彼は僕のヒーロー   作:社畜だったきなこ餅

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仕事で心ささくれだちこんな時間ですが更新します。


EX10.かれぼく!Part8

 

 

【狐白の休日の姿~狐太郎編~】

 

 

 これはまだ、狐白が狐太郎だった頃の話。

 中学一年生の夏休みの朝、いつものように少年は鼻歌交じりに朝食の支度をしていた。

 

 

「ふぁぁぁ……おはよー、こたろー」

 

「おはよう母さん、また徹夜したんだね……」

 

「デザインがおおづめになっててねー」

 

 

 寝ぼけ眼でふらふらと食卓につく母親の姿に少年は苦笑いを浮かべながら、温めたての味噌汁や湯気を立てる白米。

 それに卵焼きや焼き魚に漬物と言った、和の朝ご飯と言った様子の食事をテーブルへ並べるとエプロンを外して自身も食卓につく。

 

 

「あー、生き返る……これでまた頑張れるわ」

 

「徹夜するのもいいけどさ、しっかり休憩はとってよね母さん」

 

「わかってるって、狐太郎は心配性ね」

 

 

 愛息子手作りの味噌汁を啜り、へたれていた狐耳尻尾に活力を漲らせる母親の様子に少年は苦笑いを浮かべつつ、自身で漬けた沢庵を一口齧って満足な仕上がりに一人笑みを浮かべる。

 学校がある平日ならば多少慌ただしい朝であるものの、学生の特権と言える夏休みの最中にある狐太郎はのんびりと朝食を楽しんでおり……。

 そんな息子の様子に狐太郎の母は口元を綻ばせつつ、息子が相変わらずセンスがあるとはお世辞にも言えない恰好をしている事に小さく溜息を吐いた。

 

 

「ところでさ狐太郎、そのTシャツ一体どこで買ったの……?」

 

「え? この前買い物に行ったときに大安売りしてたから、サイズも丁度だったから適当に買ったんだけど」

 

 

 焼き魚を綺麗に食しながら狐太郎は母親の言葉にきょとんとした表情を浮かべ、親の贔屓目抜きにしても美少年と言うに相応しい息子の壊滅的なセンスに母の糺狐は頭を抱えた。

 何故ならば、愛息子がエプロンの下につけていたTシャツは……見事な達筆で『大往生』と書かれているのみのTシャツに、いつも穿いているジーパンと言った状態だったからだ。

 

 ジーパンはまぁ良いにしても、そのTシャツはどうなんだと言いたくなる母親。更に言えばデザイナーという職で培った美的感覚的にちょっとどうかと思う代物である。

 しかしそんな母親の苦悩など欠片も知る由はない息子はと言うと、今日も一緒に出掛ける予定にある幼馴染の少年……出久とのヒーローイベント巡りに想いを馳せている状態であったとさ。

 

 

 

 

【狐白の休日の姿~女の子初年度編~】

 

 

 狐太郎が女体化し狐白となった年の夏休みの朝。

 今日も今日とて、狐白は狐尻尾をゆらゆら振りながら少年だった頃から欠かさず続けている朝食の支度をしていた。

 

 

「おはよう狐白、いつもありがとね」

 

「気にしないで母さん、昨日炊いた厚揚げが良い感じに仕上がってるけど食べる?」

 

「勿論よ」

 

 

 娘の言葉に母である糺狐は上機嫌そうに尻尾を揺らしながら、娘へ大盛でねなどとお願いすれば。

 狐白は二つ返事で深めの器に厚揚げをたっぷりと盛り、甘辛く炊いた厚揚げとのバランスを考慮して若干塩辛く仕上げただし巻き卵を、お皿へと盛り付けていく。

 無論、彼女の母が好きな味噌汁もしっかり完備しているのは言うまでもない。

 

 

「そう言えば母さん、ちょっと良い?」

 

「どうしたの?」

 

「今日いずちゃんとヒーローイベント巡りに出かけるんだけどさ、着ていく服のアドバイスもらってもいいかな?」

 

 

 男子時代はとんと目を向ける事が無かった娘の言葉に、母は狐耳をピンと立てて思わず娘の顔を凝視してしまい。

 母の様子に狐白はどこか恥ずかしそうにしながら、ゆらゆらと狐尻尾を振っている。

 

 ちなみに狐白はまだ、ニーソックスとサイハイソックスの区別がついていない程度にファッション初心者である。

 そんな彼女の現在の恰好は、大きな胸を内側から押し上げるゆったりとしたシャツにタイトパンツと言った動き易さ重視のような姿をしている。

 スカートが恥ずかしいというワケではないそうだが、ヒラヒラする感覚がどこか落ち着かないらしい。

 

 

「っ! ええ、勿論よ!徹底的に可愛く仕上げてあげるわね!」

 

「え、ええと少しは手加減してね母さん。この前みたいにリボンやらヒラヒラ満載なのはさすがに嫌だからね!?」

 

 

