彼は僕のヒーロー   作:社畜だったきなこ餅

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日間ランキングから離れちゃいましたが、平常運転に戻っただけなので更新します。


39.闘い終わって日が暮れて

 

 

 雄英体育祭一年生の部の決勝戦の興奮が冷めやらぬ中。

 先ほどまで生徒達が力をぶつけ合う舞台であったステージのあった場所に、セメントスが創り出した表彰台が設置されており……。

 1,2,3とそれぞれ数字が振られた表彰台には3人の少年達が立っていた。

 

 3と書かれた台に立つ常闇は腕を組み深く瞑目、まるでこの晴れ舞台に動じてない風に振る舞っているように見せているがどこか誇らしげな様子を隠せておらず。

 2と書かれた台の上に所在なさげに立っている出久は、自分が場違いなのではないかとそわそわしながらも、集まっているクラスメイトの中に見つけた狐白が手を振っているのを見つけて緊張に強張った顔を解きほぐす。

 そして、1と書かれた台の上に太々しく仁王立ちしている勝己は……。

 

 

「実に良い踏み台だったぜお前ら、ありがとう」

 

「てめーざけんな爆豪ー!!」

 

「今からでもいい!もっぺん全力で殴れ緑谷!!」

 

 

 中々にヒールが板についた立ち居振る舞いに、クラスメイトを含めた学生達から激しい非難を飛ばされていた。

 物凄いブーイングに晒されている勝己であるが、むしろその遠吠えが心地よいと言った態度である。

 

 

「まさに傲岸不遜」

 

「か、かっちゃん……テレビにも映るんだからさ……?」

 

「アァン? 俺は勝者、こいつらは敗者!当然だろうが!」

 

 

 どうしたものかこのクラスメイトは、と言わんばかりに常闇は溜息と共に呟き。

 さすがに幼馴染の態度がマズイと思った出久は、一段低い壇上から恐る恐ると言った調子で勝己を窘めるがその言葉は、火に油を注ぐような形にしかならなかった。

 ちなみに勝己と出久双方共に全身のあちらこちらに包帯が巻かれている、余りの消耗にリカバリーガールの治療では逆に危険だと判断されたらしい。

 

 そんな賑やかな少年達の様子にミッドナイトは青春を感じ堪能しつつ、カメラへ向けてウィンクしながら本来ならば3位としてもう一人この場にいるはずの飯田が居ない理由を説明し始めた。

 

 

「3位には常闇くんともう一人、飯田くんがいるんだけど……ちょっとお家の事情で早退になっちゃったので、ご了承下さいな」

 

 

 メディアを意識したミッドナイトの振る舞いに常闇が感銘を受けているのを他所に、出久は彼女の言葉に…試合終了後に自身の携帯に届いていた飯田からのメールに書かれていた内容を思い起こして少しだけ俯く。

 友人からのメールには、彼の兄であるインゲニウムがヴィランに襲われたと書かれていた。

 大事な友人である飯田が敬愛し、ヒーローオタクである自身も応援しているヒーローのインゲニウムの無事を祈りながら出久は俯いていた顔を上げた、その時。

 

 

「メダル授与よ!今年のメダルを授与するのは勿論この人!」

 

 

 顔を上げた出久の視線の先でミッドナイトが大仰な仕草で、その人物を呼び出していた。

 一際大きくなる歓声、それと共に一つの影が会場の屋根から高く飛び上がり轟音と共に降り立つ。

 

 

「私がメダルを持って!」

 

「我らがヒーロー!オールマイトォ!!」

 

 

 そして決め台詞を芸術的なレベルでミッドナイトの言葉に遮られていた。

 無言で悲しそうにミッドナイトへ視線を向けるオールマイト、視線を向けられて申し訳なさそうに両手を合わせるミッドナイト。

 

 少しだけ、締まらない滑り出しなメダル授与式が始まった。

 

 

 気を取り直したオールマイトはカメラが回されている中その逞しい腕でメダルを手に持ち、3位を勝ち取った常闇の健闘を称えると共に。

 力強くハグをしながら、常闇の課題を指摘して今後の彼の更なる飛躍を期待する激励の言葉を贈る。

 

 そして、続いて二位……準優勝を果たした出久の前にオールマイトはメダルを手にして立つと。

 優しく出久の首にメダルをかけながら、彼のもさもさした髪の毛を力強くも優しく撫でて言葉をかける。

 

 

「緑谷少年、見事だったぞ!入学試験の時とは見違えるぐらいに個性を使いこなしていたな!」

 

