彼は僕のヒーロー   作:社畜だったきなこ餅

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本編の方は色々と間に合わなかったので、短編集を急いで仕上げて更新します。



EX12.かれぼく!Part10

EX11.かれぼく!Part9

 

 

【雄英体育祭後の休日二日目~二人の朝編~】

 

 

 雄英体育祭が大盛況に終わった日の翌々日。

 ほぼ同じ時刻に、二人の男女は違う場所にいながらもまるで示し合わせたかのように、鏡の前で身支度を整えている。

 

 

「やっぱりもっと固めた方が……いやでも、変にバキバキにしても似合うかどうか怪しいし……うぅぅぅん……」

 

「出久ー?そんなにめかしこんでどうしたのー?」

 

「ななな、何でもないよお母さん!」

 

 

 鏡の前で神妙な顔をしている少年は、いつも適当に直しているもじゃもじゃ頭に櫛を通しながら色んな角度で髪形をチェックしており。

 多少マシになったとはいえ、いつものような癖を見せつけてくる己の髪をワックスでガチガチに固めるべきか否か逡巡しながらも、しかし変に気取って幼馴染を気遣わせるのも嫌だと考えてブツブツと鏡の前で呟いている。

 

 そして出久がファッション性に富んでいるクラスメイトの上鳴に、メールでアドバイス求めるべきかとまで考え始めた瞬間背後から不思議そうな様子で覗き込んできた母に声をかけられ。

 出久は口から心臓が飛び出るほど仰天しつつ、不信感しか与えられない程に狼狽しながら母親に弁明した。

 

 一方で、同時刻めかし込んでいた少女の方はと言うと……。

 

 

「うーーーん……変な所ないよね、うん。ああでもこっちの方がいずちゃんの趣味かなぁ?」

 

 

 下着姿で様々な服を自身の体に当てながら、自室の姿見の前で尻尾をゆーらゆーらと揺らして悩んでいた。

 暖かくなってきた事だしノースリーブのキャミソールにすべきかとまで少女は考え、いやしかしさすがにソレは攻めすぎではないかとも考えて頭を抱える。

 

 その後も少女は悩み続け、自室の入口からそっと隠れて覗き込んでる母の視線に気づく事なくあーでもないこーでもないと考え込んだ末に。

 白地のブラウスに緑色のスカートを合わせ、上着に桜色のカーディガンを羽織り足に黒のニーソックスを履いて……姿見の前でくるっと回って自分の姿を確認、これで行こうと結論づけるのであった。

 

 そんな娘の姿に、隠れて様子を窺っていた母親は大往生と書かれたTシャツを平気で着用していた頃からの、我が子のセンスの進歩にそっと嬉し涙を拭っていたのは内緒である。

 

 

 

 

【雄英体育祭後の休日二日目~二人の待ち合わせ編~】

 

 

 出久と狐白が何故、どこかぎこちなくもおめかしをしていたのか。

 ソレは前日に海浜公園で共に語り合った時に、折角の二日休みだからどこかへ出かけようと話した事が発端となっているのだが……。

 

 待ち合わせの場所として、二人の出会いの場であり大事な思い出の場所である公園にほぼ同じタイミングで足を踏み込んだ二人は、互いが互いを意識して少々余裕がない状態になっていた。

 

 

「い、いずちゃん早いね。来るの」

 

「こ、こーちゃんこそ……」

 

 

 現在時刻は11時、ちなみに待ち合わせ時刻は11時半である。

 見事なまでに二人とも予定の時間よりもきっかり30分ほど早く待ち合わせの場所に来た結果、まさかの二人同時に30分前同時合流という有様である。

 

 そして出久は、可愛らしくも清楚な印象を見る者へ与える装いに身を包んだ狐白の姿に思わず見惚れてしまい。

 狐白もまた、普段のやぼったい印象とは異なり身なりを整えてきた出久の姿に、頬が熱くなるのを感じながら尻尾をぱたぱたと振り始めている。

 

 ちなみにこの二人はまだ、互いに告白をしていないし付き合ってもいない。

 

 

「そ、その似合ってるし凄い可愛いよ。こーちゃん」

 

「っ~~~! え、えへへ、ありがとねいずちゃん。いずちゃんもかっこいいよ」

 

 

 顔が熱くなる感覚に胸の高鳴りが抑えられない狐白が手に持った手提げ鞄の持ち手を手先で弄ぶ中、少女は自身の耳に届いた出久の言葉……狐耳をピンと立てるとすぐにへにゃりと倒し……尻尾が勢いよく振られ始める。

 そんな狐白の仕草に、どこか胸の奥が熱くなるようなしかしこそばゆいような奇妙な感覚、そこに畳みかけられた少女の言葉に出久もまた顔を真っ赤にして顔を背けた。

 

