やっぱり更新中断はやりたくなかったので、何とか更新しました。
今回は設定だけあった玉藻家関係の話を主軸にしております、オリキャラ関係オンリーと言うある意味地雷話。
それと、絵師様に依頼していた春服狐白のイラストが仕上がりました
【挿絵表示】
【今昔玉藻家昔話~母が家を飛び出たワケ編~】
とある地方のとある立派な邸宅の一室の中から、今日も二人の女性が激しく言い争う声が響いている。
主に激しく騒ぎ立てているのは地元のセーラー服に身を包んだ、白銀色の長い髪を持ち狐耳と尻尾を生やした少女の方で。
少女と卓袱台を挟んで向かい合っている、着物を着用し正座している結い上げた銀色の髪に血のような赤い一房の髪が生えている女性は、娘である少女へ言い聞かせるように口を開く。
「何度も我儘を言うものではありませんよ糺狐、貴方の進路も伴侶も私と旦那様が決めてあげると言っているでしょうに」
「それが嫌だって言ってるのが何でわからないのよお母様! 私は行きたい道を往くし、自分で選んだ人を好きになりたいって言ってるでしょ!?」
中学卒業を控えた娘が突然、都会の学校へ行きたいと言い出した事から始まった母子の会話。
母である血桜は一貫してこれが娘の為だと信じている、昔から決められている一族の中から選ばれた許嫁の男子と娘を結婚させ……。
娘には本家直系の娘として、この家で健やかに心乱される事無く過ごしてもらおうと思っていた。
その中で、娘が望むならば彼女が好む裁縫や服飾について出来る限り便宜を図ろうと思っていたのに、真っ向から反抗されてどうしたものかと言った状態の血桜である。
「そもそも都会の学校と言ったって、今更この時期から受験できる高校なんてたかが知れているでしょうに。そもそも私が保護者としての許可を出すと思っているのですか?」
「ふんっ!その辺りはとっくにお父様に手伝ってもらって終わらせてあるわよ」
「……何ですって?」
何を突然麻疹にかかったかのように言い出したのかしらこの娘はなどと思っていた血桜であるが、娘が放った言葉に思い付きの行動ではないと血桜は判断すると同時に。
娘の共犯者である夫を、控えていた侍女へ呼んでくるように話すと佇まいを直して娘へと向き直る。
結論から先に言うなれば、娘は早い段階から血桜の夫を味方につけており県外の高校を受験しており……更には引っ越しまで手はずを整えた上で、母親である血桜へ話を持ち掛けた事が判明した。
いざここまで来てしまっているのなれば、母である血桜に留める手立てはなく内心で臍を噛む思いをしながら、娘の進路を認めざるを得ない状態であった。
【今昔玉藻家昔話~祖母と祖父の馴れ初め編~】
時の流れを遡り、時代はヴィランが大手を振って闊歩していた暴力が尊ばれた時代。
いつものように一族の女性を誘拐しようとしていたヴィランに、殺生石血桜は血脂で汚れた刃を振るっていた。
「ひ、ひぃ!やめてくれ!投降する、投降するから!」
先ほどまで人質を取っていた事で強気に出ていたヴィランであったが、その腕には既に商品兼肉盾の人質は確保されておらず。
血桜に刀で斬られ血を流すヴィランは、態度を一変して必死に命乞いを始めていた。しかし。
「そうは言われましてもねぇ、貴方は何度も一族の乙女を攫っては売り飛ばしたでしょう?」
「う、売り先も全て吐く!だから、だから……!!」
「ああ結構ですよ、すでにもう売られた女性の命がない事は把握しておりますから」
返り血に塗れた可憐な顔に、まるでこれから花畑へピクニックに行くような花開いたかのような笑顔を血桜は浮かべながら。
音もなく踏み込むと共に、己の個性である血刃で切れ味が落ちる事のない刃を薄く愛刀に展開しながらヴィランの太い腕を斬り飛ばした。
ヴィランは腕を斬り飛ばされたショックと激痛によって、絶叫を上げる。
だが血桜はそれだけにとどまることなく、笑顔を浮かべたまま身を翻してヴィランの首を斬り飛ばすべく刃を振るい。
後一歩で刃がヴィランの首へ届く瞬間に、何かに強制的に留められたかのようにその動きを停止させた。
楽しみの絶頂に居たというのに、ヴィランのみならず自分すらも糸で無理やり絡めとるような無粋な真似をしてきたのは誰かと、血桜が不機嫌そうに視線を後ろへ向ければ。
