今回はバトル展開パゥアーが足りないので、短編ネタです。
描いて下さったのは、柴猫侍様となっております。
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まさか同時に二枚も頂けるなんて、思ってもみませんでした……!
【狐白と言う少女の他者への応対~親しい幼馴染編~】
とある日曜日の昼下がり、肩まで届く銀色の髪と同じ色をした狐耳尻尾を持った少女が、もさもさ頭が特徴的な少年の隣で上機嫌そうに尻尾を振りながら歩いている。
今日は彼女の幼馴染である少年が待ち望んでいた、オールマイトのイベントの日なのだが……折角だし自分も一緒に行って良いかと狐白が出久へ問いかけ、快諾を受けて今に至っているのだ。
「今日はどんなイベントだったっけ? いずちゃん」
「うん!今日はオールマイトの会場限定グッズの物販にオールマイトのトークショー、その後には握手会まである豪華イベントなんだよ!」
狐耳をピコピコ動かしながら駅までの道を隣り合って歩いている幼馴染へ少女は問いかけ、少年は興奮気味に捲し立てながら目を輝かせて説明を始めた。
出久が色んなヒーローのイベントへ足を運び、何となく狐白が彼についていく……この流れは狐白が狐太郎だった頃から変わってない関係である。
しかしあの頃との違いを言うなれば、その頃は狐太郎も適当な恰好で出久についていっていたのだが、少女となった今は少しだけおめかしをしている所だろうか。
上下に色調を合わせたブラウスと膝まであるスカートを纏っており、上着として淡い桜色のカーディガンを羽織る少女はどことなく清楚な印象を与えており。
その顔には母に手ほどきを受けながら、自ら施したナチュラルメイクまでしている始末である、男子時代には考えられなかった手の込みようだ。
そんな幼馴染の姿に出久は目を配る事なくヒーローイベントについて機関銃のように喋り続けている、そう思われても致し方ない状況であったが実は少年も中々にテンパっていた。
ちょっとしたお出かけとして軽い気持ちで誘ったら、いつもより念入りにめかし込んで幼馴染がやって来たのだ。
普段から狐白の行動や無防備な姿に理性と言う名の防壁を削られがちな出久の心は、新たに見せられた幼馴染の姿に一杯一杯なのである。
しかし、ここでお茶を濁し続けてはお洒落をしてきた幼馴染に申し訳ない、そう考える気持ちもまた出久にはあり。
学校の校訓でもある、PlusUltraの気持ちを胸に……緊張に喉を乾かせながら少年は口を開いた。
「と、ところでその恰好、お洒落だよねこーちゃん、その……凄く似合ってて、可愛いよ」
「っ! あ、ありがとうね、いずちゃん。母さんに助言もらいながら選んでみたんだけど、凄い嬉しいよ」
言葉を詰まらせながらたどたどしく紡がれた出久の言葉。
その言葉に、今まで格好に触れられない事から少しだけ不満に思っていた狐白の機嫌は急上昇し、切れ長な目の眦を下げて尻尾を激しく振りながら笑みを浮かべた。
そんな幼馴染の少女の様子に出久は、元々男子っぽくないというか控え目に言って中性的な親友であったが……ここまで変わるものなのかという思考が頭を過りつつも。
今は細かい事は考えず、おずおずと差し出された幼馴染の手を握り共にイベントへ向かうのであった。
【狐白と言う少女の他者への応対~親しくない幼馴染編~】
駅から電車に乗り、オールマイトのイベントが開催される会場のデパートへ向かう途中の出久と狐白。
二人は、そこで予想外の顔見知りと出会ってしまう。
「げっ、なんでてめーらがいんだよここに」
「あ、かっちゃん。君もオールマイトのイベント見に来たの?」
「げって何さげって……その言葉、むしろ僕達が言いたいんだけどね?」
ポケットに両手をツッコミ背筋を丸めて気怠そうに歩いていた勝己が、鉢合わせた出久と狐白の顔を見て不快そうに顔を歪めながら不遜に言い放ち。
