彼は僕のヒーロー   作:社畜だったきなこ餅

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いつもより早く帰れたので更新します。


40.このご時世においても現実は小説より奇なり

 

 雄英体育祭が終わり雑談に興じていた1-Aの教室内にて、突如ぶちまけられた狐白からの性転換したという衝撃的な告白は。

 男子生徒達の時を確かに止め、ほどなくして彼らの絶叫が教室中を包む。

 

 そしてその中でいち早く我に返った峰田は、机を勢いよく叩いて立ち上がりながら叫んだ。

 

 

「も、モロッコか? モロッコに行って取っちまったのか棒と玉を?!」

 

「い、いや待て峰田!今はタイも有名だ!そっちかもしれない!!」

 

「……落ち着けお前ら、玉藻は言っただろ。個性発現と共に性転換したって」

 

 

 お前自身の大事な相棒になる筈だったお前のリトル玉藻になんて事を!というある意味において峰田らしい叫びに対して、上鳴が驚愕しながらも峰田の叫びに応じるが彼も混乱のさなかにあるのか若干ズレており。

 そんな二人の様子を見かねて、比較的驚愕が浅かった轟が腕を組みながら先ほどの狐白の発言を抜き出し、そう言う事じゃないだろうと溜息を吐いた。

 

 

「モロッコ?タイ? なんのこと?」

 

「え?だって玉藻、お前緑谷好きすぎた結果手術受けたんじゃ……ふべっ」

 

「それ以上はダメよ峰田ちゃん」

 

 

 一方峰田達の叫びが何のことかわかっていない狐白、首を傾げながら彼の発言の意図を尋ね。

 尋ねられた峰田はと言えば、何言ってんのお前と言わんばかりの様子で言葉を紡ぐが最後まで口にする前に、蛙吹が勢いよく伸ばした舌で打ちのめされて沈黙した。

 

 

「え、ええとよ……個性発現したら女になったって事かよ?」

 

「うん、元々僕の個性『稲荷』って一族の女性にしか発現しなかったんだけどさ、それが発現してこうなったってお医者さんには言われたよ」

 

「……個性に体が合わせられた、という事か」

 

 

 白目を剥いて倒れた峰田を横目に見つつ、瀬呂が自分の頭を整理するかのように口にすれば狐白は頷いてその言葉を肯定する。

 異形系個性が発現するまでは一般的だった子供が、個性に目覚めた瞬間姿形が変わったという実例を身をもって経験している障子が重々しく呟く。

 

 

「ついでに、父さんから受け継いだ『修復』の個性も目覚めて今に至ってるというわけさ」

 

「なるほど……玉藻、お前も苦労してたんだな。急に女になって大変だったろ?」

 

「あはは、うん、まぁね」

 

 

 いやー、大変だったよなどと冗談っぽく笑いながら肩を竦める狐白の姿に驚愕の事実を知らされたクラスの男子一同は、何と声を掛けたら良いのかと言った具合の表情を浮かべ。

 その中で砂藤が頬をかきながら、狐白へ気遣いの言葉をかければ狐白は尻尾をゆらりと振ってその言葉を肯定した。

 

 この時声をかけた砂藤は言うまでもなく、他の男子達も突然女性へと変貌した事による性差で狐白が尋常じゃない苦労をしたと思い込んでいた。

 だがそれもやむを得ないであろう、中学二年生男子と言えば女子が気になってしょうがなくなってくる時期、一部のクラスの朴念仁を除けばその苦労は察して余りあるというモノだ。

 しかし、狐白自身は言うほど性転換による性差のギャップによる苦悩は経験していない、無論女性特有の生理現象等には苦労したが……性的興味のギャップには苦しんでいなかった。

 

 実はこの時、狐白は一つだけクラスメイトに明かしていないし出久にも話していない真実を隠していた。

 元々狐白は、狐太郎時代から異性に対して性的興味を抱いたことがなく、男らしいとされる行動や衣服に対しても興味を持ったことが無かったのだが……。

 

