彼は僕のヒーロー   作:社畜だったきなこ餅

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気が付けばUA8万こえてたので更新します。
原作通りな展開の部分は割と端折ってダイジェストでいきますが、ご了承ください!


31.競い合え若人

 

『さぁて第二試合の後片付けも終わったところで、第三試合の開始だぁ!』

 

 

 先の第二試合によって発生した氷塊が片付けられ、乾燥も終わった会場に二人の生徒が立つ。

 戦意に満ちた眼光を瞳に宿している八百万と異なり、彼女の視線の先に立つ上鳴が非常に気まずそうというかどこか達観している様子が見られるのが特徴的な光景である。

 

 

『第三試合は、スパーキングキリングボーイ上鳴電気 対 万能クリエイティブガール八百万百だぁ!』

 

『この二人は騎馬戦でも同じチームだったからな、互いの手の内を知っている中でどうやりあうかが勝負の鍵だな』

 

 

 実況のプレゼントマイクが二人に適当な紹介文を付けつつ観客へ紹介し、解説の相澤ことイレイザーヘッドが簡単な補足と試合の流れについて説明をする中。

 上鳴と八百万の間には、形容しがたい緊迫感が漂っていた。

 

 なお……第一試合から大盛り上がりを見せた出久と心操の闘いから興奮冷めやらぬ中始まった、先の第二試合は……。

 圧倒的強者と言える轟に勝てる気はしない、されどもむざむざ負ける気はさらさらないとばかりに司会の合図が出た瞬間、速攻を仕掛けた瀬呂が問答無用で氷漬けにされて終了した。

 余りにも圧倒的な結果に思わず、瀬呂へ向けてどんまいコールが観客席から響いたのは言うまでもない。

 

 

「上鳴さん、覚悟は出来てますわよね?」

 

「は、ハハハ、めっちゃ怒ってるじゃん……だけど八百万、俺を甘く見てると痺れちまうぜ?」

 

 

 司会のプレゼントマイクに仰々しい紹介をされている間も、二人は静かに言葉を交わし合い。

 

 そして試合開始の合図がされた瞬間、八百万がUSJ襲撃事件でも活用した絶縁シートを創り出すよりも一歩早く、上鳴の放電が放たれ。

 しかしほぼ同時に八百万が太い針のような物を創り出すと同時に、会場床へと投擲。その結果八百万は多少の放電をその身に受けつつも、行動不能になる事を回避する事に成功する事が出来た。

 

 

「ウェッ! 絶縁シートじゃウェイ?!」

 

「賭けに勝ったようですわね……アレは創るのに時間かかりますから、その隙を突いてくるのはお見通しでしたわ」

 

 

 速攻を心掛け限界ギリギリの放電を行った結果、ウェイウェイ言いながら上鳴は驚愕の表情を浮かべつつ距離を取ろうと動く。

 この時上鳴は焦る事なく、再度八百万めがけて放電を畳みかけるべきであった、咄嗟に八百万が創り出した即席避雷針は完璧な仕上がりではなく……。

 今もその影響で、彼女の体には若干のしびれが残っていたのだから。

 

 しかし今となっては後の祭り、後退し様子見を上鳴が選んだ事で出来た時間で八百万は態勢を立て直し、絶縁シートまで拵えてしまう。

 控えめに言って、上鳴にとって詰みであった。

 

 

「……終わったな、上鳴」

 

「ああ、いいヤツだったよ。アイツは」

 

 

 これから始まる死刑執行を思い、生徒用観客席から展開を見守っていた砂藤と切島は呟くと両手を合わせて合掌。

 女子陣に至っては、八百万へやっちゃえー!とノリノリで声援を送っている始末である。

 

 その後、必死に抵抗を続ける上鳴であったが時間が経てば経つほど、創造によって作り出した資材で盤石となっていく八百万に完膚なきまでにぶちのめされるのであったとさ。

 

 

『いやぁ、酷い光景だな!メタ張りもここまで行くと無惨でしかねえわ!!』

 

『上鳴はあそこですぐに追撃をすべきだった、八百万が態勢を立て直す前にもう一度放電すれば勝ち目はあっただろうな』

 

 

 試合終了後の総評を述べる実況と解説を他所に、勝者となった八百万がとてもイイ笑顔を浮かべてる事に若干1-A女子陣は戦慄しつつ。

 互いに顔を見合わせながら、ごにょごにょと話し始める。

 

 

「とりあえず、上鳴は衆目の前で落とし前つけさせられたし……許してやっていいんじゃない?」

 

「うん、異議なーし!さすがにこれ以上は可哀想だよね!」

 

 

 ウェイウェイ言いつつロボットによって担架に乗せられ運ばれていく上鳴の姿を見た耳郎は、哀れに思ったのか頬を掻きながら上鳴の減刑を提案すると。

 先の轟対瀬呂ほど無惨な光景ではなかったとは言え、さすがに気の毒だと感じていた葉隠はぱたぱたと袖を動かしながら同意を示し、他の1-A女子陣もまた頷いて意思を示した。

