【開業 玉藻マッサージ】
これはとある日の放課後の出来事である。
「んんっ……とても有意義な授業を受けれている事に不満はないのですけれども、やはり肩が凝りますわね」
「ヤオモモはおっきいもんねー!アタシも結構難儀してるしさー!」
「嫌味かおのれら」
腕を伸ばして背筋を逸らしながら八百万が呟いた言葉に、芦戸がひょっこりと覗き込むような姿勢を取りながら同意を示す。
クラスの中でも発育が良好な女子二人にとって、自身がぶら下げている大きなお胸は割と難儀な存在でもあるのだ。
なおもたざるもの代表である耳郎は、そんな二人の言葉に歯軋りしながら呪詛の言葉を呟いている。
ちなみに珍しく静かな峰田は何をしているかと言うと、八百万が体を逸らした瞬間たゆんっと揺れた胸の映像を脳内へ刻み込む為にガン見する事に忙しいようだ。
「玉藻さんも、その……大変だったりしません?」
「え? んーー……僕は修復の個性のおかげでそう言うのとは割と無縁なんだよね」
「え、なにそれずるい!?」
そして同じように大きな胸を持つ狐白へ八百万が同意を求めるような言葉を向ければ、狐白は困ったように首を傾げ尻尾を揺らしながらこの言葉である。
まさかのインチキじみた個性の使い方に、思わず芦戸が作画崩壊しながら叫んだのも無理はないだろう。
「ずるいって言われてもなぁ……コレ個性の訓練になるし、普段ちょっと多めにご飯食べておけば何とでもなるからねぇ」
「うぅ、自身の個性に誇りを持っている身ですけども正直羨ましいですわ……」
ずるいーずるいーと騒ぐ芦戸が狐白の肩を掴み、がっくんがっくんと揺らす中少女はのほほんとした様子で言葉を返し。
揺らされている狐白の胸をこれまた血走らせた目でガン見していた峰田を、出久が無表情で視線を向けている中……。
トホホ、と言わんばかりの表情で八百万は悲しそうに呟いた。
「あ、じゃあマッサージしようか? 個性の訓練として女性プロヒーローの人達にもやったんだけど、評判良かったし」
「え、ええと……お願いしますわ」
何の気なしに放たれた狐白の言葉、女性プロヒーローにも認められたその手腕に八百万は期待しながら頷くと。
ほんじゃあ始めようかと呑気に狐白は言葉を発し、八百万もマッサージを受けるべくマットレスを創り出すと教室の床に引いて寝そべり始める。
担任の相澤が見たら苦言の一つも言い出しかねないが、そもそも彼自身が寝袋にしょっちゅう教室で包まってるので五十歩百歩である。
【血行促進肩こり腰痛にも効く玉藻マッサージ】
「ふわぁぁぁぁぁ…………」
「八百万さん、肩の筋から背筋にかけてのこりが酷いね」
「家でもマッサージは受けてる筈ですのにぃぃぃ……」
「筋や姿勢がそうなり易いクセがついちゃってるかもしれないね」
マットレスにうつ伏せになり、その豊満なヤオヨロっぱいの形をふにゅりと変形させた姿勢でマッサージを受けている八百万。
彼女は今、顔を蕩けさせながら狐白の手によって修復を用いながらのマッサージを施される度に、身体と一緒に解されたかのような声を漏らしている。
そんな美少女である八百万の背中に跨り、ブレザーを脱ぎ袖を捲ったこれまた胸の大きな美少女である狐白がマッサージをしているのだ。
控えめに言って性少年達にとって、中々に目の毒であった。
「あんまり一気にやっても悪影響出ちゃうからこのぐらいで終わらせるけど、どうだった?」
「ふぁぁ、素敵でしたわぁ……」
良い仕事をしたとばかりに額を腕で拭う狐白と対照的に、八百万はマットレスに突っ伏してこのまま溶けてしまいそうなほどにしつつも。
クラスメイト達の前だという事を思い出すと慌てて起き上がり、軽く肩を回したり体を動かして自身の体が驚くほど軽くなっている事に気付く。
「……玉藻さん、お幾らほど支払えばよろしいでしょうか?」
「いやいや、お金なんて取らないよ」
「何を仰いますか!これは安売りして良いモノじゃないですよ玉藻さん!」
