彼は僕のヒーロー   作:社畜のきなこ餅

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何か一つ言う事を聞く、のネタを今回やると言ったな?アレは嘘だけど更新します。
思ったよりもキリが良くなったんや、すまぬ。すまぬ……


EX8.かれぼく!Part6

 

 

【休み一日目の朝~出久編~】

 

 

 雄英体育祭の翌日の朝、出久はいつも通りの時間に目覚めてベッドから抜け出すと簡単に身支度を整えてトレーニングウェアへと袖を通しかけ。

 そこでようやく、昨日師匠である幼馴染の祖父母から体を休める為に休日の間は鍛錬を控えるよう言われた事を思い出す。

 

 どうしたものかと壁に掛けられた時計へ視線を向ける出久であるが、時間は未だ早朝の時間帯。

 寝直すにしても身支度を整えた流れの中で眠気も飛んでしまっており、何とも中途半端な状態となっていた。

 

 

「そうだ、体育祭の動画あがってないかな」

 

 

 軽く屈伸運動で体をほぐしながらこれは健康の為の一環で鍛錬じゃないからセーフと自分に言い聞かせつつ、動画を見る事に思い至った出久は長い付き合いの勉強机備え付けの椅子へと腰掛け。

 パソコンを立ち上げると、動画サイトにキーワードを撃ち込んで動画を検索し始める。

 

 

「うわ、凄い色んな動画上がってる……あ、二年生や三年生の人達の動画もある」

 

 

 プロヒーローへの道を駆けあがり始めた上級生たちの動画を出久は目を通し始め、特に三年生のビッグ3と呼ばれる3人の生徒達の動きを出久は食い入るように見入っていく。

 笑顔を絶やさない短く刈り上げた髪型の金髪の3年生は、相手の攻撃を一方的にすり抜けさせたと思った次の瞬間には一撃で対戦相手をKOしており、他の二人も同様にすさまじいパフォーマンスを動画越しに見せつけてくる。

 

 

「他の先輩達も凄いけど、この3人は別格だ……特に通形ミリオさんは司会の人が言うだけあって、凄い……」

 

 

 出久が食い入るように見つめる画面の中では、試合の中で天喰と力を競い合い……際どい攻撃もするりと躱して豪快に笑顔を浮かべる先輩の姿が映っていた。

 次の瞬間彼のズボンがパンツごとずりおちかけて観客席から悲鳴が上がったりしていたが、ソレを差し引いても見事としか言いようのない動きに。

 出久の心は燃え上がり、今からでも鍛錬を始めて自己の力を高めたくなる衝動に駆られてしまう。

 

 

「……ダメだこれ、見てるととにかく走り込みしたくなる。今見ると色んな意味で毒だ」

 

 

 ぐっ、と拳を握り込み椅子から立ち上がろうとして師匠からの言いつけを思い出し、慌てて出久は座り直す。

 ここまで来たら師匠たちに黙って鍛錬をしてしまえば良いという状態であるが、根が素直な出久はまるで誘惑に耐えようとするかのようにその考えを頭を勢いよく振って追い出した。

 

 少年ははたから見ると滑稽かもしれない葛藤を抱えながら、大きく深呼吸して何か違う動画はないかと検索し始めて……一つ気になる動画を見つける。

 動画の名前は、雄英体育祭ハプニング動画と書かれていた。

 

 

「……なんだろ、これ?」

 

 

 純粋な好奇心から動画の再生を始めた出久、しかし彼は程なくして先ほどの心が熱くなる動画を見た時とは別の意味合いで後悔する事となった。

 動画の内容は所謂、放送された映像の中で少しお色気要素が強いハプニングを集めた動画であり……。

 

 動画の中で、体育祭の騎馬戦の終盤で起きた狐白の上着が破れ下着が露わとなってしまったシーンが映っていたからだ。

 

 

「っ……!」

 

 

 強い罪悪感と嫌悪感、そして怒りを感じて出久は動画を閉じると。

 普段の彼からは考えられないほどに、怒りを堪えたかのような表情で動画を通報してからパソコンを閉じてベッドへとその身を投げ出す。

 

 出久の心には幼馴染を愚弄され穢されたかのような感覚がこびり付き、しかし大事な親友が茶化されたというだけにしては説明がつかない感情に何度も何度もベッドの上で寝返りを打つ。

 少年は何となく理由もなく、無性に幼馴染に会いたくなった。

 

 

 

 

【休み一日目の朝~狐白編~】

  

 

 朝日が窓から障子越しに差し込み始めた部屋の中、狐白は狐耳をぴくりと動かすと目覚ましがなるよりも早く布団から身を起こし。

 あくびをしながら大きくその身を伸ばしそらし、寝間着に包まれた大きな乳房を揺らしながら寝ぼけ眼のまま思考を覚醒させていく。

 

