短編集だけどな!
ちょいとチョイ役で追加オリキャラ出ますが、そんなに出番ないのでご安心下さい。
【休み明けの教室の一幕】
休日が終わった月曜日、言うに及ばずながらも学生達は各々が自身の通う高校へと通学していく。
それは無論、雄英高校でも同様で始業開始前の空白の時間、1-Aの教室の中では幾つものグループに分れて雑談に興じ居たのだが……。
「おはようー」
様々な体格の生徒にも考慮したバリアフリー精神にあふれる大きな扉を開けて姿を現した二名の生徒。
一人はもさもさした頭を持つ少年、そしてもう一人は銀色の髪と同じ色の狐耳と尻尾を持つ少女なのであるが。
その一組の男女は、腕を絡ませており少女の方に至っては尻尾をゆらゆらと上機嫌そうに振っており。
少年の方もまたまんざらでもない様子で、少しだけ口元が緩んだ状態であった。
「けろ、今日も緑谷ちゃんと狐白ちゃんは仲良しね」
「うむ、二人が仲良しで俺も嬉しいな!」
「……いやアレ仲良し通り越してラブラブ言うんちゃうかなぁ」
「んんっ、二人からラブの煌めきという名の輝きを感じるね☆」
けろけろと鳴き声のような笑みを漏らしながら蛙吹は素直な感想を述べ、同様に割と天然堅物な飯田はカクカクとした動きで友人二人の仲睦まじさに笑顔を浮かべれば。
一方でお茶子は、これもしや二人一線超えたのではなどと言う感想を抱きつつ言葉を漏らし、珍しく会話に加わっていた青山は何とも言えないポーズと共に……。
腕を絡めさせて教室へ入って来た二人、出久と狐白の周囲に漂う可視化されてるかのような幸せオーラを端的に評した。
そんな二人の様子に勝己がケッなどと言いながらそっぽを向いたりする中、一人の少年がてくてくと出久と狐白へと近づいていく。
少年の名は峰田、彼はある意味で覚悟を決めた戦士のような貌をしながら二人の前に立ち、出久を見上げながらその口を開いた。
「二人とも、大人の階段登っちまったのか……?!」
突然のクラスメイトの言葉に凍り付く1-A。
聞き耳を立てていた八百万はまぁなどと言いながら頬を赤らめて両手で口を覆い、同じく聞き耳を立てていた耳郎はあんのバカ……!などと呟いて机へと突っ伏す。
一方で男子の中で上鳴は椅子に腰かけたままクラスの天井を仰ぎ見るように見上げ、常闇は突然のクラスメイトの行動に全力で咽ている。
自然と出久と狐白へ集中するクラスメイトの視線、好奇心やら嫉妬心やら色んなものが入り混じった視線の集中砲火。
だがしかしそれもしょうがないと言えよう、何故なら彼らは高校一年生。そう言う男女の恋愛事情に興味津々なお年頃なのだから。
なおその中で轟だけは、クラスメイト達が何故興味津々そうにしているのか欠片も理解していなかった。
ある意味この時代に置いて珍しい領域にいる朴念仁というか純朴な少年であると言えよう。
「え、えっと……」
「こゃぁぁぁ……」
幼馴染と絡めていない方の手で頬を掻きながら、紅潮した頬を見られないようにする為なのか出久は峰田から顔を逸らし。
狐白の方はと言うと、声にならない鳴き声じみた声を漏らしながら顔を真っ赤にして狐耳をペタンと倒しながら、愛しい幼馴染に抱き着くようにしながら俯いた。
その瞬間、二人の少年を除くクラスメイト達は全てを理解した。
こいつら一線超えやがった、と。
「緑谷ァァァァァァァァ!! あべしっ」
「う、うわー、うわー……なんか顔紅くなってきた」
「芦戸もともとピンクじゃん、ピンクレディじゃん」
「緑谷君に玉藻女史!不純異性交遊は校則的にマズイ、清く正しいお付き合いをすべきだと思うぞ!」
嫉妬の心が赴くまま飛び跳ね出久へ強襲を仕掛けようとした峰田が、背後から飛んできた瀬呂が放ったテープによってリードに引っ張られる犬のように床へと叩きつけられたのを皮切りに。
芦戸が大人の階段登ったっぽい雰囲気のクラスメイト二人に、頬を赤らめながら呟けば葉隠が身も蓋もないツッコミを飛ばし。
勢いよく立ち上がりビシっと腕を上げた飯田が、クラス委員長的観点から友人達が校則によって罰されないようにする為に必死に言葉を張り上げる。
一言でいえばカオス極まりない状態であった。
「お前ら席に就け」
そしてそのカオスは担任の相澤が扉を開いてクラスの中へ足を踏み入れ言葉を放ったことで、一瞬で鎮圧された。
よく訓練された光景と言える。
「それと緑谷に玉藻、雄英の校則のその方面はミッドナイトレディが色々と掛け合った事で緩い方だが、節度は守れよ」