 そもそもの根底から違っていたのである、狐太郎という少年は個性の暴走とも言える現象によって性転換したのではなく。

 休眠状態だった『修復』の個性が、遺伝子レベルで正常ではない狐太郎の体を修復し……その体が女性へと変貌した事で結果的に『稲荷』の個性が発現したのだ。

 

 

「女の子になった日はそりゃもう大混乱だったけど、いずちゃんが励ましてくれたからこそ今の僕があるのさ」

 

「なるほど、そりゃ今の仲の良さも納得できるな」

 

 

 そんな隠し事は欠片も出すことなく、柔らかく微笑みながら上機嫌そうに狐白は尻尾を揺らす。

 狐白の言葉になるほど、と呟きつつ緑谷も苦労してるんだなぁと若干ズレた事を尾白は考えながら、ふと一つの案件に気付く。

 明らかにこの二人の普段の様子は、中学二年生から交友が始まったレベルじゃないし。そもそもがそんな事件の時に励ましてもらう関係って事は元々仲が良かったんじゃないか、と。

 

 しかし、そこに踏み込むとそれはそれで何かしらマズイ気がした尾白が躊躇する中。

 

 

「そう言えば玉藻は緑谷と幼馴染だったな、どのぐらい前からの付き合いなんだ?」

 

 

 その辺りの機微に疎い事に定評のある轟が、純粋な疑問として狐白へ質問をぶつけた。

 思わず白目を剥きながら心中で、轟の名を絶叫する尾白であったがその想いは儚くも届かない。

 

 

「あー……言わなきゃ、ダメ?」

 

「悪い、言い辛い事ならいいんだ……そう言う繋がりとか、俺には無かったからな」

 

「あ、でもその辺りアタシ気になるー!」

 

 

 ゆらゆら振っていた尻尾の動きを止め、若干困った様子の表情を浮かべた狐白の様子に轟は若干きまずそうに疑問を引っ込め。

 ふとした拍子に見えた轟の闇の深さにクラスメイト達が戦慄する中、そんな空気を吹き飛ばさんとばかりに芦戸が元気よく手を上げながら質問をぶつけた。尾白は白目を剥いた。

 

 

「んー……いずちゃん、言ってもいい?」

 

「僕は別に構わないけど、かっちゃんが何て言うかなぁ」

 

「アァン?!気にせず話せばいいだろボケが!!」

 

 

 狐白にとっては大事な思い出であると同時に、出久との出会いの始まりでもある為出久へちらりと狐白が視線を向ければ。

 出久は乾いた笑いを浮かべながら、幼馴染の暴虐とも言えるあれやそれを話す事になるからマズイだろうと言外に口にし、その様子をかぎ取った勝己が激発しながら叫んだ。

 

 

「いやぁどの口が言うのさクソ煮込み爆発頭、引っ越ししたての幼稚園児だった僕を複数人で君達がイジメてきたのが切っ掛けだったよね?」

 

「引っ越したての癖に生意気な態度とったてめーが悪いんだろが、知るか」

 

「「「うわぁ……」」」

 

「バクゴー、お前ガキの頃から性根腐ってたんだな」

 

「ぶっ殺すぞアホ面!」

 

 

 尻尾を不機嫌そうに振っている狐白がジト目を向けて勝己へ言葉を放てば、勝己は鼻で笑ってその言葉をあしらい。

 狐白と勝己が毒舌を応酬し合う関係になった一端を知ったクラスメイト達は、ドン引きの声を上げる中。

 思わずぼそりと呟いた上鳴の言葉を、地獄耳で聞き取った勝己が激発しながら咆哮する。

 

 

「まぁクソ煮込み爆発頭の事は置いといて、いじめられて泣いてた僕をいずちゃんが庇ってくれたのが僕達の関係の始まりなのさ」

 

