お騒がせして申し訳ありませんでした(前回の削除したあとがき含め)
そして、絵師の二ノ前先生に依頼していたレオタ狐白が仕上がり申した。
【挿絵表示】
きっと、出久が女性ヒーロー的レオタード姿が好きだと知った狐白が着用したのは良いけども。
いざ出久の前でお披露目したら、恥ずかしくてしょうがないとかそんな感じです。
クラスメイト達と駅でわかれ新幹線にて揺られる事45分間。
出久は今、オールマイトから手渡されたメモを見ながら
「オールマイトすら恐れるヒーローで、師匠達の戦友だったらしい『グラントリノ』。きっと凄い人に違いない!」
ぶつぶつと呟きながら駅から歩く事しばし、期待に胸を高鳴らせる出久の前に見えてきたのは。
明らかに老朽化が進んでおり窓ガラスもあちこちが割れている、控えめに言ってもぼろくそとしか表現できない建物であった。
「凄いに人に違い、ない……」
あまりの建物の惨状に渡された住所を見間違えたのではないかと手元へ視線を落とすも、間違いなく目の前の建物が目的地であると出久は理解すると。
呼び鈴もない為、鍵がかかっていない玄関を恐る恐る開きながら中へ向かって声を出す。
だが、そこで少年が目の当たりにしたのは惨劇の光景であった。
マントを着けた小柄な老人が、真っ赤な液体の上に倒れ伏していたのだから。
余りの光景に出久はその目を見開き、絶叫を上げた。
「あ、ああああ、死んでるぅぅ!?」
「生きとる!!」
「生きてる!?」
そしてその惨劇の光景は非常に紛らわしい事に、出久の勘違いであった。
その後明らかに痴呆入っているとしか思えない、素っ頓狂なやり取りを老人と繰り返した出久は埒が明かないと判断し。
老人ことグラントリノを出久へ紹介したオールマイトに、現状を報告しようと一旦あいまいな表情を浮かべて退出しようとするが……。
「撃ってきなさいよ、ワンフォーオール」
出久も気付かない内に彼が手に提げていたコスチューム入りのケースを、いつの間にか開いていたグラントリノの言葉に出久は背筋に氷柱を突き入れられたかのような寒気を感じると共に。
咄嗟に半身を引いてケースを開きしゃがんだままの姿勢を取っているグラントリノへ向かって、構えを取った。
「思った以上に良い反応するが、どの程度扱えるのか見てやろうじゃないか」
とぼけた表情を自身へ向けてくるグラントリノから視線を外すことなく、出久は言葉に出すことなく自身を叱咤する。
そもそもが、オールマイトをあそこまで怯えさせるのみならず……幼馴染の祖父母であり自分の師匠である二人の戦友が、一筋縄でいくわけないじゃないかと。
「あの人でなし夫婦の愛弟子なだけはあるなぁ良いツラするじゃないか」
油断なく己を見てくる出久の表情に、グラントリノはにぃと口角を吊り上げて獰猛な笑みを少年へ向けて。
出久にコスチュームへ着替えるよう促し、少年は言葉もなく頷くとケースに同梱されていた説明書を確認しながら着用していく。
戦闘訓練で大破してからサポート科に預けていたソレは、デザインが変更されつつ一部に出久の要望が盛り込まれた改造が施されており。
各所にプロテクターが取り付けられたジャンプスーツを身に纏い、胴丸の肩鎧……大袖と呼ばれる部位のような装甲を腕へ着けてグラントリノへ向き合う。
「よろしく、お願いします」
「随分と俊典っぽいコスだな、それに腕は玉藻のヤツの入れ知恵か?」
「オールマイトは僕の憧れで理想ですから……あ、はい。師匠から刃物対策に着けておけって」
「なるほどな、じゃあ始めようか……受精卵小僧」
そうグラントリノが口にした瞬間、つい先ほどまで浮かべていた惚けた空気が雲散霧消すると共に……老人の姿が弾かれたように出久の視界から消え失せ。
次に出久の耳に飛び込んできた激しく何かが跳ね回る音に 出久は咄嗟にワンフォーオールを起動すると共に感覚が導くままに体を反転、背中から飛び蹴りをぶち込もうとしていたグラントリノの一撃を腕で弾き逸らす事に成功する。
ギリギリで反応をして見せた出久に、思った以上に仕上がっている事にグラントリノは内心で感嘆しながらも。
出久がワンフォーオールを発動させた瞬間の動作の流れと、現状の彼が持つ致命的な弱点に気付く。
だからこそ、老人は情け容赦なくそこを攻め立てていく。
「ほらほらどうしたぁ!見てから反応するようじゃぁ、追いつけないぞぉ!!」
「ぐっ、ぅぅ! 早過ぎる……?!」
出久が自身の体にしみ込ませた型からワンフォーオールを放とうとするところを空かし、動作を終えた出久へ容赦ない一撃をグラントリノは加えていく。
出久の致命的な弱点、ソレは……。