「は、はい! 今度のお休みにこーちゃんのお母さんと祖父母に正式に報告します!」
「そこまでしろとは言ってないし聞いてもいないぞ緑谷」
なお一番浮かれていたのは出久その人だったらしい。
ちなみに狐白は、その出久の言葉によってクラスメイトから集中した視線に、顔を真っ赤にして恥じらいながら狐耳をペタンと倒して両手で顔を覆っていた。
【師匠と弟子の一幕~平和編~】
休日明けのとある授業の後の休み時間。
いつもの仮眠室にて、トゥルーフォーム状態のオールマイトこと八木と出久は机を挟んで向かい合っていた。
「あー、その、うん、相澤君から聞いたよ緑谷少年」
「ごめんなさいオールマイト、ワンフォーオールの宿命からすると、本当は恋人とか作ったらいけないとは思うんですが……」
マジかぁ、と言わんばかりの表情を浮かべる八木に対して出久は申し訳なさそうにしながらも、しかし後悔はないかのように胸を張っており。
立派になったなぁ緑谷少年、だけど明確な初デートが自分のグッズ購入というのは正直どうなのなどと内心で考えつつ、八木は口を開く。
「確かに守らないといけないモノが増えるのは事実だけど、しかし守る者がいるからこそヒーローは強くなれるもんさ」
「大事な人を守り力無い人々も守り抜く、そんな綺麗事を命がけで成し遂げてこそヒーローだ。頑張れよ緑谷少年」
「っ……はい!!」
骸骨のような顔に笑みを浮かべて、己の後継者を祝福しながら応援してくれた敬愛するヒーローからの言葉に。
出久は感無量と言った具合の表情を浮かべながら、元気よく頷く。
「……だけど、その、さ……今度の休日、玉藻ご夫妻にもその……報告に行くんだよね?」
「はい」
「大丈夫? 問答無用で殺されたりしないとは思うけど下手すると地獄どころじゃない騒ぎになると思うよ? 私も付き添おうか?」
「いえ、大丈夫です、それに……こーちゃんを守り幸せにすると決めたからには、筋は通すべきだと思うんです」
そして八木は朗らかな顔を一変させ、冷や汗を浮かべながら出久へと問いかけ。
問いかけられた内容に出久は頷き、八木からの提案をやんわりと断りながら真正面から覚悟を決めた表情で己の意志を言葉にする。
まるでその姿は、死地へ赴かんとする誇り高きヒーローが如き佇まいをしていた。
「念の為だけど、本当はこういうのは良くないんだけども……私から今度の休日、君がコスチュームを貸し出してもらえるよう口添えしておくよ」
「ありがとうございます! 多分、血桜さんとも立ち会いする気がしますから……ステインとの闘いの時も活躍した、あの籠手があるかないかで戦い易さ変わりそうですし……」
「……本当に大丈夫? 私行かなくていい? あの人達興が乗ると、死ななきゃ安いとか言い出して言葉通り死ぬ寸前まで痛めつける人達だよ?」
どこか悲愴な決意すら滲ませてる後継者の姿に冷や汗を浮かべる八木であった。
【師匠と弟子の一幕~地獄巡り編~】
何度も足を運び、中へ何度も足を踏み入れた事もある豪奢な佇まいの長い歴史を感じさせる和風邸宅。
今、その邸宅へ幼馴染の母が運転する車で赴いた出久は、屋敷から感じる気配に圧倒されそうになりながらも……。
ぎりぎりルールの隙間を突いた八木の働きかけにて、貸し出しを許可されたコスチュームの入ったトランクを掴む手に力を入れ直す。
「お待ちしておりました……緑谷出久様。本家御当主様がお待ちになられております、こちらへどうぞ」
巫女服のような衣装に胸甲と大袖をつけ、頭部には様々な電子機器のついたゴーグルをかけている狐耳と尻尾を持つ妙齢の美女が出久と狐白を出迎える。
女性の腰には鉄杭のような釘がいくつもぶら下げられており、その腕には幾つもの暗器を仕込んでると思しき重厚な籠手を纏っている。
女性の目には出久を歓迎する意思は見えず、探るような試すような冷徹な光のみが宿っており。
出久の隣に立つ狐白へ視線を向ける時にあった、柔らかで暖かな感情が見える瞳とは正反対と言える色がその眼にはあった。
「懲罰捕獲ヒーロー『釘刺し』……メディアの取材にも応じないどレアなヒーローなのに、まさかここで会えるなんて」
「おや随分とお詳しいのですね緑谷出久様」
「いずちゃんはヒーローが好きだからね、詳しいんだよ!」
「おや、なるほど……」
思わず呟いてしまうは筋金入りヒーローオタクの出久である、彼が持つデータベースの中には彼女の情報もしっかりと記載はされているが。
