」
「んー、そうだねー」
無理矢理にも程がある出久が切り出した方針転換であるが、丁度今再生している動画がプロヒーロー達の原点……オリジンの特集が映し出されている事もあり。
狐白は出久によりかかるようにしながら、尻尾をバサバサとふって考え込んだ後に口を開く。
「僕がお婆様や一族の人に聞いた話になるけど、いいかな?」
「勿論!聞かせてもらってもいい?」
後出来れば距離を置いてほしいと思う出久であった、考えてみれば男子時代はもう少し距離が離れていたが狐太郎が狐白になってから、段々と距離感が近くなってる気がしてしょうがない出久である。
【ある日の幼馴染二人の会話~玉藻家のふしぎ2~】
「お婆様の話によると、僕達の一族って遡るとルーツは平安時代辺りから始まってるらしいんだよね」
「血桜さんのお屋敷凄い立派だったけど、歴史ある一族だったんだ……」
「うん、昔家系図がかかれた巻物見せてもらったけど物凄い長かったよ」
再生されたままのプロヒーロー動画をBGMにしながら始まった、狐白を講師とした玉藻一族の歴史解説に出久はノートとペンを取り出しながら真剣に聞き入る。
どこに出しても恥ずかしくないヒーローオタクである出久であるが、その気質は時に自身が興味を抱いた事象にも向けられるらしい。
「ただ始まりが我が一族ながら胡散臭いんだよ」
「どういう事? こーちゃん」
「うん、京で権力闘争に敗れて地方に移り住んだ公家であるご先祖様が、追われ逃げ延びてきた狐の化生を娶ったのが始まりって言われてるんだよねぇ……」
尻尾をゆらゆら振りながら若干なんども言えない表情を浮かべて呟いた幼馴染の言葉に、出久はノートへペンを走らせる手を止める事無く続きをを促し。
続きを促された狐白は、困ったように笑いながら御伽噺にもほどがあるよね。などと言いながら肩を竦めた。
あれ、なんだかどこかで聞いたことある気がするぞ。と出久は思いつつ口を開く。
「逃げ延びてきた狐の化生を討伐しようとしてくる兵士とかは居なかったの?」
「一族の歴史に詳しい、たまに正月とかにふらっとやってくる人の話によると……上手く兵隊の目を逸らして、その化生は自分が討伐されたように見せかけたらしいね」
「な、なるほど……」
自身の祖母や分家の人達も恐れ多いとばかりに接してた、一族の中でも特に不思議な女性を思い出しながら、狐白は言葉を続ける。
そう言えばあの人最近見ないけど、男子時代は色々と可愛がってくれたなぁ。などとも思いつつ。
「で、京から追われたご先祖様は当時の偉い人が死んだり権力失うのを地方で待って、お嫁さんとして娶った化生さんとの間に産まれた子供達を伴って京に戻って……今日に至ってるとか何とか」
「え、ええと……こーちゃん、もしかして、もしかしてだよ? 『玉藻』って苗字、その化生さんから来てたりする?」
「うーん、わからない。そこは御婆様や詳しい一族の人も教えてくれなかったし、一族の史書にも載ってなかったからねぇ」
大事な所でいい加減だよね、うちの一族って。などと言いながら呑気に肩を竦めて微笑む幼馴染の少女に、出久は冷や汗を流す。
彼の脳裏をよぎるのは……最近の民俗学で各地に残る伝承や妖怪の説話が、当時に個性を発現させた人間が起源になっているという学説が発表された一連の流れである。
クラスメイトの常闇は時代が時代なら烏天狗と呼ばれただろうし、障子なんかも何かしらの妖怪と扱われたのは想像に難くない。
そんな思考がぐるぐると頭を巡る出久を他所に、ふと何かを思い出したかのように狐白はぼそりと呟いた。
「そう言えばあの一族の人、ふとした時に尻尾が九本に見えた事あったけど……さすがに見間違いか何かだよね」
出久は、幼馴染の呟きを聞かなかったことにした。
【ある日の幼馴染二人の会話~玉藻家のふしぎ3~】
「そ、そう言えばこーちゃん!歴史が長いって事は、色んな分家もあるのかなっ!?」
「どうしたのさいずちゃん、そんなに冷や汗流して……まぁ、あるよ」
何かに気付いてしまったのか冷や汗を流し早口で捲し立ててきた出久の様子に、狐白は不思議そうに首を傾げつつ。
聞かれたからには答えないとね、などとノリノリで解説を始める。
「幾つかある分家の中で、代表的なのは主に二つだね。一つは殺生石家、こちらは割と武闘派というか何と言うかで……一族にちょっかいをかける連中の相手をするのが主務らしいよ」
「ぶ、物騒な名前と主務だね……」
というかもう隠す気ないよね、という言葉を寸でのところで出久は飲み込みつつ震えた声で呟く。
「うん、基本的に全国飛び回ってるらしいけどね。お婆様も元はこっちの出身らしくて、本家の血筋だったお爺様に嫁入りしたそうだよ」
「ごめんこーちゃん、凄く失礼かもしれないけどわかりみが深いよ」
「大丈夫、その話聞いた時僕も同じこと思ったから」
ちなみに本家筋の血筋の子には、名前に狐を入れるのが決まりらしいよ。などと狐白は言葉を続けつつ。
お婆様みたいな人ばかりの分家って、それもう修羅か何かの集まりだよね。と遠い目をしながら呟いた。
「少し話が逸れたね、もう一つの分家は葛乃葉家って言ってね、こっちは殺生石家とは打って変わって穏健派というかあちこちで起業してたり働いたりして情報集めてるって聞いたね」
「なんかこう、まるで忍者とかの一族みたいだね……」
「僕もソレ思った、何と言うかこう前時代的だよね」
幼い頃から仲良くしていた幼馴染の家がガチで歴史の長い名家だった件、とかいう名前でスレを立てたら伸びそうだなぁ。などと現実逃避気味に考えてしまう出久なのであった。
【ぼくらのTSアカデミア! すまっしゅ風味】
突然街に現れた、極めて特殊な個性……反転を持つヴィラン!