「そ、こだぁぁぁ!!……ぐぅっ!」
「良い反応だ、だが固くてまだ意識がチグハグだ」
繰り返し撃ち込まれていくグラントリノの一撃から、自身の死角を執拗に攻め立ててきている事を出久は分析。
そして次に攻撃を撃ち込まれようとした瞬間、幾度も繰り返してきた構えを取り正拳突きにてグラントリノを迎撃しようとした出久であったが。
その一撃はグラントリノの姿を捉える事は無く、フェイントによって出久の致命的な隙を創り出したグラントリノは出久の顔を掴みながら少年を床へと叩きつけるように押し倒し……。
受け身が取れない出久の後頭部が床へ叩きつけられる直前で其の動きを止めた。
「だから、こうなる」
言葉短く告げられたその言葉に、出久はグラントリノの力量を悟ると共に。
もしこれが実戦であったなら、自分は為す術もなく倒されていたという事を理解した。
「絶対捕まえたと思ったのに……」
「確かに良い動きだった、だが決められた動作でしか発動できないという事はそこを付け込まれる隙になる」
悔しげにつぶやく出久の頭を掴んでいた手を離したグラントリノは、少年の呟きに対して先ほどの手合わせの所感を述べ始める。
「それに気付いてるかどうかは知らんが、お前はワンフォーオールを使う時はここぞという時にだけ発動しておる」
「それは……」
「オールマイトへの憧れと責任感、それに早く力を着けなければいけないという焦りがお前の足枷になっとる」
グラントリノの言葉に出久の目が大きく見開き、その様子に図星かと呟くと老人は溜息を吐いた。
コレはあの人でなし夫婦に一言言ってやらんといかんななどと老人は思う中、出久は思考する。
オールマイトの期待と願いを託された責任、そして大事な幼馴染を守りたいという決意が自分の重荷になっているのかと。
だがすぐにその弱気な思考を頭を振って出久は思考から追い出すと、立ち上がり自分に背を向けたグラントリノへ向かって口を開く。
「どうすれば……?」
「お前はワンフォーオールを特別に考えすぎている、突き詰めて考えればソレは単なる『力』だ。ソレをどう扱うかはお前自身で考えろ」
出久の問いかけに顔だけ向けてグラントリノは告げると、飯を買ってくるから掃除しておけと言い残して扉を開いて出て行った。
一人残された形になる出久は、肩を落として老人を見送ると……弱気になった自分の頬を叩いて気合を入れ直し、指示された掃除へと取り掛かる。
激しくグラントリノが飛び回った事で、元々ボロボロだった室内はさらに傷付いておりどうしたものかと少年は考えつつも。
掃除の手を止める事無く思考を巡らせて、自分の足りないところを模索していく。
「動きが硬くて意識がちぐはぐ……決められた動作でしか発動していない……」
体育祭前に師匠である幼馴染の祖父から叩き込まれた格闘技の動作、そして何度も繰り返してきた正拳突きの動作。
それらとワンフォーオールを組み合わせる事は、今の出久にとっては苦にならない作業である。
しかし闘いと言うモノはソレだけで片を付けられるかと言えば、未だ道の途上にある出久には難しいと言わざるを得ないのが現状。
ならばどうすべきかと考えて護りたいと願う幼馴染の顔と姿を思い浮かべたその瞬間、少年の思考に一つの閃きが駆け抜けていく。
ヒントになったのは、『修復』の個性を常時発動している事で肩こりや細かい怪我とは無縁だと笑っていた幼馴染の言葉であった。
「そうか、そうだよ……『個性』は体の一部なんだ。もっとフラットにワンフォーオールを考えて……!」
今までの特訓、そして鍛錬で得た経験と知識が出久の中で一つの形に結実していく。
全身へのワンフォーオールの漲らせ方や維持は、師匠達や幼馴染との特訓によって体に染み付いていた、故に残るはソレを実践するのみ。
そして……。
その日の夜、出久はワンフォーオールを全身に漲らせたまま短時間であるが建物と建物の間を三角飛びで駆け上がり、その身一つでグラントリノが住む建物の屋上へと駆け上がる事に成功した。
Q.なんでグラントリノが狐白の祖父母を人でなし呼ばわりしてるの?
A.隙あらばヴィランの無力化と言う名目で腕や脚をへし折ったり斬り飛ばそうとする戦友が人でなしじゃなくて、何を人でなしと言うのだろうか。
というわけで、原作とは少し状況の変わった出久君サイドのお話です。
割と反応速度も良いし動きも良いんだけど、奇しくも体に染み付かせた武術の型+ワンフォーオール発動という一連のやり方が、彼の中でパターン化してしまっていたという状態でした。
ソレに気付いたグラントリノは、荒療治気味に気付かせつつ更に彼を伸ばす為に叩きのめした形になります。