 

 上鳴は今、赦されたのだ。

 

 

「へ、へへへ……ついでにオイラにも恩赦を……」

 

「峰田ちゃんはダメよ」

 

「さすがに先生の名前出すのはあかんよー」

 

「うやむやでごまかせると思うなよー!」

 

 

 ここぞとばかりに自身も便乗して減刑を嘆願する峰田であるが、蛙吹とお茶子と芦戸から情け無用の嘆願却下。

 思わず膝から崩れ落ちる峰田に、観客席にいる1-A男子陣は女子達はあんまり怒らせないようにしようと、心に誓うのであった。

 男子陣は、先ほど女子達がやってたチアガールの真実を聞かされており……一部男子はスケベコンビに心中で賛辞を贈ってはいたものの、それとこれとは話が別なのである。

 

 ついでに、幼馴染が騙されてちょっと煽情的な恰好をさせられたと聞いた時、出久は言葉にし難いもやっとした感情を感じたりしたが。

 現在進行形で因果応報を受けてる二人を見て、少しだけ溜飲が下がる気持ちを感じていた。

 

 

「そういえば緑谷、指は大丈夫なのか?」

 

「あ、瀬呂君。うん……リカバリーガールに治してもらって後遺症も無い状態だよ」

 

 

 考え込んでいたところを瀬呂に話しかけられ、出久は思考を中断し瀬呂に治してもらったばかりの指を見せて健在を示す。

 

 

 

「次は飯田対玉藻だろ、やっぱり幼馴染が心配なのか?」

 

「……うん、そうだね」

 

 

 先ほどまで出久が考え込んでいた事を、幼馴染が心配でしょうがないという風に解釈していたっぽい瀬呂に出久は同意を示しながら、次の試合開始を待つ。

 真実は明確な感情にもなっていない嫉妬にも似た何かだったのだが、わざわざ説明する必要もないので出久は勘違いしたままにしておいた。

 

 なおこの勘違いを出久が肯定した結果、やっぱり二人はもうほとんどそう言う関係なんじゃないのかという誤解が、クラスの中で固まる事になるのだが。

 そんな事、出久には知る由もないのであった。

 

 

「あっ、出て来たよ!」

 

「二人ともー!頑張れー!」

 

 

 会場の準備が整い、姿を現した狐白と飯田へ歓声を送る葉隠と芦戸。

 1-A女子陣の中でも特にテンションがアゲアゲ系の二人は、どんな時でも元気であった。

 

 

『続きましては第四試合! 1-A学級委員長も務めるマッシブエンジンボーイ飯田天哉 対 クールビューティな見た目に反してその中身は武闘派なフォックスガール玉藻狐白だぁ!!』

 

『機動力が頭一つ抜けている飯田と、武術を会得した上で反射神経に優れている玉藻。決まるとしたら一瞬かもしくは千日手になるだろうな』

 

 

 ノリノリで紹介と実況を行うプレゼントマイクに対して、普段から授業で二人を見ている相澤は淡々とした口調で解説を行う。

 

 

「どっちが勝つんだろな?」

 

「やっぱ飯田っしょ、騎馬戦で見せたアレやられたら玉藻も一たまりもないって絶対」

 

 

 経営科の学生から買ったドリンクで喉を潤しながら呟いた切島の言葉に、瀬呂が飯田優勢である基準を示しつつ飯田の勝ちに一票入れる。

 一方で……。

 

 

「だけど玉藻は最後のアレに反応してたしな」

 

「しきれてなかった結果のラッキーショッ……ぎゃふんっ!? み、緑谷、なにすんだよぉ……」

 

「あ、ごめん峰田君」

 

 

 切島と瀬呂の言葉に砂藤が腕を組みながら飯田優勢だとばかり言えないと話、峰田が言わなければよいのに騎馬戦最後の光景を口にした瞬間。

 出久は表情を変えずに手に持ってたドリンクから氷を取り出し、指で弾いて峰田の顔面へ炸裂させた。

 

 口では謝っている出久であるが、不思議と悪いという気持ちは欠片も無かったそうな。

 

 

「玉藻なら勝てるよー!がんばれー!」

 

「芦戸、アンタそろそろ待機しておかないとヤバいんじゃない?」

 

「あ、そうだこの次アタシじゃん! いってきまーす!」

 

 

 そんな中、観客席から身を乗り出して応援する芦戸に対して耳郎がトーナメント表を指差しながら伝えた内容に、うっかりしてたとばかりに芦戸は駆け足で観客席から控室へ走っていく。

 ちなみに青山は現在控室で一人で精神集中をしながら、決め台詞やポーズの練習をしている。

 