 息子が娘となって混乱したのは母である糺狐も同様あったが、それでも狐太郎から狐白となった娘は今でも大事な一人娘である。

 故にこそ自身の力を以って全身全霊のコーディネイトをすると豪語してみせたのだが、この前ソレでゴスロリな恰好をさせられた記憶が真新しい狐白は顔をこわばらせながら母へ叫ぶのであった。

 

 なおこの日はゴスロリじゃなく、甘ロリ仕様にコーディネイトされたらしい。

 

 

 

 

【狐白の休日の姿~女の子二年目編~】

 

 

 中学三年生の冬休みの朝。

 その日もまた狐白は台所にて、鼻歌なんかを口ずさみながら上機嫌に尻尾をゆらゆらと振って朝食の支度をしていた。

 

 

「うぅしゃぶいしゃぶい……狐白ー、今日の朝ご飯は何ー?」

 

「おはよう母さん、今日は銀鱈の煮付けだよ」

 

 

 いつもの寝巻の上に半纏を着込んだ狐白の母こと糺狐が小刻みに狐耳を動かしつつ食卓へつけば。

 狐白は慣れた手付きで先ほど説明した煮付けを含めた朝食を並べていく、なお今日の白菜の漬物は狐白曰く会心の出来らしい。

 

 

「いつもごめんね狐白」

 

「何言ってるのさ母さん、母さんは仕事で大変なんだし家事の分担は当然でしょ?」

 

 

 味噌汁を一口すすり、味が良く沁みており口の中でホロホロと溶けるように崩れていく煮付けに糺狐は舌鼓を打ちつつ、朝食を含めた様々な家事をお願いしてしまっている娘に申し訳なさそう表情を浮かべ。

 たまに出てくる母からの謝罪に、狐白はいつものように気にしないでと言いつつ自身も朝食を口へと運んでいく。

 

 ちなみに玉藻家の台所の配置や仕様は、母である糺狐はあんまり把握できていないらしい。

 

 

「それよりさ母さん、ちょっとお願いがあるんだけどいい?」

 

「勿論よ狐白、何かしら?」

 

「えっと、その……化粧を、教えてもらいたいんだ」

 

 

 互いに食卓を挟んで向かい合い朝食を摂る母と娘。

 その中で娘である狐白がどこか遠慮がちに、狐耳を忙しなくぴこぴこと動かしながら糺狐へ相談すると母親は食事の手を止めて娘へ視線を送り。

 次の瞬間、対面に座る娘から放たれた言葉に目を見開いて驚愕、手に持っていた茶碗を危うく落としかけた。

 

 なお、狐白の現在の恰好は上にタートルネックのニットセーターを着用し、下はゆったりとしたロングスカートを穿いていた。

 もはや女性らしい格好に抵抗らしい抵抗を見せていない様子であるが、それでも今まで手を出そうとしていなかった化粧へ興味を示し始めた事に母の糺狐は笑みを浮かべる。

 

 

「ええ良いわよ、やっぱり出久君関係かしら?」

 

「う、うん……今日はいずちゃんの特訓が降雪でお休みになってさ、折角だからヒーロー達がチャリティーで参加してる雪祭に行くことになったんだ」

 

 

 いずちゃんに恥かかせたくないからね、などと言い訳がましく言葉を続ける娘の様子に。

 母は目の前の娘が割と幼馴染の少年に、心底ゾッコンである事を悟るのであった。

 

 余談であるがこの日初めて、薄くであるが化粧をして現れた幼馴染の姿に出久は心底仰天したのは言うまでもないどころか。

 新たに幼馴染の……かつて少年だった少女の魅力に気付き、色々と悶々した気持ちを抱えて二人で雪祭を見て回る事になったらしい。

 

 

 

 

【糺狐の完全オフの日の姿~娘が居ない平日のお昼ご飯編~】

 

 

 狐耳尻尾を持つ美女が一人、台所にてコンロに載せたヤカンの前で瞑目し腕を組んで立っている。

 彼女の傍らにはデカい油揚げが売りな即席カップうどんが蓋を半ばまで開いた状態で置かれており……ヤカンが甲高い音と共にお湯が沸いたことを女性へ報せた次の瞬間。

 

 女性こと糺狐はクワっと目を開くと、ヤカンを手に取って蓋を開いたカップうどんへお湯を注いでその上に割りばしを置いて重しにすると。

 気持ち上機嫌そうな様子で食卓へとカップうどんを置いて、きっちり三分間待ってから蓋を取ってその中身を幸せそうに啜り始める。

 

 玉藻糺狐、3X歳の未亡人。

 割とデザイナー界隈では男性からアプローチをかけられる事もある亡き夫一筋の美女は、一人娘が手塩にかけて作ってくれる食事も勿論大好きであるけども。

 たまにこうやって食べるカップ麺やジャンクフードも大好きな、一人にすると食生活が乱れる事間違いなしな女性であった。




ちなみに狐白は放っておくとカップ麺やらその手のモノばかり食べようとする母親対策として、時々母の隠し備蓄を暴いては栄養バランスを考えた食事の必要性を説かれたりしてるそうです。
決してメシマズでもないし料理が出来ないワケでもないけど、自分一人で食べる分には適当でいいじゃない。そんな女性。
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