 なおこれでもこの二人はまだ、互いに告白をしていないし付き合ってもいなければ懇ろにもなっていない。

 

 

「じゃ、じゃあいこっか」

 

「う、うん」

 

 

 胸の高鳴りやら何やらを深呼吸して狐白は鎮めると、未だ頬を赤らめながら出久と自然な仕草で手を繋ぎ。

 出久は狐白の手の柔らかさと、少女の手から伝わる体温にドキドキしながら握り返して共に歩き始める。

 

 

 

 

【雄英体育祭後の休日二日目~手作り弁当編~】

 

 

 二人が手を繋ぎ、向かうのは海浜公園。

 かつてはゴミの漂着場であった其の場所は、今や恋人同士の憩いの場となっていた。

 

 そんな場所に、道中雄英体育祭をテレビで見ていた市民から冷やかされたり二人の仲を応援されたりしつつ二人が到着して目撃したものが何かと言うと。

 

 

「……恋人っぽい人達がたくさんいるね、いずちゃん」

 

「そうだねこーちゃん、オールマ……じゃなくて八木さんも言ってたけど、まさか本当だったなんて」

 

 

 昨日は色々といっぱいいっぱいだった事で見落としていたが、少し目を向ければ互いに寄り添いあってるカップルがチラホラと見受けられるその光景。

 自分達もそんな風に見えているのかな、などと一瞬考えた出久は無意識の内に繋いだままの狐白の手を強く握り、その力に気付いた狐白ははにかむと出久へ語り掛ける。

 

 

「いずちゃんは凄いね、あれだけあったゴミを片付けて。皆の笑顔を取り戻したんだよ」

 

「僕の力だけじゃないよこーちゃん、八木さんやこーちゃんに応援してもらったから出来たんだからさ」

 

 

 出久の成し遂げた事を笑顔で褒めてくれた幼馴染の言葉に出久は目を見開き、反射的に自分だけの功績ではないと呟くも。

 それでも成したのは君なんだよ、と力強く告げてきた幼馴染の言葉に出久は照れ臭そうに笑みを浮かべる。

 

 そして二人は、前日に二人で色々と語り合った隠れスポットへと足を運び。

 先客がいない事にホッとしつつ、二人で寄り添い合うようにベンチへと腰掛けると……狐白が持って来た手提げ鞄から、二つの弁当箱を取り出した。

 

 

「ほら、いずちゃんの分だよ」

 

「あ、ありがとうこーちゃん」

 

 

 尻尾を上機嫌そうに揺らしながら、満面の笑みを浮かべて弁当箱を手渡してきた少女の姿に出久は生唾を飲み込みながら受け取る。

 緑谷出久、この歳になってようやく……初めて受け取った女子の手作り弁当である。

 

 僕とこーちゃんはそんな関係じゃないと必死に自分に言い聞かせながら、しかし勘違いしてしまいそうな自分にもやもやした気持ちを感じながら出久は弁当箱の包みを開き。

 その蓋を開ければ、彩り豊かな弁当箱の中身に短く歓声を上げた。

 

 

「その、本当にいいの?」

 

「いいも何も、いずちゃんの為に作ってきたんだから食べてもらわないと困るかなぁ」

 

 

 思わずそんな事を隣に座り、反応を楽しそうに見ていた狐白へ問いかける出久であるが、問われた当の本人は困ったかのように微笑んで尻尾を揺らすのみ。

 そんな少女の仕草にまた出久は胸を高鳴らせつつ、箸を受け取ってからいただきますと両手を合わせ。

 

 箸で卵焼きを摘まむと、口へと運んでゆっくりと味わうように咀嚼していき……ソレを飲み込んでからは、箸を止める事無く弁当の中身を綺麗に平らげていき。

 時折喉を詰まらせかけて、慌てて狐白が水筒からコップへ注いだお茶を受け取って飲み込む。

 

 

 月並みな言い方であるが、幸せの味というモノを出久はこの時噛み締めており。

 狐白もまた、自身が作った弁当を幸せそうに幼馴染が食べてくれる事に、心からの幸せを感じていた。

 

 




これでもまだ、告白してないから二人は恋人同士じゃないらしい。
でも間違いなく出久から狐白に好意は向いてるし、狐白から出久へ愛情は向いている。
そんな両片想い状態。

ちなみに本来は食後の食休み編で、出久へ膝枕するシーン入れる予定だったのですが。
もうそれやったら、このユニバースの出久君だと告白しちゃうよねってなって、オミットしたのは内緒です。

※闇深プロットの名残がありましたが、感想にて苦情頂きましたので処分しました。
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