どこまで甘味料をぶち込むか悩んだり、PUBGにはまったり、リムワールドにはまったり。
デビルマンクライベイビーを通してみて二次創作を書きたくなる衝動をおさえつつ、投稿します。
職場体験が終わった週の日曜日の朝。
集合住宅の中にある緑谷家の洗面所にて、出久は今真剣な顔つきで鏡へと向かい合っていた。
今までも何度か少女となった狐白と二人きりで遊びに出かける事はあり、そのたびに気合を入れて身嗜みを整えていた少年なのであるが。
明確に互いに好意を伝え合って初めてのお出かけ、言ってみれば出久にとって人生初デートと言える今日この日。
何が何でも失敗するわけにはいかないと、気合を入れすぎて腕にワンフォーオールが漲っている事の証である雷光を纏わせながら櫛を自身の癖っ毛へ差し込んでいく。
「上鳴君から聞いたお洒落によるとむしろ気合を入れすぎて服やら髪型が滑るのはNG、失敗出来ないからこそ完璧を狙わずに多少の失敗はリカバリ出来る範囲でびしっと極める……」
ブツブツと呟きながら髪を整え、クラスメイトである上鳴に頼み込んだ結果教えてもらったお洒落のコツを繰り返し言葉にしながら。
最近散髪に行くたびに直してもらおうとしているが一向に癖っ毛が収まる気配のない、自身のモジャモジャ髪に溜息を漏らして結局いつも通り軽くワックスで髪を整える形に落ち着いた。
だが髪を整えて終わりではなく、準備に時間がかかるであろうことを見越していた出久は予め余裕を持って準備時間を見積もっており。
様々な角度から自分の髪型等に変な所がないか確認するという念の入れようである。
もしこの場に彼を良く知る幼馴染、勝己がいたならば……お前は初デートに出かける乙女か何かかコラ、などと言うキレの良いツッコミが飛んだことは間違いない有様である。
「……よし!」
髪型等の準備が完了した出久は小さく満足げに声を出すと、昨日の夜の内に準備した着替えるべく自室へと歩を進め。
一人息子が洗面所から居なくなったところで、ひょっこりと出久の母である引子が顔を出した。
どうやら一人息子の念入りに念入りを重ねたおめかしが気になって、仕方がなかったらしい。
そんなこんなで、気合を入れつつもパリッとし過ぎない恰好で自宅から出撃した出久。
彼の脳裏に、出久からの事細かな男の身嗜みについて質問を受けてげんなりした表情を浮かべた上鳴が最後にアドバイスをくれた言葉が蘇る。
むしろお前ら互いの事良く知ってんだからやり過ぎは逆効果だろ、というかモゲロ。という暖かい言葉が。
何のかんの言って請われればアドバイスを与える辺り、上鳴も中々にお人好しと言えよう。彼女は居ないが。
「あれ、また同じタイミングだねいずちゃん」
「あ、あはは……そうだねこーちゃん」
到着した目的地である待ち合わせ場所の公園、そこにいたのは待ち合わせ相手である狐耳と尻尾を持つ少女こと狐白。
ちなみに待ち合わせ時刻ジャスト一時間前である、ここまでくると時間厳守にした上で待ち合わせるべきなのだが、その事を指摘する親切な人物はここには存在しないのである。
「今日もかっこいいね、いずちゃん」
「こ……こーちゃんも、凄い可愛いよ。ワンピースも凄い似合ってる」
「ふふ、ありがとう」
上機嫌そうに尻尾をゆらゆらと振りながら、バスケットを片手に提げてもう片方の腕で幼馴染の腕に絡みつきながら狐白ははにかみながら言葉を紡ぎ。
少女の体温と感触、そして甘く香る匂いに少年はドキリとしながら、きょどりながらも少女の恰好を褒める。
狐白の恰好は、暖かくなってきた事もあるのか若草色のワンピースを身に纏っており。
少女の特徴的な大きな白銀色の狐尻尾や狐耳ともあいまって、どこか初夏の草原を駆け抜ける爽やかな風を想起させる装いであった。
「そ、それじゃあ行こうかこーちゃん」
「うん、どこに行く? 結局昨日の夜の電話じゃ決まらなかったもんね」
「商店街行こうよ、大人気だったオールマイトグッズの再販が今日やるらしいからさ!」
「ほんと、オールマイトが好きだよねぇ。いずちゃん」
腕から感じる狐白の豊満な乳房の感触にどぎまぎしながら、欲望を理性でねじ伏せて出久はゆっくりと足を踏み出し。
狐白はいつも通りな、しかし頬を赤らめている幼馴染の様子にクスリと笑みを浮かべ、尻尾を上機嫌そうに揺らして歩幅を合わせて寄り添い歩き始める。
そして二人は、互いに日常の些細な事について仲睦まじく話し合いながら地元の商店街をぶらつき。
時に顔馴染みの青果店の店主に揶揄われたり、偶然出会った中学生時代の同級生にビックリ仰天されたりしつつ、ヒーローグッズを取り扱うショップの開店時間に合わせて二人で列へと並ぶ。
そこそこ早めに並んだ二人であったが、それでもNo.1ヒーローの新作グッズという事でかなりの列が続いており、出久は内心で買えると良いなぁなどと不安になりながら冷や汗を流す。
「凄い列だねー、いずちゃん」
「う、うん……」
思った以上の長さになっている列の様子に、出久がどうかグッズを買えるよう天に祈る中狐白は尻尾をゆらゆらと振り。
突如むぎゅり、と背後から尻尾を優しく掴まれた感触を受けて少女がそちらへ視線を向けると。
「きつねしゃんー」