出久はと言うと苦笑いを浮かべつつ素直に挨拶し、彼の隣を歩いていた狐白はその美貌をこれまた不快そうに歪めて売り言葉に買い言葉とばかりに勝己へ噛みつく。
「んなわけねーだろ殺すぞクソナード! そもそも学校で会ってんのに何でイベントに来にゃならんのじゃ!」
「え? でもかっちゃんもオールマイトのファンじゃ……」
「てめーほど見境ないレベルにまで足突っ込んどらんわ!ぶっ殺すぞ!!」
出久の隣にいる狐白も確かに、と頷きたくなるような内容を勝己は怒鳴り散らした。
実際勝己がこのデパートに来た目的は、新発売の登山用具が気になって足を運んだだけであり、見終わった後まだやってるようならついでにイベントも見ていくかぐらいに考えていたぐらいなのだ。
しかし出かけた目的の切っ掛けがオールマイトのイベントに目を引かれ、その結果登山用具の新製品を見つけた辺り割と勝己もオールマイトのファンなのは言うまでもない。
「んで、てめーらお二人はデートか? 陰険狐目も随分とめかしこんでんじゃねーか」
「で、ででで、デートじゃないし? ただちょっとお出かけしてるだけだよ、何下世話な発想してんのさこのクソ煮込み爆発頭」
「語るに落ちてんぞコラ」
出久に色々絡んでも、変な方向から指摘を受けては敵わんとばかりに勝己はさりげなく自分へ悪態をついてきた狐白へ、鋭い眼光を向けながら問いかけ。
突然の勝己の言葉に、狐白は顔を赤くした上に狐耳と尻尾を激しく動かしながら必死に勝己の言葉を否定するが、思わず呟いた勝己の言葉が正に正鵠を得た状態であった。
ちなみに出久は勝己から出たデートと言う単語に顔を真っ赤にしてフリーズしていた。
変な所で似ている幼馴染な出久と狐白である。
【狐白と言う少女の他者への応対~知らない他人編~】
ランダムエンカウントと言う名の多少のハプニングの後、出久と狐白の二人と……さり気なく二人から離れたところに居た勝己の3人。
そのままひっそりと二人に見つからないよう気配を消しつつ先に帰った勝己に気付かず、出久はオールマイトイベントの感想を熱に浮かされたかのような表情でうっとりと呟く。
「ああ、今回のイベントも最高だったよなんたって真偽不明だったエピソードを、オールマイトが事細かに説明してくれた上にその時のコスチューム映像まで出してくれるだなんて……ああ、撮影不可だったのが本当に悔しいよ僕の目から動画を取り出して記録出来たら最高なのに」
「うーん、いずちゃんは相変わらずオールマイト大好きだよねぇ」
イベント会場限定品の物販品をしっかり収めた鞄を背負い、ぶつぶつと心ここにあらずと言った調子で呟き続ける出久。
何も知らない人物どころか良く知る人物からしてもドン引きしかねない状態だが、出久を良く知る幼馴染である狐白は困ったように笑いながら軽く出久の肩を叩いて意識をこちらへ呼び戻す。
いつもならのんびりと出久の話を聞きながら、共に歩いていく狐白であったが彼の意識を呼び戻したのにはワケがある。
ソレは、オールマイトより自分を見て欲しいとかそういうモノではなく……。
「ところでいずちゃん、鞄の中に入らなかったポスターの入った紙袋は?」
「え? あ、あぁぁぁ?! ごめんこーちゃん!すぐ戻るからー!!」
「折角だし僕も……あ、行っちゃった」
狐白の言葉に我に返った出久は己の両手を確認し、大事な戦利品が入ってる筈の紙袋がない事に白目を剥いてやらかしたと言わんばかりの声を上げ。
言うや否や身を翻して全力疾走を開始、その上で自分の体や鞄が通行人にぶつからないようギリギリで配慮は出来ている出久であったが……幼馴染が続けて口にした言葉を聞き逃す程度には慌てていた。
そんな幼馴染の様子に、昔から変わらないなぁなどと柔らかく笑みを浮かべて狐白はとりあえずどこかに座ろうかなどと思ったその時。