「結局、あの時は僕もかっちゃん達に叩かれて二人一緒に泣いてたけどね」

 

「爆豪……さすがに男らしくねーぜ」

 

「もう過ぎた事だろが!今言われてもどないせっちゅーんじゃボケ!!」

 

「いやぁ、少しは反省と言うか省みるべきじゃねーの?」

 

 

 気が付けば勝己のつるし上げ会場じみた空気になりつつも、思い出を楽しそうに語り終えた狐白はぱんぱんと手を叩いてその空気を打ち払い。

 楽しそうに口の端を吊り上げながら、その口を開いた。

 

 

「まぁまぁ気にしないで皆、その時の落とし前は小学生の時につけてるからさ」

 

「つけられてねーわ陰険狐目!ぶっ殺すぞ!?」

 

「え? 見様見真似で君にかけた……お爺様の必殺技の、絡繰傀儡・獄門くらってピーピー泣いてたじゃん」

 

「泣いてなんかねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 ニヤニヤ笑いながら言い放った言葉に勝己は目を吊り上げて凶悪な表情を浮かべながら叫ぶが、その返事に狐白は口を三日月のようにしながら更に笑みを深くすると。

 勝己にとって忘れ去りたいが忘れてはならない屈辱に満ちた記憶を白日の下に晒し、勝己の貌が今にも殺人を犯しそうなぐらいの凶相へと変わっていく。

 

 ちなみに本来の絡繰傀儡・獄門というのは、相手の四肢を己の個性である『糸操り』で作り出した糸を用いて対象を拘束した上で吊り上げ。

 巧みに糸を操る事で相手の抵抗を無力化しながら、指を含めた四肢をへし折るという残虐極まりない技である。

 無論そんな事を当時小学生だった上に『糸操り』の個性を持たない狐白が行えるわけもなく、糸を荒縄で代用しつつ出久に手伝ってもらって勝己の四肢を縛り上げただけだったりする。

 

 

「あの時は、先生達やお母さんに凄い怒られたよね……」

 

「僕なんてお爺様から拳骨くらったよ、今でもあの痛み覚えてるもん」

 

「爆豪、お前……その、どんまい」

 

「どーんまい」

 

「どーんまい」

 

「優しくすんじゃねぇよ!!つかどんまいコールはてめぇのモンだろうが醤油面ぁ!」

 

 

 わっはっは、と朗らかに笑い合う出久と狐白の様子にクラスメイト達は若干戦慄しつつ。

 逆にこう不憫に思えてきたクラスメイト達は、爆豪を慰めるためのどんまいコールをかけるも……プライドが高い勝己は願い下げだとばかりに咆哮するのであった。

 

 ただ虚仮にされるだけなら勝己は遠慮なく全員ぶちのめす腹積もりであったが、この話になった発端はそもそも自分が言い出した事からおとなしくしていた。

 しかし同時に彼は思う、やっぱりこの陰険狐目は俺の敵だ、と。

 

 残念でもなければ当然な話であった。 

  

 




ごめんよかっちゃん、決して君のアンチヘイトのつもりは欠片もないんだ。
むしろ、お前ら幼馴染3人ともある意味どっこいどっこいじゃねーか、という扱いにクラスメイトからしたから許してほしいのだ……。

本ユニバースでは無個性だった出久と狐白(当時狐太郎)にかっちゃんは遠慮なく突っかかってましたが。
そのたびに撃退されたり、ぶちのめしたり反撃されたりといったトムとジェリーな関係だったりします。
それでも、当時は無個性である二人に対して負けてたまるか!という強い感情でおりましたが……。
個性を得た(?)デクと良い勝負をさせられたり、個性発現と共に性転換した狐白というトンチキ生物に振り回されたりと割と苦労させられてるというか、自分から苦労しょい込んでる感じです。

以上、言い訳と言う名のあとがきでした。
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