 そしていつも通り、幼馴染の少年の早朝マラソンに付き合おうと考えたところで少女は気付く。

 

 

「……ああ、そういえば今日は鍛錬禁止って話だった、いずちゃんもさすがにいないだろうなぁ」

 

 

 尻尾をゆらゆらと揺らしながら少女は自室の中で独り言を呟き、どうしたものかと思案するも。

 起きてしまったものはしょうがないと結論づけ、シャワーを浴びに風呂場へと向かう。

 

 既に彼女の祖父母は彼等の家へと昨晩の内に帰っており、母と二人しか住んでいない早朝の家はいつも通り静かだった。

 その中で狐白はいつものように尻尾をゆらゆらと揺らしながら脱衣場の扉を開け、するりと衣擦れの音を立てながら寝巻を脱ぎ去り……手慣れた所作でブラとパンツを脱いで籠に入れると。

 ふと何かを思い立ち、脱衣場の電気をつけて大きな姿見の前で生まれたままの姿を曝け出した。

 

 

「もう、どこから見ても女の子……だよねぇ」

 

 

 今に始まった話ではないが、それでも狐白はまじまじと己の裸体を見る事に対して、どこかで苦手意識を抱いていた。

 元々男子や女子と言った性差をあまり気にしていなかったとはいえ、幼馴染や母が慣れ親しんだ姿から大きく変貌した事を突きつけられるからだ。

 

 だけど、何となくだが狐白は……クラスメイト達に打ち明けた今、自分自身もこの体に向き合うべきじゃないかと思っていた。

 姿見の中に映る少女の裸体は、目鼻立ちの整った美貌を持つと共にすらりと伸びた染み一つない手足を持っており。

 狐白が右手で自身の豊満な片乳房を持ち上げれば、姿見の中の少女もまた自らの手で大きな……クラスメイトの発育著しい八百万に匹敵する大きさの、大きくも張りがあり柔らかな乳房を持ち上げる。

 

 その所作は少女の口から無意識に短くも甘い声を上げさせ、その官能的な刺激にどこか後ろめたさを感じた狐白は慌てて右手を乳房から離し。

 狐白は姿見の中の少女の、先端にツンと上を向いた桜色の突起がついた豊満な乳房がふるんっと揺れるのを見る。

 

 

「いずちゃん、たまに僕のオッパイに目線向けてるけど……やっぱり大きいのが好きなのかなぁ」

 

 

 誰も聞いていないが故に飛び出た独り言を呟きながら、狐白は両手の掌を乳房の上へと乗せ。

 姿見の中の少女……鏡の向こうの狐白の乳房はふにゅりと音を立てた錯覚を感じさせながら、その形を官能的に変形させる。

 

 

「僕は、いずちゃんが好きだ。それは間違いない」

 

 

 大きく深呼吸した狐白は、考えをまとめる時の幼馴染のように呟きながら右手を姿見へと伸ばし。

 鏡の中から手を伸ばしてきた狐白と、鏡越しにその掌を合わせる。

 

 鏡に映し出された少女の顔は、何かを確信しながらもしかし不安に満ちたかのような表情を浮かべて尻尾をゆらりゆらりと振っている。

 

 

「だけど、その感情は友情?愛情?それとも劣情?」

 

 

 まるで自身が幼馴染へ抱く感情を確認するかのように呟いて、生まれたままの姿の少女は鈴を転がしたかのような可憐な声音で言葉を紡ぐ。

 時折出久が見せる男らしい表情、そして昨日の体育祭で見せつけたその雄々しく逞しい姿を想い出すたびに、狐白の胸は高鳴り臍の下あたりが強く疼く。

 

 だがそれでも、狐白は自身が幼馴染に抱く感情が何か……自分自身でも明確な言葉を紡ぎ出す事が出来ず。

 少女は大きく溜息を吐くと姿見から視線を外し、風呂場へと入っていった。

 

 少女は何となく理由もなく、無性に幼馴染に会いたくなった。

 

 

 

 

【休み一日目の昼~勝己編~】

 

 

 寝起きの爆発したかのような髪形の少年が、親の仇を見るように鏡を見ながら乱暴に歯ブラシで歯を磨いている。

 まるで、欠片も残さず菌を駆逐せんとばかりの勢いで。

 

 

「死ねぇ!クソ菌がぁ!!」

 

「昼に起きてきて叫ばないで!」

 

 

 爆豪家は割と平和であったし、勝己は特に幼馴染たちに会いたいとも思っていなかった。




幼馴染三者三様な朝の一時(一人だけ昼)でした。
出久くんと狐白の、複雑ながらもどかしい感情を出せていたらいいなぁ。

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