「きつねしゃ~~ん」
そんな幼い声が狐白の腰下から聞こえ、自身の尻尾に何から抱き着いてきたかのような感触を感じた。
今日の日の為に丹念に手入れされた尻尾は思いの外膨らんでおり死角となっていて気が付かなかったが……狐白が視線をふと下げるてみると。
その視線の先には、デフォルメされたオールマイトの顔がプリントされたシャツを着た幼い少女が、舌足らずの言葉できつねしゃんと繰り返しながら狐白の尻尾へ幸せそうに頬擦りしていた。
「あ、ああちょっと! ご、ごめんなさい!」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
幼い少女がその小さな体で狐白の尻尾へ抱き着いている光景に気付いた、幼女の母親らしき女性が慌てて駆け寄り狐白へ頭を下げると。
娘の両脇に背後から手を差し込んで抱き上げようと試みる、しかし幼女は離れたくないとばかりに狐白の尻尾を掴む力を強め、敏感な尻尾への刺激に若干狐白は眉をピクリと動かすと。
軽く自らの尻尾を動かし、するりと幼女の拘束から自らの尻尾を逃れさせた。
「あぅ……ぅー……」
ふかふかの狐尻尾に逃げられたショックと悲しみに、母親に抱き上げられた幼女はそのクリクリとした瞳に涙を滲ませ。
その顔に内心で狐白は溜息を吐きつつも、子供に色々言ってもしょうがないかと思い直すと。
「強く握ったらダメだよ? オールマイトも、助ける人は優しく抱きしめるでしょ?」
「……ぅん、ごめんなさい」
泣きそうな子供を安心させるために笑みを浮かべながら、多少乱暴に握られる事を覚悟しつつ修復の個性を準備しながら狐白は幼女へ尻尾を差し出した。
改めて目の前に差し出された尻尾に幼女は、その曇り空になっていた顔を見る見るうちに明るくさせると幸せそうにその両手で狐白の尻尾を触り始める。
狐白にとって予想外だったのは、そうは言いつつも遠慮なしに掴まれると思っていたが幼女は狐白の言いつけ通り、強く握ったりすることはせずにその小さな両手全体を使って尻尾を弄っていく。
そう言えばこの子、母親に抱き上げられるまではいきなり抱き着いてても優しく触っていたなぁ、などと狐白が半ば現実逃避気味に思考しつつ……申し訳なさそうに頭を下げてくる母親へ、気にしないでほしいと笑みを浮かべるのであった。
その後、目的のブツの回収を終えた出久が戻って来た事で狐白は解放され……。
「きつねのおねーちゃん!ばいばーい!」
「うん、バイバイ」
母親に手を引かれながら元気一杯手を振ってくる少女に、出久の隣に立つ狐白は微笑みながら手を振って返す。
出久の為に丹念に手入れしてきた尻尾であったが、狐白の胸中は言うほど悪い気分ではなかった。
コレがあの幼女が生意気極まりない子供だったら、今頃狐白の機嫌は地を這うレベルで最低だったかもしれないが……幸いにして先ほどまで狐白の尻尾に夢中だった幼女は、その辺りは素直なよいこだったのだ。
むしろ、トータルで見ると狐白に取ってはプラスな方向にまで機嫌が動いているかもしれない。何故なら。
「……子供とか出来たら、あんな感じなのかなぁ」
「ファー?!」
何となく、このような事を呟いて出久に素っ頓狂な声を上げさせる程度には、狐白にとっても名残惜しいと思えたのだから。
なお出久は、自宅へ帰るまでの間悶々とした気持ちが晴れなかったらしい。
狐白は知らない人と接するときは、割と外面取り繕って接しますが内面は割とアレな事考えてたりします。
(子供が泣きそうだと諦観混じりに尻尾を差し出すが、子供自体を第一に考えてなかったり)
一方で顔見知りでその性根を知っている人物(例:かっちゃん)相手には、フルスロットルで毒舌や皮肉が飛び出たりします。
だからこその、陰険狐目よばわりなんですよね。男子時代はそこにホモ呼ばわりもついたりつかなかったり。