「僕は、こーちゃんとかに、支えられて、ここにっ……」

 

「だけどここに立てたのは君自身の努力によるものさ!君自身が轟少年に言った言葉だろう? それは君の力さ、自信を持て!!」

 

「っ~~~~! はいっ!!」

 

 

 ボロボロな体の痛みが忘れるほどの高揚感と、認められた充実感が出久の体を駆け巡り。

 少年は耐え切れない涙を目から零しながら、涙声で頷いて応える。

 

 一方その光景を見ていた狐白は……。

 

 

「よかった、よかったねぇいずちゃん……」

 

「玉藻さんが忙しなく尻尾振りながら感激してる」

 

「幼馴染の晴れ舞台に感動しながら、自分が彼の助けになれた事が嬉しくてたまらないって感じですわね」

 

 

 出久の様子にもらい泣きするかのように、その手で目元を覆っていた。

 そんなクラスメイトの様子を、お茶子と八百万は苦笑いしながらも狐白の背中をあやすように撫でる。

 

 そうしている間に、出久へ言葉をかけ終わったオールマイトは今大会の優勝者である勝己の前に立つと、彼の首へメダルをかけながら言葉をかけ始める。

 

 

「個性使用の判断に類まれなるセンス、見事だったぞ爆豪少年!」

 

「……ありがとよ」

 

「だが有言実行で一位を勝ち取ったのはさすがとは言え……試合中含めての発言の数々はヒーロー活動に支障が出るだろうから見直した方が良いかもね!」

 

「っ! う、ぎぎ……はい……」

 

 

 怪我だらけの勝己の負担にかけないよう、優しく彼の肩をオールマイトは叩きながら勝己を称えると共に。

 見てて聞いててハラハラした勝己の言動に、冷や汗を浮かべながら苦言を呈した。

 本来なら他人にこんな事を言われたら、瞬間湯沸かし器がごとく激昂するのが勝己であるも……尊敬するナンバーワンヒーローからの言葉に、勝己は激しく歯軋りしながら苦渋に満ちた表情で頷いた。

 

 

「すげぇ、あのバクゴーに注意して納得させてる」

 

「さすがオールマイトだな……」

 

 

 自分達が口にしたら間違いなく暴れ始める言葉を、オールマイトから言われた事で素直に受け入れた勝己にクラスメイト達は戦慄し。

 改めてナンバーワンヒーローの偉大さを思い知る、彼の普段のヒーロー活動とは全く違う方向で。

 

 そんな少年少女達のひそひそ話を他所にオールマイトは振り返ると、今大会で切磋琢磨した学生達の健闘を称えると共に次代のヒーローはその芽を伸ばしている事を誇らしげに。

 そして高らかに宣言すると共に人差し指を立てながら左腕を高く掲げ、声を張り上げる。

 

 

「最後に一言! 皆さんご唱和ください、せーの!!」

 

「お疲れ様でしたぁ!!」

 

「プルスウルトラ!」

「プルス……?!」

「プルスウル……え?」

 

「そこはプルスウルトラでしょオールマイトォォォ!?」

 

「ああいや、疲れたろうなって思って……」

 

 

 最後の最後が若干締まらなかったが、それでも以上を以って雄英体育祭一年生の部は無事閉幕とあいなった。

 ともあれ体育祭終了後、担任の相澤から翌二日間の休みと休み明けにプロヒーローからの指名についての説明を受けた1-Aの面々は……。

 

 疲れた体に活力を漲らせ、担任が退出した教室の中でわいわいと雑談で盛り上がる。

 

 

「すげぇ試合だったな緑谷!俺も見てて心が熱くなったぜ!」

 

「まさかあそこまでデキるなんてな、今度組手を頼んでもいいか?」

 

「う、うん……ありがとう」

 

 

 砂藤が興奮しながら拳を握りしめて力説し……尾白は格闘技を修めた人間の一人として出久との組手を望む。

 そんな感じに暑苦しい男子生徒の輪の中心に立たされた出久は戸惑いながらも笑みを浮かべており。

 

 一方で勝己の方はと言うと。

 

 

「さすが俺に勝った男だぜ爆豪!」

 

「ハン!この程度俺には造作もねぇよ」

 

 

 歯を剥き出しにしながら満面の笑みを浮かべてバンバンと背中を叩いてくる切島を鬱陶しそうにあしらいながらも、勝己は満更でもない表情を浮かべていた。

 そんな勝己を、出久を痛めつけられた狐白はガルルルと言わんばかりに睨んでおり、そんな少女の様子に気付いた勝己は勝ち誇ったかのように鼻で笑えば。

 