「あ、こ、こら……ごめんなさい……!」
「ああ、あの時の……いえいえ、大丈夫ですよー」
暑苦しい笑顔を浮かべたオールマイトの顔がプリントされたシャツを着ている幼女が、ふわふわーなどと言いながら狐白の尻尾をやわやわと握っており。
幼女の母親と思われる女性が、申し訳なさそうに列に並んだ状態で狐白へ頭を下げる。
いつぞやの、出久と狐白が二人でお出かけした時にオールマイトのイベントショーがやっていた建物にて、狐白の尻尾に抱き着いてきた幼女と幼女の母親がそこにいた。
娘の突然の不躾な行動に謝る母親へ、狐白は前回の約束通り優しく握ってくれている事に幼女へお礼を言いながら母親へ気にしないでほしいと微笑み……。
かつては他人に対しては割と辛辣な所を見せていた幼馴染が、柔和な方向に変化した事に出久は微笑みを浮かべながら狐白と絡めた腕に力を籠め、少年の行動に気付いた狐白もまた嬉しそうに微笑むと応じるように腕へ力を込めた。
そのまま4人で、ショップが開店するまでの間談笑し……やがて店員が開店を告げると共に列が動いてグッズの販売が始まる。
しかしここで、一つハプニングが起きてしまう。
「こちら最後の商品となっておりますー」
「……え?」
出久が買おうとしたオールマイトグッズ、その名も『動く!喋る!オールマイトDX ゴールデンエイジVer』が最後の一個であったらしく。
出久が目を輝かせながら財布を取り出して代金を支払う直前で出久は固まり、背後から視線を感じればそこには目に涙を溜めている幼女がいた。
その姿に出久は動きを止め、物凄い葛藤に悩み苦しむ。
欲しいか欲しくないかでいえば断然ほしい入手しそびれたグッズの再販品、またいつ手に入るかわからない代物が今ようやく手に入る直前。
だがしかしヒーローの卵として、そして同じオールマイトを愛する人間の一人として幼子を泣かせてまで手に入れるべきなのか、出久の中で天使と悪魔が激しく争い……そして。
「すいません、僕はいいのでこちらの方へ……」
「……わかりました」
幼女とその母親へ心配をかけないよう、店員の方へ勢いよく出久は振り向きオールマイトがごとき力強い笑みを浮かべて……葛藤の果てに出した決断を店員へと告げる。
先ほどまで目を輝かせていた少年の勇気ある挺身と優しい決断に、店員は敬意を払いながら出久の決断を受け止める。
「何から何まで申し訳ありません……」
「お兄ちゃんありがとー!!」
「HAHAHA、いいってことサ!」
何度も何度も頭を下げる母親、そして無邪気な笑顔で元気いっぱいお礼を告げる幼女。
そんな二人に出久は、何度も練習し顔芸の領域に達したオールマイト風笑顔を浮かべて親指を立てて応え、列から抜ける。
勇気に満ち優しさに溢れた同じオールマイトを愛する出久の決断に、列に並んでいた同様に買えなかった同志たちはそっと出久へ拍手を送ると共に。
それはそれとして、あんな恋人いるアイツの股間の制御棒モゲ落ちれば良いのになどと呪詛を送るのであった。
「いずちゃん、かっこよかったよ」
「……ありがとう、こーちゃん」
ぶんぶんと手を振り続ける幼女、そして列に並んでいたグッズ目当ての同志から見えないところに入った瞬間肩を落とした出久を、狐白は優しく笑みを浮かべながら慰めるように心からの感想を少年へ告げ。
出久は狐白の言葉に慰められながら、お昼に丁度良い時間になった事もあり商店街近くの公園へと二人寄り添って歩きながら足を向ける。
そして、公園の丁度よい場所にあった空いているベンチに二人並んで腰掛けると狐白は嬉しそうに尻尾を揺らしながら……バスケットから弁当箱を二つ取り出し。
出久へ弁当箱と手渡し、もう一つを自分の膝の上へと載せる。
「えっと、いただきます」
「ふふふ、おあがりなさい」
初めて手作り弁当を受け取ったあの日から、何度か食べた事のある狐白の手作り弁当。
しかし、互いに想いを告げ合ってから初めて受け取った弁当だという事もあり、出久が生唾を飲み込みながらゆっくりと弁当の蓋を開く。
「おおう……」
「えへへ、少し恥ずかしいかな?」
思わず声を漏らした出久、それもやむを得ないだろう。
弁当の中の御飯エリア、白米にはさくらでんぷにて立派なハートマークが拵えられていたのだから。
赤面した出久の様子に、狐白もまた頬を赤くしながら尻尾を忙しなく振って自分の分の弁当箱の蓋を開き。
幼馴染の様子に出久は胸が高鳴るのを感じつつ、弁当の中で強く自己主張をしている厚揚げの煮物を箸で摘まみ、己の口へと運んだ。
「この厚揚げ凄い美味しい……今までで一番、美味しいかも」
「ほんと? そっかー、えへへー」
口へ運び、咀嚼して飲み込んで呟いた出久の言葉を狐白は耳を立てて一語一句漏らさず聞き取り。
すぐにその狐耳をへにゃりと倒して、尻尾をくねくねと揺らし始める。
ヒーローを目指す中で多忙な学生生活を送る二人の、平和で幸せな束の間の休日の光景がそこにはあった。
なお幼女は、いつぞやのかれぼく!からの再登場。
具体的に何時頃会ったのか等は、ぼやかすのである。
ちなみに、列にナイトアイも並んでるってのが最初の予定でしたが、話の流れがとっちらかりそうだったのでオミットしました。