混乱に陥った町を救うべくヴィラン退治に乗り出した1-Aの面々また、次々とヴィランの個性によって翻弄されてしまう!
果たして皆はヴィランに勝てるのか、それよりもまずもとに戻れるのか?!
何?時系列とか学生がヴィラン退治に乗り出すとか色々とおかしい? 細かい事は頭からSMASHだ!
「気を付けろ!相手は性別を変える個性だ!」
「「性別?!」」
コスチュームに身を包んだ飯田がよろめきながらクラスメイトである上鳴と峰田へ、ヴィランの個性を伝える。
信じられない様子を浮かべる上鳴達だったが、担任の相澤も女にされた事を悔しそうに飯田は述べるとヘルメットを取って一息つき。
「俺は間一髪で躱したのだが……」
「躱せてねぇよ思いきりなってんよ乙女によぉ!」
「思いっきり食らってんじゃねーか!!」
普段の角ばった輪郭はどこへやら、女性らしい丸みを帯びた顔付きにどこかほんわかした様子を浮かべた飯田に対して、全力でツッコミを入れる峰田と上鳴。
だが次の瞬間、そんな馬鹿なと言わんばかりにぽかんとした表情を浮かべた飯田に、上鳴と峰田はだがこれはこれで!と欲望に忠実にガッツポーズ。
そんな3人に対して、何をやっているのかと言わんばかりの口調で声がかけられる。
「何をやってるのさ3人とも、状況の把握と混乱しているクラスメイトの救助に動かないといけないでしょ」
「お前……その耳と尻尾、もしかして玉藻かぁ?!」
「昔のソシャゲに出てくる刀剣な男子の狐っぽい刀男子みたいになってんぞ、お前ぇぇぇ?!」
そこに立っていたのは長巻を手にした銀髪の狐耳と尻尾を生やした、切れ長の瞳を持つ偉丈夫。
背丈こそ変わってないがクラスメイトが見慣れた豊満な胸や飛びつきたくなる女体の面影は残っておらず、良く鍛えられた体躯をした和装男子に狐白はなっていた。
「す、すまない玉藻じょ……この場合玉藻君か? 今……わっ、個性が!」
「飯田君、大丈夫?」
狐白の言葉に我に返った飯田は級友達を救わんと、足のエンジンを動かすが思うように動かせずに足を縺れさせてしまい。
峰田達にぶつかる一歩手前で、狐白の手で抱き留められた。
「どうやら個性も反転しているようだね、安全な所でゆっくりしていて」
「ドジっ子メガネってお前……!」
「くぅぅ!悪くねぇ!!」
トゥンクとなったかどうかは定かでないが、恥ずかしそうにしている飯田(女)から狐白(男)は手を離すと。
普段と全く調子が変わらない1-Aスケベ男子ツートップの尻を蹴り飛ばし、クラスメイト達の救援へ取り掛かり始める。
道中ただでさえ複雑な個性とソレに負けない複雑な家庭環境、更には複雑な上昇志向まで持った複雑事情トリプルアクセル系クラスメイト事、轟が悩み悶絶しているのを発見し。
狐白達3人は互いに頷いてそっとしておこうと、その場を後にしたりしつつ進む中。
「わっ?! う、うぅ……」
「いずちゃん!?まさか君も……」
ジャージに身を包んだもさもさ頭の、いつもよりオドオ度5割増しな出久は狐白達3人に鉢合わせた瞬間、俊敏な動作で物陰へと隠れ。
鉢合わせたのが幼馴染とクラスメイトだと知った出久(女)は、もじもじしながら物陰から緩慢な動作で姿を現した。
「ご、ごめんぼく今……体がなんか変なんだ。こないで……」
「恥じらう地味系巨乳女子!」
「ヤベェ!キタコレ!とんだ穴馬ぁぁぁ!!」
「……ふん!!」
「「天誅!?」」
大きく膨らみジャージの下からその存在を激しく主張している双丘を必死に隠しながら、目に涙を浮かべ内股で訴えてくる同級生の仕草に。
上鳴と峰田の興奮は最高潮、そのまま欲望を叫んだ次の瞬間割と手加減抜きの狐白の一撃によって、二人同時に悶絶転倒する。
「大丈夫だよいずちゃん、君がどんな姿になっても僕は傍に居るし、戦えないなら僕が君を守るから」
「こーちゃん……」
「玉藻が男子になったら、イケメンに化けやがった……」
「アイツが男だったら、オイラのモテモテ計画がヤバかった……」
震え怯える出久へ力強い笑みを浮かべながら手を差し伸べる狐白の姿に、先ほどぶちのめされた上鳴は路上に倒れたまま紳士ムーブが板についてる狐白に戦慄し。
峰田が震えながら呟いた言葉に、いやアイツが女のままでもお前のモテモテ計画破綻してたじゃねぇかなどと上鳴は思いつつも、口に出さない優しさが彼にはあった。
その後多少の騒動はありつつ元凶のヴィランは顔面の形が変わる程度にぶちのめされ、皆は無事元に戻れたそうな。
分家筋な人が今後出るかは予定は未定な状態です。
すまぬ轟、明日はお前の株上げるから……!
最後のネタのすまっしゅ風味のヤツは、すまっしゅ!1巻の最後の公式TSネタ使わせてもらいました。
なので、この話は本編に影響を与える事はありません。あくまでパラレルなユニバースなのだ。