彼は僕のヒーロー   作:社畜だったきなこ餅

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日常&日常&少し不穏な短編集!


EX14.かれぼく!Part12

 

【救助訓練レースがあった日の放課後の一幕】

 

 

 さぁ一緒に帰ろうと言ったところで、オールマイトから少し話があるという事で出久が連れていかれた狐白。

 そんな少女は今、何人ものクラスメイトが雑談に興じている1-Aの教室にて級友と言葉を交わしていた。

 

 

「まぁ、じゃあとうとう緑谷さんと玉藻さん、告白しあったのですか?!」

 

「うん、えへへー」

 

「幸せオーラが滲み出るどころか溢れ出てるね……」

 

 

 職場体験から明らかに距離が近くなった出久と狐白。

 そんな二人に対して好奇心を隠し切れなかった八百万は、恐る恐る狐白へ尋ねてみれば……返って来たのは互いに大好きだと告げ合ったという報告であった。

 今も尻尾をばっさばっさと上機嫌そうに激しく振っている狐白の様子に、耳郎は若干呆れながらも応援するかのように笑みを浮かべている。

 

 

「ねぇねぇ玉藻さん! やっぱりその、デートとかするのかな?」

 

「そうだねー、うん、明日のお休みは二人でどこかへお出かけしたいなって思ってるよ」

 

「きゃーだいたーん!」

 

 

 そんな狐白の様子に、お茶子がその目にわくわくとした輝きを宿しながら狐白へ問いかけており。

 はにかみながらも更なる関係進展を狙うかのような少女の言葉に、葉隠が宙に浮かぶ己の袖をぶんぶん振りながら色恋沙汰を全力で応援していた。

 

 一方、離れたところで聞いていた男子組。

 

 

「まじか緑谷、まじか……」

 

「アイツ、とうとうあの芳醇な果実をその手に収めたというのか……!」

 

 

 瀬呂が茫然と呟き、上鳴がこぶしを握り締め悔しそうに静かな嘆きを上げる。

 狐白が元男だとは知っているものの、しかし女性の姿しか知らない男子にとっては純粋に羨ましい話なのであった。

 ちなみに二人とも狐白を狙っていたワケではないが、されどもクラスメイトが美少女と付き合う事になったという事実を妬ましいと感じる感性は持ち合わせていた。

 

 

「だけど緑谷も思い切ったよな、あいつは玉藻が男子だった頃から知ってるんだろ?」

 

「不思議でもなんでもねーよ、デクは陰険狐目が男だった頃からチョコ渡されて満更でもないツラしてたしな」

 

「マジかよ緑谷、ちょっと俺尊敬するわ」

 

 

 切島が呑気なれども率直な意見を口にする、見た目が美少女とはいえ元々が男子だった頃からの付き合いがある相手を、自分はそう言う目で見れないと思ったからだ。

 だがそんな切島の言葉を、帰り支度を進めていた勝己がいつものように不機嫌そうな様子で吐き捨てるように応じれば、切島は目を見開いて今この場に居ない出久を少しだけリスペクトする。

 

 

「……なー口田、ちょっと、ちょっとだけでいいからさ。あの二人のデートの時にお前のフレンズの力で邪魔してくんね?」

 

「藪から棒に何を言ってるのかね峰田君!口田君も困ってるだろう!?」

 

 

 なお峰田は、感情が抜け落ちたかのような顔で口田の腰をぽんぽんと叩きながら強く懇願しており。

 鬼気迫るクラスメイトの様子におろおろとしている口田へ助け舟を出しながら、飯田は眼鏡を指で押し上げカクカクとした動きで峰田へ注意を飛ばすのであった。

 

 

 

 

【彼と彼女の帰り道】

 

 

 職場体験後の授業が終わり、出久がオールマイトから巨悪オールフォーワンとの因縁を語られた日の放課後。

 いつものように飯田とお茶子も交えた4人で途中まで一緒に帰り、最寄りの駅で二人並んで列車へと座る出久と狐白。

 その間もずっと出久の顔は、何か考え込んだような昏い顔をしており友人や幼馴染からの呼びかけもどこか上の空な様子で聞いていた。

 

 

「体育祭直後は色々話しかけられて大変だったけど、最近は落ち着いてきたよねいずちゃん」

 

「うん、そうだねこーちゃん」

 

「折角だし明日どこかに遊びに行かない?またお弁当作るからさ」

 

「そうだね、こーちゃん……あいたぁっ!?」

 

 

 電車に揺られ、隣に座っている出久の腕に自らの腕を絡ませて密着しながら言葉をかける狐白。

 そして、上の空で空返事する出久。

 二人になっても相変わらずな状態の出久の様子に狐白の機嫌は急降下、腕を絡めている出久の腕を軽く抓ってアピールする始末である。

 

 

「あいたたた、何するのさこーちゃん」

 

「話しかけても空返事してたのはいずちゃんでしょ?」

 

「うっ、ご、ごめん……ちょっと考え事してて」

 

 