そして真顔で八百万が狐白へ問えば、友達だからそんな事気にしないで良いとばかりに狐白は手を振り。
そんな友人の様子に、八百万は興奮気味に詰め寄りながら自身が受けたマッサージがいかに素晴らしかったかを力説し始める。
ちなみに雄英体育祭の後の職場体験で狐白を指名したプロヒーローの内、女性ヒーローの目的は訓練施設で施術された狐白のマッサージ目当てだったりする。
ともあれ、施術から今に至るまでの八百万の様子から狐白のマッサージの効力が本物だと確信した女子陣。
よく見ると八百万の肌もツヤツヤしている所から、これは受けないとだめだと思考した後は行動が早かった。
「つ、つぎうちも!」
「アタシもーー!」
「た、玉藻さん。うちもいい……?」
「オイラもオイラも!是非ともそのやわらかきつねっぱいで……カヒュッ」
「ちょっと峰田ちゃ……あら? 峰田ちゃんが急に白目剥いて倒れちゃったけど、緑谷ちゃん何か知ってるかしら?」
「あ、ほんとだ……不思議だね。なんでだろ」
殺到と言う表現が相応しい勢いで1-A女子達が狐白に群がり、女子達に狐白がもみくちゃにされていく中。
どさくさに紛れて自分もと飛び込もうとした峰田の背後に、表情と気配を消した出久が忍び寄り一撃でその意識を刈り取った。
そして一歩遅れて峰田に気付いた蛙吹が峰田を咎めようとするが、その時には既に峰田は白目を剥いて全身を痙攣させながら床に伏せており。
彼女は丁度近くにいた出久へ何か知らないか問いかけるも、問いかけられた出久は透明と評するに相応しい笑顔でシラを切るのであった。
余談であるが、偶然にも出久が峰田の意識を刈り取る所作の一部始終を目撃した常闇は目を見開いて驚愕し。
「あの動きは……まさか緑谷は暗殺拳の使い手だとでも言うのか……?!」
勝手に勘違いした上に、意味深な事を呟きながら戦慄していた。
【玉藻マッサージ 特別コース】
「いやー、思った以上に大事になっちゃったよいずちゃん」
「しょうがないよこーちゃん、実際いつもマッサージしてもらってる僕も君以上のマッサージ師は知らないしさ」
最寄りの駅で二人並んで降車し、共に家路につく出久と狐白。
二人の話題は、放課後に教室で開始する事となった狐白のマッサージについてが主となっていた。
「だけどさ、訓練施設でひたすらやったおかげかマッサージぐらいだとそんなに消耗しなくなったんだよね。腕も上がったしさ」
肝心の戦闘能力にはあまり関係してないんだけどね、と困ったように笑う狐白の横顔を見ながら出久は少女に釣られるように笑い。
雄英体育祭の後の休日の一件から、今までよりも近くなり今も繋いだ手から伝わる少女の温もりに決意を固めながら口を開く。
「その、さ。大丈夫だよこーちゃん、君は僕が守るから」
「…………もう、いずちゃんはさーそうやってさー。急にドキッとする事言うから困るよまったく」
少年の言葉に狐白は狐耳をピンと立てて驚き、すぐに耳をへにゃりと倒すと尻尾を忙しなくばさばさと振り。
顔を赤くして照れながらも、出久と繋いだ手を強く握り返した。
共に歩く中唐突に訪れた心地よくもこそばゆく感じる沈黙、その沈黙を破ったのは照れ隠し気味に口を開いた狐白であった。
「そ、そうだいずちゃん!最近やってなかったしさ、今日はいずちゃん家でマッサージしてあげるよ!」
「え、あ、うん……お願いしてもいいかな? こーちゃん」
突然の幼馴染の言葉に出久はドキリとしながらも、少女の申し出を受けていつも別れる道で別れる事なく二人並んで出久の家へと向かい始め。
程なく到着した幼馴染の家にて、出久の母に歓迎されつつ彼の部屋にあがって健全なマッサージを出久へ施すのであった。
ちなみに出久は、狐白の吐息や自身の体に時折触れる少女の柔らかな胸の感触やら濃密に感じる狐白の香りに、ぎりぎりの瀬戸際で耐え抜いたらしい。
信じられるか?これでこの二人まだ付き合っていないんだぜ。
それと、18禁版について活動報告に詳細書いております。