彼は僕のヒーロー   作:社畜だったきなこ餅

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毎日更新がとうとう止まってしまいましたが更新します。
少しばかりじゃないぐらい難産でしたが、早くお届けしたかったので……。


後、仕事でむしゃくしゃした心を癒す為に狐白のイラストを3枚絵師さんに依頼出しました。
マイクロビキニ、レオタード、バニースーツ(うさみみとうさ尻尾なし)の三本です。
後悔は、していない。


46.職場体験二日目

 

 

 職場体験と言う名の雄英高校保健室に狐白が詰め始めてから二日目。

 その日も狐白は保健室にてリカバリーガールから講義を受けながら、駆け込んでくる生徒達への治療の対応をしつつ。

 今頃幼馴染の出久は、職場体験先でどんな風に頑張っているかなぁなどと考えていた。

 

 医療現場とは異なり、高校の保健室だという事もあってどこかのんびりした空気で体験へ挑んでいる狐白であったが。

 リカバリーガールから持ち掛けられた言葉に、狐耳をピンと立てて彼女の言葉を聞き返す事となる。

 

 

「病院への応援対応に同行、ですか?」

 

「ああ、とある重傷を負ったプロヒーローへの治療を頼まれてね……」

 

 

 時刻はお昼前、二人で椅子に座ってお茶を啜りながらの会話である。

 現在リカバリーガールは雄英高校の保険医として勤めてるとはいえ、彼女の治療の腕を求める声は絶える事は無く。

 故にこそ雄英高校で実技講習がない日を使って、学校を通して依頼される治療活動への対応をしているのだ。

 

 

「どんな症状なのですか?」

 

「職務中にヴィランに襲われ、下半身不随の状態さね。処置が後一歩でも遅かったら命を落としてたそうだよ」

 

 

 狐白がリカバリーガールへ問いかければ、老婆は届けられた資料へ目を通しながら嘆息と共に質問に答え。

 患者が体力を著しく消耗している今の状態で、自身が治療を施したら逆に殺しかねない状況に行っても何もできないだろうとリカバリーガールは考えつつ。

 同時に、職場体験としてこの場にいる狐白を伴えば、もしかすると治せるかもしれないとも考えて……患者の容態や情報が記された資料へ目と通している少女へと視線を向ける。

 

 ヒーロー活動や医療活動に従事するには、当然であるが国の許可である免許が必要なのは言うまでもなく。

 しかしその中で、職場体験という枠組みの中で自身の監督の下狐白に治療を手伝わせるというやり方ならば、法の範囲に抵触しないであろうともリカバリーガールの思考は至ると。

 視線を向けられて不思議そうに首を傾げていた狐白へ、一つ提案を持ち掛けた。

 

 

「正直今回の症状や状況ではあたしでも治してやることは出来ない。だけど薬師稲荷、あんたが居るならば治せる見込みがある話だ」

 

「……断る理由はないんですけど、それって法律的に大丈夫なんですか?」

 

 

 リカバリーガールからの話に狐白は少し考えながらも、資料に記載されていた名前もあって前向きな姿勢を見せる。

 ヒーロー名インゲニウム、そして飯田と言う名字からクラスメイトであり友人である飯田の兄である事を狐白は推察し、だからこそ断る理由はないと少女は口にする。

 しかし同時に狐白の懸念として、職場体験中の学生という身でそのような行動が赦されるのかどうかという疑問があった。

 

 個性社会と化した昨今において、個性の使用が厳しく制限されるのは言うまでもないからだ。

 

 しかし同時に、個性によってもその制限内容は大きく変化する事もある。

 例えば体の部位を3点地面へ接地すれば高速で滑る事が出来る個性を往来で使用すれば、警官やヒーローに捕まるほどのことはないにせよ警告は受けるし。

 仮に勝己が急いでいるからと言って、爆風で市街地を高速飛行すれば即座にヒーローに捕獲される事だろう。

 