 

「上等だこのクソ煮込み爆発頭ぁぁぁ!!」

 

「アァン!?デクのついでにてめぇも爆破すっぞこの陰険狐目ぇぇぇ!!」

 

 

 シャギャーと言わんばかりに目を吊り上げた狐白が咆哮、そんな少女を嘲笑い勝己は首を掻っ切る仕草をしながら挑発。

 一瞬で勃発した一触即発な空気に、切島は勝己を羽交い絞めして宥め……お茶子と八百万が慌てて狐白を押し留める。

 

 

「……玉藻って、緑谷と爆豪が絡むと物凄い口悪くなるよな」

 

「普段は穏やかでお淑やかな雰囲気なのにな」

 

 

 そんな狐白の様子に戦慄しながら上鳴がぼそりと呟き、瀬呂もまた彼の言葉に同意しながら腕を組んで深く頷く。

 しかし、そんな空気は続いて放たれた勝己の言葉によって雲行きが大きく変わった。

 

 

「おい陰険狐目、多分ここで言わねぇとずっと隠したまんまになるぞ」

 

「……このクソ煮込み爆発頭はほんっとに……そうやって配慮できる感性を何故普段から生かせないんだろうね」

 

 

 勝己の言葉に……彼が出久の幼馴染である事は狐白の事情もまた知っている事を、狐白の事情を聞かされた1-Aの女子陣は悟り。

 同時に出久もまた、勝己が何を言いたいのかを理解して口を開こうとするが、それよりも先に八百万が勝己へ詰め寄る。

 

 

「ちょっと爆豪さん!デリケートな話題なのですから今じゃなくても……!」

 

「今言えねぇと、この陰険狐目は永遠に言えねぇよ。てめーらは知ってるようだけどな」

 

 

 不思議そうにしながら興味深そうに狐白へ視線を向けている、クラスの男子陣の様子に八百万は憤慨しながら勝己の言葉を咎め。

 クラス副委員長の言葉を勝己は鬱陶しそうにしながら、試すような視線を狐白へ送りつつ言葉を放つ。

 

 

「こーちゃん……」

 

「大丈夫だよいずちゃん、業腹だけどそこのヘドロ餡かけクソ煮込み爆発頭の言ってる事は間違ってないから」

 

「ぶっ殺すぞゴルァ!?」

 

 

 心配そうに狐白へ近寄り声をかけてきた出久に、狐白は考え込みながらも勝己の言葉からここがクラスメイトへ告白する絶好の機会だと考える。

 しかし逃げ道を塞がれた事に違いはないので、普段よりも毒舌増しで罵っておく狐白であった。

 

 

「あー……えーっとね、クラスの女子達には先に言っちゃってるんだけどさ」

 

 

 大きく深呼吸し、気まずそうに尻尾を揺らしながら狐白は口を開く。

 若干踏ん切りがつかない感じであったものの、出久がその手を握ってくれた事で勇気が出た狐白は覚悟を決めて言葉を紡いだ。

 

 

「実は僕、中学二年生になった直後に女の子になったんだよね。個性発現と同時に」

 

 

 心配そうにクラスの女子達が見守る中、なるべく重くならないように心掛けつつ狐白は苦笑いと共に紡いだその言葉は。

 事情を知ってる出久と勝己を除いた、1-Aの男子全ての時間を止める衝撃を与えた。

 

 あの轟すらも目を見開いて驚きを露わにしており、思わず彼が無言で出久へ視線を向ければ出久は言葉を発することなくただ頷く事で、視線だけで向けられた疑問を肯定。

 その返答に轟は不思議な事もあるもんだ、とばかりに天井を仰ぐのみだったが……。

 

 それ以外の男子にとってはそれどころではなく。

 隣の教室で雑談に興じていた1-Bの生徒達が心配して様子を見に来る程度に大きな、驚愕の絶叫を上げるのであった。

 

 




Q.かっちゃん何でこのタイミングで言い出したの?嫌がらせ?
A.今回の大会でメディア露出されたし、優勝者である自分と準優勝者であるデクの幼馴染だから変に探られて過去の事情ばらされかねない。
 そこでクラスに露見して揉めるのもうぜーし、少しばかり発破かけたれ。そんな思考が彼の中であった模様。
 解りにくいにも程があるしはた迷惑なツンデレだな!なおツンデレって言うとかっちゃんキレるらしいゾ。


そんなわけで体育祭終わり!閉廷!解散!
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