しかし情報量が少なく、一目会ってみたいという好奇心が強かった対象に出会えたことに嬉しさを隠しておらず……そんな少年の様子を、釘刺しと呼ばれた美女は怪訝そうに問いかければ。
本家のお嬢様であり幼い頃……少年時代から可愛がってきた狐白の言葉に、若干頬をゆるませる。
そのまま一組の少年と少女は案内されるがままに、いつも通される広間……ではなく大きな道場へと通される。
案内された先の全面板張りのその道場はとても広く道場の奥には、幼馴染の狐白の祖父母である血桜と黒狐が座布団に座っており。
左右にはその老夫妻を守るように、そして今からくる客人を迎え撃つかのように完全武装の狐耳尻尾を持つ美女たちが控えていた。
老夫妻から出久へ注がれる視線は暖かく迎え入れるような、しかし同時に研ぎ澄まされた刃が如き冷たさを帯びていて。
左右に控えている完全武装の狐耳尻尾美女達に至っては、出久への試すような視線を隠す気配が微塵もない状態であった。
「よく来てくれましたねぇ出久ちゃん、お話は聞いておりますよ」
張りつめた空気の中、血桜が鈴を転がしたかのような声音で出久を歓迎するかのように言葉を紡ぎ。
当主である血桜が明らかに可愛がっている気配を察した、控えていた一族の者達は少しだけ纏っていた空気を緩和させつつも……出久へ興味深そうな視線を向ける。
「狐白ちゃんと正式な交際をしたい、今のこの時代で筋を通そうとする姿勢誠に立派だと思います。親御さんの教育が良かったのですね」
何度から顔を合わせ共にお茶も楽しんだ、出久の母である引子を思い浮かべながら玉藻家当主である血桜は言葉を続け。
しかし、どこか厳しい空気を纏わせていく。
「ですが、狐白ちゃんは我が玉藻家の直系の娘。犬猫のように欲しいから差し上げますなどというわけにはいきませぬよ?」
ザワリ、と出久の背筋が泡立つかのような殺気が道場の中へと満ちていく。
思わず後退ってしまいそうな己の心に喝を入れながら出久は踏み止まり、隣に立つ狐白が己の手を握ってくれた事で勇気づけられた出久は口を開く。
「全て理解の上です、その上で僕はこーちゃん……いえ、狐白さんとお付き合いさせて頂きたく思います」
「ふむ、それは……命に代えても狐白ちゃんを護り、幸せにするという誓いですか?」
「はい、ですが一つだけ訂正させて頂けるなら……僕は何があろうとも死ぬ気はありません、生きて狐白さんと添い遂げます」
真正面から、殺意の刃で切り刻まれながらも距離を挟んだ先にいる幼馴染の祖母を見詰めて出久は言い放つ。
未だ高校一年生という若者の身でありながら、賞賛すべき胆力を示した少年の姿に控えていた狐耳尻尾の美女たちは出久への内心評価を上方修正する。
「カッカッカッカッカ!良くぞ吼えたな出久!それでこそ儂の弟子じゃわい!」
張りつめた空気の中、それを打ち破るように哄笑を放ったのは今まで沈黙を貫いていた狐白の祖父である黒狐。
老人は心から愉快だと言わんばかりに笑い、口の端を吊り上げて獰猛に笑いながら弟子である出久を見据える。
「想いは十分愛情も十分、なればこそ示すべきものはただ一つ。それが何かわかっているな?」
「はい、その為にコスチュームも貸してもらってきました……八木さんに尽力頂いて」
師匠である老人と、弟子である少年と交わされた視線の間に火花が散る。
「なれば、儂ら相手に示してみろ。 お前さんの力を」
上機嫌そうに老人は述べると、今この場へ出久と狐白を案内した狐耳尻尾の美女が出久を更衣室へと案内し始め。
そのまま狐白は出久へついていこうとしたところで、別の一族の女性に阻まれてしまう。
「いずちゃん、頑張って!」
「うん、頑張るよこーちゃん。見ててね」
心配そうに、しかし勝ってほしいという願いが込められた幼馴染の言葉に出久は力強く頷いて言葉を返す。
なお出久は後に、ずたぼろの姿で遠い目をしながら述懐する。
正直、五体満足で終えられたのが奇跡であったと。
Q.この一族ヤクザとかそういうのじゃね?
A.ヤクザじゃありません、侠客系一族です。
どちらかというと祖父母達は、二人が納得の上で付き合ってるなら色々言う気はなかったけども。
真正面から交際宣言してくるのなら、そりゃ全力でオモテナシするしかねぇなコレ!てハッスルした模様。
なお今回やってきた一族の戦闘員は本家のお嬢様(元おぼっちゃま)の相手が、生半可がガキンチョだったら全力で叩きのめしてやるってなってます。