 抓られた腕を擦りながら狐白へ抗議する出久、抗議された狐白はむくれながら出久の抗議を真っ向から迎撃。

 言われてみれば心当たりがある状態だった出久は、言葉を詰まらせながら幼馴染へ謝れば狐白はしょうがないなぁなどと言いながら、尻尾をゆらりと振って出久を許す。

 

 一方その頃、同じ車両にいた人々は衆目の中であるにもかかわらずイチャ付き倒す二人の様子に、口の中が酷く甘ったるく感じていた。

 

 そんな具合に糖分を振りまきながらいつもの駅で二人は降りると、肩を寄せ合って家路を歩いていく。

 一旦は幼馴染との会話を楽しみ優先する事を選んだ出久であったが、しかしその心の奥にはオールマイトから告げられた言葉が今も燻っていた。

 

 個性黎明期から生き続けてきた化け物と呼ぶに相応しい巨悪、オールフォーワンとの闘いを宿命づけられたワンフォーオールを受け継いだ者の使命。

 託され受け継いだことを出久は欠片も後悔はしていない、だがしかし幼馴染の少女も巻き込むのではないかと言う想いと恐怖がどうしても出久から離れなかったのだ。

 

 

「いずちゃん」

 

「どうしたの? こーちゃん」

 

「いずちゃんの悩みは、僕にも言えない事なの?」

 

「っ……! ……うん」

 

 

 腕を絡め尻尾を上機嫌そうに振りながら歩く狐白からの問いかけに、出久は内心を見透かされたような錯覚を感じ。

 それでも逡巡しながら、小さく頷けば狐白は寂しそうに笑みをうかべながらも、小さくそっかーとだけ呟く。

 

 

「何時かは、話してくれるよね?」

 

「うん、いつになるか約束できないけど……」

 

「ならそれでいいよ」

 

 

 柔らかな微笑みを浮かべた狐白が絡めた腕に力をこめ、歩きにくくない程度に密着しながら紡いだ言葉に。

 出久は応じるように絡めた腕に力をこめて、頷き寄り添うのであった。

 

 

 

 

【闇に蠢くモノ達】

 

 

 どこかの都市のビルの中。

 モニタから照らし出される灯り以外は、照明と呼べるモノなどない部屋の中に二つの人影が灯りに照らされて朧げな輪郭を部屋の中に表す。

 

 

「ヒーロー殺し、捕まるとは思わなかったが概ね想定通りだ」

 

 

 革張りの椅子に座り、全身にチューブを繋げたスーツを着た男が満足げに呟き。

 朗々と歌い上げるかのように、様々な人間がヴィラン連合へ集まるであろう事を喜ぶ。

 

 

「死柄木弔は、集まったヴィラン達を統括しなければならない立場となる」

 

「出来るかねあの子供に、ワシは先生が前に出た方が事が進むと思うが……」

 

 

 椅子に座る男の背後から、豊かな髭を蓄えた白衣を着た老人が声をかけ。

 そんな老人に対して、スーツの男は。

 

 

「ハハ、では早く体を治してくれよドクター。まぁドクターが確保してきてくれた『修復』の個性のおかげで、多少マシにはなったけどね」

 

「『超再生』が微妙だったからのう、運よくヴィラン犯罪に巻き込まれて死んだ男が良い個性を持っておったのでな」

 

 

 先生にそう言ってもらえたなら、手間をかけてあの連中の目を盗んで死体をすり替えた甲斐があったよなどと、老人は頬を綻ばせて笑う。

 

 

「『稲荷』の連中か、忌々しい連中だよ本当に……手段を選ばないあいつらの耳と鼻は、厄介極まりないからね」

 

「ワシも機を誤ったら見つかっておったからなぁ、そのせいで死体の鮮度が落ちて脳無に出来なんだ事が悔やまれるわい」

 

「あの個性の持ち主が脳無になってたら弔も楽だっただろうがね、まぁ甘やかしすぎるのも良くないさ」

 

 

 それに、代わりになる存在の当てはあるからねという言葉と共に、スーツの男はモニタに一人の少女の姿を映し出す。

 その少女は狐のような耳と尻尾と、セミロングに伸ばした白銀色の髪を持っていた。

 

 

「目撃した一般市民が流してくれた情報を基に、この娘が僕の体を治す手立てになる事は勿論。弔が次の『僕』になる為にも便利な手駒になる事が分かったからね」

 

「病院関係からは情報引っ張れなかった事が悔しいがのう、まぁ市民共も自分達が好奇心で広めた噂が先生の力になるなら喜ぶだろうよ」

 

 

 暗い部屋の中に、社会の歪みを生み出した根源とその根源が持つ漆黒の意思に魅せられた老人の笑い声が響く。

 闇は深くて暗く、未だに照らし暴かれる気配はなかった。

 

 

「オールマイト、そしてヒーロー達よ……今の内に謳歌するといいさ。仮初の平和をね」

 




病院関係はリカバリーガールが先手を打って、自分の名前をフルに使って緘口令を敷いてました。
だけども、担ぎ込まれたデク君をがむしゃらに直した狐白を目撃していた一般市民が、軽い気持ちでSNSに書き込んだ結果先生達に目を付けられました。
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