 これらの事案に共通しているのは、社会への影響が大きいか否か……そして周囲への被害が出るか否かという部分によって、大きく左右されているという事である。

 極論を言えば狐白が普段からやっているマッサージも、営利活動として行おうとした場合は相応の免許証等が必要となるし。

 ましてや、個性を用いた救命措置を行うとなれば相応の知識を修めた事の証明となる、医師免許に準じた非常に難易度の高い免許を要求される場合もあるのだ。

 

 

「……中学生時代に八木を治療したり、普段から緑谷を献身的に治療してるあんたがソレ言うのかい?」

 

「……確かに」

 

 

 そんな社会事情はさておき、リカバリーガールが呆れたような視線を狐白へ向ければ、少女は気まずそうに尻尾を指先で弄って視線を逸らしている。

 老獪なリカバリーガールは少女の様子から、この娘は法律ギリギリを理解して行動しているのだと理解して大きく溜息を吐くと、今はそこを追求するときではないと思考を切り替える。

 

 

「まぁあんたが心配してるような事はないさね」

 

「じゃあ……お願いします、友達の家族ってのもありますけど。得難い経験になると思いますから」

 

「そこで友達の為と素直に言わないのがあんたらしいねぇ、ともあれ先方には連絡しておくよ」

 

 

 リカバリーガールが法律的に問題ない事を話せば、狐白は特に反対する事もなく尻尾をゆらゆらと振りながら了承の意を示せば……。

 老婆は慣れた手付きで保健室に備え付けられた情報端末を操作すると、彼女へ治療の依頼を打診してきた病院へと職場体験中の学生を一名同行させる旨をメールで伝えた。

 

 

「さて、それじゃあ今日は戦闘に巻き込まれた際の心構えと動き方でも、座学で教えるとしようかね」

 

「お願いします」

 

 

 治療を生徒が受けに来たら中断するがね、と前置きしつつリカバリーガールは椅子に座ったまま狐白へ向き直り。

 老婆からの言葉に、狐白は姿勢を直して話を聞く体勢を取る。

 

 

「まず一番念頭に置かないといけない事は、あたしらのような立ち位置のヒーローは救助活動中特にヴィランに狙われ易いという事さ。なんでかわかるかい?」

 

「要救助対象が足手まといになるのと、個性が攻撃に向いていないから……ですか?」

 

「凡そそんな感じさね、中には自分の戦果である傷付けた一般市民を治されて腹立たしいって理由で救助中に襲われた事もあったからねぇ」

 

「控え目に言って、クソ野郎ですね」

 

 

 自身の経験談からくる注意点をリカバリーガールが語り、問題を狐白へ出せば問題を出された少女は少し考えながらも回答する。

 狐白の回答は凡そ当たっていたようでリカバリーガールが満足そうに頷きながら、補足として説明を付け加えれば……狐白は眉根を顰めて不快そうに呟いた。

 

 

「ヴィランの行動原理を把握するのは大事だけど無理に理解する必要はないよ、過激な思想を持ってるヴィランの思想に引きずられるヒーローも中にはいるからねぇ」

 

「そう言えばお婆様に聞いた事があります、昔あった異能解放戦線の思想に感化されてヴィランに転んだヒーローも少なくないって……」

 

「あの時代は今よりも異形系個性や一部の個性への偏見や迫害が酷かったからねぇ、おっといけない。話がズレちゃったねぇ」

 

 

 ヴィランについて学ぶのは良いが、理解をしてはいけないとリカバリーガールは念押ししつつお茶を啜って口の中を潤し。

 改めて立ち回りについての講義を始める。

 

 

「まず大きな前提として単独行動をとらない事と、治療活動中はどうしても周囲への警戒が疎かになりがちだから……」

 

 

 リカバリーガールの講義は都度都度狐白が質問をしたりしつつ進み。

 マンツーマンで進んでいたその講義は、リカバリーガールが病院へ送ったメールの返信が届いた音で中断する事となる。

 

 

 なお、届いた返信メールには生徒の同行についても色好い返事が記されていた事により。

 翌日、狐白はリカバリーガールと共に重症患者の治療へ赴く事となるのであった。

 

 




いつもより短いけど、切が良いからこんな感じで!
ちなみに医療系個性についての免許云々は捏造です。
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