 そして、司会のプレゼントマイクが試合開始の合図を告げた次の瞬間。

 飯田が爆発的な加速で狐白へ接近、少女の華奢な腹部へその逞しい腕を回して場外へ投げ飛ばそうとするも……。

 想定こそしていたが思った以上の加速に狐白は驚愕の表情を浮かべつつ、咄嗟に身をよじり尻尾を激しく上下に振りながら腹部へ回された飯田の腕を軸にして体を縦回転、そのまま彼の腕へ体重を使いながら関節技をキメにかかる。

 

 

「さすがだな玉藻女史!だが簡単には負けてやれない!」

 

「それは、こっちもだよ!」

 

 

 腕が完全にキメられるよりも先に飯田が空中へ飛び上がり、エンジンの個性のオーバードライブ状態であるレシプロバーストが齎す出力に身を任せるまま、身体をぐるぐると回転させて自身の腕にしがみついている狐白の三半規管を掻き乱し。

 遠心力に振り回され拘束が緩んだ瞬間を飯田は見逃さず、咆哮を上げながら不安定な姿勢から狐白を無理やり投げ飛ばした。

 無論飯田の腕にも痛みはあるし無理矢理関節技を解いたせいか、その腕にはいつもより力は入らない状態……しかしこのまま何もなければ少女を場外へ放り出すには十分な勢いであった。

 

 

「こな、くそぉ!」

 

 

 投げ飛ばされた狐白は、野生の狐が自身の尻尾で急制動をかけるのと同じ要領で自身の尻尾を動かし、空中で体勢を立て直してステージギリギリの淵で踏み止まる。

 しかし間髪入れずに飯田が自身の加速に振り回されながらも追撃を行い、狐白は慌てて屈みごろごろとステージ上を転がってあわやというところを躱した。

 

 

「はぁ、はぁ……早くても掴みに来るところを対処すればよいなんて、浅はかだったかな……」

 

「君の反射神経や身のこなしは、普段の付き合いで良く知っているからな!」

 

 

 転がる中も迫る追撃を、腕をばねにしてぎりぎりで飛び上がって回避し空中でくるりと回転した狐白は両足でステージ上に着地。

 そして即座に攻撃へ移ってきた飯田の攻撃を再度屈む事でかわしながら片手をステージに突き、彼の攻撃の軸である両足を掬い取るかのような水面蹴りを放つがソレも空振りに終わってしまう。

 

 この時、狐白は致命的な勘違いをしていたのだ。

 飯田が今使っているレシプロバーストを明確な時間制限のある物ではなく、出久の個性のように体に無茶をさせながらも制御し続ける限り時間制限がないものだと思っていた。

 もし彼女があの時すぐに更衣室に引っ込まずに聞いていたのなら飯田は、公明正大に奥の手の効果やデメリットを教えていたであろう。

 

 そして、その情報があれば徹底的に時間稼ぎをする事で勝利を得ようと動いたのだが……情報が無い中打開しようとした狐白は、情報収集を怠ったツケを支払う事となる。

 

 

「しまっ……?!」

 

「もらったぞ、玉藻女史!!」

 

 

 真正面から自身を捕えようとする飯田の手を掴もうとした次の瞬間、狐白の眼前から飯田が消え。

 狐耳に聞こえてきた音から慌てて振り返ろうとする狐白であるも既に遅く、彼女の襟首を乱暴でありながらしっかりと掴んだ飯田は全身のバネを使うかのように狐白を場外へ向けて放り投げた。

 

 最初の攻撃と異なり、安定した姿勢で投げ飛ばされてしまった狐白に最早打開策はなく、せめてダメージを抑えるようと受け身をとりながら場外へ落ちる事しか出来なかった。

 

 

『玉藻場外へ為す術もなく落下ぁ! 第四試合は飯田の勝利ぃぃぃ!!』

 

『玉藻も良く凌いでいたが反応しきれなかったか』

 

 

 狐白は場外に座り込んだ姿勢のまま自身の耳に届いてきたアナウンスに、狐白は漸く自分が敗北してしまった事を実感し。

 一度見たから対処可能だとばかりに高を括っていた、己の浅はかさに臍を噛む思いをするとともに……一筋の冷や汗を額に流す。

 もしこの試合を祖父母が見ていたら、どんな特訓を課されるのだろう、と。

 

 狐白は……何か不思議な事が起きて祖父母が偶然この試合から目を離していたりすると良いなぁ、などと願う。

 なお祖父母はしっかりと孫娘が出ている試合を、テレビにて見ていた模様。

 

 




飯田君に勝てなかった狐白でした。
本作の出久君並の身体能力があれば……察知して真正面から迎撃も可能だったのですが。
彼女は割と身体能力は飯田よりも負けているのでこんな結果に終わりました。

そして狐白のイラストに気分を良くした作者、今度はどんな衣装の狐白を依頼しようか今から思案中。
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