「殺生石の、やり過ぎだ。殺しをやるとまた公安が鬱陶しく探りを入れてくるだろうが」
「あらら本家の御方、されどもケジメは大事ではありませぬか?」
「そこは否定しねえがよう、だったらなんでお前さんはそんなに楽しそうに人を斬ってるんだい?」
血桜の背後から現れた、伸ばしっぱなしのザンバラ髪を適当に後ろで一本にまとめた目付きの鋭い男が両手から細い鋼の糸を伸ばして、ヴィランと血桜両名の動きを縛り押しとどめていた。
自身は家の役目として始末をつけようとしてるだけだと主張するものの、男は忌々しそうに公安の名を出しつつ己の個性で男の腕の根元を縛り上げて無理やり止血し、その上で男が暴れられないよう糸で雁字搦めにしていく。
「第一コイツは公安に入り込んだ輩の目星つける為に殺すなって言われてただろうが」
「ああ、そう言えばそうでしたわねぇ」
雁字搦めに縛られたまま激痛に絶叫を上げているヴィランへ、男は羽虫を見るかのような視線を向けながら血桜に対して嫌味を飛ばすも。
嫌味を飛ばされた本人はそう言えばそうでしたなどと呑気に呟くものだから、男は毒気を抜かれて溜息を吐きながら血桜の拘束を解く。
「そんなんだからお前さんは、公安やらヴィラン連中から『鮮血夜叉』なんぞと呼ばれてるんだよ」
「あらら、それは随分と仰々しいですわよねぇ」
男は半目で血桜を睨んで吐き捨てるように呟きながら、縛り上げた男を乱暴に蹴り上げて強制的にその意識を刈り取り。
片腕を失くした男を肩に担ぎ上げると、心底忌々しそうな目を担いだ男へ向けながら歩き始める。
混迷を極めていたこの時代は、未だ人の命というものが良くも悪くも軽い時代であった。
【今昔玉藻家昔話~祖母と祖父の押し問答(物理)編~】
草木も眠る丑三つ時、空には雲一つない夜空に満月が浮かんでいる中。
刀を携えた狐耳尻尾の女性の前に、身体のあちこちに包帯を巻きつけた目付きの鋭い男性が立ち塞がっていた。
「本家の御方、そこを退いて頂けないでしょうか?」
「断る」
鯉口を鳴らして女性……血桜は立ち塞がった男性を強く威嚇するが、男性は頑として譲らない。
事の次第はどういうことかと言えば、斬れば斬るほど血に酔い狂乱状態へと陥る己の獣性を血桜は堪え切れなくなったことが関係しており。
それならばいっそ強大な勢力を誇るヴィランの根城に切り込み、命を落とすまで切り続ければ良いという結論に血桜が至ってしまった事が原因である。
「後生でございます、私は人を斬らずにはいられない化生です。一族や仲間を傷付けたくないのです」
「なるほど立派な心構えだ、だがソレを聞かされては猶更退いてやるわけにゃいかねぇな」
満月だけが二人を見ている舞台で、目付きの鋭い男が両手から鋼の糸をゆっくりと伸ばしながら構えを取る。
その男の様子に血桜は、男が命を落としてでも自分を止めるつもりなのだと理解して愛刀を鞘から引き抜いた。
「ならば、押し通らせて頂きます」
「来いよ、お前さんが満足するまで一緒に踊ってやるからよ」
互いに短く言葉を交わし、血桜が一足の踏み込みで男へ迫る事で戦いの火ぶたが切られた。
血桜はまるで自身の腕の延長戦であるかのように愛刀を振るい、立ち塞がった男の四肢や首を刎ね飛ばそうと手加減も抜きにその刃を閃かせる。
一方で立ち塞がっている男もただ斬られるばかりではなく、糸を勢いよく射出して自身へ迫る白刃をぎりぎり当たらない程度に逸らした上で糸で血桜を拘束せんと指を動かす。
男の行動を読んでいた血桜は速やかに刀を引き戻し、舞うように後方へ宙返りしながら男が放った鋼糸を全て躱して距離を取る。
人が瞬きする間に起きた一瞬の攻防、だが血桜の口にはまるで三日月のような弧状に歪んだ笑みを象っていた。
やがて血桜の思考は、この強く逞しい男の血を見てみたいという歪んだ思考へと至り……。
二人の演舞にも似た闘いは、最終的に血桜の刀を鋼糸で弾き飛ばした目付きの鋭い男に軍配が上がるのであった。
三つ目の殺し愛については、作者の気力とバトル展開パワー不足により尻切れトンボになりました。
本当に申し訳ない……。